2週間も間を開けてしまい申し訳ありません。
「馬鹿って言っちゃったよぉ~…。」
旅館『十千万』。
その建物は旅館として利用されている表の部分と、経営する家族が住んでいる住居部に別れている。
さすがに従業員が浴場を利用するわけにもいかないのだ。
その住居部の風呂にて。
一家の一人娘である千歌は湯船につかりながら、一人反省会を開いていた。
「徳丸さんはあぁ言って許してくれたけど…内心怒ってたりしないかなぁ…。」
何を反省しているかというのはお察しの通り。徳丸とわずかな期間ながらも喧嘩してしまったことだ。
今日の話なのだが、東京でのライブから帰ってきたAqoursはこれからの進退を決める重要な岐路に立たされていた。
ゼロ票という得票数だったことは今思い出しても辛くなる。
素直に弱音を吐き出したいとも思った。悔しいと。
ただ、千歌はリーダーとしての責任感から自分だけは辛そうな顔をしてはいけないとも思っていた。
私が本当の気持ちを言ったら、Aqoursは立ち直れずにここで終わってしまうのではないかと。
…そこにデリカシーのない無責任な輩がズケズケと歯に衣着せぬ物言いをするものだから少し頭にきてしまったのだ。
「いや、千歌さすがにそこまでは思ってないよ!?」
まぁそんな感じで喧嘩してしまったのである。
その後他のAqoursのメンバ-から「素直になって良いよ。」と言われ、気持ちを吐露した結果、より深い絆を得ることができた。
徳丸の言っていたことは少しキツかったが事実だということも理解できたため、すぐに仲直りすることができた。徳丸の方も言い過ぎだといろんな人に言われたらしく、深く反省していたし。
「しかし徳丸さんって私たちのことを思ってくれてるんだなぁ…。」
今日一日のことを思い出すと、徳丸さんやダイヤさん、口には出さないがマリーさんや果南ちゃんも応援してくれていることが分かる。
特に徳丸は衣装の裁縫、曲作りのアドバイス、踊りの監修、移動のチケット予約など献身的に働いてくれているのだ。
…………
………
……
…
「いや働き過ぎじゃない!?」
「「徳丸さんにお礼?」」
「うん!よく考えてみたら徳丸さんのおかげで私たちとっっっっても助かってると思うんだ!」
「そっか…。確かにAqoursとしてやらなきゃいけないことのほぼ全てに関わってくれてるしね…私の衣装作りとか。」
「私の曲作りもそうね。」
「だからね、ここらで何かお礼をしときたいなぁと思ったの!どうかな?」
翌日。学校に行くバスの中で私は残りの2年生二人にある提案を持ちかけていました。あ、高海千歌です!よろしくね!
昨日風呂から上がった後も考えたのですが、徳丸さんがAqoursのためにやってくれていることはかなり多くて、一度ちゃんとお礼をしなきゃいけないという結論に至ったのです。
「うん。とてもいい考えだと思う。私も協力するわ。」
最初に賛成してくれたのは梨子ちゃんでした。梨子ちゃんはAqoursの作曲担当です。最初は「私アイドルの曲なんて知らないっ!」なんて言っていた梨子ちゃんですが、最近はすっかりスクールアイドルの虜。とりこりこです。
「ヨーソロー!ナイスアイディアだよ千歌ちゃん!この前衣装作りも手伝ってもらったし。」
曜ちゃんも元気に返事をくれました。本人も言っていましたが、曜ちゃんが一人でやっていた衣装作りを徳丸さんも手伝っています。そのおかげか二人は仲がいいです。まぁAqoursの中に徳丸さんと仲が悪い人なんていませんが。
それじゃあ改めて3人で何をすればいいのか考えましょう。3人寄れば文殊の知恵ですから!
「徳丸さんに対するお礼って何をすれば良いのかな…。」
「みかん!」
「海軍の制服をあげれば喜ぶと思うな!」
「花マルちゃんのお人形…かしら?」
上から私、曜ちゃん、梨子ちゃんの順です。
…さっき3人寄れば文殊の知恵と言いましたね。あれは嘘です。
3人でグループ名を考えた時のことを思い出してみましょう。この3人でまともな案が出るわけがないのでした。
「ちょっと!偉そうなこと言ってまとめようとしてるけど千歌ちゃんも変だからね!みかんが嫌いな静岡県民だっているんだから。」
「まぁまぁ…。徳丸さんが喜ぶことをしてあげないといけないんじゃないかな…?その点で私の花丸ちゃんお人形というのは…?」
……うん!ちょっとこの3人じゃあの時の二の舞になりそうなので、助っ人を呼ぼう!
「と、いうことで。一年生の意見を聞かせて?」
お昼休み。私たちは6人揃って屋上でお弁当を食べていました。
朝の2人に加えて、黒澤ルビィちゃん、津島善子ちゃん、話題の人物である国木田徳丸さんの妹の花丸ちゃん。私を入れてスクールアイドルAqoursの6人です。
「徳丸さんの好きそうなこと…ですか。」
「うん!ルビィちゃんはなにか知ってる?」
と、私は考え込むルビィちゃんに尋ねました。
たぶん花丸ちゃんに聞けば一発なのでしょうが、それじゃおもしろくな……もとい、家族以外の目も大事だと思ったのです。ホントだよ?
