私は士道をとりもちから解放させた。むろん、気づかれずに動いた。
町は避難済みであり、人気はなく、辺りは寒く、凍結している場所まである。
そう言えば彼女は氷を操っていた。となるとこれは彼女の暴走だ。
「・・・」
しばし私は静観した。一度は大人しくなりかけた精霊に、ASTの攻撃で本格的な攻撃へと変わり始める精霊。
十香が一時的に霊装らしきものを纏い、士道と共に彼女を守ると、ASTへと向かっていった。
そして士道。彼は氷の竜巻の中、無謀にも突っ込むらしい。
確か、彼は風穴が空いても生き返っていた。絶命していた傷だ、問題ないだろう。
だが、用心しておこう。
『ガードベント』
「!?」
『これを使え、五河士道』
私はゴルトシールドを士道に渡し、それを見下ろす。いまの私の姿は仮面ライダーオーディン。士道は警戒するように盾を見る。
『私の目的は精霊の研究だ。私を利用しろ、私は君を利用する』
「・・・あんたは」
『私は君の味方ではないが、精霊の死は間違った選択肢と認識している。だからこそ、ASTは私の敵であり、精霊を生かそう、保護しようとする君を利用する。これ以上話をしている暇はないが?』
それに深く考えるが、耳のインカムに手を当てる。その様子では琴里にいまは無視するしかないなど言われているのだろうか。
「わかった、この盾借りるよ」
『賢明な判断だ』
覚悟を決めて、盾を構え、氷の嵐へと走り出す士道。
私の次の行動は決まっている。
『久しぶりの戦いか』
本格的なものではないにしても、やることはかわらない。
オーディンは静かに、AST達が空を駆けている様子を見ながら、移動する。
僅かに封印がゆるんだのか、霊装を纏う十香。それと戦うASTの間に、
『アドベント』
暗黒龍ドラグブラッカーが間に入り、その瞬間、何人かの隊員を撃墜する。
すぐに戦いが止まり、間に入った私に視線が集まる。
「あなたは」
白い髪、鳶一折紙がこちらを見て呟くが、それに静かに、
『我が名は仮面ライダーオーディン、精霊を、世界の心理を探求する者』
黒い龍がとぐろを巻き、精霊十香を守るように側にいて、私の側に鳳凰召錫ゴルトバイザーが控えている。
腕を組み、羽根をまき散らしながら浮遊する私に銃口を向けているが、彼女たちは、足りなかった。
『私を倒せる者は、最後の一人のみだ』
彼女たちには意味が分からないだろう言葉を言いながら、静かに告げる。
『さあ戦おう、絶望しろ、戦士の資格無きもの達よ』
『トリックベント』
私が何人も増えて、それと共にドラグブラッカーも隊員達へと牙を向けて飛翔。
戦いが始まる。
『ストライクベント』『ソードベント』『ガードベント』
私はドラグブラッカーの武装を一つずつ呼び出し、迎撃に入る。
はっきり言おう、彼女たちは足りない。決定的に、圧倒的に足りない。
瞬間移動に黄金の羽根による衝撃波など、ファイナルベントはむしろ殺してしまうために使用できないが、ドラグブラッカーは銃器を無視して蹂躙していた。
「なんなのあれ・・・」
琴里を始め、フラクシナスのメンバーは戦慄していた。
精霊十香は一時的に霊力を取り戻して、ASTと戦っていたところに、オーディンが現れた。仮面ライダーオーディン、精霊、世界の心理を研究する者と名乗り上げてだ。
そのオーディンが、ベルトからカードを取り出し、杖にセットした瞬間、複数に増えた。それだけでなく、各々が、黒い龍の身体を模した武器や防具を構え、戦い始めているが、それは必要か?と思うほど、蹂躙していた。
「スキャン結果はっ!?」
「はっ、はいっ。スキャン結果は、未知のエネルギーとしか言い様がなく、顕現装置ではないことは確かですっ」
「顕現装置じゃないですってっ!? 精霊と同じ、霊力はっ!?」
「それもなく、全く違う種類ですっ。ですがあの黒い龍は、封印前の精霊、もしくばそれ以上のエネルギーを内包してますっ」
その言葉に戦慄する。なぜいままでこのような存在が表に出てこなかった?
