まず色々あった。
琴里の様々なトラップの中、士道の精神はかなり傷付いた。
だが気にすることはない。私には関係ないことだ。
そしていま、地下シェルターへ避難している。
「神衣、くうかんしん? ってのはなんだ?」
十香を連れて避難した神衣。十香の問いかけにどうするかしばらく考え込む。
だが、彼女は知るべきだろうと思い、ここに士道がいないことを含め、話さなければいけない。
いな、知らなければいけない。
「いいか十香、空間震って言うものは・・・」
精霊がこの世界で来る際に起こす、大爆発のこと。
士道は唯一、精霊達のそれを止めることができる能力を持ち、十香を助け出した。
そしていま、十香と同じような子を助けるために、精霊のもとにいることを、周りを気にしながら説明した。
「・・・・・」
それを黙って聞いていた十香。
しばらく考え込み、ベンチに座っていたが、立ち上がろうとするので止める。
「士道のもとに行くなら、答えて欲しいことがある」
「・・・なんだ」
難しい顔をする十香に対して、ただ行きたい、そうしたいだけではいけない。
彼女たちは、覚悟を決めて生きなければいけない。
「いいか、いま士道は昔の十香、プリンセスと呼ばれていた頃の君に会いに出向いているようなものだ。そんなときに君が現れたら、当時の君はどうした?」
「・・・・・・敵意を向けた」
弱々しく呟く十香、周りの人気だけ消しておく。
何となく近づかない、何となく近寄りたくないと言う感覚を張る。まあミラーワールド内でドラグブラッカーやゴルトフェニックスが威嚇させたりと応用である。
とりあえず、十香の手を握ったまま、その手を強く掴む。
「いいか、君は士道を大切にしているが、士道にとって、精霊は全員助けたいんだ。君だけじゃない、わかるか言いたいこと」
「・・・・・・・」
黙ったままの十香。それでも十香は、
「それでも、シドーのもとに出向きたい。シドーを手助けしたい」
「邪魔になったらどうする?」
「ちゃんと責任は取る」
その言葉を聞き、ため息をつく。これは無理だと考え、連れ出すしかない。
目を離せば十香は一人で進むだろう。ならば手元に置こう。
十香を連れて、ハッキングでシェルターを開けて進む。
「場所は分かるか・・・いや、ASTがいればわかるか」
何度か琴里に連絡を飛ばすが、いまだ応答がない。こういった事態は考え物だなと思いながら、こっちだと言う十香。
「なぜだ」
「こっちからシドーのにおいがするっ」
そんな会話の中、何度も連絡入れているが反応はない。
そしてやはり建物の前に、ASTが待機している。どうやら士道達は中だろうと、今度は普通に鍵を開けた。どうやって? ドラグブラッカーに鍵開けさせただけだ。彼奴は器用で助かる。
中に入った後は、十香の勘に任せる。そうして建物、デパートの中を歩く。
暗闇の中、遊戯道具が置いてあるおもちゃコーナーだった。ジャングルジムのようなおもちゃの上で遊ぶ精霊。
その時、バランスを崩して、士道に倒れたとき、見てしまった。
間違いなく、二人はキスしているのを、
(これならば・・・いや)
彼女はどういった精霊であるか知る私としては、これは意味のないと判断。
いま一番まずいのは、
「シドーッ」
怒りに満ちている、十香だった。
「十香っ、神衣!? どうしてここに」
「シドーが心配で、神衣に頼んで無理に連れてきてもらったんだッ。お前の大事なことは、女とイチャイチャすることかッ!!?」
十香、話を聞いてたか? 私は仲良くなるために話したりしていると言ったはずだぞと思いながら、十香を落ち着かせる。
士道も焦るが、精霊の子がこちらに気づく。
『あれれ~傘のお兄さんじゃないっ? お兄さんもよしのん達に会いに来たの?』
「少しね、けどお話は少し待ってね」
そう優しく微笑み、二人の頭を撫でる。
精霊の子はウサギ以外びくっと振るえたが、霊力などの拒絶がないので安心する。
士道へと怒りをあらわにする十香。それに精霊はふむふむと考え込んでいた。
『そ~い~ことねっ♪』
その後、精霊の子は十香を挑発するようなことを言う。待って欲しいが、十香を落ち着かせようと、声をかけるが、彼女は吼えた。
「にゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
その時、ウサギの子を掴み、それに話しかけている。それに少しばかり焦る。
「十香待てっ」
「ふえっ」
精霊の少女から声が響き、そしてウサギが彼女から離れた瞬間、周りの温度が消えた。
それにまずいと思い、だがそれは、精霊の叫びでかき消された。
「・・・はあ」
