「ここは……何処……」
少年は辺りを見渡し、自分が何処にいるのか理解しようとする。
「森……僕は一体……誰?」
記憶を失った少年は、行く当てもなくふらふらと森の中を歩く。
空腹と疲労、眠気に襲われながらも少年は歩き続けた。
自分にはするべきことがあった。
だが、そのすべきごとがわからなかった。
だからこそ、歩き続けた。
次第にその足は、覚束無い足取りになり、そして、とうとう少年はつまずき、地面に倒れる。
薄れて行く意識の中、少年はある光景を見た。
木々の立ち並ぶ森。
鳥の囀りと風が吹く音に耳を傾けながら、弓を手にした一人の男の姿を。
男は人ではなく、人々の平穏な暮らしを愛した。
そこで、少年の意識は途絶えた。
ある日、とある孤児院に一人の男と女が訪れた。
男の名前は衛宮切嗣。
女の名前はアイリスフィール・フォン・アインツベルン。
苗字は違うが二人は夫婦であった。
二人はとある事情で、世界を飛び回っており、世界各地に知り合いがいた。
そんな折、友人だった夫妻が海外でテロに巻き込まれ亡くなり、その夫婦の子供がその国の孤児院に預けられていると知った。
二人は話し合い、その子供を引き取ることにし、孤児院を訪れた。
個室で子供と出会い、切嗣は「養子にならないか?」っと率直に聞いた。
すると、少年は「いやだ」と答えた。
理由を聞くと、少年は孤児院にもう一人日本人の子供がいて、自分はあの子の兄代わりだから、あの子が誰かに引き取られるまで自分は孤児院を出て行かないと言い張った。
そして、養子にするなら自分よりその子にしてくれと頭まで下げた。
少年にとって、その子は大切な家族なのだろうと、切嗣とアイリは思った。
「なら、その子も一緒に引き取ろう」
「え?」
「大事な家族なんだろ?だったら、引き離すのは可哀相だ。その子も一緒だ」
「本当にいいの?」
「ああ、もちろん。アイリ、良いかい?」
「ええ、もちろん!家族が増えるのは嬉しいわ!」
切嗣は職員に頼み、もう一人の日本人の子を呼んでもらった。
切嗣とアイリはその子を見ると、一瞬驚いたが、すぐに笑顔になり、挨拶をした。
「こんにちは。行き成りだけど、このお兄さんと一緒に、僕たちと暮らさないかい?」
少年はおろおろとしたが、兄である少年の笑みを見ると、躊躇いながらも頷いた。
「それは良かった。なら、早速日本に帰ろう。イリヤも待ってる」
「ああ、イリヤもきっと喜ぶわ!」
「イリヤってのは、僕たちの娘だ。君にとっては妹になるね。こっちの子は………年齢的にイリヤと同じぐらいか。兄か弟か、今後次第だな」
その後、切嗣とアイリは手続きを済ませ、正式に二人を養子として向かえた。
「これからよろしくね。私のことは、気軽にママって呼んで良いからね」
「じゃ、僕の事はパパかな」
二人に手を繋がれながら、二人の少年は新たな家族を手に入れた。
兄の名前は衛宮士郎。
そして、その弟の名は、衛宮陸。