前回までのあらすじ
王都入り初日終了。
クレント君、魔法行使のオーバーワーク的ななにかでTS(M→F)
9/15 微修正しました。
日頃の習慣というものは中々抜けないものらしい。
【先生】に魔法を師事して以来、続けていた早起きではあるのだが、まさか王都に来てまでとは。
まぁ昨日は昼前に乗り合い馬車でうたた寝した所為もあるのだろうけど。
二度寝するには少々眼が冴えてしまっているし、日課と多少身体を動かしておこうか。
実際、現状の身体の方が魔力制御をはじめとした魔力の運用もなのだが、
身体の柔軟性が飛躍的に向上している。
個人的には非常に業腹なのだけど。
全く建設的でない感傷は置いておくとして、とりあえず今日の動きを頭の中で確認しつつ
日課の魔力制御と柔軟を汗をかかない程度にこなす。
まずはこれからユーリを含めて3人の来客、その後宿を出て役所で市民証の更新、
入試の合否判定まで逗留することになってる領主様の王都屋敷に赴いて現当主様に挨拶、後は適宜対応していくという感じかな。
む、いけない、考え事をしながら柔軟運動をしていたら思いのほか汗をかいてしまった……。
この格好のまま人に会う訳にもいかないし、少なくとも汗は流しておいた方がいいだろう。
思い立って洗面所へ向かい異空間収納からタオルを出し、
手のひらから汗を流せる程度の温水を魔法で生み出し身体を清める。
そのまま髪も温水で濡らし今度は軽く起こした風の魔法で髪を乾かした。
とりあえずさっぱりしたし後は着替えかな?
中等学院の制服に着替えた後、タオルで洗面台周りの水気も軽くふき取る。
少し動いてみたけど、胸周りがちょっとキツい……
卒業試験前に1度支給し直して貰ったときは問題なかったのにまーた育ってたのか。
むむ、後で仕立て直さないとだな。
いい加減、鞣し革辺りで胸当てでも拵えるべきだろうか?
まぁ現状は胸元のボタン外してローブ着れば大丈夫だろう、多分。
とりあえず清拭と着替えを終え、洗面所を出たことろで、玄関から遠慮がちなノック後ユーリの声がした。
「クレント君おはよぉ、今いいかなぁ?」
「どうぞ。」
ドアを開けユーリを部屋へ招き入れる。
「改めて、おはようございまぁす、昨日はよぉく眠れたぁ?」
「はい、おはようございますユーリ、おかげさまで、
道中の疲れもしっかりとれたようだ」
「それは良かったわぁ、っと後ろ髪がちょっと跳ねてるわよぉ?」
「む、しまった。髪乾かすだけで整えてなかったな、指摘ありがと。
後一つ相談があるのだけどいいかな?」
「ふふっ、どぉいたしましてぇ。それで相談って何かなぁ?」
「これから来客ということだし椅子とテーブル等一式を出したいのだけど、
ベッドを動かしていいのか質問したくてね。」
「別に動かすのは問題ないわよぉ、というか今動かしちゃいましょうかぁ」
いうなりユーリは異空間収納にベッドをしまい込む。
おお、何気にベッドに魔法が付与してあったのか、おそらくは軽量化だろうか?