その後、ハーミットと言われた精霊の子は、霊力を暴走させてロストした。
十香の方も精神が不安定になり、すまないと私に言い、部屋に閉じこもる。
判断ミスしてしまったかと思いながら、司令席に座る琴里の様子を見ていた。
「私達の方も失策ね・・・カム兄から連絡来てるのに気づかなかった」
「いや、俺の方も問題だった。十香の方は俺から話をしよう、頭が冷めて、話し合えるはずだ」
「お願い、それと」
琴里はモニターを操作して、精霊、ハーミットこと、よしのんを見せている。
「カム兄はなにかわかるように振る舞ってたけど、なにかあるの?」
「? まさか気づいてないのか?」
その言葉に、琴里達は驚き、士道は前に出る。
「気づいていないって」
「士道の封印ができなかったことだ」
「それは」
話によると、そこそこ話は出来ていたし、好感度も見た限り高い。封印可能だろうと思われていたが、結果はできていない。
それに頭を痛めるフラクシナスの面々だが、神衣だけはその理由はわかる。
「彼女、彼女達は二重人格だ」
「!!?」
士道達は驚愕し、令音が前に出て、静かに見つめてくる。
「君はどうしてそう思う?」
「彼女は自分のことを、達やらと言う言葉を表していたし、ウサギの子を前にしていたからね。もしかしたらと思って接したら、当たりだったんだ」
それに全員が驚きながら、令音は話を聞き、ふむと納得する。
「となると、スキャン結果は、精霊本人ではなく、別の人格の好感度だったということか・・・そうなると、封印できなかったのにも納得できる」
「おそらく、よしのんが彼女の対人恐怖を和らげている意識だ。もう一人の彼女と会話しなければ、何度デートしても意味はないよ」
士道はそれを言われ、黙り込みながらこちらを見ている。
「どうした?」
まるで悔しいと言う、そんな視線であった。これはまずいなと思い、早急に決着をつけなければと話をさせた。
「いや、神衣が傘貸してくれたおかげで、話はスムーズに進んで助かったんだ。なのに俺は、そんなことに気づかなかった」
「そうか、で、だからなんだ」
「だからって」
何にショックを受けているんだかと呆れながら、私は静かに告げる。
「お前は士道、五河士道だ。神崎神衣ではない、俺と同じスペックで物事を推し量ることも成すことはできない」
だがなと、はっきりと告げる。
「だが逆に、俺は五河士道ではない。どんなに行動しても、現時点で精霊の安全を確保することができるのは、五河士道、お前だけだ」
「!!?」
士道は驚き、その肩を掴む。
はっきり顔を見ながら、檄を飛ばす。
「お前にしか本当の意味で精霊を救えない、ここにいるもの達の意志や思いを背負って、いまここにいるんじゃないのか?」
「神衣・・・」
「十香は任せろ、お前はいま泣いてる精霊、いや、あの子のために動け」
それだけ告げると、つきものが無くなった顔の士道。それによしと納得して、十香のもとに出向く。
琴里もうれしそうに微笑む中、令音だけは静かにこちらを見ていた。
しばらく時間は進み、やっと十香は五河家の部屋、借りている部屋に私を入れてくれた。
「すまぬ・・・」
子犬のようにしょんぼりしている十香。それに私が選ぶ言葉は決まっていた。
「なにに対してだ」
それにより話は変わる。
十香はしばらく黙り込みながら、考え、答えを出す。
「私はシドーに助けてもらった、救ってもらった。だからシドーは大切で、大事だ」
そう優しい記憶を思い出す十香だが、すぐに顔を曇らせた。
「だがシドーが他の女と、その、キスしていたら、全て忘れていた。神衣が言ったように、昔の私を救うように、他の精霊を助けようとしていたシドーを裏切った、お前を裏切った」
そう言いながら、頭を下げた十香。
「私はシドーは大事だ、精霊を救う、私を否定しないシドーが大事だっ。だがシドーは優しい、他の精霊にも同じ言葉を言う、私はそれがうれしい。なのに、それをしているところを邪魔した」
そう言い、顔を曇らせながら、私の手を握る。
それはただの少女の強さだった。
「私はずるい、自分だけ救われていいはずないのに・・・他の者を救おうとするシドーを、お前達を邪魔した・・・」
「・・・」
それを聞いてから、頭を撫でる。
大人しくなる十香に対して、私が言うことは一つだ。
「もう覚悟はできたか?」
「かくご・・・」
「士道が今後も、精霊、他の子と仲良くなるぞ」
「・・・」
少し考え込む十香。だが、
「神衣も、私達はこの世界にいていいか?」
「当たり前だ」
そんなものを決めていいほど偉くないし、そんなものいたら、それこそいるべきではないのではないかと思う。
少なくとも、精霊の力を私欲に考えている、もしくばこの事案を利用しようとしているもの達よりも、彼女たちはこの世界にいていい存在だ。
