「・・・許されない」
そう呟き、闇の中を歩く。
「戦え・・・死しても尚、消えようが何があろうと・・・戦い続けろ・・・」
鏡が砕ける、無数の鏡が次々と・・・
合わせ鏡の世界が、崩壊を始める。
いつもの日常?
「おはようございます、神衣」
「・・・鞠亜」
「はい、貴方の鞠亜です」
眼前に広がり、髪が頬に触れるほど近く、むしろ乗りかかろうとしている白い髪の少女、或守鞠亜。神崎家の居候、留学生と言う奴で帰国子女。
静かにこちらの顔を見ながら、起きあがる様子もまじまじと見る。ベットに腰掛け、静かに微笑む。
「朝ご飯の準備ができて、万由里も鞠奈も待ってます。早く来てください」
「ああ分かったよ」
一つ下の万由里、同い年で鞠亜の双子の姉、鞠奈。
彼女達と共に過ごす日々に、
「・・・なんでだ?」
疑問に思い、立ち上がった。
整理しよう、自分は鳶一折紙の事件後、一人高台で考え事をする機会が多くあり、その場に狂三が現れた。
彼女は、過去の逆行中に、自分の正体、オーディンであることを知り、念入りに事を進めていたのだろう。それとも、自分が油断しすぎたのだろう。
私は死んだ、至近距離で撃たれたし、傷口を触れられたり、キスされた感触などは覚えている。
そしてこの状況だ。
「遅いわよ神衣っ、なにしてたのよ」
「また夜遅くまでパソコン?」
呆れている二人は、来禅の学生服であり、少し新鮮ではある。
リビングに座り、調理する音を聞きながら、考え込む。まるで当たり前の風景に、驚きを隠せない。そう言えば鞠亜もそうだ。でだ。
「・・・念のため聞くが」
「分かってるわよ、この状況がおかしいのはね」
頬杖をつきながら、静かに考え込む鞠奈。鞠亜もま料理を置きながら、エプロンをほどく。
「はい、本来電子である私が、この世界。現実の世界にいることや、私や鞠奈、万由里がすでに、留学生として来禅高校の生徒として登録されています。いえ」
「そう言う記憶がある、だよな・・・」
そう、なぜかそう言う記憶がある。そう設定されていた。
そんな状態下で、全員が顔を合わせて情報交換する中、そう言えばと、
「ドラグブラッカー達の気配は無いけど、デッキはあるの?」
「・・・」
「? 神衣?」
鞠亜は首を傾げる中、考える。
あの時、ナイトのデッキは落としている。リュウガは消してはオーディンの力で創り出すコピー品。
そして、
「・・・無い」
「・・・無いって」
万由里が椅子から立ち、神衣は懐を見る。
そう、オーディンのデッキが無い。
青空の雲を見る。少し肌寒い時期、鞠亜達はマフラーなどしているが私はしない。いつものことだ。
「神衣、風邪引くわよ」
「気にするな、俺はいい」
「神衣、私のマフラーがまだ余ってます、一緒に使いますか?」
「「!?」」
二人が食いつくように睨むが、それも断る。
その様子に万由里は、
「そう言えば、雨や風、わざわざ受けたりするね。どうして」
「・・・」
そう、雨の日は傘はあろうと使わず、風も気にせず、静かに過ごす。
なぜかと言われれば、
「そうだな、少し頭が冷えるからだな」
「あんたいつも冷静じゃない」
「・・・」
呆れながら言われるが、それでも、私は・・・
「おーい」
と、我々の目の前に、いつもの団体がいた。士道達である。
「おはようみんな」
「神衣お兄ちゃ~ん♪」
「おはようだぞ神衣」
「神の崎、それに我が同胞達よ、久しいなっ」
「疑問、昨日も一昨日も共に登校したではないですか」
「うっ」
八舞姉妹のやりとりを見ながら、この様子、鞠亜を見る。
鞠亜達も、この状況下に気づいてないと、全員の意見の一致。しばらくこのままにしておくと、全員が思う。
「神衣お兄ちゃん♪ そのままじゃ風邪引くぞ♪ 私が途中までひっつきてあげる~」
「待ちなさい五河琴里、なんでそうなことする必要があるのよっ」
「ダメです琴里、神衣は私や鞠奈のです。暖を取るのなら、私か鞠奈がします」
