※現実世界に、ポケモンが入ってきたら...です。
<飛び込みますか>
―YES
―NO
スマホにはそんな表記が。
目の前には黒い渦が舞っている。
…ボクは選択を迫られていた。
なんでこうなった!?
説明しよう…
最近ボク、白石阿斗はスマホデビューを果たした。
初めて取ったアプリ。
-ポケモンKO-
自分に限ってこれにハマることは無い。
そう思っていた。
余裕を持ってスマホを弄ること数分。
うおぉぉぉ!!
気づけばハマっていた。
ボクはポケモンに勝てなかったよ…
よよよ。
と言いながら課金をすること9千円。
お年玉を全て使うのは時間の問題だ。
そう、白川阿斗は既に中毒患者になっていた。
...後戻りは、出来ない。
するつもりも無いが。
・・・・・・
八月一日
今日も、ポケモンを探しに外へ出る。
今はバスに乗って遠出していた。
10分に一回、画面を見る。
どんなポケモンが周りにいるのか確かめるためだ。
…別に居ないな。
そう言って、ポッケにスマホをしまおうとした。
その時、GPSの更新がされる。
丁度見ている画面には新しいポケモンの影が。
ん…?これは。
一番右下に初めて見る影がある。
それはぐるぐると渦巻く、渦の影。
何だ、これ…。
その時、運転手の声が聞こえた。
「次は、牛田山荘まえ、牛田山荘まえ。」
プシュー、
扉が開く。
まさか停車する直前に言うとは。田舎おそるべし。
そんなことを考えていたら、入り口が閉まる。
まずい、降りないと…
「あ、はーい。降ります、降ります。」
そういってドタドタとバスを降りた。
ミーンミンミン。
セミの鳴き声が聞こえる。
初めて聞く声だった。
…しかし、暑いなぁ。
真上にはカッと照り付ける太陽。
今日も絶好調だ。
さて、探そうかな…
目標は
距離はまだある。
どこにいるか分からない。
だけど、このへんに居る気がする。
異常に葉っぱが舞っているしな。
山の中へ足を踏み入れた。
どうせすぐ嫌になって山を下りると思っていた。
しかし...
まさか山が、こんなに良い所とは、知らなかった。
イメージと違い、山の中は結構涼しい。
地面から放出される熱が少ないからだろう。
...そして大量のポケモン達。
湧きに沸いている。
もうね、ウハウハだ。
レアポケモンもたくさん捕まえた。
しかしまだ渦は見つからない。
スマホの画面を見る。
うーん、ここらへんに居るはずなんだけどなぁ。
少し辺りを歩こうと思った。
さらば楠の木クン。優しい木漏れ日をありがとう。
山に入ってから良いことが続き、気分がいい。
♪~歌でも歌ってしまおう。
適当に拾った木の棒を振るい、道無き道を行く。
気分は五右衛門。
いやあ!
棒をフルスイング。
膝丈まである草を切る。
「ふっ、またつまらぬものを…お?」
先には空間があった。
さっき草を切ったことで、そこに通じたらしい。
てくてく、と歩いて入った。
スマホを取出し画面を見る。
お、おぉぉ!!
アバターの前に渦があった。
よし、タップだ!
ポチッと触ると画面が切り替わる。
どうせだし、ARモードで取ろう。
今周りにある風景を映し出す。
さて、どこかな?
...どうやら探す必要は無かったらしい。
目の前にある。
おーっし、捕まえるぞ!
画面下にあるボールをタップする。
ちょうど良いタイミングで、投げる!
当たった!!
….!?
吸い込まれた。
いやいやいや、なんでやねん。
そう、今のは誤作動が起きたのだ。
あるよね、そういうことって。
うんうん。
よし、それでは仕切りなおして…投げる!
当たった!!
… …
吸い込まれた。
ファ!?
…投げる!
当たった!!
吸い込まれた。
…投げる!
当たった!!
吸い込まれた。
…投げる!
