そんなこんなで、狂三にとってのオーディンの好感度ですが、話が話なので、琴里も混ざってます。どうぞ。
ある廃ビルで、狂三は静かに瓦礫に座り込む。
月明かりの下、無数の自分に込まれて思い出す。
時間が巻き戻る光景、無惨に砲身に触れて焼けた腕が溶けていたのに対して、それは巻き戻っていた。
即死しなかったのは奇跡だろう。それでも絶命は免れない傷が、巻き戻った。
「・・・・・ふふっ・・・・・・」
だめだ、笑いが、こみ上げてくる。
狂三は笑った、盛大に腹を抱えて笑った。過去の自分達も気持ちは分かるが、困惑する。本体がここまで楽しそうに、狂って笑う。
それに戸惑いながら、本体はしばらく笑い続けた。
涙が出るほど笑い、狂三は少し恥ずかしくなった。
ここに自分しかいなくてよかった。見られていたらその者を無意味に殺している。
「それで、そろそろ動いてもよろしくてわたくし?」
「いえ、まだ数を用意してからですわ。だいぶ数が減らされましたし・・・焦っては意味がありませんわ」
うれしい誤算があったが、それと共に厄介でもある。
彼が取り出した三枚のカードから、天使以上の何かを感じ取った。
それを思い出す限り、いまの戦力や、自分の能力では彼には勝てないし、欺けないだろうと思う。
下手をすれば、悲願より難しい問題だろうとも思う。
「ですが、まだですわ・・・まだ諦める気はありません、むしろ可能性が出来た」
自分の望みを叶える力、まさに彼が持つのはそれだった。
それを手に入れるためならば、自分は手段なぞ選ばない。
その時、士道の顔がよぎった。
自分の本命、彼もまた考えて動かなければいけない。
「ふふ・・・」
狂三は笑い、ふわっと跳び、瓦礫の影の中に消えた。
静寂が訪れ、静かになった。
「・・・はあ」
いまフラクシナス船内の医務室で、メディカルチェックを受けている。
まあ問題ない。時間を戻した以上、痛みと言う記録以外、脳の負担はない。
だが今回の件で収穫はあった。リバースは自分以外に使用はしない方がいい。
(すでに無い傷の痛みは消えていなかった、精神の方はすでに手を打っているが、他の者では無意味だろう。まさか、タイムベントの対抗が役に立つとは)
タイムベント、能力は時間逆行。
都合が悪くなったり、戦いの修正、私の死、タイムオーバー等々の事案、発動するカードだ。
最後の戦い以外、自動的に発動するタイムベント。その能力で私と神崎は記憶を所持し続ける。
むしろそうしなければ意味がない。だが人の脳には限界がある。限界を超えるほど記憶を持てば、脳が先に死ぬ。
だから、私と神崎は無限サバイブを使い、処置している。無限サバイブがある限り、記憶の限界はない。
だからこそ、この処置はある意味賭けだ。それに気づかれればオーディンがバレてしまう。
だが村雨さんからは、問題ないと告げられた。
「君の傷は完璧に無くなっている。これはおそらく、時間が巻き戻ったとしか言えないな・・・」
「時間が?」
「彼の発言を考えてだよシロウ。彼の使役していた従者モンスターの中には、完全に傷を治さずに動く者もいた。時間はおそらく数秒か数分。対象が増えれば増えるほど、戻せる時間が短くなるようだ」
それは良いことを聞いた。致命傷の際は切り捨てなければいけない事態もあるようだ。それはいい。
それよりも、
「琴里達は?」
「シンはいまは気を失っているよ、十香や四糸乃達が見ててくれている。心配はいらない。琴里のほうは、いまから行くかい?」
「はい」
隔離されたスペース、部屋の中に琴里が座っていた。
私を見るなり立ち上がり、椅子を前に出す。座れと言うことだろう。
いつもと同じように飴をくわえている黒の琴里。私が椅子に座ると、私の膝に座る。
