城戸真司になった者
そして何者にでも無くなり、神崎神衣になった者
無の者の答えは・・・
凛緒はまた捜し物に出かける。この世界、創り出された空間を維持するために、その核を探しに出向く。
私は静かに、それを取り出す。まさかと思うが、私と凛祢の関係から、これしか無い。
そしてその後、私と凛祢は天宮市を巡る。
様々な場所を歩き、静かに二人で時を過ごす。
そんな、静かな時間の中、私と凛祢は共に過ごす。
「神衣、次はどこに行くの?」
「・・・ああ」
夕暮れ時、高台で静かにここに来る。その時、凛祢は静かにそれを見つめながら、私は町を見下ろす。
静かに、そして、
「終わりの時間だ」
「・・・やっぱり、そうなんだね」
「ああ、私の答えは変わらない。この世界を壊し、現実の時間、時の針を動かす」
そう言い、私は凛祢の髪留めを取り出す。それはあの後も尚あり続けた、彼女がいた証である。
これ以外に核はあるかと言えば、無いだろう。
「やっぱりあんたが持ってたのね」
そう言って現れる鞠奈、その背後から、無数のミラーモンスター達が現れる。予測していたが、このような事態になるとは・・・
「鞠奈」
「それを渡しなさい、神衣」
「・・・それはできない」
「!? ふざけんじゃないわよっ」
向かってくるミラーモンスター達を生身で相手する、そんなバカなことをする日が来るとは、思ってもいなかったので苦笑する。
その様子に、万由里も鞠亜も駆けつけた。
だがその様子を見るしかできない。
「どうして、どうして止めないのッ、このままじゃ、こいつは、神衣は死ぬッ」
「それでも私が選ぶ未来はこっちだ」
「ふざけるなッ」
泣き叫ぶように叫ぶ、鞠奈は近づき、髪留めを取ろうとするが、それを阻むが、その時、ふとっ涙を流す鞠奈が視界に入る。
「まり・・・!」
鞠奈は唇を重ね、一瞬驚いた瞬間、髪留めを奪われる。本当に私らしく無い。
涙を流す鞠奈は、静かに、
「消えて欲しくない・・・あんたに消えて欲しくないッ。私は、私達は、五河士道や精霊の霊力で生まれたッ。最初は五河士道のために生まれた・・・だけど、いまは違う!!」
そう言って髪留めを持ち、ミラーモンスター達に守られる鞠奈。
だが、
「・・・それでも私は私の選択を選ぶ」
「!?」
「まりなおねえちゃん」
凛緒が現れる。それに、鞠奈は顔がほころぶ。
後は彼女に渡すだけで、全てが終わる。
「これで・・・あんたはもう」
「・・・どけ」
その瞬間、黄金の光がミラーモンスター達を吹き飛ばす。
空間を振るわせ、現れたそれに、周りは驚き、それを見た。
夕暮れの日が沈む中、それでも輝く黄金の煌めき。
「ゴルト・・・フェニックス・・・」
私のモンスターの姿に、鞠奈が首を振る。
「なん、で・・・ゴルトフェニックスが、カードも無いのに、あんたの言葉を」
「こいつは私と共に戦い、共に消滅する、永劫の我が翼。無限の争いの中で、共にいた、神崎と共に、私と共に消える存在」
腕を組み、その背後に現れるゴルトフェニックス。まるで死すら共に進むと言わんばかりに、私と共にいる。
それに首を振る、泣きながら、だがそれを止めるのは、
「姉さん」
「まり・・・あ・・・」
「・・・これが彼の、彼の決めた、願いなんです」
「・・・どうして」
静かに座り込み、鞠亜は鞠奈を抱きしめる。
静寂を歩く中、凛緒が私を見た。
「どうして? パパ、このままじゃ、ママもみんな」
「消えないさ、そうだろ、ゴルトフェニックス」
その時、ゴルトフェニックスから白いカードが渡される。そのカードは、
「凛祢と凛緒、君達は二人で一つの精霊だ。なら、一枚あれば問題ない」
そう、それは今日、凛祢に聞いていた。共に過ごしたおかげで分かった、凛緒はルーラーであり、私である。
私が持つオーディンの力と、残った自分の力、その二つで生まれた存在。
それを聞きながら、そしてデッキを万由里に渡すように、ゴルトフェニックスに言う。
「・・・神衣」
「これが私の選択だ」
「・・・神崎神衣、貴方の選択は、己の死を受け入れる。それでいいのですか?」
万由里の言葉に、私は首を振る。
「・・・私に願いなぞ、欲望なぞない。あるとすれば、ただ一つ」
星空に手を伸ばし、静かに掴む。
「最後の一人に討ち倒されたとき、いまだ私は過去に、過ちから解放されなかった・・・だが、いまは違う」
