死に損ないの海賊たち(ONE PIECE✖FAIRY TAIL) 作:アニッキーブラッザー
潜入するにあたってまず重要なのは騒ぎを起こさないことだ。
特にそれが敵地であるなら尚更だ。一つの騒ぎで大勢の人が押し寄せる。
戦いになったらそれまでだ。敵の腹の中、その敷地内にいる全ての者を敵に回すことになる。
レアグローブ王国の軍事施設に人魚奪還のために進入したエース。
エースは潜入には自信があった。
よく子供の頃はルフィたちと一緒に本来は子供では立ち入れない場所も侵入したり、海賊になってからも黒ひげを捜索中に私用があって海軍基地に潜入した経験もある。
今回もコッソリ潜入し、兵士を一人気絶させて服を着る。これだけで完成だ。大丈夫だ。楽勝。
そんな軽い気持ちだったエースだが・・・
「いたぞー! 怪しい奴!」
「そっちに逃げたぞー!」
ソッコーでバレた。
「おかしい。なんでバレた?」
銀色の騎士の甲冑を纏って物陰に隠れるエース。
今、基地の内部では怪しい侵入者が現れたと、甲冑を纏った武装兵士が走り回っていた。
隠れるエースはやり過ごそうとする。
だが、妙なことに何故か逃げ回って隠れるエースの手には、大盛りで盛られたご飯の皿があり、エースは隠れながらモグモグと食べていた。
「必ず見つけだせ! くそ、食堂で一人で10皿以上も食っているからおかしい奴だとは思ったんだ!!」
「支払いで金を払うどころか、宝払いとかいって食堂のおばちゃんとモメてやがった!」
「試しに所属と部隊コードを聞こうとしたらいきなり逃げ出しやがった!」
「おまけにまだ食って逃げてるぞ! 隊長! 所々にご飯粒と今日の昼のメインであった竜田揚げの衣も落ちているであります!」
人魚奪還で侵入したエースだが、途中でとても香ばしい香りに誘われて気づいたら食堂にいた。
そこでは兵士たちが昼休憩のために大勢がメシを食っていたが、エースも先ほどブランチとのゴタゴタであまりメシを食えていなかったため空腹には勝てず、気づいたらメシを食っていた。
そして一人でガツガツと食べたり支払いでモメるエースに少しおかしいことに気づいた回りの兵士たちがエースに訪ねた瞬間、彼は基地内を逃走し、このような騒ぎが起こったのだった。
「やれやれ、侵入も簡単じゃないぜ。まっ、俺の目的はこいつらぶっとばすことじゃなくて人魚を助けることだからな。あんまり余計な戦闘は・・・」
戦闘はなるべく避けよう・・・エースがそう思いかけた瞬間、背後から忍び寄る影があった。
「いたぜ、怪しい奴!」
「大人しく言うことを聞――」
「ワリ、ちょいと道案内を頼むぜ」
兵士が仲間に聞こえるように叫ぼうとした瞬間、エースは兵士の一人を手刀で気絶させ、もう一人を脇に抱えて走り出した。
「ちょちょ、なんだ貴様!?」
「ワリーワリー、俺よ、人魚に会いてーんだがどこに居るか知らねーか?」
「はっ!? に、人魚!? 貴様何を言っている!? あれは確かイゴール博士が基地内でも絶対に口に出してはいけないと!?」
「いーじゃねーかよ。とりあえずこの中に居るんだろ? どこだよ!?」
「ば、ばかやろーーー!? 言えるわけねーだろ! ハジャ様とディープスノー様に罰を受けるか、イゴール博士に人体実験されるか!?」
「全部俺の所為にしとけよ。お前のことも黙っててやるからよ。迷惑はかけねー」
「既に大迷惑なんだが!?」
脇に抱えられた兵士が大声でエースに文句を言ったり叫んだりしていると、自然と基地内の兵士たちも集まってくる。
その人垣や剣、銃弾をかいくぐりながら人魚を捜すエース。
いつもは穏やかなこの町が今、空前絶後の騒ぎが発生したのであった。
「さあ、もう逃げられないぞ! 大人しく捕まれ!!」
