死に損ないの海賊たち(ONE PIECE✖FAIRY TAIL) 作:アニッキーブラッザー
エースが先に動いた。
自分の指をピストルの形にしてガジルたちを撃つ。
「火銃(ひがん)!!」
エースの指先から飛び出したのは炎の銃弾。
「炎!?」
「ナツと同じッ!?」
ミラやガジルたちはそれぞれ四方へ四散した。
「ギヒッ! こいつ、火竜(サラマンダー)と同じ火を使う魔導士かよ!」
「ガジル、気を抜くな! 手強いぞ!」
「ああ、こいつは予想外のとびっきりの獲物だぜ!」
見誤っていた。
「おら、いくぜ!」
相手が海賊ということで、どこか舐めていた。
「ギヒッ! 鉄竜の剛拳!!」
「火拳!!!!」
だが、これはうれしい方に予想外だった。
ガジルはニヤリと笑みを浮かべて、エースに向かっていく。
「ギヒッ・・・こいつはいいぜ! ついてやがる!」
しかし・・・
「オカマ拳法・血と汗の涙のルルヴェ!!」
「ギッ!?」
「ガジル!?」
エースに向かって行こうとしたガジルに強烈な蹴りが襲う。
「ボンちゃん!」
「な、なんだテメエ!」
颯爽と現れたボンクレーは、その場でクルクルと回る。
「あちしは・あ・ち・し! ミスタ~~~2! ボンクレーよ~う!」
「ギ、ギ・・・な、なんだこの珍獣は!?」
「お黙り! お肌も荒れるこんな夜遅くに、あちしの友達をよってたかって良い度胸じゃないのよ~う、グラーッ!!」
変な奴が・・・見たこともない生命体が現れた。
何やら悪寒がガジルを襲いかかる。
「テメェも海賊の仲間か! ならば男として見過ごしておけん! ビーストアーム・黒牛(こくぎゅう)!!」
すると、固まったガジルの真横からエルフマンが走りぬけ、ボンクレーに向かって仕掛けてきた。
「あん? 誰が海賊よう! でも、あちしはエースちゃんのダチよう!」
「男男男男! 俺は男で男だー!」
「あちしはオカマ! オカマオカマオカマオカマ! 男で女! だ~か~ら~、最強ッ!」
「ぬ、ぬぬ、こいつ・・・できる!?」
「って、なんなのよう、こいつの腕!? 動物ちゃんみたいよう!? ゾオン系の能力者!?」
激しい打撃の応酬。どちら一歩も引かぬ攻防戦が繰り広げられた。
「って、嘘!? エルフ兄ちゃんと生身でやりあってる!?」
「うそ・・・・ッ、ガジル! リリー、気を付けて! この依頼・・・想定を遥かに超えるレベルかもしれないわ!」
「ギヒッ、船長でもねえただの幹部でこのレベルか・・・いいね~、ゾクゾクしてきたぜ!」
「ふっ、なるほど・・・確かにこいつは骨が折れそうだ」
最初はこれほどの事態になるとは想定していなかった。
ミラたちの表情がそれを物語っていた。たった二人の海賊? それでこのレベル。
さらに・・・
「キーッシシシシシシ、騒がしいじゃねえかよ」
新手が登場。モリアだ。
「ま、また誰か出てきた!?」
「で・・・でででで・・・」
「でけえぞ!? どんだけデケーんだ!?」
「しかもこの男・・・目を見りゃ分かる・・・相当アブねえ奴だぞ!?」
二ターっと気味の悪い笑を浮かべるモリアとその巨体に、ミラたちは後ずさりする。
こんな奴までいるのか?
