私が浦の星女学院から転校する前日。
「なぁ。マリー。転校するって本当か?」
「えぇ…。家の都合でね。伝えるのが遅くなってごめんなさい。」
目の前の男の子は一瞬悲しそうに目を伏せたけれど、すぐに顔を上げて
「まぁ今生の別れってわけじゃねぇしな!ちゃんと連絡しろよ!」
そう言って笑顔で送り出してくれた。
転校自体はそんなに悲しいことではなかったけど、この笑顔が見れなくなるのは少し寂しいわね。
私も笑顔を頑張って作りながら、この明るい男の子と出会った日のことを思い出してた。
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今でこそ親友と言っても過言ではない仲だけれど、私とトック-は最初から意気投合したわけではないわ。
最初に同じクラスになったのは中学2年生の時。国木田っていう初めて聞いた名字だったから最初の自己紹介から印象に残ってた。
彼は野球部に所属していて、運動もできて面白い、いわゆる人気者ポジションだった。たぶんそれは今でも変わらないけど。
その頃の私はみんなが想像しているように日本語が苦手で、話せる人もいなかった………そんな外国人キャラじゃなかったわよ?
ちゃんと話そうと思えば話せるわ。今と同じで、カタコトになる時なんて9割わざとよ。
…あれ?みんな分かってたわよね?アレ、わざとよ?
お互い友達は多い方だったけど、なんでか話す機会が少なくて、しばらくはただのクラスメイトって言う認識だった。
事件が起きたのは夏休みが明けて2学期が始まった頃。
その頃、私達のクラスでMONOが紛失する事件が起きたの。あ、間違えた。物が、ね。
無くなったのは消しゴムだったり、教科書だったり、中にはリコーダーを無くした子もいるわ。あ、男の子のリコーダーだから多分そう言う目的じゃないと思うんだけど。
そして上の文から分かると思うんだけど、物を紛失したのは一人じゃなくてクラスのみんな。みんなが何か一つずつ無くしていた。
面白いでしょ!?興味深いでしょ!?interestingでしょ!?
でもこの小説は恋愛コメディーであって、ミステリーじゃないから事件については適当に要点だけね。
クラスでは担任の先生が主体になってHRで犯人捜しを始めた。
まぁ犯人はトック-だったんだけど。
…え?いきなりすぎる?
しょうがないじゃない。だってこの小説は(ry
まぁ敢えて推理するとしたら、このエピソードが私とトック-との仲良くなったきっかけってことから、私かトック-は事件に関わってるんだろうな~ぐらい?
あとは二択ね。コインで決めようかしら。
そうだった。仲良くなったきっかけを話してるんだったわね!
いや…ごめんね…。このエピソード自体にそんなに意味は無いのよ…。
実は仲良くなったっていうか、私が彼のことを気に入ったのは事件を引き起こした動機でね…。
「身体測定のための体操服を忘れた。バレたら怒られると思って自分の体操服も怪盗Xに盗まれたことにしようと思った。」
ぷはぁwwwwwwwwwwwwww
怪盗Xwwwwwwwwwwwwww
ちょっと待って怪盗Xどこから出没したの!?
もしかしてアレ?怪盗は神出鬼没ってヤツ!?
そんな感じで思ったのよ。あ、コイツは人気者とか以前にただのバカなんだなって。
こんな面白い人を何故今まで見逃していたんだ…ってね。
そんなこんなで(上の2段落の書き出しがホントに"そんなこんな"でマジでびっくりしたのは書き終えてからです。)いろいろ話すようになったの。
トック-は本当にfunnyな人でね。みんなからの人気の理由がよーく分かったわ。
男子にしては気配りができるし、空気も読める。背は私より小さかったけれど、足も速いし運動もできるし。
なにより面白いし。存在が。
人気の理由は分かっていった。そりゃモテるわよね。
でも一つだけ分からなくなっていった。
こんなにいい人が、何であんなに頭の悪い事件を引き起こしたんだろう?
どうしてもその怪盗Xのイメージと、仲良くなって中身を知っていったトック-とのイメージがマッチしなかった。
でも本人に聞いても「事実だよ?」としか言わないのよね~。
だから事件が起こったときにトック-と仲良かった人たちに聞いたのよ。
そしたら、やっぱり事実じゃなくてね。
「徳丸はバレてないと思ってるんだけど、実はアレは別の人のために引き起こしたんだ。」
「なんか、ホントのいじめがあって上靴を隠されてた人がいたらしくてな。」
「そのいじめをされていた本人。まぁK君なんだけど、K君が気づく前にその主犯グループが実行してるところを徳丸が目撃しちゃって。」
「なんとかK君が悲しまないように配慮した結果がアレなんだよ。」
「そいで事件が発覚してみんなが騒いでる間に主犯格呼び出して上靴取り返してな。」
「あれは同性の俺から見ててもかっこよかったわ。」
「なんで俺が知ってるのかって?そりゃあ四六時中徳丸のことを見てるからに決まってるじゃないか。」
最後の一言でその人は私の中で要注意人物になったけれど、まぁ教えてくれた情報はホントみたいで。
もうその頃にはトック-は今と変わらない親友ポジションにいたんだけど、更に好感度跳ね上がったわね。
このことはクラスの大概のみんなが知ってるみたいで、本人だけ隠せてると思ってるようだった。
やっぱいい人よ。トック-は。
中学校の間はたくさん一緒に遊んだわ。まぁ私も自由奔放に生きてたから、トック-と一緒にやんちゃしたりすることはとっても楽しかった。
本人は「マリーのせいで大変だよ。なんで俺がブレーキ役やらなきゃなんだ。」とか言ってたけど、私からしてみればあなたも楽しんでたでしょ?って感じ。
中3になっても同じクラスになった私達は様々な学校行事や受験勉強なども一緒に頑張った。
私は浦の星女学院が第一志望校だったから高校はたぶん別々になるんだろうな~と思ってたけど、トック-は「じゃあ俺も浦の星に行こうかな。」とか言っていた。たぶん冗談だったと思う…思いたい。
トック-は少なくとも勉強ができる方じゃなかったから、ほとんど私が教えるかたちだったけれど、勉強会なんかもしたわね。
そして無事にお互い志望校に合格。4月から別々の高校になった。
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まぁそこからはご存じのように私がスクールアイドルを始めたり、ちょっといろいろあって転校したり。
ラインとかで連絡はとっていたけど、顔を合わせたのは私が引っ越す日が最後で、二年経って浦の星の屋上で再会したの。
最初見たときは誰か分からなかったけれどね!
2年経ってもトック-はいい人だった。
私が廃校のことで悩んでるってすぐ見抜いて。
力になってくれると約束してくれた。
大切な…マリーのために…ね。
嬉しいことを言ってくれるわね。
おかげでなんだか胸の奥がぽかぽかしてきて、これからも頑張ろうって思えるわ。
ふふっ。何ででしょうね?
私も彼のことを大切に思っているからかしら?
大事な大事な…親友なんだもんね。
「あ、マリー。お前Aqours入れ。」
ふぇっ!?
2話同時投稿です。(できてますよね?)
よろしければ次の話へお進みくださいな。