死に損ないの海賊たち(ONE PIECE✖FAIRY TAIL) 作:アニッキーブラッザー
「ご、ごめんなさい、エース! まさか、最初から人違いだったなんて!?」
「別にもういいって言ってるじゃねェか。真面目だね~、ミラジェーンは」
「い、いや、最初から人違いだったとは、男として俺も男ではない」
「ギッ・・・つうか、俺様たちは何をやってたんだよってことだ」
全部勘違い。
Σ(シグマ)? 何それ?
そんなエースの言葉で、全ての真実が分かったミラジェーンたちはただただ申し訳なさそうに頭を下げていたのだった。
「いやァ、しかしそういやァ、この船の持ち主で俺たちに襲いかかってきた連中も、闘神がどうとか言ってたな」
「うう、ごめんなさい。あなたたちがてっきりその闘神かと思って・・・」
「まっ、俺たちが海賊ってのは何も間違っちゃいねェけどな」
一歩間違えれば自分たちが死ぬところだったというのに、勘違いということが分かってウケるエース。
器のでかさか、それともどういう神経をしているのか、とにかくミラジェーンたちの申し訳なさなど関係なしに、エースは特に気にせず笑っていた。
だが、勘違いとはいえエースたち自身が海賊であるのは事実。
どうも納得のいかないミラジェーンは、少し聞きにくそうにエースに尋ねる。
「ね、ねェ、エース・・・あなたって本当に海賊なの?」
「おお、海賊だ。白ひげ海賊団の2番隊隊長・火拳のエースっていやァ、少しは売れた名だと思ってたんだがよ。あとは七武海のモリアもな」
「う、う~、ごめんなさい、全然聞いたことないわ」
ミラジェーンはエースが口にした単語は聞き覚えがないようだが、それでもエースが海賊である事実は本当だということが分かり、少し複雑な表情を浮かべた。
一方でエースは、『白ひげ』と『七武海』という単語すら知らないというミラジェーンたちを「マジかよ・・・」という表情で固まっていた。
「か~、まいったな。お前さんたちは本当に能力者でもなさそうだし、オヤジや七武海のことも知らねェんじゃ、確かにこの海は俺の知っている海とは少し違ェのかもな」
「えっ? 海が違う? 何を言ってるの?」
ある程度は覚悟もしていた。
この船の持ち主がログポースを持っていなかったことや、自分のことを誰も知らなかったことからも、ひょっとしたらこの海は偉大なる航路(グランドライン)ではないのかもしれないという覚悟。
だが、ひょっとしたら事態はさらにその上をいくかもしれない。
モリアも先ほどそのようなニュアンスを口にしていたことからも、ここはグランドラインがどうとかよりも、もっと根本的に何かが違う世界のようにエースもようやく感じてきた。
しかし、ならここはどこだ?
答えは出るはずも無く、エースも腕を組んで「う~ん」と悩むのであった。
「エース・・・?」
「おお、ワリーな。ちょっとオヤジの事やら弟やら、そもそも自分は今どこにいるのかすらも分かんなくてな、悩みが増えて考え事してた」
「そ、そう。だ、大丈夫なの? お詫びも込めて何か力になれればいいんだけど・・・」
「はは、別にそこまで―――」
「ッ・・・・えっ!?」
それは余りにも突然だった。
「エースッ!? ど、どうしたのッ!?」
「お、おい、お前ッ!?」
「エースちゃん!?」
「ギッ、どうしたってんだ!?」
エースがいきなり倒れた。
何の前触れも無くバタリと倒れた。
これにはミラジェーンもエルフマンもボンクレーもガジルも予想もしていなかっただけに激しく動揺した。
「エース、しっかりして! エース!」
中でもミラジェーンの取り乱し方は尋常ではなかった。
ひょっとしたら自分との戦いで深い傷を負ったのではないのか?
こんな明るくまっすぐな瞳のエースだが、ひょっとしたら人には言えない持病でも持っていたのではないのか?
