賢者の孫inオリ主   作:じゃこ卸

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前回までのあらすじ

クレント、アールスハイド王都に着く

待ち合わせ先でユーリと合流、ともに昼食をとる

王都を散策し雑談の中で意図せずユーリにクレントの後遺症(TS)バレ


8/25 1部修正しました


.2

 陽も落ちかけすっかり人の行き来もまばらになった頃、

お互いに問いかけを投げたまましばしの沈黙。

その静謐を破ったのは……

 

「えーとぉ、クレント君、さっき私が言った事本当なのぉ?」

 

「今のなし、っていっても実際に変わったところを見られれば結局は一緒だし、

 というか院長、話を通してないってそれはどうなんだ?」

 

「なんというか、そうねぇここ1年で物凄い密度の濃い時間を

 過ごしてる気がしてきちゃったわぁ……

 その、クレント君?君さえ良ければなんだけれど、一度そのぉ、

 明日の朝だったかしらぁ

 女の子になったトコ見せてもらってもいいかなぁ?」

 

「別に減るものでもないし構わないけど、

 異質というか気味が悪かったりはしない物かな?」

 

「君とあって少ない時間で多少話はしたけどぉ、割と今更かなぁ。

 もう君なら何でもありな気がしてきたしぃ」

 

なんだかかなり微妙な評価を頂戴した気がした。

 

「とりあえず、往来でする話でもないし、

 陽も暮れてそろそろ宿に戻るのにも良い頃合いだと思うのだけどどうかな?」

 

「そうねぇ、あぁそうそう、ウチに戻ったらちょっと一緒に来てもらっていいかなぁ?

 両親が挨拶したいっていってたからぁ」

 

「うん、そういう事ならこちらからお願いしたいところかな、一宿のお世話になるわけだし

 後、院長はどういう説明をしたのかというのを是非伺いたい」

 

「あははぁ……うん、その件については聞いておいた方がいいかもねぇ……」

 

 確認したい事柄もできたところで、今日の宿泊先であるカールトンホテルへ到着。

ホテルの玄関についた頃にはもう陽も落ちきっていた。

ロビー奥の角席で待っていて欲しいといわれ席を外したユーリを待つこと少しの間

ユーリとその両親と思われる男女がこちらに向かって歩いて来た。

 

「こんばんわ、私は当ホテルの支配人のリンド=カールトン

 で、こちらはうちの家内だ、娘のユーリともどもどうぞよろしく」

 

「一晩お世話になります、クレント=マーサリーと申します

 今日明日と色々と厄介をかけますとは思いますがよろしくお願いいたします」

 

「ふむ、ヒュロドス院長から聞いていた話とはだいぶ違った印象を受けるが、

 いや失礼、悪い意味ではないんだ」

 

「院長から聞いたという印象ですか、その話も気になりますが、

 一つ質問をしてもよろしいですか?」

 

「うん、質問の件は先ほどユーリから聞いたよ、そうだねぇまずは、

 当院で養っている子を王都の高等魔法学院の説明会に送り出したい、

 ついてはそちらのご息女も今年学院受験されるとのことなので、

 これを機に当院の養い子に王都見学をさせてあげたいので協力して頂きたい、

 と依頼を受けてね」

 

 

「はぁ……」

 

 

「こちらとしてはヒュロドス女史、君のとこの院長先生には結構な借りがあってね

 その借りを返すという訳ではないが、と、これは私達の事情だったね、失礼」

 

「いえ、構いませんよ、あの院長ならありそうな話だ、位にしか思いません」

 

「ははは、君の女史への人物評も是非聞いてみたいものだね、うん、

 すまないがちょっと知り合いが尋ねてきていてね、

 女史からどういう説明を受けたかは、

 食事を摂りつつ家内から聞いて貰ってもいいかな?夕食はまだだろう?」

 

「構いませんよ、こちらこそ忙しい時分に時間を頂いて申し訳ないです

 夕食、ありがたく頂戴いたします」

 

「それこそ構わないさ、今日の街道辻での魔物討伐の功労者である君との話だ、

 先約がなければ話を楽しみたいところだが、

 その話は家内から聞かせてもらうことにするよ」

 

もう今日のことが広まっているのか?

