・・・耶倶矢と夕弦、強敵が現れる(戦慄
第11話・双子の精霊
「神衣、ジャージを貸してくれ」
琴里や凛祢の事件のあと色々あった。
まず琴里の事件で、折紙にはペナルティがあると思っていたが、それらしいものがないのに首を傾げた。
それと凛祢の事件が無かったことになり、私の正体を知る者はいない。だがそれは同時に凛祢を誰も知らない事実だ。
なぜそれに引っかかるか不明だが、最近は流れ作業的に日常を過ごしていた。時期が時期でテスト期間ということもあった。
テスト勉強が必要な十香と士道、琴里も交えて全ての科目を教えてやった。
過去の世界や繰り返し含め、私の知識量は膨大だ。だから、詰め込めるだけ詰め込んであげた。特に十香、途中から虚ろな目になったが気にしなかった。
おかげでだいぶ良くなったが、少しばかり性格が変わったと噂が立つが無視したし、余談だが十香はそこそこの点数になる(ハッキングで確認した)
「ん」
とりあえずテストが終わったからか、元に戻った十香にジャージを貸す。それを手に取り、去っていく。
戻ったことを確認して、静かに空を見る。
「平和だ」
隣のクラスからの怒声も戻り、私を呼ぶ声が聞こえるが、私のクラスでの行事もあるため無視する。
士道にはがんばってもらわなければいけない。凛祢のおかげでだいぶ耐性がついたのだから、生き残れ。
でなければドラグブラッカーよ、捕食しろ。
修学旅行、行き先はどこかの島らしいが、途中でまさかの行き先変更。それに少し疑問に思う。
この学園には十香がいる。プリンセスと呼ばれる精霊と姿が似ている少女、一種の監視があるのは理解していた。
だからこそ鳶一と思っていたし、五河家の盗聴器や士道の発信器等々の物全て無視していた。下手に手を出せば、問題だろう。たとえ全て鳶一個人の私物であり、鳶一が士道の私物をたびたび盗み取っていても問題いない。
話が脱線した。ともかく、飛行船に乗り、近場の島へ出向くことになる。
旅行の際、飛行機を見ながらボーとしてようと思った。
何事もないと思っていた。このときまでは・・・
「おのれ鳶一折紙!! 謀ったな」
飛行機の中で、士道バトルが始まりかけていた。窓際で士道に話しかける鳶一に、廊下側の十香は不満たらたらだ。
その様子に頭を痛め、仕方ないと思う。士道のクラスメイト全員が私に助けを求める目だったこともある。仕方ない。
懐から切り札を取り出す。
「十香、俺の席は空いている。窓際がいいならそっちに座れ」
そう、私の席は三席の内、私しか使用してない。生徒の数が合ってない気がするが、気にしない。
正直真ん中に座り、一眠り付く気だったが仕方ない。
「しかし神衣、シドーがいないぞ!?」
「貴方達はお似合いカップル、神合わせの美男美女」
鳶一はどうも、私と十香をカップルにして、士道を独占しようとしている。まだ可愛い方だ。デッキ渡した人はひどかったから流しながら、切り札を切る。
「十香、大人しくするのなら、これやるよ」
「そんなものはいら・・・・・・・・・・」
それを見て十香は黙り込み、手に取り、じっと見つめる。
その様子にみんなが黙り込み、食いつきがいいのでよしと内心頷く。
「俺の隣、窓際で良いな」
「うむ」
「!?」
士道を始め、多くのもの達が戦慄した。鳶一ですら手のひら返しに驚いていた。
士道のことになれば、十香はそうそう引かないのに引いたのだ。相手は鳶一折紙だというのに、引いたことに驚く。
渡されたものを見ながら、とてとてと窓際に座る十香。私はその真ん中の席に座る、これは十香に渡した物が何か知るために近づく鳶一を阻むためだ。
「か、神衣、なに渡したんだ・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
静かに黙り込む、そして懐の真っ黒ノートを静かにしまう。
時折窓の景色と、写真と、士道を見てにやにやする十香。写真の方が見る機会が多く、鳶一も気がかりか、こちらを見るケースが多い。
