ここしばらくの間、彼らから感情を学びながら、それを眺めている。
「?」
一つだけ、見知らぬデータがあった。
誰かの記憶である。
誰かが分からない、名前が無いデータ。
彼女はこれも『愛』を知るための一環として、そのデータを見る。
「貴方、今日も満点よ」
「そうか」
少年がテストの点数を親に見せる。
母親は大喜びであるが、レポートらしき紙を持つ父親は見向きもせずに、告げた。
「私の子供なら当然だ、完璧でなければ意味がない」
そう告げて、彼は研究所へと帰っていく。
母親は困った顔をしていたが、少年は気にしていない。
完璧でなければいけない。そう知りながら、完璧として生きることを決めた。
「・・・これは、誰の記憶?」
少女は首を傾げながら、その記憶を自分の中にしまい込んだ。
電脳世界の中、私はぼーとしていた。
はっきり言うが、私にとっては暇でしかない。
電脳世界で士道が精霊とデートしているようだが、その期間、私はやることはないため、空間を歩く程度のことはしている。
と、
「神崎神衣」
「或守」
或守、白い彼女の名前、それにはいと答えながら、静かに近づいてくる。
「神崎神衣、貴方はここで何をしているのですか?」
「何もしていないよ或守、君は」
「私は五河士道達を見守ってます。愛を知るために、神崎神衣も、愛を私に教えてください」
「俺が愛? 生憎と相手はいないよ」
「そうですか? 五河琴里や四糸乃やよしのん。その他の精霊とも仲がいいと結論で出ています」
そう言われても困るが本音だ。
簡単な例を言えば、十香とデートしたら最後、鳶一がどんな風にはやし立てるか分からないからだ。
精霊達と接する際、確かに二人っきりになるときもある。買い食いなど、買い物も共にしたりする。
フラクシナス側にとっても、一般人とのスキンシップは歓迎であるため、士道のデートのような扱いで、彼女達と触れ合う時がある。
私の場合は、選択肢は無い。一般人による、一般人の反応に慣れてもらうためだ。
好感度を上げると言うより、一般人との触れ合い目的での友好関係を上げる目的であり、士道のように、愛情のためのことはしない方がいい。
なにより、する気がない以上、本人に悪い。それが最終結論だ。
「悪いが俺は参加しないぞ」
「ですが、私は愛が知りたい。神崎神衣、貴方の愛が知りたいです」
そう彼女に言われ、はあとため息をつく。
なら仕方ないと思いながら、その手を取る。
「なら、俺とデートするか、或守」
「? 精霊ではなく、私とですか?」
「ああ」
「わかりました、愛を知るために、私は神崎神衣とデートします」
そう言ってから、彼女と共に町を歩く。
色々なものがリアルにできている中、私達は見て回り、歩いている。
「・・・神崎神衣」
「なんだ?」
「これは、デートですか?」
「散歩だな」
そう簡単に返す、彼女は散歩ですかと呟くが、嫌と言う訳ではない。
散歩もまた、デートだろうし、問題ないらしい。
こうして夕暮れまで彼女と過ごしながら、静かに日々を過ごす。
「で、どうして私のもとにいるのかな、君は?」
黒い彼女はそう言いながら、私は買い物袋から買ってきたパンなどを取り出す。
「夜の町を見ておきたいと思い、こうして出ただけだ。君とはたまたまだよ」
「ふ~ん」
そう言いながら、食べ物を彼女に渡す。
その時、不機嫌そうな顔になり、こちらを睨む。
「なによ、餌付けのつもり?」
「君も『知る』と良いと思ってね、せっかくだ。この電脳世界を楽しむという選択肢はないのかい?」
「貴方はバカなのか、天才か分からないわね。一応、ここの構造に関わってるはずなのに、知るとかって。私はもう、知ってるわ」
「君の知ると、実際知るは違うものさ、俺はそう思うから渡しただけだ」
「・・・ふん」
そう言い、あんパンを食べる。少しもぐもぐしてから、少しずつ食べていく。
牛乳も渡して、静かに晩餐を楽しむ。
「そう言えば、君も或守らしいが、下の名前は無いのかい?」
「・・・鞠奈、或守鞠奈」
そうつぶやき、静かに去っていく鞠奈。
その様子に少しだけ笑みを浮かべる。
月を見上げながら、静かに黄昏れた。
少年は中学生の時、大学に入った。
大学で少年は、エネルギー論、粒子や光子など、エネルギーに関する学問を専攻していた。
少年は天才と言われ、完璧と言われ続けた。武術もまた、人並み離れていた。
そしていつの間にか、妹ができていたが、彼にとってはどうでもよく、自分の実験のみに、研究していた。
だがある日、
「父さん、確かに分かりますが、与えられた環境下、与えられた資金での、機材購入ですが、どうして貴方が止めるんですか?」
「ふざけたことを言うな!! お前のしている研究は理論は確かに合っているが、実現するはずがない!!」
「それを実現するための機材です、私は研究所内で与えられ、貴方以外の人からの許可も得て、購入を視野に入れてます。明確な理由を仰ってもらえれば納得します」
「うるさい!! お前は私の子供だぞ、いい加減にそこを自覚しろ!!」
話にならないと思い、少年は引き下がると共に、妹らしき少女とすれ違う。
「お兄さま」
「? どうした」
「いえ、そろそろお兄さまの誕生日です。誕生日は空いていますか?」
「私にそんなものは不要だよ、父さんが機材購入を許可しないのなら、それ無しで研究を進めなければいけないからね」
「えっ・・・で、ですけど」
「どうした? たかが生まれた日程度、私にはどうでもいい、お前もそんなこと考えている暇があるのなら、自分の為に使いなさい」
「お兄さま・・・」
少女は寂しげに呟き、何事もなかったかのように部屋に戻る。
そして結果的に、機材無しで時間はかかるものの、彼は研究を完成させた。