やっぱりと言うか、美遊はクラスメイトから質問攻めに会っていた。
転校生が来たらお約束の展開だ。
そんな中、俺はイリヤに引っ張られ、廊下に出る。
「まさか、転校してくるなんて」
「イリヤの好きな魔法少女系ではお約束の展開だろ」
『謎の転校生現る、ですね』
『魔法少女モノではよくあることです』
「うわっ!?」
行き成り俺達の背後に、昨夜、美遊が持っていたステッキ、サファイアが現れる。
『あら、サファイアちゃん』
『昨夜ぶりです。姉さん』
流石に廊下では人目につくので、屋上に移動し話をすることにした。
『初めまして。サファイアと申します』
『こちらは、私の新しいマスターのイリヤさんと、昨夜、ライダーの英霊を倒した陸さんです』
「ど、どうも」
「初めまして」
ルビーの自己紹介の元、俺達も挨拶をする。
『姉がお世話になってます』
ルビーと違って、礼儀正しいな。
「てか、ルビーとサファイアは姉妹なのか?」
『はい。私とサファイアちゃんは同時に作られた姉妹なんですよ!ところで、サファイアちゃん』
『はい。美遊様のことですね。彼女は私の新しいマスターです』
『やっぱりそうでしたか!さっすが、サファイアちゃん!可愛い子、見付けましたねぇ!』
『はい。それに、カードの力も使いこなせていますので、共闘するにあたって問題はないかと』
「ねぇ、ルビー。カードの力ってなんのこと?」
『姉さん、まだ説明してないんですか?』
『そう言えばまだカード周りの説明はしてませんでしたね。無事、初戦を切り抜けることも出来ましたし、お話しておきますか』
今から、二週間前、魔術協会はこの冬木市でオド、つまり魔力の歪みを観測し、協会は調査団を派遣し、調べた結果、クラスカードを発見した。
歪みは全部で七つ。
七枚のクラスカードの内、協会は二枚を回収し、昨日俺が倒した一枚。
つまり三枚まで回収が終わっている。
そして、クラスカードは英霊、つまり神話や昔話などの英雄の力を引き出すことが出来る。
クラスカードには一枚に、そのクラスに会った英霊の力を使える。
凛さんが持っていたのはアーチャー。
ルヴィアさんが持ってるのはランサー。
そして、力とはその英雄が使っていた武具などで、それは宝具と呼ばれる。
ルビーとサファイアはカードを介すことで、英霊の座にアクセスし、その英霊の力を一瞬だけ具現化できる。
以上が、ルビーとサファイアの話だ。
『どうですか?凄いですか?凄いですよね!凄いでしょ!』
ルビーがドヤ顔で言ってくる。
『イリヤさん、陸さん。もうお分かりと思いますが、昨日戦ったアレもカードから具現化した英霊の一部。つまり、英霊そのものです』
『ただ、本来の姿からかなり変質して、理性が吹っ飛んじゃってますね』
『つまり具現化した英霊たちを倒さないとカードは回収できないんです』
なんともまぁ、面倒なことに巻き込まれたな。
イリヤも重々しく溜息を吐く。
『大丈夫ですよ!そのために、私とサファイアちゃんがいるんですから!』
『全力でサポートさせてもらいます』
ルビーは性格は兎も角、その力は本物だし、サファイアも常識を持った礼装だ。
それに俺の謎の力。
「あ、そうだ。ルビー、サファイア。昨日、俺が使ったあの力はなんだ?頭では宝具の使い方とか分かってたから、英霊の力であるのは違いないが、なんでそんな力、俺が持ってるんだ?」
『それなんですが、あの後、私も色々考えてみたんですが、思いつかなかったんですよね』
『分かっていることは、陸様はその英霊の力を完全に使いこなし、自身の物としていることです』
英霊の力を物にね…………
なんでそんな大層な物を俺が持ってるんだか…………
『ともかく、これからは共に戦うことになるでしょう。どうかこれからも美遊様とカード回収を「サファイア」
その時、屋上に人が現れた。
現れたのは美遊だった。
「何してるの?あまり外に出ないで」
『申し訳ありません。イリヤさんと陸さんにご挨拶をと思いまして』
美遊は俺とイリヤを一瞥し、そしてそのまま屋上を去って行った。
まただ。
美遊の奴。
俺の方を悲しそうに見た後、一瞬だけだが、イリヤの事を睨むように見た。
もしかして、アイツ、俺の事を知っているんじゃないのか?
