『スイッチ』を押させるな――ッ!   作:うにコーン

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ロンデス&ベリュース… 貴様には、『出番が削られた事を後悔する』時間をも……与えんッ!



幕間 1 の巻

 時はやや(さかのぼ)る。 カルネ村という寒村(かんそん)の道端に、意識を失って倒れている男が1人いた。 …いや、『(あらわ)れた』

 

 上半身半裸で、ピンク色の髪に青海苔をくっつけたような長髪の、奇妙な()で立ちをしている。 上半身に身に着けるのは、これまた奇妙な模様の、網のような紐のようなもの。 まるで衣服としての機能を持たない珍しいものだった。

 

 

 

 

   ハッ!」

 

 気が付くと、また景色が転移でもしたかのように変わっていた。 ここは… 長閑(のどか)な田舎。 それがオレが始めに思った第1印象で、次に思ったことが…

 

(つ… 次は… ど、どこから… いつ襲ってくるんだ!?)

 

 だった。 だがしばらくしても何も起きず時間だけが過ぎていく。 こんなことは、初めてだった。

 

 実は、オレはジョルノジョバーナとか言うガキのスタンド。 <(ゴールド)(エクスプリエンス)・レクイエム>の能力によって、際限なく死に続ける呪いを受けた。

 

 何度思い出しても恐ろしい。 まさか5歳くらいの少女にあんなことをされるとは思わなかった。 死に続ける… まったくもって、ブルッちまう能力だ。 しかも死ぬ死因が、かなりつまらない理由で死ぬのが腹立たしい上に、何が原因なのか… 予想も出来ず恐ろしい。

 

 いや… 1度だけだが印象深い死に方があったな… そう、あれは()()()()()()()だったか。 目覚めたと思ったら、荒地に造られた… 変な村が死に場所だった時だ。 (宿っぽい所だな)と考えていたら、英語を喋る目の前のババアが、急に爬虫類になったんだ。

 

 スタンド能力だったのだろうか。 まあ、そんなことは大した事じゃあ無い。 目の前にイキナリ恐竜が出てきた時は、思わず乾いた笑いが出てしまったぜ。 

 

 オレは今からトカゲのクソになるのかと思うと、大して信じてなどいない神を、こう呪ったんだよ。

 

「神は…… オレをダーティな場所に送り込むのが、お好きなようだ」

 

 で、意識が無くなって気付いたらまたこんな村の道端に転がってると言うわけだ。

 

 引っかかれただけで、意識が無くなったから解らないが… 『前のオレ』はたぶんクソになっちまったんだろう。 想像もしたくないが。

 

「おじちゃん、うずくまって オナカ痛いの?」

「うわああああああああああああああッ!」(ビックウウウッ!)

 

 不意打ちで、あの時の子供のように話しかけられたので、思わず大声を出してしまった。

 

 振り向くと…… うんざりする。 またしても5歳くらいのガキがいた。 もう二度とあんな目にあうのは御免だッ! 急いでこの場所から離れなくてはッ!

 

 ガキはヤバイ! ガキはヤバイんだ! ガキの親にショットガンで脅されて、嫌々ごっこ遊びに付き合ったら死んだ時のあの絶望は! もう2度と味わいたく無いんだよ!

 

 だが今の不意打ちで腰が抜けてしまい、思うように動けない。 なんとか立ち上がろうともがいていると、ガキの後ろから、鋭利な刃物を持った女がこちらに物凄いスピードで接近してくるではないか!!

 

(うおおおおおッ! ガキよりもあっちの方がヤバイ! )

 

 あれはヤバイ! 人の命を刈り取る形をしている! あんな鋭利な鎌で切られたら、きっと人間の頭などシャンパンのコルク栓のように跳ね飛ばされてしまうだろうッ! はッ、早く逃げなければッ! もうすぐそこまでエエエェェェッ!

 

「く、来るなッ! 俺の側にッ近寄るなああ   ッ!!」

 

 なんとか立ち上がることに成功したオレは、もつれる足を何とか押さえつけ全力で逃げ出す。 話しかけられただけで… 首を()ねられそうになるような、こんな物騒な村から立ち去ることにした。

 

「こんな恐ろしい村にいられるか! オレは一人で逃げるぞ!」

 

 恐怖を押し殺し、振り向く。 ベネ(良し)! ディ・モールト(非常に) ベネ(良し)! あの女殺人鬼は、オレにあまり興味が無いようだ。 追いかけてこない。

 

 全力疾走し、疲れたのでしばらく歩いていると、村の外れだろう場所にたどり着いた。 なんということだ! 最大生存時間記録更新だッ! オレは、オレは…… 呪いを振りきった!

