『スイッチ』を押させるな――ッ!   作:うにコーン

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王の資格 の巻

                  ゴ ゴ ゴ

 破壊された貴金属の破片を手にして、自動人形(オートマトン)の少女は無言で(たたず)む。 仗助は、シズの手にある希少鉱物の球と希少金属の欠片に驚き、眼を丸くして、シズの顔と貴金属の破片へと交互に視線を送った。

 

「元の状態に直せ…って…… ()()をかよ?」

 

 鋭角に砕かれた、その黄金の欠片は…… 殆ど照明としての機能を果たしていない、()ちたシャンデリアにボンヤリと照らされ。 薄暗い空間の中であっても、キラキラと光を反射し山吹色に輝いていた。

 

 シズの小さな手の平で転がる、辰砂(しんしゃ)琥珀(こはく)青藍(せいらん)の宝玉は、全くと言っていいほど濁りが無く、冬の空のように澄み切った透明度を誇っている。 そして、その宝玉1つ1つが、まるで自力で発光している錯覚に陥るほどの存在感があるのだ。

                  ゴ ゴ ゴ

「そう。 とても大切」

 

 突然突き出された、希少鉱物の破片に。 仗助はゴクリと固唾を呑んだ。

 

(キンとか宝石とかよー…… どう見ても、絶対ヤベ―だろこれ…… なんでいきなり初対面のヤツにこんなこと頼んでくるんだ……?)

 

 数秒か…… それとも数分か……

 

 破壊された玉座の間で、貴金属の破片を目の前に出された仗助は、その異質さと脈絡の無さに是か非かの答えを出せずにいた。

 

  その時。

                  ゴ ゴ ゴ

「ム! これは…… 金の破片か? フム…… 無傷の玉座周りで、唯一破壊されている物質だな…… 王冠…にしては量が多いか……? 王杓と考えるのが自然…… いや、両方という可能性もあるな……」

 

 玉座周りを調べていた承太郎が、シズが手に持っている破片と同じ物をみつけたようだった。 玉座内にいる全員と情報が共有できるよう、発見したものを言葉として口に出す決まりになっていた為だ。

 

(なるほどなぁ~~ この破片は遺品っつー事かよ……)

 

 そんな承太郎の報告を聞いていた仗助は、「その破片は何?」と聞いても「大事な物」としか答えないシズへの警戒を解く。

 

「…………。 迷って悪かったな…… 今、直すぜ」

 

 <クレイジー・(ダイアモンド)>を実体化させ、スタンドでシズが持つ破片に触れた。 

 

 スタンドは精神エネルギーが実体化し、可視化できるようになった能力の事だ。 つまり、操作する本体の精神状態に、そのスタンドのパワーは大きく左右される。

 

 スタンドの姿は精神の姿…… 心の具現化だ。 臆病風に吹かれ…… ブルッちまったスタンド使いは、自身の能力を十全に引き出すことが適わず。 祖父を無残な姿に変えられ…… 怒りに精神を燃やすスタンド使いは、瞬間的にだが自身の限界以上に時を止める爆発的なパワーを発揮した。

 

 仗助は精神を集中させ、軽く息を吸う。

 

 スタンドの能力は想いの力。 願いの具現化だ。 犯罪の証拠を残したくない殺人鬼は、死体を完全に消す能力を得、大切な人や…… 思い出の詰まった物を失いたくない若者は、暴力に傷つく人や物を癒す力を得た。

 

 不可能を可能にする力を持つ、スタンド使いは…… 自身の写し身に名前を付ける。 そして呼ぶのだ。 眼に見えない精神を、魂の叫びを形にするために。

 

「<クレイジー・(ダイアモンド)>ッ!」

 

 これは自己暗示。 日課(ルーティン)である。 ある老婆は、吸血鬼の男にこう言った。

 

 『出来て当然』と思うことですじゃ! 大切なのは『認識』することですじゃ! スタンドを(あやつ)るという事は、できて当然と思う精神力なんですぞッ!

