自慢の兄ずら!   作:しましょー

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三千円であやめ殿をお迎えできましたっ。満足ですっ。(デレステの話)


風邪をうつすためにちゅーなんてしませんっ!

突然だが、各家庭には風邪を引いた時にのみ出される特別な料理があるのではないだろうか。

 

自分が熱を出してキツい中、母親が作ってくれたとびっきりの病人食を食べるとき、「あぁ、苦しいけど風邪を引いて良かったな。」と思ったりするものだ。

あなたの家の病人食はなんだろう。

おかゆ。ハニートースト。うどん。

 

いつもなら普通に感じるご飯だけど、幸せな気持ちになれる魔法のご飯。

 

国木田家での魔法のご飯は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りんごである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まる~?起きてるか?入るぞ-?」

 

そう声をかけて花丸の記号が描かれている板がかけられたドアを開ける。

中を覗いてみると、布団からまるがもぞもぞと起き出してくるところだった。

 

「りんごすり下ろしてきたぞ。食欲あるか?」

 

こくんと頷く我が妹。

それを見て俺は枕元までお盆を持って行く。

 

お盆の上にはすり下ろしたりんごとスプーンのみ。これが国木田家スタイルなのである。

俺が生まれた頃から変わらない。話によると俺の母親も風邪を引いたときはコレを食べていたらしい。家庭の味である。

 

「自分で食べれるか?なんなら俺が"あ~ん"しても…。」

 

と、そこまで言ったところで強引に俺の手から奪い取られるお椀とスプーン。

マスクをしているせいで表情は読み取りづらいが、おそらく自分で食べれる!といったところだろう。…おそらくじゃなく絶対そうだな。

高熱があっても俺に対する態度は変わらないようで。いや、「お兄ちゃん。あ~んして?」とか言われても困る。たぶんそれは別のキャラだ。

 

ゆっくりながらもおいしそうに食べるまるの姿をみて、俺も幸せな気分になったところでもう一つ持ってきたものの存在を思い出す。

 

「じゃあ食べ終わったら熱測ろうな。下がってると良いんだが。」

 

 

 

 

 

 

まぁつまり何をしているのかというと看病である。

今日の朝のこと。なかなか起きてこないまるを起こしに来たら布団の中で顔を真っ赤にしてウンウンうなっていた。急いで熱を測ってみると38.9度。

夏前に海になんか浸かるからだ。元々からだが強いわけではないくせに。

 

 

 

食欲は十分にあるようで、持ってきたりんごは綺麗に食べられてしまった。

それじゃ、熱を測って退散しますかね。

 

体温計を渡し、まるが熱を測っている間手持ちぶさたな俺は部屋を眺めていた。

基本的にあるのは最低限の家具と本である。余計な装飾などは一切ない。女の子らしさなどみじんも感じない部屋である。なんなら俺の部屋の方がちょっとした少女漫画も置いてあるし、知らない人が見たら「入れ替わってる~!?」とか思っちゃうレベル。

 

だが実際にこの部屋には見た目も中身も女の子らしいまるが住んでいるわけで。

 

じゃあ女の子らしさとは何なのだろうかーーー。その辺りまで考えたところで体温計が測定が終わったことを知らせる機械音を鳴らした。実質何も考えずボケとしてただけとも…誰がボケじゃ!(セルフ乗り突っ込み)

 

自分のモノローグのあまりの面白くなさに震えながら体温計を受け取る。液晶には38.4の文字。

 

「う~ん。下がっては来ているかな?明日の学校はちょっとキツいかも知れないけど。…もう今日はお休み。」

 

時刻は夜の7時。さすがにまるでも早すぎる時間だが、横になって目をつむっとくだけで効果はあるはずだ。

言われたとおり布団を被り直すまるに、おやすみのキスをしようとしてそういえば風邪だったと思い直す。

 

「ごめんな。今日はおやすみのキスは遠慮しとくな。」

 

「………いつも…してないずら…。」

 

今日はいつにもましてうざかったずら、と消え入りそうな声を背に聞きながら部屋を出る。

軽口たたける元気も出てきたようで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるの部屋から退出した後台所で食器の片付けをしていると、玄関のチャイムが鳴った。

 

「徳丸-。ちょっと手が離せないから出てきて。」

 

やれやれしょうがない。親父は風呂に入っていて出られないみたいだし。

 

