早朝、私は何かが焦げたにおいにより、目が覚めて、リビングへと歩く。
「ああ、兄様っ」
「・・・これは」
テーブルの皿の上に、黒こげのトースト。乱雑されている材料を見る限り、フレンチトーストを用意しようとしていたのだろう。
母さんはあらあらと苦笑して、父はむすっと険しい顔をしている。
「朝から騒々しいぞ」
「ご、ごめんなさい・・・お父様・・・」
「全く・・・慣れないことを」
「あっ」
そう言いながら、私は黒こげのパンをガリガリと食べながら、ミルクで押し込む。
それにあわわわと慌てている妹。
「だ、ダメです兄様っ、お腹を壊してしまいます!!」
「気にするな、私の朝食はこれで構わない」
そう言い、ガリガリと食べ続ける中、母は楽しそうに苦笑し、父だけは理解できんと言うが、一口だけ食べて、大学へと出ていく。
妹もまた学園に出向き、私はと言えば、
「今日はお休みですよ母さん、最近少しレポートばかりでは、疲れてしまいますからね」
「そう、それじゃ今日は」
「町を散歩しようと思っていますよ」
「そう、なら暖かくしないとダメよ。いまコートを用意しますね」
「ありがとうございます」
そう会話した後、私は言ったとおり、町へと繰り出す。
町を歩いていると、色々な事件などのニュースが飛び交う。
不正刑事の逮捕、大手の若社長等々、色々だ。
そんな中、ふとっ、足を止めて、喫茶店へと足を運ぶ。
「いらっしゃい」
二十歳くらいの女性がそう言い、私は空いている席に座る。
「ブラック一つを」
「分かりました」
コーヒーを持つ間、後ろから騒ぎ声をしながら入ってくる二人組がいる。
「俺が先だ」
「お前は後にしろ」
「ほら二人とも、ケンカしないっ」
後ろから女性記者のような人に押され、またもう一人女性が微笑みながら、すいませんと店内の客に頭を下げるが、私は気にしない様子だけ見せて、前を見る。
「「いつもの。マネするな」」
「ぷっ」
「ほんっと、二人とも似たもの同士ね」
微笑まれ、呆れられる二人組の男はばつが悪い顔をしながら、一席外して、隣に座る。
「こいつと似ている? 冗談が過ぎるぞ恵里」
「だって蓮ったら、城戸さんと仲良いじゃない」
「全然似てませんって」
「そうだ似てない」
そう言い合っていると、また人が入ってくる。今度は二人組だ。
「令子さん、またお会いしましたね」
「げっ、またかよ北岡さん」
「またっていいだろ? また俺が活躍・・・ん?」
「・・・変なところで会いますね、北岡さん」
「これはこれは、まさか大天才くんと会うなんて」
北岡はそう言い、コーヒーと言ってから隣に座ってくる。
「大天才って、まさか」
「ああ、10歳で大学を飛び級、その後は大学で教授として活動。その発明の数々、大変お世話になってますよっと」
「私としては、貴方が向こう側に来るのが面倒なだけだ。ただでさえ、まだ安全性や保証製ができていないものを、勝手に商品、世に出そうとするのだからね」
そう言う中、ああっといそいそと男は名刺を取り出す。
前に女性が、
「あ、あの、私、OREジャーナリスの記者の桃井令子ですっ。先生の研究は読ませてもらってますっ。今度取材お願いしてもよろしいでしょうかっ」
少し苦笑するもののそれを受け取りながら、
「書いた本はもう古いですよ、今度でいいのなら研究の様子、記事を書いてもらっても良いですよ。内容には口出しすると思いますが」
「は、はいっ」
小さくガッツポーズする様子に、北岡はへえと、
「最近丸くなって来たね」
「貴方が丸くないだけですよ北岡さん、由良さんも、大変でしょう」
「いえ、先生の助手が俺の仕事ですから」
「さすが吾郎ちゃん」
そんな様子の中、コーヒーを飲みながら、私は会計をすませて帰る。
途中で、
「おっと、すいません」
「いやこちらこそ」
男の人とすれ違い、後ろからお帰りお兄ちゃんと言う声を聞きながら歩く。
私は、家へと歩く・・・
「・・・ふう、全く」
「・・・」
母も父もいない家の中で、私は妹を見る。
その周りには黒こげのトーストが山積みだった。
「できもしないことをするなんて、完璧とはほど遠いな」
「・・・すいません」
「・・・ほら」
「えっ」
「作り方、教えるから来なさい」
そう言いながら、兄妹で料理をする。
フレンチトーストのにおいが優しく包む中、できあがりを見て、妹は微笑む。
「できました、兄様のおかげです」
「そうか、なら・・・」
私は静かに、妹の顔を見ながら、
「もういなくてもいいな」
「・・・」
その言葉に黙り込む中、静かに立ち上がり、コートを羽織って、家の外へと歩く。
「待って兄様っ」
玄関のノブを掴んだ瞬間、妹は呼び止める。
「・・・忘れません、けして、ありがとう。兄様・・・」
「・・・」
ドアが開く、光が差し込み、視界を包み込む。
夢は終わりを告げ、少女は目を覚ます。
朝食、母から満点をもらった。
父からもなにも言われないが、これがこの父のほめ方だと、前々から知っている。
その様子を見ながら、休みの日、私は町を歩く。
「そう言えば、初めて作ったのに、どうしてあんなに上手だったのかな?」
そう首を傾げる少女は、少し小腹が空き、喫茶店へと入る。
騒がしいが、楽しげな雰囲気に、また来ようと思う。そんな場所だった。