 

 自分の分身、スタンドの名を呼ぶというのは、つまるところスイッチを押すようなもので、気合を入れているだけだ。 重い物を持ち上げる際に、歯を食いしばるのと同じで、アゴの筋肉なんて腕には繋がっていないのに、実際に噛み締めると力が入る。

 

 シズの手にある破片がフワリと浮き上がり、磁石のようにくっつく。

 

 全力で拳を振るう際に「オラオラオラ」と叫ぶのも、能力を発動させる時に「ザ・ワールド」と叫ぶのも、スタンドに向かって「防御しろ」と命令してしまうのも。 レースゲームに熱中し、ついつい身体が動いてしまうのと同じ。 『そうする』と、それが可能だと『認識』できるからだ。

 

 

 

    そう…… なるはずだった。

 

 

                  ド ド ド

 シズの手にある希少金属の破片は、2つか3つがくっ付いただけで動きを止める。

 

「はあ!? なおんねぇ  ってどういうことだこりゃア  ッ!?」

 

 自身の能力に絶対の自信がある仗助は、受け入れがたい結果に衝撃を受け、大きくうろたえる。

 

 スタンドパワーが弱まっているのか? 又は部品がこの世界から、億泰の<ザ・ハンド>で削り取られたかのように、消滅してしまったというのか? それともこの貴金属の破片は『生命』を持っており、死んでしまったため魂が消滅してしまったのか? だとしても『肉体』であるこの黄金の破片は修復されるハズだ。

                  ド ド ド

 直す能力とは逆に、仗助の『自信』ってヤツがブッ壊れかける。 予想外の状況故の、焦りと緊張で冷や汗を流し唇の端を噛む。 その姿は()しくも彼の父。 ショセフ・ジョースターが、初めて柱の男…… サンタナと対峙し、窮地に立たされた時と同じ姿だった!

 

「こ…… この『破片』が特別なんだ! きっとそうだ、そうに決まってるぜ!」

 

 適当に、足元のヒビが入った床に能力を発動させる。 すると、今回は問題なく修復されていく。

 

「おおっ! 予想通りだったぜ…… まさか…この破片、シズちゃんみてーにスタンド能力が効きにくい材質なのか……? 安い磁石みてーに…近い破片しかくっつかねー……」

                  ド ド ド

 チラリと、床に散らばる破片に眼をやる。 床には、数えるのもバカバカしくなるほどの数が散らばっていた。

 

「これ全部、パズルみてーに1つ1つくっつけるのかよ……」

「ま、まぁ僕も手伝うからさ! きっと大丈夫だよ!」

 

 仗助の心の内は、まさか! だった。 荒れ果てたお城みたいな、ダンジョンのようなこの場所で、パズルを解かされるなんて、こんなイベントはまるで、ゾンビが襲ってくるあのゲームによくある…… 唐突にやらされる謎解きのように思えた。

 

「これよぉ~~」

 

 億泰がしゃがみ込み   所詮ヤンキー座りだ   破片を指で摘まんでしげしげと眺める。

 

「箱ン中に入れて<クレイジー・(ダイアモンド)>で直しちまえば早えーんじゃあねーか?」

「いや、それは止めておいたほうが良いだろう」

 

 シズを含む全員の視線が承太郎へ集まった。

 

「この部分……」

 

 承太郎が手に持った、比較的大きな破片の曲線部分を指でなぞる。

 

「明らかに断面ではない曲線だ。 恐らく、元の状態はかなり複雑な形をしている。 適当に直して、後でネジが1本余りました…… 程度では済まなさそうだな」

「中で空洞が出来たり、部品が干渉して直らなくなってしまう可能性があるってことですか」

 

 面倒でも確実に直すべきだと、納得できる理由を告げられてしまった。 これでは、最早ぐうの音も出ない。

 

 

 

 ……しばらくして。 

 

 断面がピッタリ合う破片を探し、仗助の能力で接着するように修復していく。 30分ほど時間が過ぎただろうか? 完成図すらないジグゾーパズルと格闘する5人+1台は、会話する気力も失せ…… 黙々と破片と格闘していた。

 

 難易度エクストリームモードのパズルに飽きてきたのか、億泰が玉座をチラリと見た。

 

「ここが未来の日本ってーなら、この遺体は王様だったのかなぁ~~?」

 

 豪奢な椅子に座った、白骨化した遺体。 重厚な漆黒のローブと、散りばめられた装飾品。 城か宮殿のようなこの場所。 地上の墓標郡(ぼひょうぐん)。 この施設は、崩御(ほうぎょ)した王を埋葬(まいそう)するための、墓地だったのだろうか?

