それでは、イフリート編はこれで終わり。
私はフラクシナスの人に頼み、過去の映像を一人で見ている。
どうやらラタトスクが、あの時の、琴里が精霊化して引き起こした事件現場の映像を持っていた。
私はそれを借りることはできず、だが画面が大きい部屋を借りて、映像の解析に入る。
映像を手に入れることは出来ないが、私の調べたいことは別にあった。
「・・・」
士道達の前にノイズのような固まりがある。それを見て士道は倒れている。いまは医務室で安静中であり、私以外のこの部屋には、誰もいない。
士道がコレを見て気を失ったことを考えれば、記憶操作はこれがしたのだろう。
「何者かは知らないが、いまは」
もっと時間を巻き戻したり、色々と調べる。
と、目的の映像が出てきた。
「・・・」
いつの間にかそこにいた。子供がそこにいて、辺りをキョロキョロして、士道達を見つけて背負い、その場を去る。
いつの間にか、何度も見たが、いつの間にかだった。
私はやはり、その瞬間に現れたらしい。
「・・・」
思案する。私がここに来た、しかも若返っているが、思い出せない。
私の幼い頃はこんなのだったか、過去を思い出す。
過去?
「・・・私の、過去」
空白、真っ白な世界が広がる。そう言えばと思う。
仕方ない、私は【神崎士郎】として生きていたため、私を失った。
無くなった、存在もない、名前も、立場も、意味も、何もかも【神崎士郎】となり、タイムベントの影響により、消え去った。
そう、元の世界で私の居場所なぞない。消滅は確定済みだった。
「まあどうでもいい」
過去なぞ不要と切り捨て、立ち上がる。だが、映像を切り前に止まる。
いま過去は必要なのではないか? 精霊の研究、真理を知るためには、この事態を知る必要がある。
私は誰だ?
「・・・」
しばらく沈黙する。自分が無い。あるのは研究することだけだ。
それでいいと思っていたが、いまはどうだ? このままでいいのか?
「私は誰だ」
誰も問いかけに答えず、時間だけが過ぎる。
オーシャンパーク、巨大なプール施設。そこで十香と四糸乃も交えての、琴里デートだが、途中で別れて、いま面倒を見ている。
「おにいちゃん、たのしいです」
「そうか、よかったよ」
「神衣!!、あれはなんだあれは!?」
精霊二人と共に辺りを見渡す。ドラグブラッカーは念のために士道のもとに、二人が屋台の方を見ているとき、背後に従者モンスターが控える。
「そうか、別の場所でデートか。そのまま監視しろ」
その言葉に下がる従者モンスターを見ながら、精霊二人を見守る。
『おにいちゃ~ん~楽しんでる~?』
「よしのんか、楽しんでいるというより、俺は見守ってるからな」
「おにいちゃん、は、たのしく、ないん、ですか?」
「そうだぞ神衣、せっかくだ。楽しもうぞ!!」
そう言われ、二人に手を捕まれ、引っ張られる。
楽しむ、その言葉の意味がわからない。
いや、そもそも私は、なんなんだ?
「神衣?」
十香が顔をのぞき込む、私の顔を見て不安そうな顔で見ている。
「どうした神衣? いつもより難しい顔をしてるぞ」
「あ、ああ・・・」
「おにいちゃん、琴里さんの、ことですか?」
「!?」
四糸乃はいま琴里が危険な状態だと知っていて、だから士道と一緒にさせているらしい。十香もそれを知り、なんとと驚く。
「なんで言ってくれなかったのだ、そうすれば私だって」
「十香」
「私とてシドーや神衣、みなの力になりたい。神衣とてそうだろ?」
違う。
「十香、私は」
その時、後方で爆発音が響く。
それにみんなが驚き、悲鳴が聞こえる。
「これは」
「シドー!!」
士道達のいる場所が攻められている。精霊二人を止める。
いま向こうは無謀と伝えるが、その時、限定的に精霊の力を取り戻した。
僅かだが霊力を取り戻し、こちらを見る。満面の笑みで向けてくる。
「わかった、頼んだぞ二人とも」
「うむ!!」
『任せて~』
「いって、きます。おにいちゃん」
そして向かう二人を見送り、周り、カメラなどを気にして、控えている従者モンスターを見る。
どうやら鳶一折紙が一般人を含めて、琴里、精霊に攻撃を仕掛けた。
「それが答えなら、貴様は破棄するだけだ」
デッキを構え、静かに告げる。
「変身・・・」
重火器装備、鳶一折紙の猛攻に、ドラグブラッカーは吼える。
「くっ、邪魔だッ」
「黒いドラゴン!?」
ドラグブラッカーは全ての攻撃を受けながら飛翔して、鳶一折紙へとからみつく。
それを何度も引き離して、琴里を目指すが、士道が止めている。
「士道放しなさい!! あんな人がいるところで使っていいもん使う以上、私も出るわ」
