死に損ないの海賊たち(ONE PIECE✖FAIRY TAIL)   作:アニッキーブラッザー

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第16話 過去の清算

レアグローブ王国。大陸の大半に領土を広げる大国家。

その国家力は世界有数であり、経済に置いても軍事に置いても安定している。

しかし大国故に、足下や辺境の状況まで完全に把握されているかと言えば、そうでもない。

国の管理や監視の行き届かない辺境の地では、権力に物を言わせた搾取や支配が息づいているのだった。

 

「ヒッヒッヒッヒッ! 最高じゃ! 最高の素材じゃ! 素晴らしいぞ、人魚とは!!」

 

ここはレアグローブ王国の中でも特に辺境に位置し、周りを海と険しい山々に囲まれた町、『ハード・コア』

レアグローブの領土といわれながらも、その実は本国からも隔離された場所とも言えた。

この町で何をやろうとも、本国に伝えられるのはただの情報のみ。

だが、もしその情報を本国に伝える政府関係者が腐っていれば?

 

「しかしずいぶんと高い買い物をしたものですね。資金はあの貴族から?」

「ヒッヒッヒッ、ああ、あの馬鹿貴族じゃ。馬鹿は嫌いだがあいつは実に役に立つ。ワシの研究が世に認められれば、その研究に出資したあなた様は多大なる功労者だとか言うたらたんまりと研究費を融資したわい!」

「なるほど。ですがそれで図に乗ったのか、彼の町での暴君ぶりは目に余ります。今はもみ消すことはできますが、いずれ住民から本国に伝わらないとも限りません」

「ヒッヒッヒッ、まあ、今は好きにさせておけい。実験体と頭脳と技術以外に必要なのは金じゃ! 一応、情報封鎖と住民に反抗されたときのために護衛もしっかりさせとくのじゃぞ、あの馬鹿貴族には」

 

興奮抑えきれずに気味の悪い笑いを上げる、白衣を着た謎の老人

その後ろには雪のように真っ白いローブに身を包んだ男。

 

「ヒッヒッヒッ、今回手に入れた最高の素材と、あの女、この二人の研究を極めれば・・・ヒッヒッヒッヒッヒッ!!」

 

ただただそこには、おぞましい狂ったような笑いだけが響いていた。

 

だが、彼らは知らない。

 

いや、まだ知らなかった。

 

自分たちを誰も止められないと勘違いした彼らの元に・・・

 

もうじき、常識で語れぬ海賊たちが近づいているのだった。

 

 

 

 

 

 

「おっ、着いたか。ずいぶんのどかな場所だな」

「キシシシシ、航海も普通で島にも面白みもねえ。実に退屈だったぜ」

「あちしもうお腹ぺこぺこよーう! あまりお腹空きすぎて回り過ぎちゃう!」

 

実に特徴のない普通の港町。

これまで偉大なる航路(グランドライン)で過ごしてきた彼らには、逆に珍しい航海と港でもあった。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)というギルドと一戦交えた以外は特に事件もなく、着いたら着いたで特に海軍や艦隊が待ち受けているわけでもない。

普通の航海に普通の入港。既に忘れた感覚にエースたちも少し新鮮な気持ちだった。

 

「ハード・コア・・・へえ、名前の割にはなんだか落ち着いてていいな。結構こういう町も好きだぜ」

 

上陸してみると、特に変わった景色ではない。

普通の家々や露店が建ち並び、一般の人たちが買い物や親子連れ、果肉を売り買いしている者たちや雑談をしている者たちが目に入る。

いかにものどかで、正に人の生活の日常がそこに広がっていた。

 

 

「けっ、刺激もくそもねーな。んで、ジェラールよ。んなつまんねーとこに何の用だ? 誰かに用があるんだろ?」

 

「ああ。さっき港で聞いたが、レアグローブ王国の施設がこの町の南にあるそうだ。多分俺の名前を伝えてくれと言えば、イゴール博士には会えるはず――」

 

――ッ!?