「よいしょっと、ふぅ。それで椅子とテーブル、だっけぇ今出して並べちゃうのぉ?」
「そうだね、ではそうさせてもらおうかな、っと」
こちらも異空間収納から円卓と人数分の椅子を取り出して並べる。
「とりあえずお茶の準備もしておこうかな、ってユーリどうかしたかな?」
「うぅん、まぁいいんだけどぉ、とりあえずその椅子とかテーブルとか
どこかで買ったのぉ?」
「コレか、領主様のお屋敷で不要なった備品を手直しして
使わせてもらっているのだけど」
「ふーん、というか椅子に敷いてあるクッションとかテーブルクロスとかもなのかなぁ?」
「ああ、そっちは療養中の手隙の時間にチクチクと縫ってたやつだね、
手習い程度の代物だけど無いよりはマシということで。」
孤児院で暮らすことになって以来、家政一般のスキルはそれなりに向上した。
孤児院とはいえ、なんだかんだと今になって思うと生活水準は高かったのだろう。
飢えず凍えずでこの年齢まで養育の上、こうして進路にまで気をつかってもらっているわけだし。
隣国であるブルースフィア帝国であれば、農奴のまま使い潰された上、まともな教育を受けることなく生涯を終えていただろう。
また、帝国以外の国家群でもここまでの待遇は望み薄だろう。
とはいえ他国の情勢や地歴を詳細に習う時期には、療養として休学していたのだが。
「手習い程度っていっても趣味の域でこれだけできてれば
十分だと思うけどぉ……んー?クレント君、どうかしたぁ?」
っといけないちょっとぼんやりしていたか。
「む、ごめん、ちょっと考え事していてね。」
「これから会うことになってる二人のこととか考えてたかなぁ?」
「あー、そっちに関しては殆ど頭になかったな、
そういえば三人で部屋に来るという話だったけど、他の二人はどうしたのかな?」
「あぁ、片方がちょーっと朝弱い子だからぁ遅れてるのかもねぇ、
私がロビーまで出迎えに行くわぁ、
それより申し訳ないんだけどぉ、お茶とかの支度はお願いしていいかなぁ?」
「ん、承った。ついでに軽い食事も用意するとしようか」
「あぁそういえば朝食はここで食べていきたいって言ってたわねぇ。
たしかぁ自分の分は持ち込むって言ってたっけなぁ?」
「そういう事なら、ま、こんな感じかな、っと」
異空間収納からティーセット一式と軽食の入った木籠を取り出し卓に並べる。
「セット一式はともかく木籠は何か妙に年期が入っているように見えるけどぉ、何か云われのある品だったりするのぉ?」
「ん、単に長持ちってだけだと思う、
というか茶器一式はフレーゲル領の職人の作なんだけどね。」
「あぁ、あそこのいろんな職人がたくさんいる領地の、
あそこの品は貴族向けから庶民向けまで幅広く扱っていたわねぇ。」
「そ、ウチの領地からは特産品の茶葉やら農産品との交易でそこそこ交流があったり?するらしいのだけど。」
「なんでそこで疑問形なのかなぁ?」
「特産品の生育やら流通等は領地の代官とか
師事していた魔法使いの【先生】に完全に丸投げしていたからね、
ちゃんと魔法使いの適性がない人たちでも後進になれるように手筈もととのえてたし
俺の方は加工のやら製法の手ほどきに軸足を置いた指導を受けていただけだしね。」
「ふーん、そうなんだぁ、というかぁ今の姿で〈俺〉って
ちょっとどころでなく違和感があるわねぇ……」
「言われるとは思った、まーなんというか慣れて、としかいえないな。」
「素材はかなりものだし、私としてわぁ色々と弄り倒し……
じゃなかった手を加えていきたいなぁとか?
おそらくだけどぉ連れてくる二人も同じ意見になると思うなぁ」
「最大限遠慮したい案件になりそうな予感がするな、それは。っとそうだった
昨日寝る前に書き上げておいたリンドさんに依頼された書面があったんだ、
今ここでユーリに渡しておいてもいいかな?」
「ええ、受け取っておくわぁ、二人の出迎えに出るついでに
お父さんに渡しておくわねぇ。
っとそろそろ出迎えに行こうかしらぁ? じゃ、クレント君、また後でぇ。」
「はい、ではまた後で、ユーリ。」
部屋を去るユーリを見送り、一息ついた。
さて、少し空き時間ができたか、せっかくだし昨日全く手を付けなかった編みぐるみを仕上げるとしますか。
ベッド付近にまとめて置いた編みぐるみ道具一式を卓の上に置き椅子に座る。
手先と編み針に魔力を集中させて一息に編み上げた。
完成した黄の球に乗った白と灰色のツートンのボディの獏を見本と見比べる。うんまぁ及第点といったところかな?
