死に損ないの海賊たち(ONE PIECE✖FAIRY TAIL)   作:アニッキーブラッザー

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第2話 海賊と魔導士

「なーに、このデカいの!? って、でかすぎじゃないのよーう!?」

 

起き上がった男にボンクレーの目玉が飛び出した。

 

「キシシシ、なんだァお前らは」

 

男はでかい。デカすぎる。2mとかそんなレベルではない。

さらにデカイだけでない。身に纏う空気やたたずまいが尋常ではない。

 

「げっ・・・・・お前は・・・」

「あ~ん? って、はあッ!?」

 

だが、こんな規格外にでかい人物を、エースは目を凝らしながらよく見ると、とても知っている人物であった。

 

 

「おまえは・・・モリア!?」

 

「なっ、お前は火拳!?」

 

 

モリア。そう呼ばれた男はエースを見下ろしながら、驚愕した。

 

 

「ちょっ、エースちゃん! モリアってまさか・・・」

 

「ああ。七武海のゲッコー・モリアだ。でも、なんでこいつが監獄に!?」

 

「しちぶかいいいいいいいい!?」

 

 

モリア。エースだけでなく、その名はボンクレーも知っていた。

偉大なる航路で暴れたものにとって、七武海のモリアという名はそれほど世界に轟くものなのである。

だが、そんな大物がなんでこんな所に?

 

 

「ん? そうだ、俺様はドフラミンゴのやろうにやられて・・・」

 

 

エースの問いに、モリアが顎に手を当てて呟く。

 

 

「ドフラミンゴ? なんだよ、七武海の中でもなにかあったのか?」

 

「ああ・・・っていうかここはどこだ? 大体、火拳。お前は赤犬にやられて死んだはずだぞ?」

 

「ああ。俺もそう思ってたんだが」

 

「はっ、死んだ!? ちょっとエースちゃん! あなた何爆弾発言してんのよう!? じゃあなに? ここにいるあなたは幽霊とでも言うのう?」

 

「そーいや、ボンちゃん。おめえもマゼランに殺されたって・・・」

 

「それなら俺もドフラミンゴの野郎に・・・」

 

「って、なになに!? どぅーしてこんなことになってんの!? やっぱりあちしたちは死んだの? ってことはまさかここはヘブンじゃなくてヘル? あちしらが天国に行けるとも思えなかったけど、マジで冗談じゃないわよう!」

 

「キシシシシ、死んじゃいねえと思うぜ。そしてここもインペルダウンとも思えねえ。手に海桜石もはめられてねえ。好都合だ。キシシシ、ここを出る前にテメェらの影を奪っておくか?」

 

「あっ? やってみろよ。俺もたたじゃやられねえ」

 

「ちょちょちょちょちょ、この野蛮人はどぅーしてすぐに戦うのよう!? まずここはどぅこなのかが先でしょう!」

 

 

どうして現状すらまともに把握できないのに一触即発の空気にスグなるのか。

決まっている。

こいつらが海賊だからだ。

しかし・・・

 

 

「・・・・・・一体・・・君たちは誰だ?」

 

 

モリヤとエースの間に流れる不穏な空気がその声で断ち切られた。

 

「おお、これはすまない。寝ているところを起こしてしまった」

「キシシシシ、知らねえ顔だな」

 

現状が分からぬこの状況で、ひょっとしたら何かを知っているかもしれない人物。

この監獄の中に居て、唯一手枷がはめられている人物が目を覚ました。

端正な顔立ちに、青髮。そして右目には奇妙な紋章のような刺青があった。

それなりの悪党なら大体は知っているはずのエースたちだが、この男に関しては初めて見た顔だった。

 

 

「どうして・・・いや、どうやって? ここは俺を逃がさないようにこの監獄の中でも特に厳重な牢屋のはずなのに・・・そして・・・君たちは何者だ?」

 

 

男は戸惑っていた。当然だろう。だがしかし、エースは一つ気になった。

 

 

(こいつ・・・)

 

 

青髮の男の瞳。それは、輝きも、生気も、未来も、何もかも宿っていない虚無に見えた。

 

(何があったか知らねえが、ずいぶんとまあ・・・暗い目をしてんじゃねえか・・・)

 

善であれ悪であれ、世界の海へ飛び出した男たちの瞳は常に光を帯びて猛っていた。

野望、信念、生き様。己の命を懸けて世界の海に挑む者たちが海に溢れていた。

だから、エースは目の前の男の瞳に、少々困ったように頭を掻いた。

 

 

「まあ、いいや。俺の名はエース。ここはお前さんの牢屋だったのかい。そいつは悪かったな。だが、実は俺たちもどうしてここにいるのかがよく分かってねえ。気づいたらここに居たってところだ」

 

「気づいたら? なんだそれは・・・」

 

「まあ、もうちっと考えて分かったら答えるよ。とりあえず、お前さんの名は?」

 

 

男は表情を変えない。ただ息をして言葉をしゃべるただの人形のような様だ。

だが、それでも男はエースの問いかけに対して、きっちりと己の名を口にして答えた。

 

 

「俺の名は・・・ジェラール・・・ジェラール・フェルナンデスという名で・・・二度と世界に放たれてはならない大悪党・・・らしい・・・」

 

 

これが魔導士と海賊の出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くくくく、見えてきたぜ」

 

 