 

「ほう、億泰殿の故郷、ニホンにも王がおられるのか? 急に親近感が沸いてきたというか…… 出来ることなら、一目会ってみたい」

「あ~っと、オレ達がいた日本は王様はいないんスよ」

「うーん…… ここが日本だって証拠は今の所ないけど…… 日本の場合、王さまじゃあなくて天皇、皇后様じゃない? でも、皇族(こうぞく)の方達のお墓なら…木造のハズなんだけどね」

 

 荒れ果てた空間の、何処を見渡しても木製の柱や家具は無く。 それどころか窓も無い。 転移して移動してきたが、恐らくここは地下なのだろう。 大理石のような白い石で作られた柱や、金や銀、水晶などの素材で装飾が彩られていたりと、木製の物は扉や机などの僅かな部分のみだった。

 

「そういやぁよぉ~~ 天皇……ってよくわかんねーんだけど、つまり、その…… なにやってる人なんだ?」

「そんなことも知らねぇのかよ億泰。 皇族の人達ってぇーのは…つまり……」

 

 なんとなくは知っているが、言葉にすると難しい。 そんな感じで言葉に詰まり「あ~~っと……」と、天を仰ぐ仗助の答えが出る前に。 承太郎がザックリとした答えを出す。

 

「一言で言うと…… アイドルに似ているな」

「アイドル…… ですか?」

 

 いきなり身近な(たと)えを出され、康一が聞き返す。

 

「そうだ。 日本の象徴、顔役。 陛下は日本人全員の祖父で父で兄弟で息子で孫みたいなものだ。 王や皇帝のような、強権は持ち合わせていないが…… まぁ、心のよりどころと言うヤツだな。 又は親しい友人と言ったところか」

 

 血筋だけの国営アイドルと言っていい存在が皇族であり、それは何千年と続く日本の歴史であり誇りなのだ。 だから、ただの象徴としての存在であったとしても、他国や他人に冒涜されるとカチンと来る。 怒りが沸く。

 

 そう、まるで自身の親しい者を侮辱された時の様に。

 

「承太郎殿。 つまりそれは…… ニホンを、国を纏めているのは…… 政府の長は別に居るということか?」

「ああ、そうだ。 たった1人の肩に国を背負わせるのは危険だし、負担が大きすぎるからな。 ストロノーフの所属する王国…… 王政とは違い、日本は民主制を採用している」

「民主制…… そのような(まつりごと)の仕組みは…初めて聞く」

「国民が多数決による投票で、信頼できる政務者を決め、そこから1人のリーダーが選ばれるという事だぜ」

「なるほど…… 『君臨(くんりん)すれども、統治(とうち)せず』か……」

 

 アゴに手をやり、なにやら考え込むガゼフ。 そんなガゼフの意図を見抜いたのか、承太郎が(いぶか)しげな表情で「妙なことは考えるな。 ストロノーフ」と、制した。

 

「国民の投票で国のリーダーを決める事を『民主主義』というがな。 この方法には、非常に大きな弱点がある」

「大きな弱点…… それは?」

()()()()()()()()()()()()()。 という弱点だ」

「なに!? それでは本末転倒ではないか!」

「民主制の成否は、国民の学力に大きく依存する。 昔の日本も、イキナリ国民全員が投票したワケじゃあないんだぜ。 年齢と性別、そして高額の納税が出来るかどうかで、投票者を(ふる)いに掛けていた」

「……成程。 高額の納税が出来るということは、一定の知識を持ち、なおかつ政治に関心がある。 ……ということか」

 

 ガゼフの飲み込みの良さに、承太郎は僅かに微笑(ほほえ)んだ。

 

「その通りだ。 甘い言葉や、出来もしない未来を語る口だけのヤツを見抜くために、学力がどうしても必要だ。 もし無能が(おおやけ)の場でヘマをして、私を信じてくれ(トラストミー)なんて言ってみろ。 ほぼ確実に…… 他国から見切りをつけられるだろうな」

「……今の王国には、文字すら読めない民が過半数を()めている。 貧しさゆえに学ぶ機会の無い子供達ばかりだ…… 多くの民が容易に騙されてしまうだろうな」

 

 それに…… と、ガゼフは内心で渋面を作る。

 

(あの()()()()()()ならば。 表面上は善政(ぜんせい)()いて裏では…… いや、裏から表舞台の者を口先だけで操り、自分は危険を侵さずに甘い汁を啜るのだろうな。 彼奴(あやつ)はそのような男だ)