いまになってなぜ出てきた? そう考える琴里は苦々しく飴を噛む。
いまは味方のように戦うが、敵に回る恐れのあるそれに、楽観視できない。
「けどいまは味方、悔しいけどこのまま静観っ。出来る限りデータを取りなさいッ、少しも動きを取り逃したりしないでっ。辺りにもなにしているか分からない上、最大限の視野で戦場を監視っ。もちろん、士道の方にもねっ」
かなり滅茶苦茶だが、それくらい相手がやばい。
すでに何人か打ち倒しているそれは、全く焦り無く、ASTを見下ろしていた。
ドラグブラッカーが顕現装置のバリアーごと身体を噛み、装甲だけ壊して、その辺に捨てる。
ストライクで砕き、ソードで斬り、ガードで建物へと押し潰し、羽根で落とす。
弱すぎて話にもならない。私はそう評価しながら、鳶一折紙を感じ取り、瞬間移動で避けた。
『この程度で私に、愚かな』
その瞬間、周りの羽根が鳶一折紙の装甲を粉々に砕く。
顔を歪めるが、武器は死守し、いまだ戦うが、レーザーソードのようなものを片腕で防ぎながら、鳶一折紙を見る。
『やはり足りない』
「!?」
『お前達ASTに戦士としての資格は足りなさすぎるッ、見ていて不愉快極まりないッ』
ああそうだ。足りない、圧倒的に足りない。
それにドラグブラッカーも賛同するように吼えて、尾で叩ききる。
「私達が戦士ではない・・・」
明らかに怒りを見せるが、足りない。
『貴様達の目的は空間震を止めることだッ、精霊を殺すことではないッ』
「精霊がいなくなれば空間震は起きないッ、だからこそ」
『・・・やはり愚かだッ』
精霊を倒したいのは、お前達が精霊を憎んでいるだけだろう。
精霊を倒したいのは、それにより外交を有利に進めたいだけだろう。
もしも本当に考えているのなら、世界で戦力を割ったりしない。
なにより、
『精霊の中には敵意がない者がいた、貴様達はそれにも攻撃を向けた。結果はどうだ? この前のプリンセスで、気づいて欲しいが』
そうだ、敵意無い者にも刃を向け、牙を向けるきっかけを作った。
あのままならば町や避難した民間人に被害も出ていただろう。そしてその時の十香は気にもとめない。
そうだ、精霊全部を敵に回すということはそういうこと、否が応にも被害を出す。そこが間違っている。
世界のためと言って被害を拡大する。世界のためと言うが、
『所詮私情にかられたお前達に、何を語ろうと意味がない・・・』
彼女たちは精霊が憎いだけだ。世界を守ることなぞ二の次だ。
そうだ、もしも精霊の被害を無くしたいのなら、精霊がなんなのか調べるべきなのだ。
十香は話をしたら、協力の姿勢だ。そしていまの精霊もこの事態をよしとしないだろう。
そして彼女達の話では、自分の意志でこの世界に来ていない。それは何を意味するか、きっと話しても理解しないし、消されるだろう。
それを考えながら、思い返す。数々の戦士達を。
『お前達は足りない、戦士としての覚悟、己の願いを叶える覚悟が足りないッ』
死にたくないから戦い、苛々するから戦い、英雄になりたいから戦い、運命を変えたいから戦い、愛する者の為に戦い、犠牲の戦いを止めたいために戦い。
他にもたった一つの願いのために、そのために戦う戦士達。
そうか、自分の中にある感情に気づく。
これは怒り、彼らのように戦士として戦っている気になっている彼女たちに、怒りを覚えていたのだ。
口にする世界のためにと言いながら、本当の意味で世界を救う気なんてない彼女たちに私は、
『消えろ・・・お前達には戦いの場にいる資格すらないッ』
