執筆に行き詰まったらYouTubeで"ラブライブ!"で検索して動画さまよいながら泣きそうになる癖を辞めたい。
また、そのせいで偉大なるリーダーの誕生日に間に合わなかった自分を恥じたい。おめでとうございます。
静かな部屋に流れるのは二階から聞こえてくるピアノの音。ピアノとか音楽の才能は無い俺にも分かる。これを弾いている人は技術もあるし、なにより気持ちがこもってるんだなぁって。
俺はその音をBGMに、冷たいお茶を啜りながら談笑していた。
…何でだよ………。
____________________________________________
時を遡ること3時間前。梨子ちゃんからラインでメッセージが来たことから今回の話は始まる。
「珍しいな。あの子と一対一で話したことは無かったような気がするけれど。」
メッセージを確認してみると
『新曲の作曲が出来上がりました(*^O^*)
でも今みんな忙しくてちょっと出てこれないみたいなんです。千歌ちゃんもどこかに出かけてるみたいで…(ToT)
今回の曲はいろいろ新しいことに挑戦してみたので、今すぐにでも誰かに聞いてほしいんです!(>_<)
今お時間とれますか?』
…かわいいな。かわいいけど誰だこれは。俺の知ってる梨子ちゃんじゃないぞ。
いや、ネットとかで人格が変わる人もいるし…。もしかしたら梨子ちゃんはこっちが本当の性格なのかも…。
っとそこじゃなくて。今すぐに曲を聴いてほしいか。別に筋トレしてるだけだし大丈夫だな。
『オッケーでーす(^_^)b
どこに向かえば良いかな?学校?』
『じゃあ私の家に来てください。千歌ちゃんちの隣です。』
『りょーかーい。また近くについたら連絡しまーす』
軽い気持ちで友達の家に遊びに行くつもりでオッケーしちゃったけど大丈夫かな…。
ま、梨子ちゃんも気にしてないみたいだし。俺が意識するだけ変か。
じゃあ早速準備して行こう。ピアノを弾いてる梨子ちゃんってなかなかレアだし。
とか思ってた時期が俺にもありました…。
えぇと、千歌ちゃんの家がここで…。その隣だから…。お、あった、『桜内』ここだな。
ちょっと緊張するけど…。よし、押しちゃえ!
『ピーンポーン』
「はーい?どなた様ですかー?」
聞こえてきたのは梨子ちゃんではない、それでいてちょっと梨子ちゃんに似てる声。
この時点で後悔が始まりました徳丸です。
…いつから俺は梨子ちゃんと2人きりだと錯覚していた…?
彼女は"親が今日はいないので…"とか、"実は突然の台風で親の飛行機が飛べなくなって…"とか言ったか?いや、そんな展開を希望したわけではないんだが。
案の定扉から顔を覗かせたのは梨子ちゃんのお母様と思われる女性。髪の色や身にまとう雰囲気などからまず間違いないと思われる。
「あらあら。男の子?えぇと、うちにご用かしら?」
できれば今すぐ回れ右して逃げ出したかった。言っとけよ!梨子ちゃん!俺が来るってこと!
「え、あ、あの。桜内梨子さんに用事があって来たのですが、梨子ちゃ、さんはご在宅でしょうか?」
てててテンパってしまった汗
いやでもなんかこの人ただ者じゃないオーラが溢れているような気が…。
ん?ママライブ?なんぞそれ?なんか天の声が聞こえたぞ?