士道は「なに渡したの」と言う血の気が引いた顔で見ているが、気にするな。子供だから仕方ない、幼少期だから仕方ない。
士道から何渡したのと聞かれることを無視して、空間から降りて、旅館までの移動時、十香は大切な懐にしまい、いつもの調子に戻る。
その時、十香は空を見上げた。
「・・・なにか見ている?」
「?」
そう言われ、十香が見る空を見る士道と私。
フラクシナスだろうか? 士道からの話だが、琴里はラタトスクの幹部関係者の会議でいないらしい。
フラクシナスのメンバーからの視線かと思いながら、ドラグブラッカーに視線を落とす。
ドラグブラッカーが十香の周りにいる限り、そうそう危険はないが、監視はと思いながら、士道の叫びに我に返る。
「おいおい」
十香は走り出して、みんなと違う方向に走り出す。
仕方ないので、追いかける士道を追いかける。そう言えば、
(写真家がいたな)
騒ぎで無視していたが、クラス行事を記録するカメラマンが今回の行事についてきていた。
だがおかしかった。体力がないくせに、妙な雰囲気、戦闘慣れと言う感じがしたが、すぐにどうでもいいと切り捨てた。
なんか知らないが、三人組に連れてかれているのを遠くで見て、無害と判断して走る。いまは十香と士道だった。
風が吹く、晴天だった空が急に曇りかかり、嵐が近づく。
それに首を傾げながら、鏡の中のモンスター達を見る。
「精霊の気配? しかし空間震は」
スマホを取り出し、少しいじる。色々機能を拡張しているもので、おかげでわかったが、かなり離れた上空で、空間震が発生している。
まさか精霊がそれで現れ、いまここまで移動したのか?
(だとすればスピードの速いタイプの精霊か、まさか士道がいる場所に来るとは、運命というものか?)
ばかばかしいと思いながら、まさか精霊がたまたま現れ、たまたま士道と接触するはずはない。
あるとしたら、調整しなければいけないなと思いながら、士道を探していると、
「待ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
バカが叫んでいた。
まさかの展開、精霊と接触していた。しかも双子の精霊であり、本人ら曰く、風の精霊らしい。
とりあえず言い争っている間に、士道のもとに来る。十香は近くにゴミ箱などの、風で飛んできたものに頭を打って、気絶していた。
「十香?」
「きゅ~~」
よしのん天使が頭の回りに浮かんでそうな顔でそう呟く、まあ平気かと外傷を確認してから、精霊達を見る。
双子の精霊は何か言い争い、士道を巻き込んでいた。
「士道、お前なにした?」
「い、いや、霊力使ってぶつかり合いそうだったから、止めた」
「・・・」
「な、なにその黒いノート!? なんなのそれなんなのそれっ」
士道が青ざめる中、双子の精霊が私に気づく。
「指摘、士道、彼は誰ですか?」
「くっくっく、士道よ、その男は何者ぞ?」
何か片方からは昔を思い出す。昔のある人物を思い出す。
「俺の名前は神崎神衣だ、君達は、精霊か?」
「ほう、一目で我の正体を看破するとは、なかなかの観察眼だ!! ほめて使わす」
「同意、私達は精霊八舞と言う精霊です」
そう言いながら、ドラグブラッカーやモンスターを彼女たちの背後に回す。まあ悪い精霊ではないが、あまり常識がなさそうだなと思いながら、警戒する。
(いまはとりあえず、どうするか)
そして精霊達、八舞は静かに、ある戦いを高らかに宣言するまで、彼は静かに思案していた。
現状整理、まずフラクシナスとの連絡が取れない。何者かによるジャミングだが、鳶一折紙がしたとは考えられない。彼女は現在、それらしい機材は、盗聴器くらいしかなかった。
その次、精霊八舞は、どうも始まりは一人の精霊らしいが、何かしらのことがあって、二つに分かれた。
故に、元に戻ることが最優先だが、その際、もう一つの人格が消えると判断されており、二人は争い、どちらが真の精霊八舞であるかを決める戦いをしている。
その戦い、最後の戦いは、士道をデレさせた者が勝者になるらしい。
(最後のはなんだろう?)
