死に損ないの海賊たち(ONE PIECE✖FAIRY TAIL)   作:アニッキーブラッザー

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第12話 海を制する男たちの力

何が起こった?

 

「こ、この炎はッ!?」

 

気づけばミラジェーンは海に落ちていた。

 

(うそ・・・まさか・・・私・・・)

 

やられたのか? だが、この状況。

そしてこの全身の痛みはソレを物語っている。

 

(私が・・・負けた?)

 

負けた・・・

しかも相手は名のある魔導士でもギルドの人間でもない。

ただの無法者。

海賊だ・・・

 

「ッ・・・」

 

ミラジェーンは残る魔力を使って海から脱出し、甲板の上に倒れ込んだ。

そしてその瞬間、ミラジェーンの魔力は完全に底をついて、彼女は魔人の姿から元の可憐な女性の姿へと戻った。

 

「はあ、・・・はあ・・・・はあ・・・」

 

痛みと消耗で息が激しく乱れて、なかなか起き上がることすら出来ないミラジェーン。

 

「うそ・・・何が起こったの・・・」

 

彼女が首を上げると、彼女の目の前に中腰になって不思議そうに自分を見下ろしているエースがいた。

 

「ェ・・・エース!?」

 

悔しさをにじませて睨みつけるミラジェーン。

だが、エースはそんなミラジェーンの態度など気にせず、別のことが気になって、不思議そうにしていた。

 

「海に落ちても大丈夫か。どうやらあんた・・・本当に能力者じゃねェみてーだな・・・何モンだよ」

「はあ、はあ、はあ・・・なんのこと・・・海に落ちるぐらいで・・・」

「だが、もうお前さんの心は折れたぜ。俺には分かる。とりあえずこの勝負は、俺の勝ちだ」

 

俺の勝ち。

そう言うエースにミラジェーンは何も言い返せない。

 

「・・・ッ~~~~~」

 

たったの一撃で、自分の魔力を全て焼き尽くすかのような炎。

もうミラジェーンには戦う力が残っていなかった。

 

「そんな・・・そんな・・・み、みんなは・・・」

 

自分が負けた・・・ならば、他の者たちは?

力及ばず弱々しい瞳で仲間たちを見るミラジェーン。

しかしそこにあった光景は、彼女に更に深い衝撃と絶望を与えた。

 

「うっ・・・ぐっ・・・・・・・・・・」

 

なんと、エルフマンが血を流して倒れていた。

 

「エルフマン!? 嘘っ!?」

「ね、・・・ねーちゃん・・・」

 

エルフマンが既に力の篭っていない瞳でミラジェーンに顔を向ける。

一体何が? すると倒れているエルフマンの傍には、豪快に笑うリサーナが居た。

 

 

「リサーナ、どういうこと!?」

 

「ん? いや~よう、あちしはそんな名前じゃないわよう!」

 

「えっ?」

 

 

妙な口調でしゃべるリサーナ。

だが、彼女が自分の頬に手を当てた瞬間、彼女の肉体と顔が、ボンクレーの姿に変わった。

 

 

「変装魔法!?」

 

「がっはっはっは、あちしはマネマネの実の能力者! あちしが妹ちゃんの顔に手を触れて、そしたらあら不思議! 妹ちゃんの顔したあちしを動物兄ちゃんは一発も殴れなかったのよーう!」

 

「・・・なっ!?」

 

「妹ちゃんも変な動物変身を見せたけどう、あちしの打撃一発でダウン。気合が足りないわよーう!」

 

 

リサーナは?

よく見ると少し離れた場所で片膝ついて激しく呼吸していた。

 

 

「ご、ごめん・・・ミラ姉・・・この人の打撃を生身で一回食らっただけで・・・」

 

「リ、リサーナ・・・」

 

 

ミラジェーン、リサーナ、エルフマン。

この家族の得意とする魔法はテイクオーバー。

体の部位を動物やモンスターに変化させて強化する魔法。

しかし、エルフマンと違ってリサーナは生身の耐久力は普通の女の子と変わらない。

テイクオーバーしていない部分に、一流の打撃を受ければ当然大ダメージを受ける。

そしてエルフマン・・・

 

「がっはっはっは、かつてあちしと戦った奴にこんな奴がいたわ! 友情によってあちしに手を出せなくなった男!」

「うっ・・・ううう・・・」

「がっはっはっは、あんたにとってはそれが妹ちゃんだったようねェ!」

 

高らかに笑うボンクレー。

 

「ふ、・・・ふざけないで・・・」

 

ミラジェーンは、怒りに満ちた瞳でボンクレーに言う。

 

「ひ・・・卑怯者・・・」

「がっはっはっはっ、ん? あちしのことう?」

「そうよ! たとえ偽物だと分かっていても、エルフマンにリサーナの顔を殴れるわけがないじゃない!」

 

エルフマン。かつて彼は魔法の暴走で、止めようとした妹をその手で殺めたことがある。

実際、妹はこうして生きていたのだが、妹が死んだと思ったそのトラウマは、エルフマンに深く残っていた。

今は少しずつ克服し、魔力の暴走もすることはないが、ボンクレーがリサーナの顔でエルフマンと対峙することは、エルフマンに過去の深いトラウマを抉ったことになる。

よって、エルフマンに戦うすべも無く、こうしてボンクレーの足元に倒れているのだった。

 

「卑怯者・・・海賊・・・やっぱりあなたたちは最低だわ!」

 

ミラジェーンはエルフマンを責めることはしない。

むしろ誰よりもエルフマンの痛みと苦しみを知っているのが彼女だ。

だからこそ、そんなエルフマンの傷をこんなふざけた人物に抉られた。

それが絶対に許せなかった。

だが・・・

 

 

「甘ったれんじゃないわよう!」

 

「ッ!?」

 

 

ボンクレーは逆ギレした。

 

 

「なにそれ! それじゃああんたたちはこんな見かけに左右されて命を落とすって言うの? 冗談じゃないわよう!」

 

「・・・えっ?」

 

「人は、心でしょうが! 見かけに左右されてやられるような粋じゃない奴に、見かけを気にしないあちしにどうやって勝てるっていうのよーう!! 映像に気を取られる腰抜け共、愛を舐めるんじゃないわよう!!!!」

 

 

ムキーっとなって怒るボンクレー。

だが、どんなめちゃくちゃな理由でも、確かに敗者はミラジェーンたちだ。

何を叫んでも負け犬の遠吠えにしか聞こえない。

 

「うっ・・・ガ・・・ガジル・・・リリー・・・」

 

他は・・・どうなっている?