「この前ウチに来たときにお姉ちゃんとプリン談義をしてたから、たぶん甘いもの好きだと思う。」
「事実ですか?花丸先生。」
「あってるずら。…ってか確認するなら最初から私に聞けば良いじゃん。」
どうやら事実のようです。なるほど…。食べ物路線なら甘いものですか。
「善子ちゃんはなにか案あるかな?」
花丸ちゃんの抗議は華麗にスルーして、次のインタビューです…しかし。
「ちょっと待ってね。黒澤家に徳くんが行ったって言う事実をもう少しkwsk掘り下げないといけないから。」「そうだったずら。」
ルビィちゃんの口にした"ウチに来た"に過剰反応してそれどころではないようです。
そしてそれに花丸ちゃんも乗っかっています。目が怖いです。夫の浮気を耳にした妻みたいな感じです。
いやはや。恋する乙女は一生懸命ですねぇ。…え?違う?実妹?
きーんこーんかーんこーん。
あらあら。一年生組がいろいろやってる間に昼休みが終わってしまいました。
急いで残りのパン…じゃなかったお弁当をかきこんで教室に戻るとしますか。
きーんこーんかーんこーん。
再びベルの音が鳴って目を覚ましました。…目を覚ましました。
どうやら5時間目は寝ている間に終わってしまったようで。
クラスの皆が後片付けをして、教科書を鞄にしまい、その鞄を持ってにこやかに談笑しながら教室から出て行きます。
…え?帰るの?6時間目は?
「千歌ちゃんが寝てる間に6時間目まで終わったわよ。」
その声に顔を上げると、そこには苦笑いしている梨子ちゃんの姿が。
「もう!見てたんなら起こしてよ~!」
と抗議をしたのですが、「幸せそうに寝てたから…。」と笑って流されてしまいました。
「昨日は夜遅くまで起きてたの?」
「うん。徳丸さんへのお返しの話を考えてて。…結局何にすれば良いのかな~?」
ふと思ったのですが…徳丸さんは何のためにAqoursの手伝いをしてくれているのでしょうか?
最初は花丸ちゃんの付き添いといった感じでしたが、東京に行った前後からより積極的になっている気がします。
そんなことを考えていると
「高海千歌さんはいますか?理事長がお呼びですわ。」
教室の入り口から私を呼ぶ声が。
見てみるとそこには生徒会長の黒澤ダイヤさんがいました。
彼女は、最初こそ私たちのスクールアイドルに反対していて"理不尽だ~"と思っていましたが、実は私たちのことを思ってくれていた優しい人です。
私もこんなお姉ちゃんが欲しかったなぁ。
「私はここで~す!」
教室の中から手を振ると、「理事長が呼んでますわ。ちゃんと伝えましたからね?では私はこれで。」と言ってそそくさと帰ってしまいました。
むむぅ…。昨日のお礼をしようと思ったのに…。
………照れてるのかな?
廊下の奥から「照れてませんわぁ~!」と声が聞こえたような気がしたけれど、たぶん気のせいでしょう。曜ちゃんと梨子ちゃんに先に練習を始めてもらうよう頼んで理事長室へ歩き始めました。
コンコンとドアを叩きます。
「ドウゾ!」
部屋から理事長…マリーさんの声が聞こえます。
中に入ると、碇ゲンドウのような座り方をした理事長がこちらを見ていました。伝わりますよね?
「失礼します。…どうかしましたか?」
「そんな緊張しなくて良いわよ。別に取って食おうなんて思ってないから。」
ケラケラと笑いながら優しく笑いかけてくれました。そのおかげでだいぶ緊張が和らぎます。
まぁ緊張してたのは指令座りのせいなのですが。
「今日呼んだのは東京での感想を聞きたかったからなのだけど…どうだったかしら?」
…そういえば今回の東京でのライブはマリーさんの許可で行かせてもらったのでした。
ダイヤさんの話ではマリーさんと果南ちゃんと3人でスクールアイドルをしていたとのこと。なんだかんだで私たちのことが心配だったのでしょう。うん!何事もポジティブシンキング!
「私たちの得票数の話は聞きましたか?」
そう尋ねると一瞬だけ悲しそうな顔を見せるマリーさん。
「…やっぱり辛かった?東京という舞台はあなたたちにとってso hard だった?」
カタコトの英語にもいつもの覇気がありません。
ですが、そんな心配はご無用!昨日のうちに回復したのです!
「大丈夫です!Aqoursのみんなやダイヤさん、それに徳丸さんがついていましたから!」
だから私たちはこれからも頑張ります!