まぁ宿屋という施設の性格上ありえないことではない、か。

 

「今日の一件ですか、私個人としては反省する点こそあれ、

 功があったとはちょっと……」

 

「その辺りの話も家内からしてもらうといい、ではクレント君の案内を頼むよ

 それでは失礼」

 

「はい、失礼します」

 

 

 挨拶もそこそこに辞去するリンド氏を見送り、カールトン夫人とユーリの案内で

カールトン邸のダイニングまで案内され席を進められて着席。

 

「そういえば挨拶が遅れたわね、ユーリの母でティナ=カールトンよ、よろしくね

 そうそう、ユーリ、少し前にお友達が来てたわよ、

 何でもなるべく急ぎで話をしたいって」

 

「あらぁあの用件かなぁ、こういう時は多分あそこで待っててくれてると思うからぁ

 ちょぉっと行ってきてもいいかなぁ?」

 

「確か彼女たちが訪ねてきたのは、そうね、

 あなたたちが戻ってくる少し前だったからまだ大丈夫じゃない?」

 

「じゃぁ行ってきますか、あっクレント君、

 私のことは気にせず夕食は食べてていいからねぇ」

 

席を立つユーリに

 

「そうだ、せっかくだから、軽食でも持って行くといい」

 

異空間収納からそれなりの量のビスケットが入った小袋を取り出しユーリに手渡す。

 

「道中で適当にパクつこうと思って持ってきてみたのだけど機会を逃してしまってね、

 よければ友人とつまんでみてもらえるかな、っと引き留めてすまない」

 

「まぁありがと、ちょうどかるくお腹がすいてるし助かるわぁ、

 それじゃぁなるべく早く戻るわねぇ」

 

足早にダイニングを去っていくユーリを見送る

 

「何だか慌ただしくってごめんなさいね、さてと、

 では人は減っちゃったけど夕食にしましょうか」

 

「そうしていただけると助かります、あ、そうだ

 配膳と下膳あと食器洗いはお手伝いさせてください

 食客のまま何もしないというのはどうにも落ち着かないので」

 

「1日預かるといった手前、手伝って貰うのは心苦しいけど、まぁいいか

 ではお願いしますね」

 

ちょっと与り知らないところで動きはあったけれど夕食だ。

出された食事がとてもおいしいこともあって、食器を動かす手が止まらず

結局出してもらった食事はすべて平らげてしまった。

〔飾らない食卓こそ最高のもてなし〕とはよくいったものだ、と思う。

 

ティナさんと話をしたのは食後の食器洗いを一緒にやり始めてからだった。

 

「うん、とてもいい食べっぷりだったわね、若さと院での教育のおかげかしら?」

 

「大変おいしかったのでつい手が次々と進んでしまいました、っと遅ればせながら

 ごちそう様でした」

 

「はい、お粗末様でした、っとそうそうあのひとがどういう説明を受けたか、

 だったわね

 当院の養い子についてなのだが、中等学年次に難解な病を患って

 しばらく静養させていた

 とりあえす領主の伝手を頼って医師にもあたってみたが原因はわからずじまい

 さしあたり命と日常生活には別状は見受けられないため様子観察という事になった、

 という話なのだけど、ここまではあってるかしら?」

 

「大筋は間違ってませんね、ただ」

 

「こちらとしては君を預かるにあたって、どういう症状なのかは

 ちゃんと院長に尋ねたわ一応ね」

 

「ええ、それで、得られた回答が」

 

「まさかの性別転換、正直いって想像の斜め上だったわね、

 まぁでも他に移る病気とかでもないし

 なにより話を受けたときの夫の驚きようと依頼主である院長との間柄を考えるとね 

 あら洗い桶の水がぬるま湯に、これは魔法かしら?」

 

「確か院長とリンドさんが知り合いというのは先ほど伺いました

 ええ、ちょっと魔法で水温を弄りました、

 こっちの方が食器の汚れが早く落とせると思ったので」

 

「やっぱり魔法って便利よね、そうそう、でね院長と私たち夫婦との関係なんだけど

 端的言うと恩人かなって思っているわ、そうね、広い意味でいうと

 院長とあなたのとこの先代の領主様がという方が正確かもしれない、

 詳しくは直接院長本人に尋ねる方がいいと思うわ、ちょっと長くなるから

 と、洗い終わった食器は立てかけてね、

 そうそうちゃんと仕込みが行き届いてるわね」

 

「私のことをどういう風に聞き及んでいたかは概ねわかりました、

 ご息女に私の身体の話を通してない理由も何となくは察します

 立てかけたという事は後は乾燥ですよね、ではちょっと失礼」

 

温風の魔法で軽く食器の水気を飛ばす

 