 

「さらに……だ。 リ・エスティーゼ王国は、確か帝国とやらと戦争中だったか……? 停戦合意すらせずに政変が起きたならば、大混乱に陥るだろう。 1月(ひとつき)もたずに、王国は地図から消えるだろうな」

 

 戦争中の国は、意思決定が迅速(じんそく)である必要があるため、なるべく多くの権限(けんげん)がリーダーに集約されているのが望ましい。 だが、これは国のトップが腐敗していない事を前提とした、ハイリスク・ハイリターンの手段だ。

 

 リーダーが腐敗しても、被害が広がらぬよう保険を掛けた民主制か? 又は効率のみを追求した独裁制か? もしかしたら他に良い仕組みが生まれるかもしれないが…… 答えは永遠に出ないだろう。

 

「もう一ついいだろうか、承太郎殿。 大した事では無い…… 酒場で話すような、冗談じみたことなのだが」

「なんだ?」

()()()()とはどういった者なのだろうか? 異世界から来られた御仁の意見を…考えを。 是非聞いておきたい」

 

 言葉では冗談だと言っておきながら、ガゼフの声は真剣だった。

 

 承太郎は「フム……」と、僅かな時間考えた後。

 

「『良い』を考えるのは難しいが、『悪い』を思いつくのは簡単だ。 つまり、逆に()()()()を作り出し、それを反転させればいいという事だ」

 

 と述べる。 そして、フッ。 と自嘲気味(じちょうぎみ)に鼻で笑い、これから言うのは冗談だぞといった、軽い口調で話し始めた。

 

「知能が高い事は当然として…… とりあえずは死なない事か。 不老不死の方法を求めて暴政や無茶をしたヤツは多い。 ファラオ王の様に、世代交代の混乱も無いしな。 それに優秀なヤツは敵も多い…… 暗殺されないように、強いのも最低条件だな」

「最悪ですかぁ~~ やっぱり7つの大罪って言われているように、強欲(グリード)嫉妬(エンヴィー)怠惰(スロウス)傲慢(プライド)色情(ラスト)暴食(グラトニー)憤怒(ラース)とかですかね~~? あっ、ここくっ付くよ仗助君」

「サンキュー康一。 だがよ~~ 誇りは重要だぜ? 誇りが無いと、ただ死んで無いってだけで生きているとは言えねーからな!」

 

 地道な修復が(こう)(そう)し、問題なく黄金の破片は互いに癒着していく。 数えるのも億劫(おっくう)だった細かい部品が、今では6つほどの大きなパーツへと姿を変えていた。

 

 子供が遊びで話す『シルヴェスター・スタローン(代表作・ランボー)と、ジャン・クロード・バンダム(代表作・ブラッドスポーツ)はどっちが強い?』レベルの   子供がスタローンとバンダムを知っているかは謎だが   感覚で、仗助達のテンションは更にヒートアップしていく。

 

「人望がある人で、優しい心の持ち主がいいなぁ~」

「酒や女などの欲望に溺れないようにするか。 物理的に飲食やセックスが出来ない体で…… 未経験じゃ無いとな。 女絡みで国が傾くなんてザラだ。 妲己(だっき)とかな」

「それ必要ッスかね?」

「精進料理に肉を真似た料理があるが…… あれは一度食べた肉の味が忘れられ無いからだ。 経験すら無ければ、傾国の美女でも耐えられる…… かもしれん」

「なぁ仗助ェ~~ 悪ィヤツつったらよぉ~~ 『カネの為に何でもやる』ヤツのことだぜェェエ~~~! つまり最高の王は『モノスゲーカネ持ち』だ!」

「まあ最後は運だな。 多少のミスも、幸運があればなんとかなるだろう」

 

 極悪難易度パズルの終わりが見えてきたことに、気が緩んできた一同。 気の向くまま、悪ノリに悪ノリを重ね、出来上がったのは…… トッピングを全部のせて、訳がわからなくなったラーメンのような、矛盾した存在だった。

 

 こってり豚骨しょうゆ塩みそラーメンあっさり味。 これが何らかのキャラクターならば、明らかにまともではない存在だろう。

 

「そのような…… 王がいるだろうか?」

 