 

「「「「「「「「ひいいいいいいいいいいいいいっ!!??」」」」」」」」」」

 

その時、穏やかだった町の空気が一変し、人々が仰天してジェラールたちから後ずさりした。

 

「なんなのう!?」

「いきなり全員驚いたような目でこっちを見やがって」

「キシシシシ、案外俺たちにビビッたんじゃねぇか? 七武海に白ひげの隊長だからよ!」

 

モリアが少しワザとらしく自分たちの肩書きを聞こえるように言う。しかし、それに関しては町の人たちは素通りだった。

 

「・・・? あら、全然ビビッてないようよう?」

「ほんとだ。案外ノリでズッコケたんじゃねェか?」

「いや、それはないだろう・・・ひょっとしたら・・・」

 

ジェラールが顎に手を当てて考える。何か思い当たる節があるそうだ。

 

「キシシ、おい、何か分かったんならさっさと言えよ」

「ああ。恐らくは、イゴール――」

 

――ッ!?

 

その瞬間、また先ほど同じように町の人たちが壁際まで逃げた。

 

「・・・・イゴ――」

 

――ッ!?

 

「・・・博士」

 

――ッ!?

 

どうやら町の人たちが、何の単語で怯えていたのかがよく分かった。

 

「あっはっはっはっ、面白ぇ! 相当怖ぇやつみてぇだな!」

「本当、っていうか過敏に反応しすぎよ、たかが博士――」

 

――ッ!?

 

「キシシシシ、口にするだけでもこの反応か。ジェラールよ。どうやらテメエ、相当癖のあるやつに会いてぇらしいな!」

「よ~し、俺も真似してみるか。え~~、ハーカーセー!!!!」

 

――ッ!!!!???

 

 

「「「「「「「「「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!???」」」」」」」」」」

 

 

エースがふざけて大声で叫んだ。

するとそれだけで町の人たちは全員怯えた悲鳴を上げて、慌てて家の中へと逃げていったのだった。

 

「はははは、スゲエスゲエ!」

「あちしもやるう!」

「って、やめないか、エース!」

 

普通はこういう町の状況を見ると、気味が悪いと思うものだが、エースたちは「おもしれえ」と爆笑しているのであった。

この原因を何となくだが理解しているジェラール。

 

「ふう・・・記憶がすべて戻っていないとはいえ・・・」

「ん? ジェラール?」

「どうやら彼の評判や所業は・・・俺の記憶があっても無くても変わらないらしいな・・・」

 

ジェラールは急に顔をうつむかせ、どこか元気が無かった。

 

「エース、この国にいるその人物は・・・生命すら実験の道具にする・・・」

「ん?」

「魔法と科学に心を売った・・・いや、売ってはいないか、むしろ人の心の中でも最も醜い己の欲望のためだけに研究を続ける者が居る」

 

ジェラールが目をつむり、ゆっくりと空を見上げる。

それはどこか悲しそうで儚げだった。

 

「へえ、まあ、俺も海賊で自分の欲望には忠実に生きてるからな、何も言うことはねーが、何でお前はそんな奴を知ってんだ?」

 

エースの問いに、ジェラールは少しだけ唇を噛みしめた。だが、言葉を飲まずに正直に全てを打ち上げる。

 

「記憶がなくなる前・・・その人物は俺の・・・協力者だったらしい・・・」

 

言ってしまった。そんな最低の人物と自分はかつて仲間だった。

それがエースたちにどのような印象を与えるのかが怖かったジェラールだが・・・

 

 

「「「ふ~~ん、で?」」」

 

「ふ~んって、お前たちが聞いたのではないか!?」

 

 

エースたちは「だからどうしたの?」的なアホづらで特に気にしている様子もなかった。

 

「まあ、場合によっちゃァ、記憶があるとかないとか関係ねーよな。お前さんが何をやったかなんて興味はねーけど、お前さんが何かをやったのには変わりねーしな」

「エース・・・」

「ま、正直それはどうでもいいんだが、結局ここに何しに来たんだ?」

 

どうでもいい・・・

テキトーなのか器が大きいのか、それとも本当にどうとも思っていないのか、エースという男をジェラールは未だに把握できなかった。

そしてそれはボンクレーもモリアもである。人の過去の罪に対してあまり興味も示していない。

まったく・・・こいつらは・・・

ジェラールは少しだけ救われた気がして、苦笑のため息を漏らしてエースに答える。

 

 

「俺はその人物に会い、共に自首をできないか促してくる」

 

「「「はああッ!?」」」

 

 

その言葉にだけは、エースたちは反応した。

 