先程までの敵味方問わずに皆が倒れたエースの周りに集まり、どうすればいいのか動揺していた。
だが・・・
「・・・・はっ!」
エースは何事もなかったかのように目を覚ました。
「「「「・・・・えっ?」」」」
頭に?マークを浮かべて首を傾げるミラジェーンたち。
エースはキョロキョロ当たりを見渡しながら、目をこすり出した。
「いや~・・・まいった・・・考えすぎて疲れて・・・・・・・寝てた」
「「「「寝てたッ!?」」」」
突如睡魔に襲われエースは数秒寝ていたのだった。
「あ、ありえねェ。姉ちゃんとなんだか重要そうな会話の最中にッ!?」
「しかも当たり前のように言いやがった!」
「あ、あちしもびっくらこき過ぎたわよーう!」
エースの突然の睡眠宣告に空いた口が塞がらないエルフマンたち。
エースは彼らの表情を見ながら不思議そうに尋ねる。
「ん? お前らどうしたんだよ、何の騒ぎだ?」
「「「おめェの心配して騒いでたんだよッ!?」」」
ビシッとエルフマン、ガジル、ボンクレーの完璧なツッコミがエースに入る。
エースは何がなんだか分からなそうな表情だった。
「おいミラジェーン、何かお前さんの弟と仲間がボンちゃんと息の合ったツッコミしてくるんだが、いつの間に仲良くなったんだ?」
「う、ううん、そ、そういうわけでもないんだけど・・・とにかく無事でよかったわ・・・私なんて驚いて腰が抜けちゃって・・・」
「はは、そいつは―――――くか~~ZZZ」
「「「「うをいッ!!??」」」」
エースがまた寝た。
最後はミラジェーンも含めて四人全員のツッコミ。
「もう、なんなの!? なんなのよ、この人!?」
「どこでも寝れるのもある意味では男だが・・・」
「わけが分からねェ」
「もーう、どうなってんのよ、エースちゃんは!?」
結局重要そうな考えも悩みもシリアスな状況も全てがこの事でどこかへ行ってしまったのだった。
しかし・・・
「まったくもー、この兄弟はやっぱり普通じゃないわよう!」
「むっ、オカマよ。エースの弟もわけの分からぬ奴なのか?」
「ええ、そうよう。共通しているのはイイ男で強いってことだけどう」
「ギッ・・・この野郎の弟・・・やっぱツエーのか、興味あるが・・・チッ、あのモリアとかいうデブといい、世界は広いぜ」
「がっはっはっは、そう落ち込むんじゃないわよう。あちしたちは能力で勝っただけよう! まともに正面からやればどうなるかは微~妙」
「ふん、男として負けた言い訳はしねェ。次は・・・勝つ」
「ギヒッ、俺もだ。あのデブに一発かまさねェと気がすまねェ」
シリアスな場面が吹き飛んだ。しかしそれは逆に・・・
(エルフマン・・・ガジル・・・あれ? なんかいつの間にオカマさんと普通にお話しているわ・・・アレ?)
勘違いとはいえ、自分たちはそれなりに真剣に戦っていたのではないのか?
なのに、先程まではいがみ合っていた男たちが急に普通に会話して打ち解け出した。
「モリアか・・・あいつ、ソコソコはツエーし変な奴だから気をつけろよ」
「「「おめェも十分変だよ!!」」
そして、ケラケラと笑うエース。
その笑顔を見るだけで、ミラジェーンは本当に複雑になった。
(エース・・・どうしてそんなに笑うあなたが・・・海賊なんて・・・)
やっぱり海賊は海賊でも、何かが違う。
ミラジェーンはこの光景を見ながらそう思い、そして意を決してエースに尋ねる。
「ねえ、エース・・・どうしてあなたは海賊なんかをやっているの?」
ミラジェーンが聞きにくそうにしながらも、どうしても聞かねばという思いでエースに尋ねる。
一方でエースは不思議そうに首を傾げる。
「ん? なんだよ今更。いいじゃねェか。俺がなるって決めたんだ。海賊になりたくて何が悪い」
サラっと言うエース。しかしここで引くわけにはいかないとミラジェーンは噛み付く。
「わ、・・・・・・って、悪いに決まってるじゃない! 大悪よッ!? 海賊って一歩間違えれば犯罪なのよ!」
・・・・・・・・・?
「姉ちゃん・・・海賊はバリバリ犯罪だけど・・・」
「おい、一番まともなはずのミラジェーンが、エースにつられて訳わかんなくなってるぞ」
「あっ、そうね・・・って、そう、そうなのよ! どうもあなたからそういうイメージが湧かないから混乱してしまうけど、海賊ってそういうものなのでしょ?」
略奪や虐殺。
罪なき者たちを襲い、傷つけ、殺す、海の無法者たち。
エースという人物には決して似つかわしくないせいで分からなくなりそうだが、それが海賊というものなのだ。
「エース・・・まだ私はあなたのことを全て知っているわけではないわ。でも、あなたは悪い人ではないと思うの。これでも長年ギルドの任務で色々な悪い人と戦ってきたから、私には分かるの」
「ミラジェーン・・・」
「なのにどうしてなの? どうしてあなたは海賊であることにこだわるの? 戦い? 財宝? あなたは何を追い求めて海賊になったの?」
何を求めて。
「決まってる、自由が欲しかったからさ」
欲しかったもの。エースの脳裏に思い浮かぶ、義兄弟との誓いの日。
――俺は海賊になって勝って勝って勝ちまくって、最高の名声を手に入れる! それだけが俺の生きた証になる!