 感心したような、あきれたような、微妙な表情を浮かべたガゼフ。 仗助達がフザケ過ぎたため、話の流れが明後日どころではなく。 大気圏から離脱し火星付近までブッ飛んでしまい、途中からついて来れなかったのだ。

 

「いない」

 

 承太郎は、いままでの話の全てをバッサリと切り捨てる。

 

「私が言いたいのは…… ()()()()()()()()()()と言う意味で無い。 最高に近付けば近付くほど…… ()()()()()()()()()()という意味だぜ……」

 

 『王』になる理由。 『王位の価値』は一体何だと思うだろうか? 有象無象を踏み潰す力……軍権か? 眼もくらむ莫大な財宝……資産か? 皆が(うらや)む英雄……名誉か? その全てか?

 

 人が権力を欲するのは『欲するものを手に入れるための手段』が欲しいからだ。 1言で言うなら、人が『王位に付く』ということは『ただそれだけ』だ。 金が欲しい、名誉が欲しい、食べ物が欲しい、身を護る力が欲しい………… 愛が欲しい。 そんな欲望を満たすための…… ただの手段だ。

 

 カネがあるなら遊んで暮らせばいいし、力があるなら鍛える必要は無い。 ()()()()()()()()()()()()()()。 なんて、わざわざ自分から損を被るような…… そんな聖人のようなヤツなんて存在しないのだ。

 

「フフフ…… 何という…ままならぬものよ……」

 

 口角を吊り上げたガゼフは、額に右手を当て、天を(あお)いで嘆息(たんそく)する。

 

此方(こちら)を立てれば、彼方(あちら)が立たず。 彼方(あちら)を立てれば、此方(こちら)が立たず。 全く、等価交換とは厄介なものだ)

 

 なんだか馬鹿馬鹿しくなってしまった。 と、ガゼフは肩を上下に揺らす。

 

 ずっと張り詰めていた空気が、多少は緩み。 最後の仕上げだと、気合を入れた仗助の能力で至宝は1つになる。 幾つもの螺旋(らせん)を描くように、複雑に捻れた黄金の破片は、2時間以上の時と手間を掛けて、ようやく元の姿へと戻ったのだった。

 

「流石によぉ~~ こんくれーの大きさになると重てぇ  よなぁ~~」

 

 仗助は、予想外の事態に苦笑いを浮かべる。

 

 ……元の姿を取り戻した『杖』は、明らかに大きすぎた。 長身の承太郎よりも一回り大きい金の杖は、2メートルを優に越えていたのだ。

 

 淡く、柔らかい魔法の光に照らされた異形の杖は…… 磨き抜かれた鏡のように、キラキラと光を反射していた。 吸い込まれそうなほどの透明な輝きを放つ宝玉と、浴びた光を増幅して反射しているのかと錯覚するほどの見事な黄金。 この芸術作品が光源以上に輝いて見えるのは…… 暗いと文句を言った億泰に、シズが新たな光源を用意した為か? それとも杖自体が放つスゴ味のせいか?

 

「ウッカリ落とさないでよ? せっかく直したんだから……」

「大丈夫だって…… 3~40キロ程度ならよぉ~~ スタンドで持上げればヨユーだろ」

 

 生身では持上げるのすら一苦労する金塊も、近距離パワー型のスタンドならば何の問題も無い。

 

 <クレイジー・(ダイアモンド)>の白い腕を、自分の身体からズラす様に実体化させた仗助。 だが、杖に伸ばした腕は途中で止まった。

 

「おっと…… 遺体の手に戻す前に、手を合わせるのを忘れていたぜ」

 

 仗助の、呟くように発せられた一言。 承太郎達一同は、玉座の白骨化した遺体へと手を合わせた。

 

「なんまんだぶ、なんまんだぶ……」

 

 うろ覚えのお経を唱える億泰。

 

「成仏してくれよ……」

「してください……」

 

 本気で冥福を祈る仗助と康一。

 

「…………」

(けがれ)れ無き御霊(みたま)が、四大神の祝福を受け天に召されんことを……」

 

 そして、黙祷を捧げる承太郎と、現地の宗教であろう…… 四大神という神に祈るガゼフ。 思い思いの方法で祈りを捧げ、改めて杖を持上げる。

 

 持上げて最初に思ったことは。

 

「……んん? 思ったより軽いな……」

 

 であった。 見た目よりは…… が頭に付くが、金が材料にしては軽すぎた。 重さを軽減する、あのオーバーテクノロジーが使われているのか? はたまた金だと思っていたのは勘違いで、別の素材が使われていたのか? だが仗助は、調べる方法も意味も無いため、まあいいやの一言で疑問を片付けた。

 

 遺体の左手は、壊れる前は杖を持っていたのか、右手と比べて少し開いていた。 巨大な杖を、遺体が崩れてしまわないように、王座に寄りかからせるようにして遺体の左手に持たせた    

 

 

 

    瞬間だった。 

 

 

ブワァアッ!!