そう思いながら、その頭を撫でる。うれしそうにしている十香に、優しく微笑む。
「それじゃ、もう曇るのはやめろよ」
「うむっ、わかったのだっ」
いつもの笑顔の十香、共に部屋を降りていく。
そこに精霊、ハーミットと士道が手を取り、仲良くしていた。
(・・・いや)
一瞬まずいかと思ったが、十香は怯えるハーミットに対して、
「お前はこの前の、すまないっ」
「ふえっ」
急に謝る十香に、ハーミットは驚く。
士道も唖然になるが、私に気づき、ああとどこか納得する。
「この前はお前を怯えさせた、すまない。シドーは私にとって大事だったからと言って、お前に八つ当たりしていいはずがなかった。ほんとにすまない」
「い、いえ・・・・・・も、もう、いい、です・・・・・・・」
怯えながらだが、彼女、四糸乃は名前を言ったりと、十香と話をする。
どうやらこの前の騒ぎで、よしのんがいなくなったと知り、十香が飛び出したこと以外問題は起きなかった。
「俺が追いかけるから、お前は任せたぞっ」
「お、おうっ」
十香は数日間だけで、だいぶ人脈を広げていたらしく、色々な人に声をかけていた。少しばかり心労が募るが、いまは無視するしかない。
なぜならば、ドラグブラッカーが危険を知らせてきた。
ドラグブラッカーはいま士道の警護回しているが、そのドラグブラッカーが危険警報を伝えてくる事態。想定していなかった。
十香はゴルトフェニックスに任せ、急いで移動。ミラーワールドを通り、それを見たのだった。
「なん、だと・・・」
「・・・」
士道が何故か、鳶一折紙の部屋にいて、メイド姿の鳶一が、ありとあらゆる危険薬品(命には関わらない、分量誤ったら知らないが)を無表情で煮込んでいた。
それの側に湯飲みがあるが、盛るレベルではなくそのものを出す気らしい。
私は過去の戦い、独占欲が高い女性の戦士達を思い出す。うん、その時の彼女達、そのものである。
彼女にデッキ渡したら、士道の未来は闇に閉ざされる。よかったな、この世界で私はデッキを作り、ばらまく気はない。まああったら鳶一に渡すな、これは役に立ちそうだからな。
「と、さすがにどう助け船出すか・・・」
ミラーワールド内で監視しているからとはいえ、やれることは限られる。
仕方ないと思い、鳶一が目を離したら、私は鳳凰召錫ゴルトバイザーを取り出し、カードを使う。
『フリーズベント』
中身を凍らせて、飲める量を制限する。器ごとだから、氷として浮かんだりしない。士道が一気飲みした場合、飲むのはせいぜい30か20程度。できればすぐに人目に気づかれずに器を捨てれば、残りはこちらで処理しよう。
かなり強引に、士道の飲む部分、視界で見える範囲以外、完全凍結させたが、気づいたりしないことを祈ろう。気づかない方がおかしいが、
「なぜ私はこんな希望論に賭けなければいけないんだ・・・」
だがあの量を飲めば士道は死ぬ。リスクは高いが、飲む量を抑えるために一部完全凍結した。フリーズベントは凍らせるが冷たくない。だが凍り付いた液体に気づかれたらと冷や冷やする。
士道も飲み物を見て冷や冷やしている。当たり前だ、だが安心しろ、見た目より飲む量は少ない。飲め。
「い、いただきますっ」
そう言って飲み、よくやった、すぐに放り捨てた。
私はすぐにそれを回収、凍り付いた中身はミラーワールドの鳶一の部屋のゴミ箱へ捨てた。
鳶一、変なおと立ててるぞ。フリーズベントの効果消えたら、変な音立ててるぞ。
そんなに量を飲んでいないはずだが、もう気にしてないなあれは、あと鳶一がなぜか馬乗りになっている。
もうバレていいから、ドラグブラッカー放って、始末した方がいいか?
そうこうしてたら、警報が鳴り響く。空間震、どうやら正面場らしい。
鳶一が出ていき、私もミラーワールドを通って、外に出よう。
『ガアァァァァァァァァァァァァ』
「ドラグブラッカー?」
なぜかドラグブラッカーは私を止めた。なんだと後ろを見る。
「・・・」
なぜか士道がトラップに引っかかり、部屋から出られずにいる。
そのトラップ、外からの侵入者と言うより、中に入った者を逃がさない作り、あれは見たことがある。うん、独占欲の戦士達が設置していた。
「・・・士道」
神崎、私達の罪は、かなり深いらしい。覚悟していたものとは違う方向で・・・
時々、この人と原作のオーディンの性格が違うのは、身体は彼のですが、動かしていたのは完全に神崎士郎だったという設定です。
その上、神崎神衣として普通に過ごしていたこともあり、心境が少しブレたりすることもあります。
それでは、お読みいただきありがとうございます。