とりあえず完成できたことに安堵して、異空間収納に裁縫道具をしまっていると、玄関ドアの向こうから慌ただしい物音がした。
何だろ?とりあえず魔力探知だけでもしておくとしようか。探知魔法を発動してみるとそれなりの強さの魔力反応が3つあった、ユーリと二人の友達だろうか?
間をおかずにノック音とユーリの声がした。
「クレント君、今いいかなぁ?」
「どうぞ。」
ドアを開けユーリ達を部屋へ招き入れる。
するとユーリの後にもう2人落ち着かない様子で部屋に入ってきた。
「わ、わ!、さっきの魔力もだけど何か色々と用意されてる!、
しかも卓の上の編みぐるみ凄くカワイイ!
っとそれはそれとして、はじめまして!アリス=コーナーっていいます。
ユーリから聞いてると思うから特に気にせずに
アリスって呼んでくれればいいからね。」
「リン=ヒューズ、よろしく。私も呼ぶときはリンでいい、
それより昨日のビスケットごちそう様、とてもおいしかった。」
アリスと名乗った金髪ショートカットの碧眼の女の子と、
リンと名乗った黒髪ショートボブで縁の細い眼鏡を掛けた中肉中背の女の子が
それぞれ自己紹介を済ませて各々で席に着いた。
なんというか特徴的な2人だ、勿論いい意味で。
「自己紹介どうも、俺のことはユーリから聞いているとは思うけど改めて。
クレント=マーサリーと申します。
王都に来た理由は魔法学院への受験とそれに関連した
説明会への参加ということでいいのかな、まぁ何だよろしく。」
こちらも自己紹介を済ませると、アリスから何か怪訝な視線を受けた。
「うーん、とりあえずユーリから話には聞いてたのだけど、
その姿で〈俺〉はちょっと……なんというか。」
「違和感がある、昨日のビスケットの件や今日の設えてある品物を見ると特に。」
アリスの言を次ぐようにリンからも今の容姿と言葉遣いで違和感を覚えると言われてしまった……
「こうして面通しをするのも初めてだし、おいおい慣れて欲しいとしか言えないかな、
というか昨日、遠目とはいえこちらを窺っていたのは君達ではなかったかな?」
「あはは……やっぱりバレてたか。ちょっと昨日の街道の一件が気になってね。」
「王都、周辺市街合同でのハンター協会の大規模な作戦行動とはいえ、
出現した魔物の規模に比して、
こちらの被害は対峙したハンター数名の軽症者のみしかも
一両日中の静養で戦線復帰が可能なうえ、
一般市民には害が及ばないよう、馬車の周囲に魔法師団級の魔力障壁を展開した、
と父が関係各所へ提出する書類を自主的に閲覧させてもらった。
それだけのことをしたのが同い年の見た目がこんな淑女とはちょっと信じがたい。」
アリスからは、昨日の街道の件とおおまかに、
リンからは、割と詳細な事柄が関心をもつ一因と聞かされた。
というか何だ魔法が絡んだら急に饒舌になったな、彼女。
そういえば父がどうとかいってたけど……うん?ヒューズっていってたか。
「一つリンに聞きたいことが出来た、のだけどそろそろ朝食にしたい
のだけれどどうだろう?続きは食事をしながら、という事で。」
「私は賛成ねぇ。昨日の一件を当事者の一人から聞けるのは貴重だしぃ。」
「あたしも賛成、というかお腹すいた。折角用意してくれてある
紅茶も冷めちゃったら勿体ないし。」
ユーリ、アリスの両名から同意を取り付けたこともあって
リンも頷いて俺の提案に乗ってくれた。
さて和やかな朝食会となってくれるといいのだけど、
どうにもそうはならなそうな気配がするな。
申し開きは活動報告の方で致します
今月の新刊発売と来月のコミックス新刊楽しみです