お袋から出てきてと頼まれ、ドアを開けるとそこには手に持ったファイルで顔を隠し、体もドアの影に隠れるようにして小さな声をあげる小動物の姿があった。

ファイル両サイドから赤いツインテールが見え隠れしている。

 

「あ、あの。花丸ちゃんに今日の学校のプリントを届けに来たんですけど…。」

 

というかルビィちゃんだった。

応対したのが俺だったから良かったものの、父だったら悲鳴を上げて逃げ出したのではないだろうか。良かった。一人の少女の平穏が今ここで守られたようだ。

 

ルビィちゃんはファイルで顔が隠れてるからこっちが誰なのか分からないのではないだろうか…?

俺はちょっとイタズラ心を働かせて親父の声真似をしてみる。

 

「んんっ。ありがとうね。花丸はまだ寝込んでいて会えないんだが上がっていくかね?」

 

「徳丸さんっ!」

 

ありゃ。一瞬でバレた。

ドアの影からぴょこっと顔を出すルビィちゃん。顔を隠していたファイルをなくすと、そこには満面の笑み。うん。優勝。

もうぴょこっと顔を出した時点で審査員的には10点だね。『ぴょこっ』がポイント高いよ。

 

「こんばんは!」

 

「はい、こんばんは。」

 

あぁー…。妹に欲しい。

 

 

 

「花丸ちゃんまだ熱下がらないんですか…?」

 

「うん。朝よりは多少マシになってはいるんだけど。明日まではとりあえず休みかなぁ。」

 

「そうですか…。」

 

プリントを届けたらすぐに帰るということで、ちょっとだけまるの容態について玄関で話す。

途端に暗い顔をするルビィちゃん。心からまるのことを心配してくれているのだと分かる。

まるから聞いた話だと、この二人は中学生からの付き合いで3年間ずっと同じクラスだったとのこと。

まるをAqoursに誘ったのもこの子だという話だ。

 

今ではこうして家が遠いのにも関わらずプリントを届けに来てくれている。

 

我が妹ながら良い友達を持ったものだと思う。

妹に欲しい。

 

「もうこんな時間だ…。じゃあ花丸ちゃんによろしくお願いします。」

 

しばらく話し込んだ後時計を確認したルビィちゃんは、そう言って頭を下げた。

俺も見てみると時刻は8時を大幅に回っている。意外と話し込んでしまったらしい。

 

「じゃあ帰ろうか。」

 

「へ?」

 

俺の言葉に首をかしげるルビィちゃん。

 

「…いや流石にここでさようならとはいかないし。」

 

ここから黒澤家まではバスで15分くらい。歩けば40分はかかる。多分バスもすぐには来ないだろうから送れるところまで一緒に行こうと思ったのだが。

 

案の定ルビィちゃんはぶんぶんと首を振って「遠慮します~!」と言ってきたが、そこはごり押しする。もし一人で帰らせて何かあったら…不安で夜も眠れない。

姉に叱られるという意味でも不安で眠れない。

 

 

 

 

 

 

 

自身の帰りのために自転車を押しながら、隣を歩くルビィちゃんと何気ない話を続ける。

 

「お姉ちゃんは一緒じゃないの?こんな夜に一人で来させるとはとても思えないんだけど。」

 

「お姉ちゃんはお父さんと一緒に地区の会議に出てます。今日は帰り遅いみたいで。」

 

そうか。跡継ぎの役目があるのか…。あのひとポンコツっぽいけど、意外としっかりしてるからなぁ…。

生徒会長もして、家の役目と家柄にふさわしい習い事をして。なんてハイスペックな人なのだろうか。

そんなことを口に出すと

 

「自慢の姉です!」

 

そう口にするルビィちゃんは姉が一緒にいないのにも関わらず嬉しそうだった。この子もこの子で人見知りっぽい…というか人見知りだけど、自立し始めているのかも知れない。

おれも「自慢の兄ずら!」と言ってくれる妹が欲しかった。

 

「こんなに思われててダイヤさんは幸せ者だね。俺もルビィちゃんを妹にしたいよ…。」

 

思ってたことを口に出すと、困ったように俯かれてれてしまった。

照れちゃったのかな…?