「ダメだ!? 精霊の力を使えば琴里は」
「そこまで知られてるのね、けど、あの黒いのだけ・・・」
その時、琴里は辺りを見て気づく。様子に気づく士道も辺りを見る。
ミサイルを始めとした重火器の攻撃が放たれているのに、建物が無傷などが多い。
「これってまさか」
「あの黒い龍が」
ドラグブラッカーが吼えながら、攻撃を避けずに向かう。
その姿は、
「彼奴、人や物を守るために、攻撃を避けずに折紙を止めようとしてるのか」
雄叫びを上げて、ドラグブラッカーが向かう。
だが、それに黄金の羽根が鳶一折紙ごと吹き飛ばす。
「なっ」
『なにをしているドラグブラッカーッ』
腕を組み、光りから現れたオーディン。その側に、従者モンスターが現れ、苦傷だらけのドラグブラッカーを見下ろす。
『貴様の命令は士道の監視だ!! なのにこの体たらく、ドラグブラッカー!! 命令だ、鳶一折紙を捕食しろ』
「捕食って・・・」
だがドラグブラッカーは吼えて首を振る。それにオーディンは驚く。
『貴様、我に従えドラグブラッカーッ!!』
カードを取り出す。それが暗闇を放ち、ドラグブラッカーが苦しみ出す。
従者モンスターもそれと共に、鳶一折紙へと襲いかかる。
それに対応し出す鳶一折紙。その隙に琴里もまた、精霊の力を使う。
『まずい、五河琴里、その力を使うな。ドラグブラッカー』
「やめろ!?」
ドラグブラッカーの前に士道が現れる。それにオーディンは叫ぶ。
『邪魔をするな五河士道。ドラグブラッカーは我が力、換えがきかないものではあるが、役に立たないのなら切り捨てるのみ』
「切り捨てるだって、役に立ってるだろ!? こいつがいなかったら、琴里は精霊の力をもっと早く使っていたし、建物だって壊れていた」
『違う、もっと効率を考えれば、鳶一折紙を殺すべきことだ』
「!? それを、本気で言っているのかよ!?」
『私の目的は世界の真理を知ることだ。その邪魔になるのなら、ただ憎しみのみに囚われた者なぞ、邪魔でしかない』
その時、鳶一折紙が琴里に叫ぶ。
どうして私の両親を殺したのと、それに私も士道も驚く。
いや、士道は僅かだった。可能性として知っていたのか?
そう視野した瞬間、一斉放射が琴里に放たれるが、
「!?」
ドラグブラッカーが飛翔して、琴里にまきつき、全て自分の身で防ぐ。
「ドラグブラッカー!?」
『貴様、なにを』
ドラグブラッカーは僅かな粒子、砂のように身体を消滅しかけながら、琴里を見る。
琴里はそれを見て、僅かに動揺するが、急にドラグブラッカーが苦しみ出す。
『貴様、我が命に背くのならもういい。ドラグブラッカー!! 鳶一折紙を捕縛しろ、あとはゴルトフェニックス、お前で消す』
ゴルトフェニックスが現れ、鳶一折紙がそれを聞き、攻撃を私に向けるが、
『遅い』
瞬間移動し、その装甲に手を入れ、無理矢理引き離す。
「ぐっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」
「折紙!? やめろオーディン!! あんたの目的に俺が必要なら」
『全て貴様の思い通りになると思うな、この娘はいるだけで今後に支障をきたす。ここで破棄するのは決定事項だ』
「わた、しは」
『両親を殺された? だからここで武器を乱射するのが正しいと? それで誰かを殺してでもやることか愚か者め』
「!!?」
「や、やめ」
何かを察して叫ぶ士道。
だがその言葉よりも早く、私の言葉が鳶一折紙に刺さる。
『貴様は精霊を殺すための道具、そのために人を殺す道具。貴様は人殺しの精霊とかわらない、人殺しだ!!』
「!!?」
その言葉に驚愕する。愚かものだと思いながら離れ、ドラグブラッカーを操り巻き付かせる。
『愚かな娘、親を殺されたからと言う理由に、人を殺すことが許されたと錯覚した者よ。いまここで破棄する!!』
ゴルトフェニックスが光りを纏いながら、ドラグブラッカーごと鳶一折紙を殺すかのように飛翔する。
士道はそれを見て、叫び声を上げるが、
『力無き叫びは、何者にも届かぬ』
そう宣言して、トドメを刺す。はずだった。
「『
その一撃を止める剣が現れ、ゴルトフェニックスはすぐに下がる。
「十香、四糸乃、よしのん」
『おっまたせ~士道くん』
「待たせたなシドー」
ドラグブラッカーはそれを見て、まだ苦しみ出す。カードで強制させているからだったが、こちらを士道が見た。
「二人とも、オーディンからあのカードを取ってくれ!!」
「うむっ、わかったのだ」
『五河士道、わかっているのか、このまま』
「ふざけるな!! このまま折紙が死んでいいはずないだろっ」