 

 ふう…… やっと一息つける。 なんだか、落ち着いたら急に腹が立ってきたぞ……ッ! クソが。 まただ。 また女だ。 なんだっていうんだチクショウ。

 

 俺はいつも女に邪魔される。 やっと手に入れた矢もトリッシュに邪魔されて。 あいつの母親の写真のせいで俺の正体もバレた。

 

 いきなり吠えた、あのクソ犬もメスのような気がするし、俺を轢き殺した車のドライバーもババアだった気がする。 クソガキなら大した事にならないと思っていたら、ナイフ仕込んだテディベアにお医者さんごっこ(外科)されるなんてよ。

 

 本当に嫌になる。 さっき会った金髪の女も、思いっきり鎌を片手に持っていたしな。 どうせあのまま、あの場所にいたら、急に豹変するんだろう。 どうせ。

 

「今からテメーのタマキン、噛み切ってやるぜェ  ッ! メ  ン!」

 

 とか、意味不明な言葉を叫んで、オレをブッ殺すんだろうぜ。 ケッ。

 

   誰だそんなことしねーつった奴はッ! 賭けてもいいんだぜ! 何を賭けるのかって? 命なんてどうだ? ハハハ、笑えねえ。

 

 

 

 ……同じ場所をグルグルと回っている気がする。 3時間くらい歩いているのに村から大して離れられていない。

 

 振り向く。 が、景色はさっきと変わっていない。 まさか今回の死因は餓死です。 なーんて事にはならないだろうな? な? そうだよな! そうといってくれ!

 

 ……うん?

 

「なんだ?」

 

 なんだが奇妙な音が…… ガチャガチャうるさいぞ? バケツでも叩いているような音が後ろから聞こえる。 おや、クルリと後ろを振り向くとダサい鎧を着た男が居たぞ。

 

「勘のイイ奴! 野性のコウモリにさえ気づかれずに近づけるこのオレに対して、『妙だな』と思っただけでもよく感じとったものよ!」

「羨ましいな。 暇そうで…」

 

 なんだこのアホ面ひっ下げた鎧の男は? コスプレか? それとも脳がクソになってしまったのか? 野生のコウモリとか… 覚えたての言葉だから、使ってみたかったんだろう。

 

 ああ、イラつく。 ふざけるなよ。 今俺は女から逃げるのに忙しいんだ。 お前の遊び相手になっている場合じゃあ無い。

 

「ナメんなよォ  ッコラ ッ! あっあっあっ、(ウヒヒ)相手になるぜッ! かかってきやがれッ! このドチンポ野郎があ~~ッ!」

 

 やれやれだぜ。 小さく呟いたのに聞かれてしまったようだ。 ムッ… やれやれ? なかなかイイ響きだな。 今度使ってみよう。

 

 このアホはというと… フン、手が震えているぜ。 こいつの取り巻きだか付き添いだかしらねーが、同じような見た目のヤツらも冷ややかにコイツを見ているぞ。 ブルッちまったか?

 

「お前の趣味に付き合わなきゃぁいけないのか? ヒマつぶしなら他でやれ…」

 

 ベネ。 俺かっこいい。

 

 おやおやおや… アホ面がみるみる赤くなっていったぞ。 まるで信号みたいで面白い。 プルプル震えている今の内に、脇からすり抜けてさっさとこの村から立ち去ろう。

 

「おいッ! その男を押さえつけておけッ! そいつは()()()()()()()()()()

 

 うおっ!? 両腕を同じ鎧を着た汗臭い男に抱えられてしまった!  く、くせえ! ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッ! こいつら、一体何日体を洗っていないんだ!?

 

 なんて一日だ! こんな不快な思いはあのジョルノに次いで2位だ!

 

    ザグゥッ!!

 

 ぐっ! い、痛え! なんだ、鋭い痛みがゆっくりとやってくるぞ!? 視線を下に下げると、腹にアホ面が持っていた剣が刺さってるではないか!

 

「なん!? だとォ~~ッ!! バッ…バカなッ! ま…まさかッ! ()()()()()、こんなヤツにッ! このディアボロがッ!!」

 

「俺の側に、近寄るなあああああああああああ!!」

 

 そんな! あの女のせいだ! こうなる事がわかっていたから、『あえて』見逃したんだ! クソが! 今度こそ逃げ切れたと思ったのに! 頭がカワイソーなコスプレ野郎じゃあなかったのか! く、くそ… 意識… が…

 

[『ディアボロ』 ベリュースの箔付けにされて  死亡]

 

 

 

to be continued・・・




カンケー無い話なんだが…
ストーンオーシャン15巻のヴェルサスが承太郎の記憶ディスク手に入れるときの顔。
あれ、浦安鉄筋家族の春巻にそっくりで、ジワジワ来る。

――没ネタ――

~~Web版アルチェル「この墳墓は不当占拠だ」~~

アインズ「おい…使者。 あんた…今、俺のナザリックの事なんつった!」

ケルベロ「ぐあうるるるる うばしゃああああ」


すきなとこ:ゴゴゴゴ… な雰囲気
      横柄な馬鹿がブチのめされるのは、スカッとするぜェ  ッ!


ボツりゆう:書籍版の情報で書くつもりですんで。 すぃませぇぇん。
      ナザリック勢は『暗躍』するのがグレートなんスよォ  ッ!

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