彼の望み、願いは何なのか?
無の彼は、全てを無くしても何も思わなかった。
そして彼は結局、変わらなかった。
学園は、万由里は一年の教室で、凛祢は士道と同じ教室なのは変わらず、或守姉妹は私の教室であった。
士道の教室には狂三もいるが、どうも私を殺したことを知らないらしい。
記憶が書き換えられているが、誰が、何のためにしているか不明だ。
(・・・だが)
いまはそれより、目の前の危機である。
「朝作ったの、食べる? 食べるわよね?」
「朝作りました、神衣、食べてくれますね?」
「えっと、私も作ったの。食べてくれるよね?」
「・・・」
鞠奈、鞠亜、凛祢、万由里が各々手作り弁当を差し出して、謎のオーラを放ちながら、私を囲む。
八舞姉妹や折紙はその様子を参考に見ていて、十香は待つように言われて、豪華な食卓を待つ。士道、彼はいま気迫に押され黙り込む。狂三はあらあらと面白そうに見ていた。
「念のために言うけど、全部一度に食べる選択肢はないから」
裁定者からの無慈悲なルールを言われるなか、仕方ないと、
「・・・ここは凛祢のを先に食べさしてくれ、全部食べる。変わりにこれやる」
「「「・・・・・・・・・・・まあ、いいか」」」
「なに渡したの!? なに渡したの!?」
士道の犠牲のおかげで、この場は切り抜けられたが、次は無い気がする。弁当は自分で用意するか。
それでも、鞠亜があーんとハシで食べ物を差し出してきたため、第2Rが始まる。
これは士道の役目のはずだ・・・
その日、凛祢帰還祝いのため、パーティーする話になり、僅かの間に町の探索をすることにした。
鞠奈達は各々各自に動き、静かに考えながら歩く。
「まず死んだところからと思い、来たが・・・何もない」
死んだこと、いや、死んだと思われる場所に来た私。
その距離はどう足掻いても死ぬだろうし、血が出過ぎもあった。
だがそれらしい跡も何もなく、静かに雲を見る。
「・・・なにがどうなっている・・・」
そう思う中、その音を聞く、それにはっとなり、顔を上げた。
「バカな!? デッキ所有者でもない、なにより、この世界で!?」
その音はライダー達に、ミラーモンスターが鏡の世界から出ようとする、または捕食を行う際に、知らせる音。それが辺りに響く。
駆け出す中、私はインカムを掴むが、呼ぶわけにはいかない。
危険と知りながら、私は走る。
ここは前に、凛祢達と共に肝試しに来た場所かと、歩きながら進む。
そして、
「・・・?」
「あっ、パパ♪」
そう、小さな少女が私に駆け寄り、抱きついた来る。
抱える小柄な少女は、どことなく、凛祢に似ていた。
「君は・・・」
「りお? りおはりおだよっ」
五歳くらいの子を抱えながら、満面の笑みを見せられる。
高い高いするようにしていたが、少し疲れたので下ろす。
嬉しそうにしている少女に対して、何故か、凛緒と思う。彼女に触れたからか、そう名前が分かる。
「君は・・・」
「りおね、いまパパのたいせつなものさがしてるの」
「大切な物?」
「うんっ♪ この、えでんをえいぞくさせるために♪」
その言葉に絶句する。つまり永続に我々をこの空間に閉じこめる。そう少女は無垢な笑顔で言う。
「何を言っているんだ? そんなこと」
「しないと、めっ、なんだよ。パパ、このままじゃ、きえちゃうもん」
「・・・」
「りお、いやなの。だから、さがしてるんだ♪」
そう言った途端、側の鏡面からモンスターが現れる。
即座に避け、それを見るが、契約させるモンスターではなく、その辺に放ち、人を襲い、ライダーに狩らせたりするモンスター達。
神崎士郎や神崎優衣が生み出した、ミラーワールドのミラーモンスター達。