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはつまりお姉ちゃんと結婚したいってことですか?」

 

「………はい?」

 

「だって私を妹にしたいってことはつまりそういうことなんじゃ…。」

 

 

 

まさかそんなことあるわけないじゃないですかー(汗)

まさかの切り返しに思わず足が止まる。

あの人と結婚…。そうか。そうすればカワイイ義妹がセットでついてくるのか。

…一瞬朝起きたらルビィちゃんが「朝だよ。起きて。」と言ってくれる場面を想像したが、すぐに「朝ですわよ。起きなさい。」と言ってくるダイヤさんを想像して身震いし………案外悪くないかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやないないないない。」

 

あぶねぇ…。今何を考えてたんだ俺は…。

 

「俺は義妹目当てで結婚するような人間じゃないよ。愛のない結婚はしたくないんだ…何を言ってるんだろう。」

 

『ルビィちゃんが妹に欲しい=ダイヤさんを嫁にしたい』と言う図式が俺の中でできあがってしまって、テンパって変なことを口走ってしまった。今後ルビィちゃんを妹に欲しいとは(特にダイヤさんがいるところでは)うかつに口に出せないな。

 

 

 

 

 

「…良かった。」

 

「え?なんで?」

 

聞き返すとなんでもないと言われた。

そんなに俺が義兄になるのが嫌だったのか…ヘコむ。

そう言って落ち込んだ姿を見せると慌てて「そうじゃない。そうじゃないんですっ!」とフォローしてくれた。まぁ!なんて優しい子。

 

 

 

「…冗談はさておき、妹にしたいってのは『こんな優しい子なら一緒にいたいな』って思ってるだけだよ。」

 

「家族にしろ友達にしろ、周りの人間のことをこんなにも思っている子を俺は知らない。そんな優しいルビィちゃんが妹という形で側にいてくれたら、すごく幸せなんだろうな。とか思ったから。」

 

お兄ちゃんと呼ばれたいってのもあるけどね。と最後に茶化して伝える。

ウチの妹はお兄ちゃんって呼んでくれないからなぁ…。

 

隣を見ると、褒められたのが嬉しいのか真っ赤になってるルビィちゃんがいた。

 

「ぴ…ぴぎぃ…。」

 

そんな鳴き声みたいに言われても…。

 

 

 

 

 

 

 

その後黒澤家まで無事に送り届けて改めてお礼をした後、家に帰ろうと自転車にまたがるとこう声をかけられた。

 

「これからは徳丸さんのこと、お兄ちゃんって呼びましょうか?」

 

「その申し出は凄く嬉しいんだけど多方面からの攻撃にさらされそうなのでやめてください。」

 

もちろん多方面というのはダイヤさんと花丸、並びに全国に存在する『黒澤ルビィにお兄ちゃんと呼ばれたいの会』会員の皆さんである。…実在するのかは知らんが。

 

「じゃあ、またね。」

 

「はい。おやすみなさい。送っていただいてありがとうございました。」

 

挨拶を告げて、出発する。さっきルビィちゃんが言った「お兄ちゃん」だけを切り取って脳内再生しているため、ハッピーな気持ちで今日は寝ることができそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________________________

 

徳丸さんが見えなくなった後。

 

「妹とかじゃない。私は徳丸さんの妹になんかなりたくないんです。」

 

「隣に…並んで立ちたい。」

 

そう呟く私がいました。










花丸回だと思った?残念!ルビィ回でした!

…実は読み返して思ったんです。「あれ?ルビィちゃん喋ってなくね?」

興味本位で数えてみるとルビィちゃん単独での台詞(「」の数)は
1話…0
2話…2つ
3話…1つ(最後の???です)
4話…1つ
幕間では今までの4話合計で4つ
5話&6話…0
7話…3つ
8話…3つ
9話…1つ
10話…1つ
11話…1つ
合計で「」が17個です。比較対象にまだAqoursに加入してすらいない姉の方を数えてみましょう。
1~7話…0
8話…19個
この時点でルビィ越え。嘘だろオイ。
合計は幕間まで合わせると50個にも及びました。

一概に「」の量と存在感が比例するとも思いませんが、さすがにね…。
いや、最初から恋愛ルートのヒロインだったんですよ?ヨハネとマリーとルビィは。
ルビィの幕間は次回ではなく、まだ先になりますが。


次回は3年生加入編かな。お楽しみに。
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