無でも、虚像でも、紛い物でも、誰でもない。何でもない。
「私は私、仮面ライダーオーディンッ。抱えきれないほどの希望と言う、願いを叶える者の前に立つ者。そして」
最後に消える者だと言う。
「もう私の戦いは終わった、本来ここにいること事態異常事態だ」
「神崎神衣」
「その名も所詮紛い物」
そう言いながら、髪留めを手に取り、静かに凛祢を見る。
凛祢は悲しそう、しかし微笑みながら涙を流す。
「だが、私の力で誰かを救えるのなら、この願いを叶えたい・・・」
そう、この世界で思えた願い。私の願い。
「その願いは」
「精霊を救い、世界をついでに救う。彼女達を、凛祢、鞠亜、鞠奈、万由里、そして凛緒・・・お前達を救う」
「・・・神衣」
「だが、私に精霊を救うことが出来ないのなら、私は彼奴に、全てを賭ける」
そう呟き、空を見る。
「・・・これが私の選択だ、士道、まだ出会っていない精霊を救い、そして、本当の意味で精霊を救えッ」
町へと叫び、私は髪留めを握りつぶす。
それは、世界の終わり、幻想の終わりであり、凛祢達の叫び、ゴルトフェニックスの咆哮、契約の輝きも消し、静かに、あの瞬間へと戻った・・・
「さようなら、異世界の学者さん♪」
これでいい、例えここで終わろうと、彼奴なら救ってくれる。
そうだ、これで私は、終わりを迎える。
だが、もしも残ると言うのなら、私は・・・
『タイムベント』
それは突然、世界を変えた、私の傷は無くなり、狂三も微笑みから、すぐに驚愕へと変わる。
私はその場から走り、減速から解放された弾丸を避けた。
「なに・・・が」
「・・・」
そこに一人の男がいた。
その男は言う。
「まだ願いは潰えない」
その姿は、私だった。
「これで最後だと言うのなら、戦え」
そして一つのカードが舞い上がる、羽根と共に、私はそれを受け取る。
「・・・そうか」
私は静かに笑い、カードを構える。
いつの間にか私は、オーディンになり、目の前の私は元に姿になって消えていく。
「私はまだ、生き残らなければいけないのか」
そして羽根が狂三達を吹き飛ばし、私はカードからモンスターと精霊を呼び出す。
「神衣!?」
驚く鞠奈、万由里、そして凛祢と凛緒。
その様子に困惑し、顔を歪めて消えていく狂三。そして私は静かに歩く。
「・・・まだ終われないか」
「私達がしたことを考えれば、当然だ」
消えていく私はそう言い座り込み、凛緒が近づく。
「おとうさん」
「ははっ、私はお父さんか・・・」
「・・・」
砂のように消えていくその姿に、私達は静かに見つめる。
「生き残った、お前は、神崎神衣は生き残った。最後の一人、仮面ライダーオーディンとして」
「・・・」
「私はもう何者でもない、なら、お前は私であろうと関係ない。否、私であるのなら残り続けろ、最後まで、最後を越えた、その先まで・・・」
「・・・分かった」
三枚のカードが舞う。無限の欲望を叶えるためにあった、駆け抜けるように戦場に吹いた疾風、守るという信念を燃やした烈火。
その三枚を見ながら、私は静かに思う。
「・・・私は、願いを叶えるために在っていいのだろうか?」
「それはもう、決まっているだろ?」
その言葉に、私は苦笑してオーディンの姿から、神崎神衣へと変わる。
「何故凶禍楽園が作動したのだろうか」
「さあな、単純に許されないからか・・・凛祢が、無意識下で発動させたか。それは私にも分からない・・・」
そう言いながら、静かに考え込む。心の中で何かが消えていく感覚がある。それは目の前の、自分が消えるからだろうか分からない。
「合わせ鏡のように、膨れあがったその望み、叶えるために・・・戦え、最後の一人。仮面ライダー・・・私達の、罪の表徴と共に・・・」
「ああ。さらばだ、もう名もなくなった、愚かな私・・・けして私は忘れない。オーディンとして、忘れない」
「・・・」
「・・・さようなら、おとうさん」
凛緒が頬にキスして、そう微笑む。私は苦笑しながら、静かに、
「後は任せたぞ・・・神崎神衣・・・私の悲願を、たった一つの願いを・・・叶えろ・・・」
消えていく私はそう言い残し、消滅する。
ああそうだな。
「・・・私の望み・・・」
始まりを思い出しながら、私は、生き残った・・・
彼の者は無か、有か。
居て良いのか悪いの。
愚か者か、ただ夢のために駆けた者か。
ただ一つ言えるのは、
まだ戦いは終わらない・・・