その日、俺達は園神家族の買い物に出かけるのだが、
「私、家にいるわ。時崎狂三がどう出るか分からないしね」
「私も、町の方見てるから、気にしなくていい」
そう気を遣われ、親子もとい、私達だけで買い物になる。
五河家、フラコシナスにまだ園神家のことを教えていない。士道はファントムとして凛祢に出会っているため、そのこともある。下手な誤解を与えることはできない。
いまは別の人間名で借りた一軒家に住んでもらっている。実は研究所としていくつもそう言った建物を所持している。
ちなみに、凛緒はパパとママと呼ぶのを止めて欲しいと、頼み込み、渋々、おねえちゃんとおにいちゃんになった。
「まずは衣類か、凛緒、お洋服買うよ」
「うんっ♪。お買い物~お買い物~♪」
「うふふ」
二人に手を握られ、嬉しそうな凛緒。
その様子に微笑みながら、静かに町を歩く。
「さて、凛祢はもういいのか?」
「うん、私の服はもういいよ。次は凛緒のお洋服にしたいし」
「そうか、凛緒の洋服はどうするか」
「あっ、あれ可愛い♪ 凛緒、あれ着る?」
「うんっ♪」
白いワンピースのような可愛らしい物、普段着の物を選び、試着する。
凛祢が着せている中、私は靴も見る。少し甘いなと思いつつも、服に合う靴を購入する。
「あーもう、神衣は凛緒に甘いんだから」
「いいだろ、凛緒、椅子に座りなさい。合うかどうか見るから」
「はーい」
そう言って椅子に座り、靴を履かせる。まるでお姫様に靴を履かせている様子に、凛祢は微笑む。
そして可愛らしいお姫様は、靴を掃き終え、くるりと一回転する。
「えへへ、りお、かわいい?」
首を傾げ、裾を掴む。その様子に、
「「「可愛いよ」」です~っっ♪♪」・・・・・・・・・ん?」えっ?」
なにか人が一人多いため、私と凛祢は振り返る。
そこにいたのは、
「み、美九!?」
「はい、美九さんですよ神衣さんっ。で、この子は誰ですか!? とてもキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥトですっ」
凛祢も見ているが、特に見るのは凛緒であり、凛緒はキョトンと首を傾げて、見ている。
その仕草だけできゃあぁぁぁぁぁぁぁと悲鳴を上げる美九。もうダメだろ美九。
「お姉さんの名前は美九お姉さんですよ~~お名前言えますか~」
「りお? りおはりお、そのがみりおだよっ。みくおねえちゃんっ」
「りおちゃんですねぇぇぇぇぇ、ね、ねぇりおちゃん、お姉ちゃんのおうちに遊びに来ませんか? おこづかいあげますよ、まずは一、いや五万で」
「み、美九待て、落ち着こうか美九」
「ハッ、わ、私としたことが・・・少し反省。神衣さん、すいません、ええっと」
「あっ、私は園神凛祢、凛緒のお姉ちゃんで、神衣の保護者さんの、親戚です」
そう言う話をして、そうですかよろしくです~と手を取り、ぶんぶんと握手する。
「ああ、二人とも可愛いですっ。どうですか!? 神衣さんもこのあと私のおうちに行きませんか!? だ、大丈夫、大丈夫ですから、何も、いえ、紅茶をお出ししますッ」
その様子に危機感しか持てない。大人しくさせるしかないし、目立ち始めている。
正直美九はこれでもアイドルだが、急に真顔になり、
「あっ、もう何が起きても怖くないです」
「何が」
私の方が危機感を持つ。仕方ない、
「あ、美九。俺達、まだ用があるんだ、また今度にしよう。な、凛緒」
「うんっ、またねみくおねえちゃんっ♪」
「はうっ」
美九は満面の凛緒の笑顔に心打たれ、またですよ、約束ですよっ、ぐっひぃひひひと笑い。指切りした。
けして凛緒と二人っきりにしないと心に誓いながら、別れた。
そんな美九の遭遇の中で、これからみんなと顔を合わせた際に、頭を痛める。
だが、
「神衣? どうしたの?」
「ん、いいや・・・何でもないよ凛祢」
高台で野良猫たちと遊ぶ凛緒を見ながら、静かに考える。
そう、
「凛祢」
「ん?」
「十香達と、ちゃんと友達になりたいか?」
その言葉に少し黙り込み、静かに、
「うん、今後こそ、偽りの記憶や、関係じゃない。ちゃんとした友達になりたい」
「・・・なら、叶えるよ。その願い、それがライダーである、私の役目だ」
「・・・うふ、やっぱり、似合わないよ」
凛祢はもうダメと言いながら、肩を振るわせて笑い出す。
オーディン、本来の私の言葉使いは、彼女にとって、謎のツボらしい。
「実際の年齢は長いんだ、見た目年齢が合わないのは当然だ」
肩をすかし、くすくす笑う凛祢に、凛緒が抱きついてくる。
凛緒を受け止めながら、だっこして、凛祢と手を繋いで歩く。
「それじゃ、帰るか」
「うん」
「はーい♪」
こうして私達は帰る。我が家へと・・・
朝日、寒い寒い、早朝、制服に着込む中で、私は気づく。
「これは、マフラー?」
手編みのマフラーらしきそれに、覚えがないが、添えられている紙を見て、黙り込む。
その文字は、
『神衣へ、貴方の鞠亜より。冬は寒いですので、ちゃんとしてください』
それに驚きながら、少し微笑み、それを巻いて登校する。
そして、
「・・・始めよう」
そう呟いた。