王蛇、これが苛々かと聞きたくなる感情に支配されていた。
『フリーズベント』
多くの者達が凍り付き、動きを止める。ストライクを持つオーディンの武器、ドラグクローに黒い炎が灯り、赤い眼光が輝く。
『消えろ』
放たれる拳は炎と共に、ドラグブラッカーが纏い、敵を一掃する。
『私を倒せる者は最後の一人、仮面ライダー龍騎かナイト、どちらか一人のみだッ』
空が晴れた。太陽光が一つの場所を照らす、どうやら封印は成功したらしい。
すぐに十香のもとに移動、そして彼女たちのもとに移動する。
そこには案の定、霊装が無くなり裸になった精霊、いや、四糸乃がいたため、布を取り出し、かけてあげた。
「シドー」
「十香っ、それに・・・」
ケガはなく、ゴルトシールドは鏡の様に粉々に消えた。
それに士道は険しい顔のまま、だが、
「助かりました、あの盾頑丈で・・・」
『礼はいい、私を利用しろ、私は君を利用する』
そう言いながら、ドラグブラッカーが四糸乃を見る。びっくりしながら、その頭部を撫でている。ドラグブラッカーはなにも言わず、目を細めている。
「あんたの目的はなんなんだ・・・ラタトスクみたいに、精霊の保護か?」
『私は研究者だ、精霊がなんなのか知りたいだけだ』
そう言いながら、その場を去ろうとする。その前に、
『私はただ君を利用する者、君は私を利用する。いまの関係はそれでいい、それ以上を求めるな、頼るな、戦え、最後の時が来ても尚戦え。精霊のため、己の願いのために、戦え五河士道』
そう言いながら、彼らに背を向けて、
『最後まで生き残れ、精霊のためにも、自分のためにも、戦え、本当の意味で世界のために戦うのなら、覚悟を決めて戦え』
「まっ」
『行くぞ、暗黒龍ドラグブラッカー』
そう告げて光りと共に去るオーディン。
その言葉を胸にし、士道はその光りを見つめる。
(オーディン・・・あんたは敵なのか、味方なのか・・・)
そんな疑問を持ちながら、彼らもまたその場から消えるのであった。
ミラーワールドの研究室、四糸乃の天使により生み出された氷を解析すると共に、顕現装置もまた調べる。
十香のエネルギーの流れ、士道の身体にも宿る力を調べる。
「そうか、ゴルトフェニックス。士道の警護ご苦労」
そう言い、黄金の不死鳥に告げておく。
盾を渡しておきながら、念のために監視していた。おかげで分かった。
士道の身体には、再生能力、いや、精霊の力を使用する能力がある。
「・・・封印? 略奪の間違いではないのか?」
やはり何かがかみ合っていない世界。士道の中に封印する、精霊の力。ラタトスクはどうやら信用できないと判断する。
琴里には悪いが、やはり正体を隠しておく必要はあるようだ。
此度の件で、士道の中には、三人の霊力があるのは分かった。それだけでいい。
「・・・タイムベント」
あるカプセルを見つめる。その中にあるのは一枚のカード、我々の研究の鍵となったカードが浮遊していた・・・
タイムベント、こいつをどう料理すればいい・・・
少なくてもカプセルから取り出せば消滅します。
彼の考えでは、オーディンは第3戦力としてしばらくは静観する気です。そのために着々と準備してます。油断も慢心もせず、最も最良と思われることをしてます。
ゴルトフェニックス、悪いが君は強すぎる。そうそう出番は監視だ。
オーディンなのに、使うカードがリュウガのばかり、仕方ないんだ。瞬間移動とか能力無しでも戦える。よく勝てたなナイト。
それでは、お読みいただきありがとうございます。