私は気にせずに、琴里を見る。
「もう平気か琴里」
「神衣兄、私は平気。だからお願いがあるの」
顔と顔を向かい合うように座る琴里、私はなんだろうと思う。
琴里は真剣な顔で、
「キスして」
「なぜだ」
ほぼ無表情が、普段の私だが、さすがに驚いた。
いや、いまは俺の方がいい。いや、俺ですら驚く場面だな。少し困惑している。
そんな私に飴を取り、すぐに顔を近づけ、唇を合わせた。
「!?」
少しばかり驚く、念のためかもう一回押してから、すぐに離れる。
しばらく自分の身体を見る琴里。少しだけ眉間を抑えた。
「霊力は封印されない・・・神衣兄には、士道みたいに霊力を封印する力はないようね。無力化だけか・・・」
「・・・ああ」
自分は狂三の力、寿命を吸い上げる空間で普通に動いていたことを思い出す。
だからだろうかと聞くと、そうよと、投げやりに答えて、体重を預けてくる。
「神衣兄は、鳶一折紙のように、AST、顕現装置の処置はされていないから、霊力の効果を受けているはずよ。なのに、それがないということは」
「士道みたいな能力所持者と言うわけか」
「そう。だからキスしたの」
気にせず飴をくわえ、私の上で揺れる琴里。
それを静かに抱きしめている私。
「けど、封印できないのなら、士道と同じ能力ではないみたい」
「好感度の問題じゃないのか?」
「神衣のファーストキスなら、問題ないし、神衣兄なら、もう一回してあげようか?」
悪戯を思いついたように微笑むが、少しばかり心配になる。
無理している、さすがにそれくらいわかるほど、この子達と関わっているのだろうかと思う。
「・・・琴里」
優しく抱きしめながら、頭を撫でる。気にしているのだろう。
「俺は気にしてない、ケガはこの通り、なにもないんだ」
「・・・」
静かにそれを聞くと、すぐに顔を胸に埋め、掴む手が強くなる。
「心配させないで・・・」
琴里が弱々しく呟く。琴里はそう言って、顔を押しつけ、嗚咽を隠す。いま泣いているようである。
やれやれと思う。死んでいないのだから、気にしないで欲しい。
「琴里は普段からお兄ちゃんに甘えられないんだから、甘えられる時は甘えろ」
「神衣兄・・・」
「・・・俺は琴里のお兄ちゃん、士道は琴里の大事な人だ。なにがあろうと、なにが起きようと、かわらない」
それが神崎神衣としての俺である。琴里の兄で、士道の友人。
私はどうだろうか、まあ士道は利用道具だ。彼奴の願い、精霊と人の共存が果たされるのなら、自分が道具扱いぐらいは文句は言わないだろう。
そんな私と俺だが、いまは俺を優先しよう。
「琴里、少しは頼ってくれ」
「・・・」
少しだけうれしそうにぎゅと身体を掴む手を強める。
「やっぱり神衣兄は神衣兄だね、私がなんだろうと、かわらない」
「精霊だろうが司令官だろうが、可愛い妹のような女の子だよ」
「・・・じゃ、士道が起きるまで、側にいて・・・」
「わかった」
琴里はそう言い、ぎゅっと抱きついてくる。昔を思い出す。
彼女にとって俺が兄であり、士道は異性だ。
それを知るのは俺だけか、あるいは周りは数名気づいているか知らないが、アホなことをするのならモンスターに捕食させよう。
神崎のコピーである私は、シスコンのようだ。
(・・・神崎はシスコンか? 少し悪いか)
そう思いながら、幸せそうな妹を抱きしめるのだった。
神衣「ドラグブラッカー!! あれを食べろ」
神無月「あ~れ~」
ドラグブラッカー『ガァァァ・・・』嫌々する
モンスター達『・・・』嫌々する
神無月「放置ですか、それはそれでいいですね」さわやか
奴が最後の一人か・・・(錯乱
そんなわけないので安心してください。
ではこれで、お読みいただきありがとうございます。