「う~ん・・・まいったね~」
脇に抱えた兵士を降ろして、回りを完全に包囲されたエース。
兵士たちは皆が怖い顔で剣や銃をエースに向けている。
「まいった・・・道に迷った」
一方でエースは囲まれたことよりも、道に迷ったという感じで腕組みしながら悩むという余裕の様子。
「ん? そうだ・・・確か人魚は地下の水槽とかって、ブランチとかって野郎が言ってたな」
その何気ないエースの発言に、周りを囲んだ兵士たちは騒然とした。
「ブランチ・・・ブランチ様!? どういうことだ!?」
「さっきぶん殴った」
「「「「「ええええええええええええ!? なにしとんじゃこのボケなすは!!(あ、でもあのバカ貴族殴ってくれて少しうれしいかも)」」」」」
「「「「と、とにかくなんてことを! この男、処刑されても文句言えないぞ!?」」」」
エースがブランチを殴ったことに飛び跳ねるほど驚き、恐れる一方で、どこかうれしそうな奴らもいたがこの際はそれは無視しておく。
「お前さんたち、あの男が人魚の取り引きしたのは知ってるみてーだな。その人魚を俺は助けてーんだが、地下への道を教えてくれよ」
エースの発言で言葉を詰まらせる兵隊たち。
そう、実は彼らも自分たちが隠していることがまずいことは分かっているのだ。
人魚の売買取引。その美しさと稀少さゆえに、人魚はこの世界の裏社会では超高値で取り引きされている。
しかしそれは人間と亜人という異種族が互いに住むこのアースランドに置いては、種族の均衡を狂わす大事件と言ってもいい。
そこにはまた人間と亜人の長い歴史が関わるのだが、とにかく人魚の売買取引は重罪。この基地はそれを黙認するどころか、自分たちが行っている。
イゴール博士を中心とした報復を恐れて誰も告発する者がいない。
しかしこの場にいる兵隊たちとて博士たちの行いや自分たちの黙認していることの重大さは理解している。
だからこそ、人魚を助けにきたというエースの正直な言葉に、誰もが声を荒げることができなかったのだ。
「なんだよ、急に黙りやがって。腹でも減ったのか?」
さっきまで騒がしく追いかけてきた兵士たちが急に戸惑いだして首を傾げるエース。
そして取り囲んでも何も出来ずに迷いの見られる兵士たち。
「なぜ人魚を助ける?」
迷いの見られる銃口を向けながら兵士がエースに尋ねる。するとエースはポリポリと頭をかきながら、手短に言う。
「俺のオヤジと友達に報いるためさ」
理由は至極単純。だが、その単純な物のためには場合によっては命も懸ける。それがこいつらだ。
「だからよ、ワリーが人魚は助けさせてもらう。・・・いくぜ!!」
そして一度決めたらもう止まらない。それが彼らの血筋なのであった。
一方その頃・・・
「キシシシ、おい、俺は昼寝するから何もないうちは起こすんじゃねーぞ」
エースが居なくなったレストランの外の通路で、モリアは壁にもたれかかって昼寝の体勢。
その回りには、武装した兵士たちが山積みになって倒れていた。
「うぐお・・・こいつら・・・何者・・・」
「つよ・・・過ぎる・・・」
ブランチをエースが殴ったことにより、駆けつけた兵隊たちがモリアたちを捉えようとしたが、微塵も相手にならなかった。
山積みになって倒れる兵士たちの中には、ブランチも居た。
もはや涙目と殴られた腫れでボロボロになったブランチに威厳も何も無かった。
食後の運動でテキトーに兵士たちを相手にしたモリアは、欠伸をしながら仰向けになって寝ようとしている。
その側で、ボンクレーはエースの居る基地を見ながらハラハラしていた。
「う~ん、気になるわねい。エースちゃん大丈夫かしら」