そう伝えました。
「……ふふっ。そうなのね。やっぱりあなたたちは乗り越えた。さすがだわ。」
心底安堵したかのようにマリーさんは呟きます。付け加えて
「トックーもちゃんと仕事したみたいじゃない。安心したわ。」
その言葉を聞いて、昨晩からずっと考えていたことを思い出します。
…そうだ!マリーさんにも聞いてみよう!この人は徳丸さんとも仲が良いんだった。と。
「徳丸さんと言えばマリーさん。実はかくかくしかじかで…。」
「トック-にお礼?あなたたちが気持ちを込めたものならあの子は何でも喜ぶわよ。」
それが一番困るんです…。
「う~ん。そうねぇ…。」
そこで何か思いついたのか、マリーさんはいたずらっぽい笑みを浮かべると
「やっぱりあなたたちにしか出来ないことが良いと思うわ。」
「私たちにしか出来ないこと…。」
私たち…それはAqoursのことでしょう。じゃあAqoursにしか出来ないことって何だろう。
うんうんと首をひねって唸る私にマリーさんはヒントをくれました。
「あなたたちは何者なのか…。さぁ!私のヒントはこれまでよ!これで思いつかなかったらアホのビンタをお見舞いするからねっ!」
と華麗にウィンクを残すと、私の背中を押し理事長室から追い出してしまいました。
…アホのビンタって…。また懐かしいものを…。
「私たちは何者なのか…か。」
「何者って…また変なこと考えてるの?」
「え?」
独り言の呟きに返事が来たので振り返ると、そこには果南ちゃんがいました。ってあれ?
「ここ学校だよ?どうして果南ちゃんがいるの?」
「その言い様はさすがに傷つくよ…。」
あぁ!あの果南ちゃんが凹んでいる!
あまりの珍しさに思わず一枚写真を撮ってから誤解を解きにかかります。
この人は松浦果南ちゃん。私の一つ年上の幼馴染みです。
「ゴメンね。休学してるって聞いてたから。今日はどうしたの?」
「うん。家の都合がついたから復学しようと思って。」
と、手に持った復学届をピラピラと見せてくれました。
「ホントだ!これでまた一緒に遊べるね!」
遊びに来ている訳じゃないんだけどな…と、苦笑いする果南ちゃん。
ここであったのも何かの縁です。徳丸さんと関係はない果南ちゃんにもさっきのマリーさんのヒントについて聞いてみます。
「さっき言ってたヤツ?千歌たちは何者なのかって。」
「うん。そうなんだ。それにちなんだお礼をすると良いって言われたんだけど…。」
「ふぅん…。ま、マリーにしては良い考えじゃない。」
「え?果南ちゃん分かったの!?」
「多分この学校のみんなも分かると思うよ。分かってないのは千歌たちだけ。」
うわぁん。もっと分からなくなってきたよぉ…!
と、一般性との下校を促すチャイムが鳴りました。部活生以外はもう下校時刻です。
「うわっ。もうこんな時間。じゃあ私は行くね。国木田くんによろしく~!」
果南ちゃんはそう言い残して慌てて走って行きました。
あれ?私徳丸さんの名字言ったっけな?
「ゴメン。遅くなった!」
屋上へと行くと、残りのAqoursのメンバーが円になって座っていました。
「あれ…?何してるの?」
その疑問にはルビィちゃんが答えてくれました。
「休憩時間に今日の昼千歌さんが言ってた徳丸さんへのお礼について話し合ってたんです。でも良い案が思い浮かばなくて…。」
「だめだー。いまいちピンと来ない…。」
「曜ちゃん。もうちょっとだけ考えてみましょう?」
「もう少し…もう少しで堕天使イザークのお告げが降ってくるのよ…!」
その光景を見て、私はとっても嬉しくなりました。
私の言ったことを覚えてくれてたのもそうですが、みんな徳丸さんへの感謝の気持ちを持っていると改めて分かったからです。
「花丸ちゃん。徳丸さんの趣味って何かな?」
私も負けじと話し合いに参加します。…花丸ちゃん頼みですが。
「運動は全般的に好きずら。あと、歌うことも好きだったなぁ。」
「それだ!それだよ!」
「「「「「へ?」」」」」
そこで私はさっき先輩2人から言われたヒントをみんなに伝えます。
私たちにしか出来ないこと。私たちは何者か。
「私たちはスクールアイドルAqoursなんだから、スクールアイドルらしく気持ちを伝えたら良いんじゃないかと思ったんだけど…どう?」
恐る恐るみんなの反応を伺います。
「良い…それ良いよ千歌ちゃん!」「なんで思いつかなかったのかしら…盲点だったわ。」「素晴らしいアイディアね。流石リトルデーモンよ。」「それなら徳兄ぃもきっと驚くずらぁ…!」「そうと決まれば頑張るびぃ!」
…どうやら好評のようで良かったです。
さて、それではAqoursによる特別企画『今までのお礼&馬鹿って言っちゃってごめんなさい記念 みんなで作る感謝の歌』を始めましょうか。これは企画倒れとかにならないよね…?汗
前書きで言い訳はしないと言ったな。アレは嘘だ。
大きく分けて原因は3つある。
1つ。やる気。
…すいません。アニメ終わって喪失感に駆られ、μ'sのファイナルに手をつけたが最後かなりの時間持ってかれました。
無印熱が再発しています。
2つ。再試。
留年の危機なう。
3つ。部活。
靱帯損傷なう。
次は3年生回orルビィ回or特別企画回です。お楽しみに!