ですが、彼女にとっては・・・
それではどうぞ、楽しんでください。
第7話・最も出会いたくない精霊
私はミラーワールド内のラボで一息ついていた。
ここ最近、考えることが多く、少しばかりどうするか悩んでいる。
ASTが別組織から別の戦士、ここではウィザード、魔術師が派遣された。しかし魔術師とはなぜだろう。あんな機械装備に魔術とは、メカニズムの所為か、開発者があれなのか知らない。
話が脱線した。私は新たに派遣された人員のことを考えつつ、カプセルのカードを見ていた。
「タイムベント・・・」
完成させることはできない。取り出せば消滅するカードを見ながら、それでも考える。応用というものがあるのだから、それをしてみるかと考えるが、
「・・・」
なぜか胸騒ぎがする。そうだ、なにか嵐の前、何かのように。
「なにも起きなければいいが」
そう思い、私はカードの応用、アレンジ化を進めてみた。
学校、教室ではいつも通り、私は一人だ。友と呼べる者は、隣のクラスだから仕方ないし、作る気もない。
だが隣のクラスが騒がしい。ドラグブラッカーに様子を見てもらったが、制服というよりかは私服、のような少女がいた。
だがドラグブラッカーの様子がおかしい。私自身情報として伝えてもらっただけでわからないが、ドラグブラッカーの様子がかなりおかしい。
警戒していた。それに、ということは、
(精霊? まさかラタトスクの協力無しに生徒として入学した?)
可能と言えば可能だ。さすがにこの学園は特別な学園ではない。
不正を働かして進入する者なんているはずがないという先入観がある。だからこそ、そんなにセキュリティーは堅くない。やや平均値より高い程度だった。
ちなみにハッキングはしてみた、一応、保護者は架空の人物だから、念のために色々細工するためだ。
だからそれほどの予備知識が無くとも、念入りな情報操作さえすれば可能と言えば可能だろう。この学園は。
(だが、精霊が士道のクラスか・・・気になるのはそこか)
ドラグブラッカーの反応も気になる。急ぐ必要があるなと思い、時間が過ぎるのを待つしかない。
「神衣~っ」
十香が大慌てで私、いや俺のクラスに流れ込む。
どうやら士道が転入生を学園案内しているらしい。それが気になるから付いてきて欲しい。
そう言われて返答する前に手を捕まれ、引っ張られる。
十香、せめて話は聞こう。あと鳶一折紙もいました。
しばらくすれば、いた。
ああまずい、あの子はまずい。
「シドーのやつ、デレデレしおって~」
「・・・」
それならいい、あれはまずい。
黒い髪で片目を隠すような髪型、黒いワンピースのその少女。
その子から、血のにおいがする。
限りない血、命を奪った者の雰囲気を持っている。
ドラグブラッカーが警戒音を放つわけだ。あれはライダーに分類すれば、王蛇などのたぐいだ。
楽しんで殺るというよりかは、殺らなければいけないのなら殺る。
そうさも当然のように選択できる、壊れた者だと理解する。
(・・・士道)
士道はいま、精霊として、最も厚い壁にぶつかるだろう。
果たして真意を知りながらも、彼女を救うと言えるのだろうか?
不意に、烈火の戦士、彼の顔がよぎる。
何度も私を倒し、倒れるきっかけを生み出した、もう一人の私とも言える私。
「・・・」
難しい顔で見ていると、むにゅという音が背中から聞こえ、柔らかいものが背中にのしかかる。
十香は前のめりで私の背に乗りながら、後ろには鳶一折紙と、この二人はと思う。
よく見れば階段で、黒髪の精霊が、スカートの中を士道に見せようとしている。
からかわれている士道を見ながら、色々な意味で無理ではないのかと、頭によぎった。
それに二人が私にのしかかるが、支える。十香なぞ私のくびを締めて、ムッニィィィと悔しそうに士道達を見て、鳶一もそれを静かに、鋭く、冴えた刃のように見る。
息が出来ない、苦しいと思いながら、私は赤面する友人をどうするか考えた。
「士道」
「きゃ、きゃむいっ」
動揺しすぎて私の名前を間違えるバカがいた。俺としても、私としても幻滅だ。
十香は突如隠密を止めて驚いたが、背中に張り付いて隠れている。気づかれているからな。
鳶一は隠れて静観している。
「あらあら」
そして、妖艶なほほえみを向けて、スカートを放す黒髪の転校生。
まずはどうコンタクト取るか、インカムに手を当てるな。私に気づかれるのでは気づかれるぞ。
「この方は、士道さんのお友達ですか?」
「ああ、神崎神衣だ、よろしく。君は?」
「時崎狂三と言います、以後、お見知り置きを」
丁寧に挨拶するので、私も挨拶する。
その様子仕草、隙なぞないどころか、私は感じ取った。
(・・・控えがいる)
精霊は単体のはずだが、彼女の周りには何人か、護衛のように周りにいる。
ドラグブラッカーに意識だけ向けると、影に向かって吼える。どうやら向こうは影が出入り口のようだ。
影から血のかおりがする。何人殺し・・・いや、考えるのは止めよう。
「あら?」
チャイムが鳴る、時間が過ぎるのは早いものだ。
私達はクラスへと戻る際、気づかれないように動く。
(・・・士道)
もしも士道が、精霊を助けないと言ったのなら、仕方ない。
士道を殺して、実験を始めるしかない。
私はそう決めて、今後のためにドラグブラッカーを士道につかせた。
「士道さん、神崎さんとは、どう言ったご関係ですの?」
「ん?、あっ、ああ。昔、助けてもらった恩があって、そのあとお隣さんで、仲良くなったんだ」
「あらそうですの、幼なじみ、というものですわね。ふふ、羨ましいですわ」
そう優しく微笑みながら、狂三は静かに、ささやくように訪ねる。
「なにか、特別な方ですか? 雰囲気が、少々独特でしたわ」
「彼奴は普段からああなんだ。子供の頃から変わってない気がするな? 昔から年上みたいで、妹からも、お兄ちゃんの座は奪われ放題。まあ俺にとっても、頼れる家族だから、なにも言えないけど」
「いえ、少し・・・そういったものではなく」
困りましたわねと頬に手を置きながら、
「普段、なにかしている方なのかと、思いましたの。ただの人、なんですね」
「? あっ、ああ・・・彼奴が特別なことって言えば、一人暮らししてるくらいかな。そう言えば、彼奴の親とは会ったこと無いな、電話とかしてる様子とかは見たことあるけど」
「へえ・・・そうですの・・・」
目を細めながら、教師が来たので雑談を止める狂三。
静かに、考え込む。
(同じにおいがしましたが・・・少し、監視しておきましょう。謎の科学者さんのこともありますし、別の意味でおいしそうな方でしたわ)
ぺろりと上唇をなめて、少し苦笑する。
ドラグブラッカーはその様子を静かに見つめ、鏡の世界でとぐろをまいた。
さあだまし合いの始まりだ・・・
そう言えば、五河家の隣が神崎家です。精霊マンションの反対側と思ってください。
一夜城のように立てられたそれ見て、ラボの開拓を考えたのは内緒です。
電話やメールの仕込みは、途中で面倒だと思い、切りました。
ちなみに狂三にドラグブラッカーを監視させないのは、監視の視線に感づかれることを避けたのです。もうだまし合いは始まってます。
それでは、お読みいただきありがとうございます。