ミラジェーンは潤んだ瞳で、残る最後の希望を探す。

だがそこにも・・・

 

「ぐっ、どうした! リリー、目を覚ましやがれ!」

 

人型のサイズからすっかり小さい姿に戻り、ぐったりと動かないリリー。

そんなリリーを抱きかかえながら必死に叫ぶガジルがいた。

 

「ガジル!?」

 

ウソだ。ガジルとリリーもなのか?

 

(ウソ・・・でも、ガジルとリリーは傷を負っているのに、あの大きい男・・・本当に座ったまま一歩も動いていない!?)

 

ミラジェーンの背筋が凍りついた。

なんとガジルとリリーという強者を相手に、モリアは本当にリラックスして座ったままケラケラ笑っているのだ。

一体何があった?

 

 

「くそ・・・」

「ガジル、何があったの!?」

「ああ? って、テメェまで負けちまったのかよ!?」

「ええ・・・でも、どうしてあなたたちほどの人が!? それにリリーはどうなってしまったの?」

 

混乱して叫ぶミラジェーンに、ガジルは舌打ちしながら悔しそうに答える。

 

 

「あの男に、ちっとも攻撃が届かねェんだよ。影の中から出てきた分身が攻撃しかけたり、分身倒せば飛び散って無数のコウモリになって襲ってきたり、いざ攻撃が入るかと思えば、既に目の前にいなかったり、気づいたら元の場所に戻ったりだ」

 

「・・・どういうこと?」

 

「影だ。あの男、自分の、そして人や物、この世の影を自由自在に操りやがる! そして影を使って化け物作ったり、影を使って移動したりしやがる!」

 

「影を!?」

 

「それだけじゃねェ・・・あの野郎・・・リリーから影を引き剥がしやがった!」

 

「えっ?」

 

「その瞬間、リリーから影が消えて、ぐったりと倒れちまいやがった」

 

 

人の影を奪う? そんな力、ミラジェーンたちも聞いたことがなかった。

だが、確かにモリアを見てみると、鼻歌交じりで座っているモリアの傍には、リリーの形をした真っ黒い影が立体化していた。

 

「ボンちゃんがマネマネの実・・・そしてモリアはカゲカゲの実の能力だ。悪魔の実を知らねェのかい?」

 

ありえない事だと叫んでいるミラジェーンにエースが尋ねると、ミラジェーンは何を言っているのか分からないという目でエースを見上げる。

 

「悪魔・・・の実?」

「は~、つうことはだ、あんたら全員能力者でもねーのに、あんな不思議な力を使ってんのか。一体この海はどうなってんだ?」

 

首を傾げるエース。

だが、「どうなっているんだ」と言いたいのはミラジェーンたちの方だった。

 

「チッ、とにかくやべェぞ! おい、テメェ! リリーの影を奪ってどうするつもりだ!」

 

ガジルがモリアに怒鳴る。

だが、モリアは表情に嫌らしい笑みを浮かべたままだった。

 

「キシシシシシ、火拳、どうやら俺たちはそうとう面倒な海に流されているようだぞ?」

「どういうことだ?」

「さあな、キシシシシシシシ、ちょっと面白くなってきたぜ」

 

ガジルを無視してエースと話すモリア。

ガジルの血管がブチッと鳴った。

 

「だから、どうするつもりか聞いてんだろうがァ!!」

 

そこでようやくモリアは視線をガジルに向けた。

 

 

「あ~、うるせえな。影を取ったらどうするか? キシシシシ、この影を人間の死体に入れたらどうなると思う?」

 

「なっ!?」

 

「いや、そもそも影の無くなったやつが、陽のあたる場所へと出たらどうなるか?」

 

「・・・・?」

 

「簡単に言うと、影のねェ奴は光の中では生きられねェ。夜明けまであと数時間か? 直射日光を浴びるとその獣・・・完全消滅するぜ?」

 

 

それがまるで当たり前のように告げるモリア。

 

「「なっ!?」」

 

しかし、彼らにとってはあまりにも残酷すぎる言葉。

 

「そう・・・影を奪われると・・・」

「ッ!?」

 

モリアがそこで姿を消した。

消えたモリアの行方をさがすと、モリアは動けぬリサーナの背後に居た。

 

「リサーナ!? な、なにを!? お願い、やめてェ!!」

「・・・えっ?」

「キーッシシシシシシシシシ、影を奪われた人間は、決して光の世界では生きられねェのさ!」

 

リサーナに何もできることはなかった。

ミラジェーンの悲鳴も虚しく、モリアはリサーナの影を無情にも切り取り、リサーナの影がモリアの手の中に入ってしまった。

そしてリサーナは、急に全身の力が抜け、その場でバタリと倒れて目を瞑ったのだった。

 

「リ・・・リサーナ・・・」

「キシシシシシシシシシシ!!!!」

 

ミラジェーンたちは、ただただ高らかに笑うモリアの笑いを聞くことしか出来なかったのだった。

 

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