当たった!!
吸い込まれた。
・・・
投げる…
当たった…
...吸い込まれた。
・・・・・・
てやんでい!バーロ!!チクショオ!!!
…一時間は投げた。
もうすぐボールが尽きる。
何十回と投げたが、一度も捕まる気配が無い。
それどころか、捕まえるボールが捕まる始末。
くそお!こいつめ!!
やけくそになって渦をタップした。
すると新しい画面が出てくる。
一面に渦のみ出た。
次いで文字が出てきた。
<飛び込みますか>
―YES
―NO
・・・???
どういうことだ?
質問が何を言いたいのか分からない。
そもそも、この状態はなんだろう。
それに、画面を見すぎて目が痛い。
少し休もう。
目を閉じる。
どかっと座り、スマホを横に置いた。
こめかみをつまむ。
そしてはあー、と大きく息をついた。
後ろに両手を置く。
目に風景が映る。
青い空・・・
白い雲・・・
黒い渦・・・
ふう…なごむ。
…て、え!?黒い渦!!ちょ、どゆこと?
パニック。
目に入ったのは、スマホ越しに見ていた
ずざざ…。
後ずさる。
距離を取って再び前を見た。
よし、動いてないな…
黒い渦は移動していない。距離は取った。
落ち着け...
こういう時は女の子のことを考えろって、じっちゃんが言ってた。
女の子、白いブラウス、黄色のパンツ。
あああ、違う違う違う。
心臓がバクバクしてきた。
…江本さん。
この間パンツ見たこと、まだ怒っているかな?
急速に冷める心。
赤から白に変わり、青くなる。
…今、そのことを考えるのはよそう。
思考を放棄した。
現実に目を向ける。
ちらり、と渦を見る。
さっきから、動きがない。
じっと、渦を観察する。
ずっとぐるぐる渦を巻いている。
中心にいくほど、黒い。
まるでブラックホールだ。
あ、ちょうど、石がある。
ぶんっ!
投げる。
当たる。
吸い込まれる。
…あれ?
スマホでボール投げた時と反応が同じだった。
てことは…
スマホを手に持ち、画面を見る。
何も映っていない。
そっか、渦を映さないと…
スマホの画面に渦を映す。
<飛び込みますか>
―YES
―NO
さっきと同じ表記が現れた。
スマホから目を離す。
目の前に渦があった。
...いまいち信じられないが、これは現実らしい。
さて、どうしようか。
・・・
まあ、考えても仕方がない。
結論なんてとうに出ている。
さわらぬ神に祟りなし。
全くもってその通りだと思う
そうとも…
人生、やっぱり波風立てないのが一番だよね。
立ち上がる。
くるりと後ろを向いた。
背には渦。
一歩前に踏み出した。
片手にスマホ。
ポチッとな。
―YES
あ…
気づいた時には遅かった。
ズおおお!!!
渦を中心に強力な風が吹き込む。
アーーーー!
ボクはそのまま渦に吸い込まれていった。
・・・・・・
渦を抜けると、水の中だった。
がぼぉぉ…
ボクは絶賛溺れている最中だ。
ああ、お母さん。今からそちらに行きます。
じっちゃん。店番サボってごめん。
お父さん。別にいいや。
もう、駄目だ。
がくっ・・・
・・・
あるえ?意識がまだある。
「ぼうゆうごどば?」(どういうことだ?)
水中で声を出せた。
は!そういえば息もしてる。
うーん…分からん。
「ぐぼあ!!」(ぐはあ!!)
頭を捻っていると、何か体に高速でぶつかってきた。
なっ!くそ
混乱するボクに二度目の突撃。
「ココココココ。」
「ぶほお!!」(ぐほお!!)
っく、このままではまずい。
動かないと、良い的だ。
水をかき、水中を移動する。
その時、三度目の突撃。
...見切った!
「ココココココー!!」
グリンと回避。
すれすれを通り過ぎる。
その姿を、見た。
「ば!ぼいびんぐ!?」(な!コイキング!?)