「本当に気が利くわね、ありがとう

 ユーリにちゃんと話さず〈ちょっと変わった子〉

 とだけ伝えたのはそうして欲しいという院長からの指示よ、

 後、街道辻の件なのだけど、やっぱり剣や魔法を使えない私たちみたいな

 普通の人たちにとっては小型とはいえ魔物は脅威なのね、

 特に移動中の襲撃というのは、

 それを成人を迎えたばかりの子が間接的とはいえちゃんと討伐に協力した、

 というのは称賛されていいことなのよ

 あら、食器の水気も粗方は飛んだわね、じゃぁ乾拭きして食器棚に戻しましょうか」

 

「いえ、どういたしまして、身体のことについてなんですが

 ユーリについては手違いでこちらからうち明けるかたちになってしまいましたが

 道中での討伐協力については、その、そういわれるとかなり面はゆいです

 食器を棚へ戻す手順は指示をお願いしますね」

 

 会話しながら食器を片づけているとこちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。

 

「ただいまぁ、少し遅ぉくなっちゃったかしらぁ?

 ってちょっとお母さん?、彼はお客様よねぇ?なにさせてるのよぉ」

 

「彼からの申し出があったから、ありがたく乗らせてもらうことにしたのよ

 本当に手際がよくて驚いちゃった、

 そういえば持っていったビスケットはどうだったの?

 ま、聞かなくても大方の予想はつくけれど」

 

「うん、とってもおいしかったわぁ、お腹すいてたというのを抜きにしてもぉ

 集まってた子達で完食しちゃったわぁ

 彼女達からも好評だったわよぉ、クレント君、ごちそう様でしたぁ、」

 

「ん、お粗末様でした、口に合ってなによりでした」

 

テーブルを拭く手を止め答える

 

「それにしても夕食だけどぉそれなりに量あったと思うのだけれど、

 完食してるなんてぇ

 やっぱり男の子?なのねぇ……」

 

「いや、あのなんで性別のとこで疑問形なのかな?」

 

「それはほらぁ、まぁ症状の件もあるしぃ……っていっけない

 夕食終わってたらぁ君をフロントに案内してほしいって

 お父さんに言われてたんだったぁ」

 

「うん、確かに夕食は終わってるいるし、案内を頼んでもいいのかな?」

 

テーブル拭きも仕上げを終え、ユーリに向き直りつつ問うてみる。

 

「ええ、では行きましょうかぁ、お母さんそれじゃまた後でねぇ」

 

「はい、ちゃんと案内よろしくね、クレント君はまた明日ね、おやすみなさい」

 

「はい、お話しとても楽しかったです、ではまた明日、おやすみなさい」

 

ティナさんに挨拶を返し、ユーリの案内でホテルのフロントへ赴く。

 フロントではリンドさんが待っており今夜宿泊する部屋の鍵を渡された。

 

「備え付けの用品は自由に使って貰って構わないから。そうそう、

 宿泊費は事前に頂戴しているので心配はいらないよ

 申し訳ないのだけど、ちょっとお願いしたい事があるから

 後でユーリを部屋に寄こすので部屋で話を聞いてもらえるかな?

 ではユーリ、彼を部屋まで案内をよろしく、それと案内が終わったら

 こっちに顔を出してくれ。」

 

「鍵を預かります。色々とよくしてもらってありがとうございます

 そうだ、夕食ごちそう様でした、とてもおいしかったです。」

 

「じゃ、クレント君を部屋に案内してくるわねぇ、で終わったら

 お父さんのトコに行けばいいのね?」

 

「そうだね、ではよろしく頼むよ。

 クレント君、大丈夫だとは思うけど何か足りないものがあったら

 遠慮なく言ってくれていいから、ではおやすみなさい」

 

「はい、おやすみなさい」

 

リンドさんに挨拶を返し、ユーリの案内で宿泊する部屋へ足を運ぶ。

なにやらフロントに着いた頃からこっちを伺うような視線を感じるけど

実害はないし無視していいかな。

その道中、ユーリから

 

「クレント君、ちょぉっと申し訳ないんだけど、明日の朝の件ね、

 私と同行したいって子が二人いるんだけどぉ、いいかなぁ?」

 

 

「あーそうだな、ユーリの紹介でという話ならま、大丈夫かな?

 というかもう遅いけど来る人が二人、だっけかその子達に

 話をしておかなくて大丈夫なのかな?」

 

「あの子達二人ならちょっとロビーで待ってもらっているから

 これから話をしておくわぁというかお父さんと話してる

 トコを見てたかもしれないわねぇ……」

 

「なるほど、ちょっと妙な視線を感じたのはそういう事かな?、で、なんだけど

 訪ねてくる方々の名前くらいは聞いてもいいかな? 