「めっ、だよみんなっ。パパをいじめないで」
「・・・まさか、君は」
「それじゃ、りお、いくねっ」
その場から去る凛緒を止めることはできず、ただ見るしかない。
何かがおかしいが、一番は、
「・・・パパ?」
そっちもなんでだろうと思いながら、その様子を見るしかなかった。
そのことを鞠亜達に言えず、みんなで凛祢のお祝いをする席の中、みんなでわいわいと楽しんでいた。
内容はお好み焼きパーティーであり、みんなが楽しそうに過ごす中、隙を見て考える。
消えると凛緒は言った。
消える。それはおそらく・・・
「・・・」
覚悟がいるのだろう、そう思いながら、彼女が言うたいせつなものの検討を考える。
それがなんであるか、私は考える。
やることは決まっている。この世界から抜けだし、精霊を救う。
それ以外に選択肢はない。
そう、決意する。
「・・・と、今頃考えてるだろう」
「ふ~ん、そう・・・」
とある場所で二人は話し合う。
「君はこちら側でいいのか」
「別にいいじゃない、それより、早く探すわよ」
「はーい♪」
凛緒と手を結び歩く彼女を見ながら、静かに時計を見る。
時間が無い、この世界は崩壊が近い。元々、不確定な事態で起きた、イレギュラーであり、完全な力不足。
核が無い結界なぞ、すぐに砕け散る。
「・・・時間は無いか」
そう呟き、闇夜を歩く・・・
翌日、町の公園で、凛緒がいた。
彼女の捜し物は、まだ始まっているようであった。
「凛緒」
「あっ、パパ♪」
「パパ・・・なぜ私はパパだ?」
「? パパはパパだよ」
「・・・凛祢は?」
「ママ? ママはママだよ」
戦慄する理由が増えた。けしてこの子を精霊達に会わせてはいけないと思う。
その後、パパも手伝ってと言われて、その手を握りながら、町を歩く。例えないと知りながらも・・・
「凛緒、凛緒は凛祢に会わないのか?」
「ん? 会って良いの? みんなからは会わない方がいいって言われてるの」
「・・・みんな、か・・・」
他に誰かが凛緒に力を貸している。自分か、または精霊かは知らない。
凛緒は楽しそうに町を巡る中、考える。
「凛緒、楽しいかい?」
「うんっ♪、パ~パといっしょ、パ~パといっしょ♪」
本当に楽しそうな少女に、よしよしと頭を撫でる。
結局、夜まで共に探し回る中、彼女の協力者が現れた。
「・・・鞠奈」
「ああ神衣、凛緒と一緒にいたの、あんただったの」
そう言って、モンスター達を従えた鞠奈が現れ、静かにしていた。
「鞠奈」
「それじゃ、凛緒は私が見てるから、あんたは鞠亜とこにいなさい」
「・・・このことは」
「もう知られてるわ、けど、私はこっち側よ」
その言葉に黙り込み、鞠奈は静かに近づいてくる。
「あんたはどうするの」
「私か?」
「ここならあんたは消えない」
その言葉がどういう意味か、知るつもりは無い。
知られていると考えながら、静かに口を開く前に、
「ここなら、あんたはもう戦わなくていい」
「? 鞠奈」
「私はこっち側だから、話はそれだけ。それじゃあね」
「ばいばい、パパ♪」
手を振る少女と鞠奈を見送りながら、静かにたたずむ。
私には、もう何も出来ないのかと思いながら・・・
「それで、私に言うことはあるか?」
家に帰り、間髪入れず、我が家にいる精霊達に聞く。
万由里はチュッパチャップスをくわえながら、鞠亜は静かにしている。
二人ともなにも言わず、だが、鞠亜は少し考えてから、
「神衣こそ、言うべきことがあるのでは?」
「私のことはいい」
「よくないです」
そう言って、そっと側に近づき、抱きついてくる。
「電脳の私では、こうして触れ合うことはできないことです。ここでならできます、そして・・・貴方を守れます」
「鞠亜」