「あ~? うるせーな。そんなに気になるなら行ってくりゃいーじゃねーか。まあ、火拳がピンチになるような状況をテメエがどうにか出来るとも思えねーけどな」
「あんんたねい! あちしが心配してんのは、エースちゃんがちゃんと騒ぎを起こさずにやってるかってことよう! そりゃー、戦えばエースちゃんに問題はないでしょうけどう、まだこの海をよく知らないあちしらは今のうちは情報集めたりが先決だってのよう! 戦って追われるようになればそれどころじゃないわよう!」
「おー、おー、うるせーな。追われる身になるもならねーも知るか。とりあえずお前も火拳も黙って俺に情報だけ渡せばいい」
「このっ!? なんたる怠慢! 自分は偉そうに寝っ転がっているだけで情報よこせなんて、同じ七武海でもクロちゃんはまだ行動的よう!!」
モリアは完全にやる気もなく、どうでもいいから何かあったら起こせという態度である。
ボンクレーはボンクレーで、エースが騒ぎを起こして面倒なことを巻き起こさないかと段々心配になってきていた。
「キシシシ、つーかお前はさっき普通に火拳を見送っただろうが、何で今更心配なんだ? こんな田舎の軍事施設に・・・」
モリアは顔だけ起こしてボンクレーに尋ねる。
そう、ボンクレーは先ほどエースの人魚奪還に協力しようかと尋ねたが、一人で十分だと言われた。
まあ、エースの強さも異名もボンクレーは十分知っているだけに、特に問題は無いと思って見送った。
しかし何故かボンクレーは言いようのない胸騒ぎにハラハラしていた。
「だってあなた、考えてもみなさいよう! エースちゃんと過ごしていると忘れがちになるけど・・・」
「あん?」
「エースちゃんは、麦ちゃんのアニキなのよう! こういう時に、普通に解決するわけないじゃない!」
「・・・・・・・・・ヌッ・・・・」
モリア、言われて気づく。
火拳のエースと麦わらのルフィは義兄弟
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
モリア無言。あの麦わらのルフィの兄貴分がこういうときに普通に問題を解決する?
(キシシ、あの麦わらの・・・スリラーバークを破壊し、噂では天竜人を殴り、インペルダウンで200名以上の脱走者を引き連れて、白ひげと海軍・七武海の戦争に乱入した・・・あの麦わらのアニキが、問題を普通に解決?)
モリア結論。うん、無理だ。
「キシシシシ、面倒があったら起こせ。俺は面倒になりそうだったら船でどっか行く」
「ちょっとう! そこは手伝ってやるとかじゃないのう!?」
「あ? 知るか。なぜこの俺が麦わらのアニキの手伝いをすんだ? むしろ死ね、キシシシシシ」
「こんのすっとこどっこいがーッ!! とにかくあちしは心配だから、何か異常が見られたら行くわよう!」
「おうおう、勝手に行ってろ。俺は異常が見られたらどっか行く」
モリアの無関心に怒り心頭のボンクレー。その時・・・
――ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!
巨大な破裂音が聞こえ、音の方を振り向くと、エースが向かった建物の方からだった。
「なんだ、何の音だ!? 基地の方からだ!?」
「なに、一体何なの!?」
「またあの人が・・・はか・・・せが・・・何かをやったのか!?」
「うえーん、おかあさーん」
「危ない! お家に隠れてなさい!」
町の人たちが騒然する。店や建物から住民が驚いて続々出てくる。
何の音だ? 一体何があったんだ? 何か事件か?
その様子を見ながらモリアとボンクレーは一言。
「「・・・よし、今のところは異常なし」」
まっ、あの兄弟ならばこれぐらいの騒ぎなら普通だろうと、二人は判断したのだった。