第4話・白の顔と黒の顔
雨の降る中、私は歩いていた。
「・・・・・・・・・・・・」
濡れているが気にせず歩く。あまり雨に関して意識を向けることはない。
そうして歩いていると、
「っておい、神衣っ」
士道があわてて現れ、おいおいと呆れながらこちらに来る。
鞄を傘代わりにしているが、意味がないだろうにと思う。
「滅茶苦茶濡れてるぞお前っ、急いで帰ろうぜ」
「ああそうだな・・・」
別に構わないのだがと思いながら、彼と共に歩き出そうとしたとき、
「ん?」
「ん、どうした神衣・・・」
士道もそちらをふとっ見てみる。そこに不思議な少女がいた。
ウサギの耳がたれている、フードの少女。
その見た目は可愛らしいが、どこか不思議な、いな、
(精霊だと・・・)
ドラグブラッカーが警告音を鳴らしている。この、片手にウサギのパペットをつけた少女が精霊だと、ドラグブラッカーが言う。
確かに精霊は複数いる。これは空間震が複数あるため分かり切っていたが、まさか空間震無しに出現し、こうして出会うとは思わなかった。
どうするか考える。少女が無害かどうか、見れば分かる。だが精霊として対処するには、自分は情報を多く得すぎている。
士道になぜ精霊と分かった聞かれれば、まさかと思うがオーディンと知られる危険はある。
そう思案していたら、精霊が転んだ。
「お、おいっ」
そう思ったら、士道はすぐに駆け寄り、手をさしのべる。
少女は怯えている様子に、すぐに切り替えた。
この精霊は無害だ。
『二人ともわるいね~~』
手元から落ちたパペット、士道がそれを渡すと、少女が前に出すようにしてしゃべり出す。
その様子を観察して、すぐに察する。この場合は前に出るかと腹をくくる。
「別に良いよ、二人とも、問題ないね?」
『うんっ、よしのん達は問題ないよお兄さん~』
そう言いながら、私は鞄から折り畳み傘を取り出す。
「雨に濡れるとあれだ、使うといいよ」
『えっ、いいの~? よしのん達はいいけど、お兄さん達』
「俺達の家はすぐそこだ。それにもう濡れているから問題ない」
そう言い、士道がなにしてるんだと言う顔をしているが無視して、片手で開けるように教えながら、少女達に別れを告げる。
「お前、傘持ってたのか・・・」
「雨に濡れると、少しな」
そう言いながら、傘を少し珍しそうに見ている少女。それを背にして走る二人。
「とにかく急ぐぞっ、琴里に怒られるっ」
「俺は問題ないな」
「お前も来いよ、たまには夕飯食いにっ。琴里も喜ぶしな」
「考えておくよ」
そして後ろを気にしつつ、考える。
(きっかけは作った、うまくしろよ士道)
いずれ出会うであろう出会いに、少しイベントを混ぜただろうと考えながら、家へと駆け込むのであった。
『神衣へ SOSッ、十香が家に泊まるらしいっ。頼む神衣っ、しばらく家にいてくれっ』
そんなメールを見ながら、私はシャワーを浴び終えて、考え込む。
ここはいまミラーワールド。だが、通話できるようにしておいた。
まあ、居場所などの探知など、都合良くするのには骨が折れたが、
「琴里」
『神衣兄、士道のことは無視して。女性慣れしないといけないの』
「やはり精霊は複数いるのか」
『さすができるお兄ちゃん、わかってるのね』
彼女の中での自分と士道の評価は分かっている。
大切で、大好きな、ダメダメなお兄ちゃんっ♪♪
格好いいっ、素敵っ、自慢できる理想の神衣お兄ちゃんっ♪♪
後者は本人が言って、前者は自己判断。まあ、本人に言えば否定するだろう。
そんなことを思いつつ、次の精霊は誰だろうなと思う。
「そう言えば、恋愛させるのが条件なのは知っているが、どういうレベルで条件を満たすんだ?」
『ん? ああ言ってなかったわね。簡単よ、キスしていいと思われればいいの、キスすれば霊力は封印できるわ』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
つまり士道はあの時、十香とキスしていたということか。霊装や天使は霊力でできていたから、封印後消滅、または維持できずに消えたと思っていたが、
(キスしてあれか・・・士道、お前っていう奴は・・・)
少々思うことがあるが、この際、士道の人柄など捨て置くかとすぐに切り替えた。
士道が外道の道を進もうと、士道が背中から刺されたり、隔離された空間に幽閉されようと、研究に支障がなければいい。
「はあ、他に精霊いるのに、キスしないと封印できない術、どうにかできないのかな琴里? 友人が外道になるのは、少々目に余る」
『仕方ないわこれはね、他に術があるなら・・・』
少し声のトーンが変わる。琴里自身も嫌だが仕方ないと割り切っているのだろう。ならばこれ以上は何も言えない。
だが問題は十香だろう。彼女はキスの意味は知らなくとも、嫌がる可能性が高い。
彼女のようなタイプもまた、独占欲が強い。あれはひどかった、デッキ渡したらいきなりあれだ。当時の我々もそうだが、彼女たちもたいがいだった。
女というものは男よりもそう言ったものが怖い。いま現状の感想だ。
「わかったよ琴里、それと士道にはがんばれと伝えてくれ。俺はこの件には、士道用真っ黒ノートのものを琴里に提供する程度はするよ」
『なにそれっ!? 真っ黒ノートってなにっ!?』
琴里も驚いて聞き返す。別にあれだよ、五河家両親からもらったり、過ごしたりして貯めに貯めた、真っ黒な歴史書だよと言う。
とたん、わなわなと声が震え出す琴里。
『お、お兄ちゃんっ!? それって私は含まれてないわよねっ。ねえ答えてっ』
「安心しろ、妹のはばらまかない」
『それって手元にあるってことよねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ』
電話は切っておこう。真っ黒ノート、五河兄妹のあんな写真やこんな写真。別に変なのはない、子供だから仕方ない写真ばかりだし、親公認だ。
琴里のは別にばらまく気はない。というより、俺と一緒に寝てたりとか言う写真、俺にもダメージがあると・・・
「切り替えか・・・俺も私も、切り替えは大事だな」
私は目頭を押さえ、首を振る。
切り替えなければいけない。現状精霊の出現は感知されていないところを見ると、報告するわけにはいかない。
ならしばらくは静観するとしよう。
「さあ、切り替えだ・・・琴里に渡す、士道の黒歴史写真はっと」
ある写真を琴里に渡す、わなわな震えている琴里。つまり自分もこれレベルが手元にあると知り、その日はお兄ちゃんと猫なで声で話しかけられたが、揺るがない。
琴里には悪いが、俺が五河兄妹で、立場が上なのだ。俺に勝てるのは果たして誰だ?
こんな日々の中、十香との同棲生活を始める友人に冥福を祈ろう。
いまはそんな体制で、精霊と士道を観察するのであった。
一人称俺時は神崎神衣。
一人称私時は、オーディン。
どちらも彼であり、どちらも彼ではない。
・・・駄文作者なのに設定だけはあるな・・・
これからもよろしくお願いします。