「あ、徳丸さん!早かったですね!どうぞ上がってください。」
と、梨子ママの放つオーラにあてられて活動停止していた俺に天使の声がかけられた。いや、この状況を作り出した元凶か…。
「あら。梨子のお客さんなのね。ふふっ。男の子を家に連れてくるなんて小学生の頃でもなかったのに。………キープすべきかしら?」
なんか一瞬すごいことを言われた気がしたが聞こえなかった。俺には何も聞こえてないぞ。うん。
梨子ちゃんには普通に聞こえてなかったみたいで「私の部屋に案内しますね。」とか言われた。
……いや、てか、梨子ママオーラが…。いったい何者なんだ。
その後、梨子ちゃんの部屋に上がらせてもらった。なんかそこまで飾ってある訳ではないけれど、いかにも女子の部屋って感じの内装に、存在感を放つグランドピアノ。本を収納する機能性を第一に考えている、どっかの妹に見せてやりたい。
しかし机の上にはスクールアイドルの雑誌などが置いてあり、そういうのに興味が無かったと言っていた梨子ちゃんにも変化が訪れているのが分かる。
「それルビィちゃんから貸してもらったんです。私の部屋に置いてあるのがそんなに意外でしたか?」
「そういうわけじゃないんだけど…。いや、そうだね。正直意外だったわ。」
俺の視線に気がついたのかそう尋ねてきた梨子ちゃんに正直に返す。
「私自身も自分がこんなにスクールアイドルってものに魅せられるとは思っていませんでした。まさか自分がアイドルになるなんて夢にも見たことなかったですし。始めた最初の方も実はいろいろ不安でした。」
はにかみながら梨子ちゃんは続ける。
「でも今はすごく楽しくなって来ちゃって…。千歌ちゃんが言ってたことが当たったみたいで悔しいんですけどね。毎日のダンスの練習も、こうして歌を作ることも、今では無いと何か足りないように感じちゃうんです。」
彼女はピアノに腰掛けながら最後には笑顔で言い切った。
「私、スクールアイドルに…Aqoursになってホントに良かったです!」
…ホントにAqoursのメンバーは良い笑顔をするから困る。
そのままの表情でピアノを弾き始める梨子ちゃん。
指が留まること無く流麗に動く様子はそれこそ女神のように美しくて。
「………綺麗だ。」
「ふえっ!?」
そしてその言葉を聞いてしまった梨子ちゃんに「恥ずかしいから一階で聞いててください!!」と真っ赤な顔で追い出されて冒頭に戻る。そう。どんなにいい話を装っても再終着地点はすでに決まっていたのだ。
「今日はうちに来てくれてありがとうね。国木田くん。」
その美しい美声(大事なことなので2回言いました)で話しかけてくる梨子ちゃんママ。しかし似てるな…。梨子ちゃんも大人になったらこんな女性になるのか。
「あの子が家に男の子を連れてくるなんて初めてなの。中学校からずっと女子校だったから浮いた話も無かったし、ちょっと心配してたんだけど、大丈夫そうね。」
何がですか。
「い、いえ、僕たちはそんな関係じゃありませんよ?僕の妹の友達ってだけです。」
便利だな。『妹の友達』
「分かっているわよ。お隣の高海さん達と同じでしょ?」
「ご存じなんですか。」
「えぇ。お隣の音は意外と聞こえてくるのよ。いつも賑やかで楽しそうね。」
俺はそんなに千歌ちゃんの家にお邪魔したことは無いのだが。そうか。いつもあんなに騒いでるのか。
と、梨子ママは手に持っていたお茶を置くと
「ありがとうね。梨子と仲良くしてくれて。」
頭を下げた。ってええ!?
「いえいえっ!とんでもないですよ!梨子ちゃんはとても良い子ですよ?」
「それは分かっているわ。でもあんな普通の子といて楽しくなかったりしない?地味だし、おっちょこちょいだし。」
「そんなことないです。梨子ちゃんはAqoursに無くてはならない存在ですよ。作曲をほぼ一手に引き受けてもらってますし、時には暴走するメンバーのブレーキになってくれます。」
「確かに少しドジなところもありますけど…。それも魅力の一つだと思いますよ。完璧な人間なんて付き合って楽しいものではないですし。それに梨子ちゃんが地味っていうんなら俺は世の大半の女性を地味と言い切ることができますよ。だからお母さん、自信を持ってください。あなたの娘さんと一緒にいて、僕はとても楽しいです。」
いかん。なんか嫁にもらうみたいな雰囲気になってしまった。
梨子ママはあっけにとられた表情をしていたが、なにかに気がついて表情を戻すと、「それじゃあ梨子を末永くよろしくね。」と言っていたずらっぽく微笑んだ。
だからその言い方だと誤解を招くって…。あんだけ熱弁した手前「はい。」としか言えなかったが。
「な」
「な?」
「何の話をしているんですかーーーーーーーー!」
振り返ると顔を真っ赤にして母親に突っかかっていく梨子ちゃんの姿。え、まさか聞いてました?
「『梨子ちゃんはAqoursに無くてはならない存在ですよ』あたりからだっけ?梨子。」
気づいてらしたんですか…。だからあんな言葉を選んで。ん?おれめちゃくちゃ恥ずかしいこと言ったかも…?
その後梨子ちゃんをなだめすかすのに暫くかかり、いざ帰ろうとすると梨子ちゃんパパが帰ってきて一悶着あったりしたというのはまた別の話。
梨子ちゃんはこんな感じでママさんやらマリーやら果南やらにいじってもらいたい(願望)
ってことで梨子ちゃん回でした。時系列は本編よりだいぶ後を想定してますが、まぁ別にいつでも大丈夫でしょう。
次回は(作者が)待ちに待った曜ちゃん回ですんで。たぶん。おそらく。きっと。