死に損ないの海賊たち(ONE PIECE✖FAIRY TAIL)   作:アニッキーブラッザー

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第13話 出来の悪い弟

「糞がァ! よくも俺の相棒を・・・俺の仲間を!」

 

ガジルが猛る。

 

「まだ俺がいらァ! テメェら、大陸で最も怒らせちゃならねェギルドを怒らせた! テメェらただで済むと思うなよなァ!」

 

ガジルの怒りと咆哮。だが、それすらもモリアは嘲笑う。

 

「キシシシシシシシ、白ひげや赤髪をマリンフォードで見た後だからな、なんとも小せェ覇気だな」

「んだとォ!!」

 

ガジルはまだ戦える。傷だってそんなに深くはない。

だが、そこでミラジェーンは今の自分たちの状況を見る。

 

(無理・・・あの大男だけじゃない。エースも・・・あのオカマの人だっている・・・さらにこの船には多くの船員がいる・・・ガジル一人じゃ到底無理よ!)

 

勝てない。任務は完全に失敗だ。

 

「キシシシシ、さっきから卑怯だ酷いだ騒いでるが、キシシシ、それがどうした? 正義の味方でも相手にしているつもりか?」

「んだとッ!?」

「テメエらの前にいるのは、・・・海賊だぞ?」

 

自分たちが甘かった。まさかこれほどの海賊がいるとは思ってもいなかった。

 

(こうなったのも全て・・・クエストをしっかり把握していなかった・・・Σ44海賊団(注・勘違い)をろくに調べもしなかった私の責任!)

 

ミラジェーンは血が出るほど唇を噛み締めて、モリアに向かって叫ぶ。

 

 

「もう、やめて! 私たちの負けよ! もう、これ以上はやめて!」

 

「お、おい! 俺様はまだ戦えるぞ!」

 

「無理よ・・・それに、リサーナとリリーもこのままじゃ・・・そんなの絶対にダメよ」

 

「ッ・・・だが・・・」

 

 

珍しくガジルが口ごもる。

 

(くそったれが・・・だが、確かにこのデブと、あのエースとかいう奴・・・こんなのが後何十人も出てこられたら流石に・・・)

 

ガジルは悔しそうに甲板を踏み付ける。

どうやら彼も今の状況を理解したようだ。

逃亡か降伏。

だが、リリーとリサーナの影がモリアの手にある以上、答えは一つ。

降伏しかない。

 

「お願い、・・・エース。これは全て私の所為なの。だから・・・お願い・・・仲間だけでも見逃して!」

 

ミラジェーンは、この中で一番話が通じると思われるエースに頭を下げる。

 

「ね、・・・姉ちゃん!?」

「ちょっ、ふざけんなァ! テメェ一人で犠牲になる気か!?」

 

慌てて声を荒らげるエルフマンとガジル。

だが、ミラジェーンの目は本気だ。

 

「あああん? キシシシシシ、何都合のいいこと言ってんだよ! 海賊の首取りに来た馬鹿どもを、どうしてミスミス見逃すんだよ! 半端な覚悟で本物の海賊を敵に回すとどうなるのか、見せしめにしてこそ俺たちだよ!!」

 

モリアが笑いながら口をはさむ。

だが、そんなことは分かっている。それでもミラジェーンは頭を下げる。

 

「お願い。私ならどうなってもいいから。何だってするから! お願い、エース・・・仲間を・・・助けて・・・」

 

ミラジェーンの瞳から溢れる涙。

ボンクレーは黙って腕を組んで見守り、モリアは「ふざけんな」と口を挟む。

対してエースは無言。ジーッとミラジェーンの瞳を見ている。

すると・・・

 

「なら・・・俺が代わりになる! だから、姉ちゃんを助けてくれ!」

 

エルフマンが傷だらけの体を起こし、エースのもとへと歩いていく。

 

 

「なっ、エルフマン! 何を言ってるのよ!?」

 

「もともと、このクエストをやろうとしたのは俺だ! お前たちを倒そうと言い出したのは俺なんだ! みんなは俺に手を貸すために仕方なく参加したんだ!」

 

「違うわ! ダメよ、エルフマン! これは私が・・・」

 

「頼む、エースとか言ったな! お願いだ、俺は死んだっていい! だから姉ちゃんを・・・妹を・・・仲間を見逃してくれ!」

 

 

当初は豪快に現れたエルフマンが、今では仲間のために懇願し、そして土下座までしてエースに頭を下げる。

家族と仲間を見逃してくれ。そのために命を差し出す。

すると・・・

 

 

「キーッシシシシシシシ、くだらねェ三文芝居何かしてんじゃねえよ。おい、火拳! さっさとそいつらを皆殺しに―――」

 

「ん、分かった。そんじゃァ、お前さんたちもう全員帰っていいぜ? 弟さんも自分は死ぬとか言わないで、帰っていいぞ?」

 

「おう、そうだ皆殺しに・・・・・・・・・・はあああああああああああああッ!?」

 

 

エースあっさり。モリアひっくり返る。

 

 

「え・・・・・・・・・え?」

 

「えッ?」

 

「・・・ギッ?」

 

 

エースはサラっと言った。

 

 

「「「「「ええええええええええーーーーーーーーーーーーッ!!??」」」」」

 

 

海に敵味方問わずの驚きの声が上がるのだった。

 

 

「ちょちょ、エース、どういうつもり?」

 

「どういうつもりって、お前さんたち、ちゃんと謝ってんだし別に俺ももうそこまで怒ってねェから帰っていいって・・・」

 

「ちょっと待て! 俺はお前を・・・お前たちの首を取ろうとしたんだぞ?」

 

「ん? んなもん日常茶飯事さ。襲われるたびにいちいち怒るのも小せェことさ。謝ったんならもういいよ」

 

「あっ・・・・・はっ?」

 

「つーわけだ、モリア、こいつらの仲間の影を返してやれよ」

 

「って、んんだとおおおおおおおおおォ!?」

 

「がっはっはっはっは。やっぱ麦ちゃんのアニキなだけあって、エースちゃんの器は大きわよう!」

 

 

いや、器がでかいとかそういう問題か?