そんなことを言った日もあった。
世界が自分を認めなくても、どれほど嫌われようと、大海賊になって自分の名を世界に知らしめること。
(ちげェよな・・・俺が欲しかったのは、名声でもなかった・・・でも、自由に生きるという誓いは、今でも変わらねェ。なあ? サボ・・・ルフィ・・・)
そう、自分が本当に欲しかったのは別に名声でもなかったが、それでも『自由』だけは昔から義兄弟たちと共通に求めていた生き様だった。
「自由・・・だったら・・・だったら・・・」
しかしそれでミラジェーンが納得するはずがない。
彼女は少しうつむいたが、すぐに顔を上げてエースに言う。
「だったら、ギルドでいいじゃない! 海に関連した依頼なんていくらでもあるのよ! 何よりも自由! どこまでも自由と冒険が続いている! あなたの望みと何が違うの?」
ギルド。正直エースはその単語をよく知らないが、ミラジェーンは強調する。
「お願い、エース。負けた私が言えることじゃないけれど・・・あなたは私たちを見逃してくれた・・・私は今後あなたを捕える依頼が来ても受けられないわ。あなたが悪党として捕まる話も聞きたくないわ。だからお願い、エース・・・・」
「お、おいおい、ミラジェーン・・・」
「海賊から足を洗って。そうしたら私がギルドを紹介するわ。あなたの望むものがそこにあるのだから」
自由と冒険がそこにある。
妖精の尻尾(フェアリーテイル)の名前の由来。
妖精に尻尾はあるのかないのか。永遠の謎。ゆえに、永遠の冒険。
ミラジェーンはエースからどこまでも自由を求め、探求し、そして愛する者たちのためには命をかける心に、自分の愛すべき人たちと重ねた。
たとえ海賊であったとしても、自分たちと違いはない。ならばエースも海賊でなくてはいいではないか。
それがエースという男を知ったからこそ、ミラジェーンはエースにそうなって欲しいと思うのだった。
だが、エースはアッサリと答える。
「やらねェよ。俺がこだわってるのはあくまで海賊なんだよ」
「ッ!?」
エースは揺るがなかった。
「どうして! あなたほどの人が・・・それほどの力がありながら・・・そんな真っ直ぐで綺麗な瞳のあなたが、どうして海賊になるの!? 誰かのためにその力を役立てようと思わないの?」
どうしてか? そんなものは決まっている。
「どうして海賊に? おめェこそ、おかしなことを今更聞くな~。決まってる。俺たちの時代と海・・・そして・・・」
海賊になる理由に正解などない。唯一男たちに共通しているのは・・・
「海賊旗が俺を呼んでいたからさ」
ドクロの旗に魅せられたからだ。
「~~~~ッ」
そんなことを、少年のような屈託の無い笑顔で言われて、否定することなどできない。
「は~・・・説得は失敗ね」
「おっ、納得してくれたかい?」
「しないけど、・・・海賊があなたにとっては、私たちのギルドのような存在だというのが分かったから・・・」
少し残念そうに、だが、どこかスッキリとしたような表情でミラジェーンもようやく微笑んだ。
「やっぱ、そういうところは麦ちゃんのアニキよーう」
「うお~、姉ちゃんが諦めるとは・・・」
「まあ、確かにそいつには妖精の尻尾なんかより、ドクロのマークの方が似合ってる気がするがな」
火拳のエース。そしてモリア。
二人とも全く別のタイプの人間ではあるが、二人とも海賊である。
この二人の違いは何か? そもそも海賊とは何か?
海賊の明確な定義が無い以上、それは誰にも答えられない。
星の数ほど海賊がいれば、星の数ほど海賊のスタイルが存在する。
海賊というのはひとくくりできるものではなく、様々な海賊がこの世に存在する。ミラジェーンたちは今日、それを知った。
だが、明確な定義もなく様々な海賊が存在すると知ってもなお、ミラジェーンたちはエースという男に本物の海賊を見た気がした。
いや、そうであって欲しいと願った。
たとえモリアのような海賊がスタンダートであったとしても、エースこそ本物の海賊だとミラジェーンたちはこれからも思うのであった。
皆さま、いつもお世話になっております。
この度、私事で申し訳ございませんが一つ報告があります。
実は、私は『小説家になろう』でも活動しておりまして、この度、オリジナルの小説がアルファポリス社様にて書籍化されることになりました。
この「魔法はお前の魂だ(ネギま×グレンラガン)」から私の執筆活動が始まり、ある日、オリジナルでも作品を書きたいと思って自己満足でやっていたら、そのような事態になりました。ですので、私が突然エタッたり、webから姿を消していたのは、そっちの活動が忙しくて時間を使えなかったためでした。
ただ、どうしてこの場でそれを報告するのかと言うと、アルファポリス社様との契約上、「小説家になろう」での掲載版をweb用に修正なりをしないといけないのですが、それを今年の9月以降から「小説家になろう」では全面禁止となり、アルファポリス社様にて出版された作品は移行を余儀なくされたからです。
そこで、私は移行先として二次創作小説でお世話になっております、本サイトを利用させて頂こうと思い、運営者様にも許可を戴き、8月中に引っ越す予定です。
ですので、8月中旬にヘンテコなオリジナル小説が続けて投稿されますが、ご勘弁ください。
興味を持っていただいた方は是非、一読いただけたらと思います。
『異世界転生-君との再会まで長いこと長いこと』というタイトルで、既に1巻と2巻が書籍化されました。「魔法はお前の魂だ」での培った経験や熱い想いを活かしたものを目指しております。
関係ない話して申し訳ありません。
では、今後ともよろしくお願いします。