「なんというか、随分クールな子だね」
イリヤはそれに気付かず、のんきにそんな事を言う。
だが、美遊はクールだけの子じゃなかった。
算数の時間。
「じゃあ、この問題を美遊ちゃんに解いてもらいましょうか」
円錐の体積を求める計算。
公式さえ押さえて置けば、答えを出すのは簡単だ。
だが、美遊は意味の分からない計算式を書き出し、俺たちは唖然とする。
「いや、あの美遊ちゃん……この問題は積分とか方程式とか使わなくていいの!」
「?」
「そんな不思議そうにされても!」
小学生で、そんな高校生クラスじゃないと習わない様な事が出来るって………
図工の時間。
人物画で自由に描いて良いと言われて、俺はイリヤを描いておいた。
イリヤはと言うと、「まぁ姉だし当然だよね!」っと言っていた。
いや、ただ単に書きやすいからなんだけど……言わなくていいか。
「美遊ちゃん………これは?」
藤村先生は、震えながら美遊に絵のことについて尋ねる。
「自由に描けとのことでしたので、形態を解体して、単一焦点による、遠近法を放棄しました」
つまり、芸術的な絵を描いたってことか。
「自由過ぎるわ!てか、キュピズムは小学校の範囲外ですから!」
「…………ん?」
「だから、そんな不思議そうな顔されても!」
家庭科の時間。
ハンバーグを作る内容で、俺はイリヤと同じ班でペタペタとハンバーグを作っていると、隣の班で歓声が上がる。
美遊はハンバーグ以外にスープやサラダ、デザートとかも作ってた。
どっから材料を出したんだ?
「小学校の調理実習でこんな手の込んだ料理は作らないから!てか、フライパン一つでどうやったの!」
ちなみに藤村先生は絶叫しながらも一口食べてうまいっと言ってた。
後、何故か美遊は俺にも一口分けてくれた。
まさか、生まれて初めて(記憶を失ってから初めて)身内以外での「はい、あーん」がこんなにも早く実現するとは思わなかった。
俺のハンバーグも丁度できてたので一口上げた。
勿論、俺の手で「はい、あーん」で。
初日からずっとクールな美遊の表情が、この時ばかりは崩れ、顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに食べた。
この間、イリヤはずっとハンカチを噛んでいた。
イリヤSIDE
これはピンチだ!
陸と美遊さんがなんかいい雰囲気になってる!
このままだと、陸の隣が奪われる!
なんとかしないと!
でも、私は勉強も普通だし、美術力も普通、女子力も普通、いや、普通よりちょい下ぐらい。
とても敵いそうには…………いや、まだあった!
私にも勝てそうなことが!
そして、本日の最後の授業、体育の時間になった。
龍子がスクール水着ではしゃいでいるが、今の私には関係ない。
今日の体育は短距離走。
短距離走なら、私はクラスでは男子より速い。
つまり、短距離走なら勝てる!
先生に頼んで、美遊さんと一緒に走らせてもらうことにした。
とうとう、私の番が来た。
美遊さんとレーンに並び、クラウチングスタートの体勢になる。
「よーい!……スタート!」
合図と同時に走り出す。
ほぼ同時に出た。
殆ど横並び。
このまま一気に引き離す!
足に力を込め、スピードを上げる。
だが、引き離すことは出来ず、逆にどんどん引き離される。
負けたくない!