 

                  ド ド ド

「うわああああああああああっ!!」

 

 遺体が杖を手に収めた瞬間。 ねじくれた杖から湧き上がる、ドス黒く邪悪なオーラ。 そのドス黒いオーラを背にするよう時折、赤銅(しゃくどう)色のオーラが陽炎(かげろう)のように立ち(のぼ)るって行く。 黒く透明なガス状の何かは、人の顔の形へと変わり、苦悶(くもん)の表情浮かべ…… 崩れ…… 消えていく。 まるで人の魂が炎に灼かれ、苦痛に呻きながら消えていくようだった。

 

 肉の無い、骨の腕が……

 

ガシィッ

 

 驚いて手を離してしまった仗助の代わりに、杖を(しか)と掴む。 ゆっくりと…… 感触を確かめるように、うなだれていた髑髏(どくろ)の王が頭を動かし…… 正面を向く。 そして、その頭蓋に空いた空虚(くうきょ)眼孔(がんこう)に、赤い炎が灯った。

                  ド ド ド

 骨の(むくろ)が、左の(かいな)に携えた杖を突く。 

 

カシン   

 

 涼やかな音を響かせ、杖は鳴る。 (むくろ)はそのまま、ゆっくりと立ち上がると…… 炎が灯った眼孔を、まずは康一に。 そして億泰…… 仗助へと注ぎ。 最後に長い時間、承太郎を注視する。

 

「…………」

「…………」

 

 両者睨み合う。 初めて出会った異質な存在に、どうしていいか判断が付かないのだ。 

                  ド ド ド

 張り詰める空気。 引き裂かれる寸前までに高まった緊張感。 血圧が急激に上昇し、心拍数が増加する。 混乱する脳よりも先に、身体が戦闘の準備を進めていた。

 

 これが、この存在が、ガゼフやニグンが言っていた不死者(アンデッド)か。 生命を憎み、殺す存在か。

 

 承太郎は、止め処なく流れる冷や汗を拭うことすらできずに歯噛みする。

 

(マズイ…… 近すぎる。 撤退するにも4人を連れていては不可能だ……ッ! 2.5秒は短すぎる!)

 

   自分が殿(しんがり)となって戦い、他の四人を逃がすか? そう、考えた時だった。

                  ド ド ド

 

 

    空条…… 承太郎………」

 

 

 

 ポツリと、その男の名を呼んだのだった。

 

    !!」

 

   承太郎は戦慄する。

 

 

(コイツは誰だ? 私達の事を知っているのか!? 何故…… 状況がヤバ過ぎる……!)

 

 ありえない状況に、思考がバラバラに砕け散り…… 纏まりが付かない。 黄金の杖を手にした瞬間。 突如動き出した、白亜の骸に名を呼ばれた承太郎達は。 驚愕に大きく眼を見開き、完全に凍りついたのだった。

 

 

 

to be continued・・・




国盗り物語で、制度の話は避けて通れないよね



――没ネタ――

~自分で呼んだワーカーにナザリック盗掘される~

モモンガ「う~~ううう… あんまりだ…… HEEEEYYYY!!」
    「あぁぁんまりぃぃいだぁぁあ  ッ!」
    「AHYYY(アヒィィイ)!! AHYYY(アヒィィイ)!! WHOOOOOHHHHHH(ウホォォオオオ)!!」
ピタリ
モモンガ「ふー、スッとしたぜ」スッキリ
    「俺は激昂(げきこう)してトチ狂いそうになると精神状態が安定するんだ」

すきなとこ:こんなんしたら激昂(げきこう)させた側が完璧ブルっちまうやん!

ボツりゆう:ちょっとかっこわるいです……




たくさんの誤字報告ありがとうございます。
眠い眼擦りながらだと誤変換になかなか気が付かない!
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