たい焼きに似たシルエット。
長い髭。たらこ唇。
色は金色だが・・・
それはよく知るポケモン、コイキングだった。
この不思議空間はポケモンKOと繋がっているのか。
さっき守ろうとポッケに入れたスマホを出した。
画面を見る。
いつもの捕獲画面だ。
いや、何か書いてある。
<捕まえよう!>
※捕まえないと、死ぬまで此処にいることになります。
「はひっ!?」
その時、4度目の突撃。
「ココココココココー!」
「ぶふぁ!!!」(ぐはぁ!!!)
コイキングが突撃してくる。
もろに体に当たる。
くっ…やばいな。
捕まえるのか、あのコイキングを…
遠ざかるコイキングにスマホを向ける。
「びげーっ!!モンズダーボール!!!」(いけーっ!!モンスターボール!!!)
投げたモンスターボールはスマホから飛んでいく。
弓なりに進むボール。
しかし、コイキングのスピードが変化し、当たらなかった。
「ぶそうっ!」(くそうっ!)
だがまだボールはある。
旋回し始めた、コイキングにボールを投げる。
ボールは進み、コイキングに、当たった。
「ここっ!」
コイキングは当たる瞬間、尾ひれを打ち、ボールの軌道を変える。
ボールはいずこかへ飛んで行った。
そこに5度目の突撃。
「ここここここここ!!!」
「ぐぼあっ!」(ぐはあっ!)
コイキングは腕を狙ってきた。
突撃が命中し、スマホが飛ぶ。
急いでスマホを取りに行こうと、水をかく。
わっせ、わっせ、わっせ。
そこに6度目の突撃。
「ごばあ!!!」(ごはあ!!!)
みぞおちに入った。
息が出来ない。
虚ろな視界で見た。
キランッ、と光った金色の鱗。
猛スピードで近づいてくる。
やばい、あいつ。
ボクのことを
しかし、そんなことをさせる訳にはいかない。
「コココ….」
息のできない中、水をかく。
前に少しずつ進む。
「コココ..」
もう少し・・・届いてくれ!!
コイキングは一個の弾丸となっていた。
「ココココ!.」
突撃するほんの少し前、手がスマホに届く。
左手で持ち、右手人差し指で操作する。
「びげえ!!ぼんずだあボール!!!」(いけえ!!モンスターボール!!!)
「コココココココオ!!!」
ボールが投げられた。
ボールは引き合うようにコイキングを目指し突き進む。
ぽんっ!
ボールが当たる。
コイキングが吸い込まれた。
・・・
ボールが揺れる。
ゴクリ、と唾を飲んだ。
・・・
ボールが揺れる。
音は出さない。食い入るようにして見る。
・・・
ボールが揺れる。
ボールのセンターボタンが赤く点滅した。
それきり動かなくなった。
…捕まえたのか?捕まえたんだよな!?
ボールに手をのばす。
手で持つと、ボールは嫌がるように揺れた。
い・・・
いやあったああーーーーーっ!!
ものすごく嬉しい。
今すぐ踊りだしたい気分だ。
しかし、今は我慢。
ポケモンを捕まえたんだ。
あれをしよう。
ボールを右手で持つ。
腕を高く振り上げた。
「ぼいびんぐ、GETでぜ!」(コイキング、GETだぜ!)
その時、スマホが鳴る。
ブザー音だ。
スマホを見る。
<おめでとう。そのポケモンを大切に育ててくれ。
それでは、君を現世へ送ろう。>
見終わると、スマホが輝きだす。
そこで、ボクの意識は…
途切れて、しまった。
気づけば...病院。
ベッドの中にいた。
今日この日、一つのニュースが世界を駆け巡った。
ポケモンの実在が、確認されたのだ。
場所は世界各地で。
“変革の日”
八月一日はそう呼ばれるようになった。
続く・・・かも。