だが、距離は縮まらず、結局一秒の差をつけられ、負けた。
ま、負けた…………………
陸SIDE
体育の授業の後、イリヤは美遊に負けた後、酷く落ち込み、今は公園のベンチに座り、俺の隣で項垂れている。
『も~う、何時までいじけてるんですか、イリヤさん?』
「別にいじけてないよ。ただ、才能の壁を見せつけられたって言うか」
「他人と自分を比べてどうする?」
俺は隣で、イリヤの頭を撫でて言う
「ま、弟である俺から見れば、イリヤはよく頑張ってると思うぞ。だから、落ち込むなって」
「………もう、弟のくせに生意気なんだから」
そう言うとイリヤは嬉しそうに立ち上がる。
「帰ろ!」
「はいよ」
すると、ちょうど公園を出た所で美遊と遭遇した。
美遊は驚きの表情で俺を見ながらも、尋ねて来る。
「……何してるの?」
「こ、これはどうもお恥ずかしい所を、美遊さんは今お帰りで」
「なんで、同じ魔法少女で仲間なのに、敬語なんだよ」
「あ、そっか。仲間だもんね」
「貴女は、何でカード回収をしているの?」
美遊が行き成りイリヤに尋ねて来る。
「それは……成り行き上というか、しかたなくというか、騙されたというか……」
「そう、じゃあどうして貴女は戦うの?巻き込まれただけなんでしょ?貴女には戦う理由も、その義務もないんでしょ?なのにどうして戦うの?」
「……実を言うとね、昔からこういうのにちょっとだけ憧れてたんだ。魔法を使って光線出したり、敵と戦ったりするのってアニメやゲームみたいじゃない?そういうのにちょっとワクワクするというか、せっかくだからこのカード回収のゲームも楽しんじゃおうかな~と思って」
「もういいよ、貴女にとってあれはゲームと同じ遊びなのね。私はそんな人を仲間なんて思いたくない」
淡々とした口調で言うと、踵を返す。
「あ、あの……美遊さん?」
「貴女は戦わなくていい。だから、せめて私の邪魔はしないで」
「なぁ、美遊」
帰ろうとした美遊を呼び止め、俺は言う。
「理由なんざ、人に寄って違うんだ。なのに、それを怒るのはちょっと違うんじゃないか?」
そう言うと、美遊は目を見開いた。
「確かに、イリヤの言葉はお前からにしてみれば癇に障っただろうけどよ………だからって、それは言い過ぎだと思うぞ。自分の考えが正しいと思ってるなら、それは大間違いだ。自分の考えや価値観を、他人に押し付けるな」
声のトーンを少し落として、言う。
すると、美遊は俯いたまま、何も言わず去って行った。
去る時、なんかキラキラとしたものが目から出ていた様な気が……………
「………陸、庇ってくれたのは嬉しいけど、ちょっと言い過ぎだよ・・……」
「やっぱまずいかな?これ………」
「今度あったら謝ろう。私も、カード回収の事、甘く考えていたのは事実だし………」
美遊にどう言って謝ろうか、考えながら家を目指していると、家の前にセラが立っているのに気付いた。
「ただいまー、セラ」
「セラ、ただいま」
「あ、おかえりなさい、イリヤさん、陸」
「どうかしたんですか?」
「えっと……あれを」
そう言ってセラが見ている方を見るとそこには豪邸があった。
「なっ!?………お、大きい」
「こりゃ、すげぇな」
「何、こんな豪邸!?こんなのうちの前に建ってたっけ!?」
「いや、朝の段階では無かったとはずだが……」
「今朝、二人が学校に向かった直後工事が始まったと思ったら、あっと言う間に」
するとそこに、美遊が現れた。
「あっ」
「あっ」
気まずい空気が流れる。
美遊の目には動揺が見らた。
そしてそのまま豪邸の門を開け、中へ入ろうとする。
「ええー!?」
まさか、ここに住んでるの?
「もしかしてこの豪邸、美遊さんの家?」
「……そんな感じ」
そう言い、中へと入って行った。
「……イリヤさん、陸、お友達ですか?」
「あ、あははっ………」
「ま、そんな感じかな…………」