「あっ、あんたもなに言うのよこのバカ義妹!!」
万由里も静かに手袋を取りだし、毛糸の手袋を渡そうとするが、十香達もわいわいきゃあきゃあと、楽しげないつもの登校。
いつもこうだが、私はいつもそれを眺めるようにしていた。
そう言えば、私から輪にはいることは無い。当たり前だ、必要を感じない。
放っておいても頭数なのだから、別に構わないのだ。
「・・・ん」
「ん、隣の家・・・」
隣の家、そう、あの家。
彼女が拠点にしていた、あの家、現時世界でもあるが、誰も住んでいない家に、荷物が運ばれていた。
「ん~まさか」
「?」
みんなが顔をゆるめ、微笑む様子、その様子に疑問に思う中、
「神衣」
その声を聞いて、心から驚いた。
走り出す彼女、ただ見ていることしかできず、彼女は胸の中に飛び込んでくる。
「会いたかった、神衣・・・」
「・・・りん、ね・・・」
私の胸の中で顔を上げて微笑む彼女、桜色のウェーブの髪、ショートヘアのその少女は、まさしく園神凛祢。消滅したはずの、凛祢だった。
「凛祢お姉ちゃん、お帰り~」
「ただいま、琴里ちゃん、みんな」
「うむ、よくぞ舞い戻ったぞ」
みんながわいわいと楽しそうに会話する中、そして全員から距離を取り、我々、私を知る者達だけで会話をする。
「凛祢、君がいるということは、ここは」
「分からない・・・」
彼女の力、空間に別の時間軸の世界を創り出し、対象を閉じこめる凶禍楽園、エデンと言う名前の天使である。
ここはどうも、その中だが、
「私はルーラー・・・ここの指導権を持つ支配者じゃない。私じゃない」
「凛祢の天使なのに、違う?」
「・・・私みたいかもしれない」
万由里が難しい顔で、静かに考える。
「私も元は、精霊達の霊力を集めた存在、凛祢も同じなら」
「凛祢のような存在か・・・だが同じだからとは言え、同じ能力か?」
「それも分からない、ごめんね、神衣」
「いや、ここがエデンだってことが分かればいい。となると、ここに『私』がいるだろうな」
「それって」
「虚像、偶像、虚栄である、偽物の私であり、真の私・・・出てくる可能性がある、オーディンはむしろ、そちらの手の中から知れない」
「・・・」
難しい顔をする一行、士道が呼びかけてくる。
「彼らを巻き込むことは出来ない、ここはしばらくは様子見だが、警戒はしておこう」
「って、あんたが一番危険なのよ。私達は霊力が、凛祢は一応元ルーラーだけど、あんたはもう、ただの人間よ」
「分かったよ、心配してくれてありがとう、鞠奈」
「べ、別に、あんたが死んだら困るだけよっ」
頬を赤くして、少し微笑む鞠亜。なにげに私の腕に抱きつき、万由里は反対を確保する。
そして静かに登校する中で、私は考える。
私は普通の人間? 違う。
「・・・」
天使凶禍楽園は解除されれば、展開時の時間軸に戻る。ということは、その前の状態に戻る。
ならば私の死は免れないのかも知れないし、もしかすれば回避できるかも知れない。
だが、一番考えるべきは、そんなことではない。
(何故、私の死、その瞬間にこのような事態が起きた?)
そう、それだけだ。それだけは解明しなければいけない。
その後どうなろうが、知ったことではない・・・
「・・・」
鏡の中、遠くからそれはそれを見る。
「・・・お前の答えを聞かせてもらおう、全ての答えを・・・」
その場から去り、静かに別の道を歩む。
ただ静寂な始まりが、いま始まる。
はい、ゲーム編、凛緒ちゃんヒロイン回です。まだ出てねぇぇぇぇ、そして美九に会わせたくねぇぇぇぇ。
すいません、美九ファンすいません。だけどね、あの人さあ、怖いよ、もう何があってもいいやとか言いそうだよ。七罪とかいれば、生きていけるよ。
どうなる神崎神衣? ではこれで、お読みいただきありがとうございます。
鞠亜といちゃいちゃできないから、メインで接しさせます。できれはいいな・・・