Fate/faceless king   作:ほにゃー

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陸の策

「ぐっ……がはっ!」

 

口から血を吐き、俺は倒れそうになる。

 

倒れそうになった瞬間、剣士は俺の腹から剣を抜き、剣に付いた血を飛ばす様に振る。

 

剣を抜かれたことで、傷口から出血する。

 

「………ちっ!」

 

舌打ちをし、傷口を抑えながら下がる。

 

「ちょ、陸!?」

 

凛さんが慌てて駆け寄って来る

 

「凛さん……これってやっぱクラスカードっすよね?」

 

傷口を携帯していた包帯と薬で応急処置を自分で施しつつ、尋ねる。

 

「でしょうね。でも………同じ場所に続けて現れるなんて予想外過ぎるわ……」

 

「ここは一旦引くべきですわ」

 

「同じく」

 

凛さんとルヴィアさんが宝石を手に、剣士の英霊に投げつける。

 

宝石は爆発を起こし、剣士を巻き込む。

 

「今のうちにイリヤ達と合流するわよ!」

 

凛さんが俺の手を掴み、剣士とは逆の方向に逃げようとする。

 

「凛さん、駄目だ!」

 

俺は声を上げた。

 

「え?」

 

凛さんが思わず足を止める。

 

そこには剣士が立っていた。

 

剣を振り、凛さんの脇腹が切り裂かれる。

 

「なっ……!?」

 

凛さんはそのまま崩れ落ち、そして、剣士は素早くルヴィアさんも切り伏せた。

 

「くそっ!」

 

痛む脇腹を抑えながら、俺は弓を構える。

 

連続で放った三本の矢はいとも簡単に斬り落とされ、剣士は俺に攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリヤと美遊は見たものが信じられなかった。

 

英霊を倒し、キャスターのクラスカードを回収したと思ったら、新たな英霊が現れる。

 

「凛さん!ルヴィアさん!」

 

剣士の後ろで血を流してる二人に気付き、イリヤが走り出そうとする。

 

「待って!イリヤスフィール!」

 

美遊はイリヤの手を掴み、止める。

 

「落ち着いて!闇雲に近づいてもやられるだけ!」

 

「で、でも凛さんとルヴィアさんが……!それに、陸の姿が……!」

 

「サファイア。二人の生体反応は?それと……陸の反応は」

 

美遊がサファイアに尋ねると、サファイアはすぐに確認をし出す。

 

『生体反応あり。お二人は生きています。ですが、陸様の反応は確認できません』

 

サファイアの言葉に二人は思わず息を飲んだ。

 

陸の反応が確認できない

 

二人の頭に嫌な光景が過った。

 

『お二人とも、大丈夫ですよ。こんなこともあろうかと、陸さんの身体を調べて時、こっそりマーキングをしておいたんです。現在、陸さんのマーキングは移動しています。サファイアちゃんが感知できないのは恐らく、姿を消す宝具を使っているからでしょう』

 

ルビーの言葉に二人はほっとするが、イリヤはすぐに声を上げる。

 

「だったらなおさら……!」

 

「だからこそ!三人が生きてるから、冷静に、確実に行動しないといけない。今私達に出来ることは二つ。一つはアレを即座に倒す。もう一つは隙を突き、三人を確保して脱出する。だけど………」

 

「そうだ!あの槍は?あの槍なら一撃必殺で」

 

「だめ、今は使えない」

 

『一度カードを限定展開インクルードすると数時間はそのカードが使えなくなります』

 

『どうもアク禁くらうっぽいですねー』

 

「ライダーは試してみたけど、単体では意味をなさなかった。キャスターは不明。本番で行き成り使うのはリスクが大きすぎる」

 

『加えてアーチャーは役立たず……これは選択肢二番でいくしかないですね』

 

ルビーの言葉に二人は頷く。

 

「私が敵を引き付ける。その間に右側から木に隠れて接近して二人を確保。即座にこの空間から脱出して」

 

「陸は!?陸はどうするの!?」

 

「陸なら私達が離脱すると知れば、きっと姿を現して一緒に逃げる。だから、大丈夫」

 

美遊の言葉にイリヤは何故っと思った。

 

どうしてそう言い切れるのか?

 

姉である自分より、陸の事を分かっているかのような口ぶり。

 

そんなことが疑問として頭に浮かんだが、イリヤはそれを振り払い、頷いた。

 

今するべきことは重傷を負ってる凛とルヴィアを連れて脱出すること。

 

それを理解していたからこそ、イリヤは頷いた。

 

作戦通り、美遊は空を駆け上がり、上空から剣士に攻撃を仕掛ける。

 

速射(シュート)!」

 

美遊の魔力弾が剣士に襲い掛かる。

 

だが、美遊の攻撃は剣士の辺りに漂う黒い霧のようなもので阻まれ、弾かれる。

 

「どういうこと?あれも反射平面とかいう………」

 

『いえ、魔術を使っている様子はありません。あの黒い霧は……まさか!』

 

ルビーが何かに気付いた瞬間、剣士は持っている黒い剣に霧を纏わせ、斬撃を放った。

 

美遊はサファイアを盾に防御しようとするが斬撃はサファイアの防御を越え、美遊を傷つける。

 

「ぐっ……!」

 

「美遊さん!?」

 