 多少はこちらも気にしてもいいと思うのだけど。」

 

「そうねぇ、あちらだけがこっちを知っているのいうのは

 気分のいいものでもないわねぇ

 一緒に来たいって言ってる子達の名前だったわねぇ、アリスとリンっていう子よぉ

 両方とも女の子の友達なんだけどぉ……」

 

「アリスとリンか、うん、人の名前を覚えるのは少し不得手だけど、

 どうにかなるかな?」

 

「何か急にごめんなさいねぇ……友達の手前、ちょっと色々あってねぇ

 というかてっきり断られると思ってたわぁ」

 

「本当は断った方がいいのかもしれない、だけどユーリの友人だし

 大事にはしないと思うんだ、

 それにちゃんと来るのがわかっていれば対応もしやすいし

 流石に寝起きに突撃、といった真似はしないと信じたい、信じていいかな?」

 

「いやぁそれは色々な事情を考えて無いわぁ、

 というかそれやっちゃったらウチの宿の信用問題になりそうだしぃ。」

 

「そこはユーリの職業倫理を全面的に信頼させて頂くよ、

 というか被害者の側から一つだけ言わせてほしい

 あれから生まれるのは信頼とかではなく相手への深い溝だから。」

 

「あぁ、一度やらかされているのねぇ……うん嫌な事思い出させたかなぁゴメンねぇ

 っと、泊まってもらう部屋はここよぉ」

 

「済んだことだからいいのだけどね、このことは覚えておいてもらえると凄く助かる。

 うん案内ありがとう、後で部屋に訪ねてくるのだったかな?」

 

「そうねぇ、お父さんから一つ君にお願いしたい事があるんだって

 私も聞いてないんだけどぉ」

 

「うーん、そうだな、受けるかどうかは後で決めさせてもらうとして、

 っとそうだったいけない、忘れていた」

 

異空間収納から若草色のクリーム状の個体が入った小瓶を出しユーリに手渡す。

 

「ん、コレなぁに?」

 

「ティナさんに使ってもらおうと思ったのだけど失念していてね

 手荒れ用の軟膏だけど、孤児院で育ててる香草由来のやつで水仕事の後にどうかな

 と思ったのだけど、ね」

 

「ちょっと慌ただしくしちゃったかしらねぇ……というか、

 何というかぁ本当にさぁ……はぁ…………」

 

「なにかな?瓶とこっちの顔を交互に見て」

 

しかもため息まじりにジト目ってユーリさん、俺が一体何をしたのかな?

 

「いや、うぅん、とりあえずアリスたちとお父さんの件を片づけたら

 また寄らせてもらうわぁ、じゃまた後でねぇ。」

 

「ではまた後で、こっちは適当に過ごさせてもらうとするかな。」

 

 何か言いたそうにしながらも部屋を去るユーリを見送り、改めて通された客室を一瞥する。

ベッドの掛布も比べるのが失礼なのかもしれないが院で使っているのとは格段に違う、気がする。

 

 そういえばいつもの日課をこなしていない事に気が付いた。うん、昼夕の分の2回をやってないのだったかな。

サボりは良くないと思い出して洗面所に移動し、備え付けられている鏡の前に立つ、

映し出されるのは勿論自身の姿だ。

短く切った銀髪と一対の翠眼、容姿はまぁおそらく不出来ではないだろう、と思う

身長はとりあえず高いところにあるものでも背伸びをすれば届く程度にはある、はずだ。欲を言えばもう少し欲しい。

 

 【先生】から教わったやり方で魔力制御を行う。

浅めの呼吸と共に両手の周囲に魔力を集めては散らすという工程を十回程繰り返す。

本当なら前回行ったときより少しでも多くの魔力を運用するのがいいとは言われているのだけど

今日に限っては大事をとって今朝とほぼ同程度の魔力量での運用に留めておいた。

【先生】にいわせると

「魔力運用は日々の積み重ねだから、まぁ錆びつかせたいならサボってもいいよ、

 後で悔やむことになるのはお前であって私じゃないし。」

だったかな?