呆然とするミラジェーンたちをよそに、モリアが怒りを纏って立ち上がる。

 

 

「おい、火拳、テメェいい加減にしろよ! そもそも指図してんじゃねェよ!」

 

「だが、この船には死体がねェから、影を奪ってもゾンビ兵は作れねェから意味ねーだろ」

 

「ふざけんなァ! だったら殺せばいいだけだ! 何でそんなバカみてェなことに俺様が従わなきゃいけねーんだよ!」

 

「お前はこの戦闘では無傷だったんだしいいじゃねえか」

 

「そういう問題かァァァァァァ!」

 

 

ケロッとするエースにモリアはもはや頭が痛くなった。

 

「いいか~火拳! テメェがどういう海賊目指そうが知ったこっちゃねェが、これが俺のやり方だ! そもそも海賊は海と世界を支配してなんぼだろうが! それが覇王色の覇気を持つ男か!? それが海賊王の血を引く男かァ!?」

 

モリアはまるで説教のようにエースに怒鳴る。だが、エースは小さく笑いながら返す。

 

 

「モリア。俺は支配に興味ねェんだよ。やりてェようにやらねえと、海賊やってる意味がねェだろ?」

 

「なんだその理屈は、兄弟揃ってふざけんなァァァァァァア!!!!」

 

 

モリアの行き場の分からぬ怒りが空に放出され、もうモリアはどうにでもなれと影を手放した。

 

「もう、勝手にしやがれ! 俺は寝るぞ! 朝起きて陸についてなかったら、今度こそテメェを殺す!」

「おう、迷惑かけるな。ありがとよ」

 

モリアはそう言って甲板を後にして船内へ行く。

ポカンとしてしまったミラジェーンたちにエースは言う。

 

「おい、あの影を肉体に重ねれば影は戻る。寝たまんまだけど、数時間後にはきっと起きてるよ」

「えっ・・・あ・・・う、うん・・・ガ、ガジル、お願い」

「お、おう」

 

これでいいのか? 戸惑いを隠せぬまま、ガジルはリリーとリサーナの影に二人の体を重ねる。

後に残されたエースとミラジェーンとエルフマン。

二人は戸惑いながらもどうしてもやはり聞かねばならぬと思い、エースに尋ねる。

 

「エース・・・どうして? どうして・・・助けてくれるの?」

「ん? おいおい、理由はちゃんと・・・」

「そうだけど、これだけのことをした私たちを、普通はそんなに簡単に許せないわ! だって、仲間に手を出す人は許せないんでしょ?」

 

ミラジェーンは真剣に聞いてくる。

虚偽を許さぬ必死さで、エースの両腕をつかみ、答えをはぐらかせないように聞く。

一方でエースはどうか? 彼は少し考えたあと、フッと笑い、ミラジェーンとエルフマンの頭に手を乗せてクシャクシャに撫でた。

 

「きゃ」

「うっ・・・え?」

 

戸惑う二人。そんな二人にエースはケラケラと笑いながら言う。

 

 

「強いて言うとしたら、・・・・・・出来の悪い弟分を持つと、アニキだけじゃなくて姉ちゃんも大変なんだと分かったからだな」

 

「えっ?」

 

「出来の悪い弟のくせに、こっちの気持ちをちっとも分かってねェ。ヨエーくせに死んだっていいなんて平気で口にして、ピンチになったアニキを命懸けで助けようとする。アニキの心がどれだけイテーのか、お構いなしにな」

 

「エ、・・・エース・・・」

 

「だから俺が守ってやらなくちゃいけねェ。でもな、そうやって守ったり心配しているようで、実は弟に支えられて守られているのは自分の方だったりするんだよな・・・・」

 

 

エースの脳裏に浮かぶのは、麦わら帽子を被った出来の悪い弟。

泣き虫で、弱くて、いつだって自分の後ろをついてきたクセに、実は誰よりも自分の支えとなってくれていた。

 

 

「エース・・・あなたにも・・・弟が?」

 

「ああ。褒めると調子にのるから口に出して言えねェけどな、俺にとっては・・・絶対に失えねェ・・・絆だ」

 

 

エースは空を見上げる。

あの時、マリンフォードで赤犬からの攻撃を庇ったとき、ルフィは今にも泣き出しそうに震えていた。

 

(ルフィ・・・おめェは・・・・・・・今どうしてんだ?)

 

エースのその瞳は、海賊の瞳ではなく、家族を思う一人の男としてミラジェーンには写ったのだった。

 

 

「だからもういいぜ。最初はムカツいたけど、おめェらのことはあんまり嫌いじゃねェからよ」

 

 

そう言って、エースは本物の海賊の顔から、少年のように真っ直ぐな笑み妖精の尻尾(フェアリーテイル)に向けたのだった。

 

 

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