あの後、二人からアピールされる士道を侮蔑の目で見ながら、十香を背負ってホテルへ向かう。
その際、服装を霊装から、十香と同じ学生服に替えてもらい、その後、令音のサポートもあり、彼女たちは修学旅行の輪の中に入る。
後は我々三人だけ協力して、八舞姉妹、昔の幼なじみを思わせる耶倶矢と、何故か喋る前に二文字付く夕弦。両方をデレさらなければいけない。
「シロウは十香や周りのサポートを頼むよ、私の方でシンをサポートする」
「わかりました、頼むぜ士道」
「ああ、任せてくれ」
というわけで私の役目は、鳶一と十香の面倒を見ることだろう。十香は話せばわかるだろうが、鳶一はダメだ。彼女は精霊の敵なのだから。
後はクラスメイトか、そっちもそっちで目を光らせなければいけない。世間一般は精霊を知らない、有る意味最もたちが悪い。
そう思いながら、十香達や男子生徒と共に、風呂場に向かう。
「神衣、いまから向かう風呂は銭湯より広いのか?」
「それくらいだが、海とか空とか見えるな」
「そうか、それは楽しみだ♪」
「女は・・・赤か、じゃあな十香」
「うむ、またな神衣」
そう言って、男女に分かれ、風呂場に入る。
服を脱ぎ、さっさと身体を洗って、湯船に入った。
風呂などシャワー程度でいいので、早く出るか、十香に合わせるか考える。
(そう言えば士道はどこだ? やはり琴里からインカムをもらうべきか、向こうも渡す機会考えてそうだが、きっかけは必要か)
精霊協力者として連絡がつかないのは色々とまずい。スマホだけでは問題が多いなと思いながら、湯船を見る。
「・・・」
湯船、否、ミラーワールドに、女湯にドラグブラッカーがいる。
ドラグブラッカーが何か訴えている。どうも士道は耶倶矢と夕弦に騙されて、女湯にいるらしい。
そしていま、十香達が女湯。
(・・・北岡、君の力が欲しいよ)
黒を白に変える彼を思い出しながら、いまの状況をドラグブラッカーに聞く。
いま十香がかばってくれているが、やばいらしい。
どうすると考えながら、ドラグブラッカーが何か騒ぐ。
「・・・」
海へと落ちていく士道。ドラグブラッカーが向かうから問題ないが、海に落ちるだろうなと思う。
「・・・」
忘れ物があるとか言って、男湯から少し出る。すぐにミラーワールド経由で士道の元に出向く。
「・・・」
ドラグブラッカーが海から士道を広い上げて、砂浜に置く。
士道は何がなんだかと言う顔でドラグブラッカーを見る。
「あ、ありがとう、ドラグブラッカー」
『ガアァァァァァァァァ』
吼えるドラグブラッカーと共に、オーディンとなった私が現れる。
それに警戒する士道だが、私の手にある物に驚く。
「それは」
『五河士道』
「な、なんだ」
『・・・いや、年頃だからな』
そう言って、タオルと着替えを投げつけて消える。
『覗きは程々にしろ』
「ま、待って!! 誤解したまま去らないで!?」
ドラグブラッカーも消えて、士道の誤解だあぁぁぁぁと言う叫びを無視して、私は湯船に戻る。
戻ってとりあえず、男湯をガン見する鳶一は無視して、ゆっくりすることにした。
十香「神衣、シャンプーがないのだ」
神衣「ほれ」
耶倶矢「神の岬にある、神の衣よ!! 我に穢れを落とし終え、荒ぶる髪を沈める聖水をここに捧げよ」
神衣「リンスか、ん」
夕弦「驚愕、神衣は耶倶矢が言うことがわかるのですね!?」
十香「神衣、返すぞ」
殿町「ぐふっ」
神衣「投げ渡す時気を付けろ」
十香「おお、すまぬ!!」
折紙「・・・」ずっと男湯を見ている
そのころずぶぬれの士道は一人寂しく医務室にいた。
お読みいただきありがとうございます。