その言葉を聞きながら、十香の天使が迫る。それを従者モンスターで防ぐが、一撃で粉々に砕かれた。
それを見ながら、カードを持つ今ではソードもなにも使えない。
『くっ、ドラグブラッカー!! なぜ鳶一折紙をかばう、私は精霊を、五河士道のみだッ。他を捨てろドラグブラッカー!!!』
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
十香の攻撃を避けながら、士道を見る。
士道は琴里の側、急いで封印する気かと思いながら、その隙を見逃さない。
いまここで鳶一折紙を破棄しておかなければ、殺しておかなければいけない。
『邪魔をするな、ドラグブラッカーッ』
ドラグブラッカーは言うことを聞かない。こんなことは初めてだ。
そして仕方ないと動こうとしたとき、巨大なウサギと化したよしのんが現れ、氷のつららが迫り、避ける。
「悪いが、あの黒い龍も、シドーもやらせはせんぞ」
『私が殺すのは鳶一折紙だ、これ以上あれは必要ない』
「・・・」
それを聞いた十香だが、その剣を構え、こちらを睨む。
「それでも、やらせはせぬ」
『くっ』
攻撃を避けながら、琴里の方を見ると、封印が終わり、鳶一折紙もその場に倒れる。
活動限界、そうつぶやき気絶した。いまが好機だった。
無数の従者モンスターが鳶一折紙の周りに現れるが、士道が前に出て下がる。
「やめろ」
『仕方ない』
私が従者モンスター達に、殺さずに士道を押せと命令、武器を構えながら、迫る。
その様子に四糸乃達が飛び出そうとするが、ゴルトフェニックスが前に出る。その光が氷を溶かすため、よしのんはくっと苦悶の顔を見せる。
『引け、五河士道。鳶一折紙は、私の研究の邪魔だ』
「研究って、あんたはなんのために研究するんだよ」
『・・・』
なんのため?
『私は』
ナンノタメ?
『私は』
モウイミナンテナイ
『それしかもう意味がないからだ』
「なっ」
驚愕する士道達に、そうだと理解する。
『もう私には研究、真理への研究しかない。それ以外に興味はない』
「興味がないって、そんな理由・・・」
『精霊を私欲のために、他人の犠牲を承知で動かす世界や、私情でこんな場所を戦場に変える者達よりマシだろう? 世界はたった一人のわがままで変わる、君のわがまま、精霊達を救いたいと言う願いだけで、世界を変えることもできる』
そう言いながら、士道は引かない。
『どけ、私は私のために、鳶一折紙を殺す!!』
その宣言に、士道は拳を握りしめて、こちらを睨む。
「どかないッ、ここでどいたら彼奴に、神衣に顔向けできるかよ!!」
『!?』
まさかここで私を引き合いに出すか。この愚か者が。
『ならば貴様を殺して、貴様の力を知ることにする』
「させるか」
天使を構える十香だが、私はカードを構えたまま、それを見る。
だが変化が起きた。
ゴルトフェニックスが従者モンスターを下げさせた。
『!? ゴルトフェニックス』
その時、ゴルトフェニックスはドラグブラッカーを回収して下がる。まさかの事態だった。
モンスター達が契約者を見切ることはそうそうない。ましては食事を与えている状態でだった。
『バカな!? モンスター達がなぜ』
その現象はわからないが、こうなると分が悪い。
士道を見下ろしながら、静かに告げる。
『ここで鳶一折紙を殺しておかなければ、後悔するぞ』
「しない、なにがあろうと・・・俺は後悔なんかしない」
その時、烈火の戦士が横切る。彼が、まるで、自分の中にいるように。
『・・・それでも、私は私を変えることはない。私は間違っていようと、なんであろうと、もはや私は私しかない。私は私である限り、今度、鳶一折紙が市民に危害を加えるのなら殺すだけだ』
「・・・あんたは」
『言ったはずだ、私は研究者。それ以外に何もない』
「なに、も・・・」
『ない』
そう宣言してその場から去る。
黄金の羽根が降りてくる。十香はそれを拾う。
「・・・シドーあやつは」
「・・・」
迷い無くないと宣言したオーディンの言葉が、彼らの胸に刺さった。
「・・・ドラグブラッカーはしばらく使えないか」
傷を癒させる。ラボ内で謎の行動を取ったモンスター達だが、どうでもいい。
琴里はいつも通り、鳶一折紙はどうなるか知らない。
私には研究しかない。
そうそれしかない。
「・・・私は私だ」
ゴルトフェニックスは目を細めて主人を見る。
もはや存在する意味が無い自分達、それでも人と関わる主を思いながら、彼は静かに目を閉じた。
次回は番外編、そしてついにゲーム編であり、オリジナル要素、オリ主目線での話です。
オーディンである彼の物語、がんばります。
それでは、お読みいただきありがとうございます。