「・・・自分のことを大切にしてください、それでも選ぶのなら、私は神衣の味方です。私は貴方の鞠亜ですから」
悲しそうに微笑む鞠亜に、静かに近づく万由里は無表情で見つめてくる。
だが、その目は悲しそうだった。
「私は裁定者、例え役目が消えても、私は貴方を見ている・・・貴方が選ぶ、その答えを見る・・・」
「・・・万由里」
「・・・」
そんな会話をしてから、明日は休みかと思い、万由里の提案で、明日は鞠亜とデートするように言われた。
「お、おい」
「いいからする」
そう言われ、私の意見は無視された。
その後、鞠亜と町を巡る中で、凛緒を見つけ、共に町を巡る。
凛緒は捜し物をしながらだが、楽しそうにはしゃぎ、ファミレスでご飯を食べたり、公園でお昼寝したりと、本当に子供のように思えた。
母親のように接する鞠亜にも、私は微笑み、静かに考える。
「鞠亜、悪い。凛祢と会わせる」
「神衣」
そして喜ぶ凛緒に、凛祢と会わせた。
「ママ♪」
「えっ、えぇぇぇぇぇぇ!?」
突然のことにびっくりする凛祢だが、私達の説明で納得して、神崎家に全員が集まりながら、静かにお泊まりと喜ぶ凛緒。
それにみんなが微笑みながら、万由里は、
「それじゃ、お風呂入るわね」
「まゆりおねえちゃん、りおもはいる~」
「ん、分かった」
そう言って、私達に手を振り、去っていく凛緒。鞠亜もまた付いていき、鞠奈と凛祢、私がリビングでお茶を飲む。
「さて、明日で全部終わらすか」
そう私が切り出した。
「・・・終わらすの? 本気?」
「ああ」
そう言って、鞠奈は静かに睨む。その様子はいつものものではない。本気の怒りだった。
「終わるのよ、消えるのよ、全部、全部消えるのよッ。それでもあんたはそれを選択するの!?」
激怒する鞠奈に、凛祢が落ち着くように言うが、
「落ち着く? なにを言っているの園神凛祢? そいつが言っている意味が」
「分かってるッ、そんなの嫌なのは分かってる!!」
凛祢にしては珍しい、大声での非難だった。だが、
「それでも、誰が、なんって言っても変えないんでしょ? 神衣はそう、いつも変わらない・・・何も変えない」
「ああ、変えないよ凛祢」
「・・・神衣のバカ・・・」
「・・・」
鞠奈もなにも言わず、待ってくださいと鞠亜の声に、全員が振り返る。
「パパ♪」
裸の凛緒が抱きついてくる。その髪はまだ濡れていて、そして、
「待ってください、凛緒。まだ拭き終えてません」
「「!?!?!?!!」」
裸、一糸纏わぬ鞠亜もまた、その場に現れた。
二人は驚き、視界に確実に入り、見たであろう私を睨む。
私は終わりを気にしながら、静かに、
「鞠亜、私がいるのに、そのな・・・」
「問題ありません、私は貴方の鞠亜ですから・・・」
そう頬を赤くしながら、凛緒の体を拭く。
そして私は二人に殴られた。
(いや、そんな私はどうしてこうなる・・・)
凛緒の要望で、パパとママと一緒に寝たい。そう言われたので、凛祢と共に眠る。
凛緒を抱きしめながら眠る、凛祢の寝顔を見ながら、静かにその頬に触れた。
「・・・」
静かに目を閉じる。もうすぐ終わる、この安らぎの時間、私の選択肢は決まっている。
「・・・止めないの?」
とある場所に向かって、鞠奈は呟く。
それはなにも言わず、ただ静かに無言を貫く。
「・・・そう、それが答えなの・・・」
そう呟き、背を向ける。
静かに見送り、空を見た。
なにも言わず、ただ全て待つ。
目的は一つ、精霊の救済、それ以上も以下もない。
ここにいればそれは果たされない、なら出ていく。それだけ。
例え終わりが訪れる可能性が高くても変わらない。
何故? そんな選択肢が選ばれるのか。
それが、私だからだ・・・