美遊がやられたことにイリヤは思わず声を上げる。

 

それに気付き、剣士が剣を構える。

 

『敵に気付かれました!逃げてください!』

 

「え!?」

 

ルビーの声に気付いて、イリヤは剣士の方を見る。

 

その直後、剣士が斬撃を放った。

 

イリヤは反応が出来ていなかった。

 

黒い斬撃がイリヤに当たる。

 

「伏せろ!」

 

突如、イリヤは背後から何者かに寄って押し倒され、攻撃を回避できた。

 

「イリヤ、無事か!?」

 

イリヤを助けたのは陸だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「り、陸!無事だったの!?」

 

「ああ。なんとかな?」

 

顔のない王(ノーフェイス・メイキング)を使い、剣士から隠れて、隙を見て攻撃しようかと思ったが、イリヤが危なかったもので、飛び出しちまった。

 

「陸、血が!?」

 

するとイリヤが脇腹に巻かれた包帯と、そこから滲み出る血に気付く。

 

「応急処置はしてある。大丈夫だ」

 

そう言って脇腹をさするが、正直かなり痛い。

 

動くだけで痛みが身体中を走り、立っているだけでも辛い。

 

「それより、ルビー……あの黒い霧はなんだ?」

 

『大体見当はついてます。あれは恐らく信じ難いほどに高密度な魔力の霧です!』

 

「てことは、さっきの攻撃は、魔術じゃなくて魔力を飛ばした攻撃か」

 

『はい。あの異常な高魔力の領域に魔力砲も弾かれているようです。あれでは、魔術障壁じゃ無効化できません』

 

剣士は俺たちが話しているのにも構わず、近寄り剣を構える。

 

「追撃来るぞ!走るぞ、イリヤ!」

 

イリヤにそう呼び掛ける。

 

だが、イリヤは恐怖から動けず蹲ってしまった。

 

「う……あぅ……」

 

「イリヤ!くそ………!」

 

イリヤを守ろうと、弓を構え、左手に短剣を持つ。

 

剣士が走り出す。

 

その瞬間、数個の宝石が剣士の方に跳び、勢いよく爆発した。

 

『あ、あれは!』

 

ルビーが驚きの声を上げる。

 

宝石を投げたのは凛さんとルヴィアさんだった。

 

二人とも腹部を切りつけられていながら、立ち上がり剣士に攻撃をした。

 

「くっ……やってくれるわね、この黒鎧……!」

 

「一度距離を取って立て直しを………!」

 

その時、煙の中から剣士が現れ俺達の方に向かってくる。

 

「サファイア!」

 

『物理保護全開!』

 

美遊が俺と剣士の間に入り、剣を受け止める。

 

だが、力に差があり、美遊はあっさり弾き飛ばされ、俺を巻き込む形で後ろに飛ばされる。

 

木を背にして、俺と美遊は倒れ込む。

 

「ぐっ!?」

 

木にぶつかった衝撃で傷口を刺激してしまい、血がまたしても滲む。

 

それを無理矢理隠し、美遊を立たせる。

 

「大丈夫か。美遊?」

 

「う、うん……平気……!それより、あの敵……」

 

『まずいですね……とんでもない強敵です。魔力砲も魔術も無効。遠距離・近距離も対応可能。こちらの戦術的優位性(アドバンテージ)が真正面から覆されてます。直球ど真ん中で最強の敵ですよ、アレ』

 

まずい、本格的にヤバイ。

 

イリヤは戦意を失い欠けてる。

 

それに、凛さんとルヴィアさんも重傷だ。

 

この状態で戦えば、間違いなく誰かが死ぬ。

 

下手すれば全滅もあり得る。

 

その時、凛さんとルヴィアさんも体力が尽きたのかその場に倒れる。

 

「ど、どうしようルビー!どうすればいいいの!?」

 

「落ち着いて!パニックを起こさないで!」

 

慌てるイリヤを美遊が止める。

 

「私が敵に張り付いて足止めする!その隙に脱出を……」

 

「だ、駄目!それじゃさっきと同じだよ!」

 

「物理保護を全開にすれば十数秒は持つ!」

 

「駄目だってば!美遊さんが危険過ぎる!」

 

言い合いを始めるイリヤと美遊。

 

そんな二人にしびれを切らし、俺は拳を握り――――――

 

「いい加減にしろ!」

 

二人の頭を殴った。

 

「あだっ!?」「はぐっ!?」

 

二人は痛みに悶えながら、蹲る。

 

「少しは落ち着け。そして冷静になれ。でなきゃ、勝てるもんも勝てないぞ」

 

「で、でも現状、今の私達の力じゃ、あの英霊に勝つ方法は………」

 

「大丈夫だ。策ならある」

 

俺の言葉に、美遊とイリヤが顔を上げる。

 

「俺がただ逃げ回ってるだけだと思ったか?逃げ回りながら色々仕掛けてたんだよ。でも、俺一人じゃダメだ。二人の力を貸してくれ」

 

そう言い、俺はある物を取り出し、二人に渡す。

 

「俺が後方指示と後方支援。そして、二人が前衛ファイト。理想的だろ。頼むぜ、イリヤ、美遊」

 




次回、陸がどのようにしてセイバーを追い込むのか。

お楽しみに

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