「なんだよ、せっかく出られたのに何で自首すんだよ、もったいねー」

「ジェラちゃん!? あんたが何をしたかは分からないけど、捕まれば死刑か終身刑でしょう!? 命を無駄にしないってエースちゃんに言われたじゃないのよう!」

「おーおー、バカ正直な犯罪者だ、キシシシシ、まあ、勝手にすりゃいいんじゃね?」

 

三者三様の反応に思わず笑ってしまいそうになるジェラールだが、これも彼が彼なりに考えた答えの一つでもあった。

 

 

「確かにアクノロギアとの戦いで、俺の死で何かが償えるわけではないと分かった。しかしそれでも罪から逃げるわけにもいかない。過去の全てを洗いざらい吐き出して、俺は裁きを正面から受け入れる」

 

「ジェラちゃん・・・」

 

「まずはキッチリとそれを受け入れなければ・・・例え生きていても俺は前には進めない・・・そんなシコリを残したまま、お前たちのように自由には生きられないさ」

 

 

それは、少しエースたちには分からない感情だった。

エースたちは世界から見れば大罪人。だからこそ賞金を掛けられた。

しかしそれを後悔したことはないし、むしろ賞金が上がって喜んだりしているぐらいだ。

海軍に捕まっても感じるのは反省ではなく、敗北の感情。

海軍だって、海賊を捕まえても更生させる気はゼロで、散々苦しめてから見せしめにしようぐらいの勢いだ。

だから、そんなエースたちにとってジェラールという男は少し特殊だった。

別に過去にどんな犯罪を犯したかなんて興味はないが、ここまで自分の罪を後悔して償いたいと思っているなど、エースたちの回りにはいなかった。

エースもゴチャゴチャ自分が言うことでもないと、もう深くは言わなかった。

 

 

「つっても、俺たちもワザワザこんな知らねェ国に来たのも、元いた場所に帰りたいためさ。そのために俺たちもその物知りそうな博士に会いたいんだがよ」

 

「ああ、分かっている。だからまず俺から先に行こう。彼と話をして、うまくいきそうだったらお前たちと会う時間も作るさ」

 

「キシシシシ、んな面倒なことしないで乗り込んだらいいじゃねーかよ」

 

「いや・・・お前たちまで来られると話し合いがややこしくなりそうだ。とりあえず先に俺に行かせてくれ。その間は町で食事でもして時間を潰してくれ」

 

 

ジェラールはそう言ってエースたちから離れ、一人町の南へ向かう。

その先には、簡素な町には似つかわしくないでかい基地が見える。

正面には恐らく国の国旗であろう旗が掲げられ、厳重な鉄格子に屈強そうな衛兵が二人立っている。

まるで海軍支部の基地のようにも見える軍の匂いを感じた。

 

ジェラールにはもう言っても聞きそうもない。

「仕方ねーな」と残されたエースたちは顔を見合わせながら、言われたとおりに町のレストランにでも入って時間を潰すことにしたのだった。

 

しかしこのとき、ジェラールはまだ分かっていなかった。

あまり騒ぎを起こしたくなくて、まずはエースたちを置いていったジェラールなのだが、別にエースたちは騒ぎを起こしたくて起こすのではない。

ただ単に、騒ぎを起こす星の元に生まれてきているというだけなのだ。

 

「ジェラール・フェルナンデスが会いに来た・・・イゴール博士にそう伝えてくれ」

 

ジェラールがそう告げると、基地の見張りの兵が明らかに動揺した。

すぐさま確認のために建物に戻り、数分後、息を切らせた兵士がジェラールを中へ入るように諭した。

その光景を基地内の部屋で、窓ガラスに張り付くように見下ろしているイゴール博士は笑いが止まらなかった。

 

「ヒッヒッヒッヒ、これは罠か!? それともワシの日頃の行いが良かったか! 最近は運が良すぎるわい! まさか死んだと噂だったあの小僧が生きていて、しかも自らここに赴くなどどれほどツイとるんじゃ!」

 

まず一言。

 

「『ベルニカ』、人魚の『セリア』、そしてジェラール! ヒッヒッヒッヒッ、ワシの未来が輝いて見えるぞ!」

 

どう考えてもこの男がジェラールの話に頷くわけがないということである。

その目はむしろ、新たな実験体がやってきたとばかりの興奮をむき出しであった。

 

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