まるでそんな表情だ。
「なんだよ、モリア。おめえまで来たのか?」
「キシシシシシ。俺はやる気はねえ。見物だ。オチオチ眠れもしねえ」
「まあ、別にいいけどよ。これは俺の買った喧嘩だしよ。そういうわけだから、ボンちゃーん! ボンちゃんも怪我してんだし、俺が・・・って、聞いてねえな」
「あー、ほっとけほっとけ、あんなカマ野郎。そういうわけだ、火拳。俺は何もやらねーから、オメーらで勝手にやってろ」
モリアはまるで見物人のようにその場で壁に寄りかかり、だらしなく両足を伸ばしたまま座り込んだ。
「ギヒッ、なんだこのデカイのは。それにテメェはやんねえのか? そんな余裕があんのか? アァ?」
「キシシシシ、名もねえ雑魚が大口叩くと恥かくぞ? ワザワザ俺が出張るまでもねーだろう?」
「アアン!?」
「まあ、仮にやったとしても、お前らじゃ座ってる俺を立たせるどころか、触れることすらできねえよ!」
「・・・ギヒッ! 上等じゃねえか、このデカらっきょが!! 鉄の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の力、そのデカイ体中に刻みこんでやらァ!」
モリアのでかい態度に小バカにした喋り。
沸点の低い好戦的なガジルは額に青筋浮かべて飛びかかる。
「ガジル! 気をつけろ、こいつはただもんじゃねえ!」
「分かってら! いくぜ、相棒!!」
無闇に飛びかかるガジルを止められないと判断したリリーはガジルの援護をすべく、共にモリアに向かっていく。
「キシシシシシ、やってみろ。分身・・・影法師(ドッペルマン)!!」
「「ッ!?」」
結局モリアも手を出さないと言いつつ、しっかりと戦いに参加することになったのだった。
そして結局残ったのは、エース、ミラジェーン、リサーナ。
いや・・・
「リサーナ・・・あなたは、エルフマンやガジルの援護をして。私は大丈夫だから」
「ミラ姉! でも・・・」
「いいから! 私も本気を出す・・・あなたを巻き込むわけにはいかないのよ」
「ッ・・・わ、分かった! でも、ミラ姉も気を付けてね!」
リサーナがエルフマンの元へと向かったので、ここに残ったのはエースとミラジェーンの二人だけだった。
「何だか騒がしくなったな。んで、どうよ? 帰ってくんねーのかい?」
エースが笑いながら尋ねるが、ミラは厳しい瞳のまま首を横に振る。
「戦いを望まないのなら・・・自首をして」
まるで最終通告のように告げるミラジェーン。
だが、そんなもんはエースには・・・いや、偉大なる航路で名を上げた男には無意味な説得。
「よせやい。自首なんてもんは、海賊になったことを後悔する奴らか・・・・・・この世の全てを制覇した男がするもんだよ」
開き直ったその態度。その言葉で、ミラの表情が更に険しくなった。
「仲間を家族と呼ぶ・・・その気持ち・・・私はすごくよくわかる。私も同じだから・・・」
「ん?」
「でも、海賊であることも反省せず・・・開き直ったあなたは、このままこの海に放置しておくわけにはいかないわ!」
「ッ!?」
その瞬間、おだやかだったミラジェーンの周囲の空気が張り詰めた。
「だから今この場で・・・・」
目に見えない変化をエースも感じ取り、笑みが止まった。
「うおっ!? な、なんだこりゃ!?」
強烈な輝き。そしてその直後の禍々しい闇。
「あなたを倒す!」
ミラを包み込むその異様なものが、エースの細胞に危険信号を発していた。
「全身テイクオーバー・サタンソウル!!」
ミラジェーンが変身した。
悪魔のような両腕に尻尾。そして翼。
先程までは花のように可憐だった乙女が、なんとも刺々しいオーラを纏っているのか。
だが、エースはその姿に、恐れを抱くどころか全身の血が熱く滾った。
「こいつはスゲエ! 悪魔の実・・・ロギアより稀少な幻獣種か!? さしずめ、ヒトヒトの実、モデル・魔人ってところか? この女、見たことも聞いたこともねえが、余裕で億越えのレベルだな」
世界はやはり広い。
これほどのものは早々お目にかかれるものではない。
「いいぜ、かかって来いよ。俺は同じ失態は二度としねえ。この俺の首を・・・取れるもんならとってみな!」
炎を滾らせ、魔人を迎え撃つエース。
今ここに、偉大なる航路の海賊と妖精の尻尾(フェアリーテイル)の戦争が勃発したのだった。
ただ一つ・・・両者はまだ気づいていない勘違いがある。
(彼らがΣ(シグマ)44海賊団の幹部なのだとしたら、闘神と呼ばれる44人の幹部の一人ということになる。これなら闘神という肩書きも頷けるわ。ただ・・・こんなのが後40人もいると考えると・・・この任務・・・S級クエスト以上の難度になるわ! 私がしっかりしないと・・・状況によっては引き際も見極めて・・・)
ミラジェーンの今考えていることだが、実はツッコミ満載である。
ミラジェーンたちが討伐しにきたのは、今彼らが戦っている巨大船の持ち主であり、既にエースたちの手でボコボコにされて船内でぶっ倒れている『Σ(シグマ)44海賊団』という海賊である。
海賊という意味では間違っていないのだが、人違いであるということであった。