む、何か言われた事を思い出したら少しちゃんとやろうという気になってきた、よし、寝る前は少し冒険してみようかな。

その前に一回だけちゃんと教わった手順でこなそうと魔力を集め始めた時だった。

 

 

ドクン

 

 

うわ……ヤバい、あの動悸だ。

 

両手に集めていた魔力を散らしてひとまず呼吸を整えようと、深呼吸を緩やかに繰り返す。

 

ドクン ドクン

 

まぁ動悸が起きた時点でもうどうにもならないのだけど。

今はとにかく心身を落ちつけよう。

なに、慌てたところで事態が好転するわけではないだろう。

まぁ身体が変化していく感覚は正直いって慣れるものではないのだけれど

眼を瞑り動悸が収まるまでそのまま佇む。

 

 動悸が落ち着いたところで眼を開き鏡を見ると、

おおよそ1年前から見知った自分の顔が映っていた。

やたらと睫毛が増えているわ、目線は拳一つ分下がっているわ、

おまけにどういうわけか

胸部と腰回りが何というかその不必要に発育が良くなっていて

まぁ俗にいう

「出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる」

というやつだろうか。

正直いって今でもこの状況では自室に引きこもっていたいと本気で思っている。

というか変異当初は自室に引きこもった、が色々あって今に至っている。

 

うん、気持ちが後ろ向きになってる、いけないこのままいくと沼に嵌りかねない…。

 

「はぁ、気分転換に作りかけの編みぐるみでも進めようかな。」

 

 一人ごちて洗面所からベッドへと移動し、異空間収納から作りかけの編みぐるみと、

裁縫道具、今日雑貨店で購入した毛糸と、見本にしている球に乗った獏を取り出した。

ちなみに完成度は七割程だ。裁縫道具は院長先生のお下がりを譲り受けて、使っている毛糸は孤児院のお古の端切れを失敬させてもらった。

 

 ベッドに腰掛け、前回中座したところから作業を再開しようとすると、玄関のドアからノックの後ユーリの声がした

 

「クレント君、今いいかなぁ?」

 

「どうぞ。」

 

つい、いつもの調子で答える。

 

するとなにやら慌てた様子でユーリがこちらに向かってきた。

 

「ちょっとぉ……ってうん、来ようと思ってた部屋と間違ってはいないわね

 えぇと、クレント君?よね、何をしているのかなぁ?」

 

「ちょっと手芸を、具体的には編みぐるみをしようとしていたところかな」

 

こちらとしてはあたり障りのない答えを返してみる。

 

「ええ、それはぁ見ればわかるし、それに編みぐるみ可愛いわねそのぉ……

 ってそうじゃぁなくて!

 はぁ……もういいわぁ、明日にしましょ……っとそうだったわぁ

 コレを渡しに来たんだった」

 

ユーリが異空間収納から1枚の紙を取り出し手渡してきた。

 

「お父さんからぁ預って来たのだけど、今後、君みたいに遠方の子を

 同じような形で迎える事もあるだろうって、今日の感想とかぁ

 こうした方がいいかもって気付いた事を書いておいて欲しいんですってぇ

 それで明日部屋を引き払う時までにこの用紙に書いて渡して貰えると

 ありがたいってぇ」

 

「うん、リンドさんからの依頼引き受けました。とりあえずこれから

 寝る前までに書き上げるとしよう。」

 

「寝る前に急がせるみたいでごめんなさいねぇ、後ぉ明日朝の事なんだけどぉ

 二人と一緒にこっちに向かえば大丈夫かしらぁ?」

 

「そうだね、明日朝、ユーリを含めた三人が一緒にこの部屋に来るってことで

 いいのだったよね?」

 

「そうねぇ、それで合ってるわぁ。あっそうそうお母さんからなんだけど

 あの軟膏ありがたく使わせてもらいますってぇ。」

 

「それはよかった、っとそろそろリンドさんに渡す書類書き上げて

 休んだ方がいいかな、明日朝の事もあるし」

 

「それもそうねぇ、じゃあクレント君また明日ねぇ、おやすみなさい」

 

「ではユーリまた明日、おやすみなさい」

 

 部屋を去るユーリを見送った後、リンドさんに依頼された所感を

とりあえず書き上げ、日課の魔力制御をこなしてそのまま床に就いた。

(そういえば編みぐるみ出したはいいけど全く進められなかったなぁ……)

などとふと頭よぎったのを最後に意識を睡魔に攫われて王都入り初日は過ぎていった。




ユーリ、アリス、リンが入学前から友人という点と 
ユーリ母の名前は捏造です。
ちゃんと原作で出てき次第直したいと考えています。
下手すると父子家庭の可能性もあるんだよなぁ
その場合は捏造で押し通すしかないか

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