魔導士の集うギルドは魔法の使えぬ人たちの力になることを前提として成り立っている。

だが世界には、魔導士の力を使って人々を苦しめる悪しき者もいる。

その強大な魔力と悪しき心をもった者たちは、必ず弱者や平和を脅かす。

そんな者たちを出さないよう、そして捕らえるために評議院は世界にルールを作り、犯罪者を捕える。

だが、今日この日、評議院が捕らえた犯罪者たちを収容する監獄にて事件が発生した。

 

「おい、準備はいいか?」

「へい! 全員、武器も魔力も全開ですぜ」

「いつでもOKですぜ、マスター」

 

山々に囲まれ、島の周りは海で囲まれた堅牢の砦。

その堅牢さは、外からの攻撃を防ぐというよりも、中から人が外へと出ないようにしているようにも見えた。

それも当然。こここそが、決して日の当たる世界に出してはいけない、罪を犯した凶悪魔導士たちを収容する場所なのである。

だが、その収容所を遠目に眺めながら、次々と邪悪な笑みを浮かべた者たちがこの場所へと向かっていた。

 

 

「この任務に失敗は許されねえ」

 

「ああ、分かってやすよ」

 

「にしても役人はチョロイな。ちょいと透明になる魔法を使ってるだけで気づかないなんてよ」

 

 

集まっている者たちは全員魔導士。数は百や二百では収まらないであろう。それほどの大人数が接近しているというのに、監獄を守備する者たちは誰も気づいていない。

だからこそ、これから起こる大事件を未然に防ぐことができなかったのである。

 

 

「バラム同盟、『冥府の門(タルタロス)』『悪魔の心臓(グリモアハート)』の幹部。そしてこれまで逮捕された闇ギルドの魔導士たち。監獄を襲撃して一人でも多く救出できれば、俺たちの地位も一気に上がるってもんよ!」

 

 

ゲスな笑みを浮かべながら彼らは砦へと近づいていく。

 

 

「黒魔導士ゼレフの復活・・・大魔法世界の創成・・・今から少しでも俺たちの名を売り込み、ゆくゆくは・・・くくくくく! 俺たち闇ギルド『幻獣の牙』の名を轟かせてやるぜ!」

 

 

彼らが口にした、闇ギルド。

闇ギルドとは、あまりにも危険すぎるために議会が解散命令を出されたにもかかわらず、それを守らずに裏で活動し続けているギルドであり、そこはほぼ犯罪組織と化している。

評議院が正義のためにとこれまで多くの闇ギルドの魔導士たちが逮捕された。

だが、今日この日・・・

 

 

「さあ、行くぜ野郎ども!!」

 

「「「「「「「「「「オオオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」」」」」」」」

 

 

この歴史的大事件が世界を駆け巡ることになる。

 

 

 

 

そう、多くの者たちに影響を与えて・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はジェラール。世界最悪の犯罪者だ」

 

 

ジェラール。そう名乗った男は自嘲気味に苦笑した。

己の存在を悪と言い、過去に大きな罪を犯したと包み隠さずに言った。

さて、目の前の男たちは自分の言葉にどういう反応を示すのかと、ジェラールはゆっくりと男たち・・・エースたちに目を向ける。

しかし・・・

 

 

「世界最悪の犯罪者? キシシ、知らねえな。大体世界最悪なのは革命軍のドラゴンだろ?」

 

「インペルダウン、レベル6の世間には知られていない犯罪者ん? あちしも知らないわよう」

 

「いや、俺もちょっとだけレベル6には居たが、こいつは知らねえな」

 

 

エースたちの反応は薄かった。

それどころか・・・

 

 

「キシシシ、だいたい七武海の俺や白ひげんとこの隊長を前にして、名前も顔も売れてねえ若造が世界最悪とは自惚れも言いところだぜ。正義だろうと悪党だろうと、俺たちの海で『世界最』という称号をつけるなんざ、それこそ世界が認めねえ限り得られねえ」

 

 

まるで小物を見るかのようにモリアは邪悪な笑を浮かべてジェラールを笑い・・・

 

 

「っていうか、ジェラちゃん? あなたモロにかっこいいわよう。食っちゃいたい!」

 

 

ジェラールが悪党とかそんなもん「だからどうした」という感じでジェラールの顔をジロジロと見るボンクレーに・・・

 

 

「まっ、仮にお前が世界最悪だったとしても、オレらも悪党には慣れてるんでな。だからそんな暗そうなツラすんなよな。もっと楽しくいこうぜ」

 

 

余裕綽々のエース・・・

 

「・・・えっ?」

 

まさかの反応に、ジェラールは戸惑った。

何だこいつら? ジェラールの瞳と表情はそう語っていた。

終わりのない幽閉生活ゆえ、誰かと話す機会はジェラールには皆無であった。

こいつらはいつからここにいた? 何で牢の中にいる? 見張りは何をやっているのか? ジェラールはそこまで深く考えなかった。

今の彼は虚無同然。今日も明日もこれからも、死ぬまで一生この暗闇の中で過ごす彼には、目の前の現実がどうなろうと対して関心がなかった。

ただ、目の前の3人の異色の男たちが、自分が何者かと訪ねてきたから答えただけであった。

彼らに対して尋ねることも、ここから出て行けとも、誰か看守を呼ぶという行為もジェラールはしなかった。

だが、己が何者か、そして己の罪を偽り無く語ったというのに、目の前の三人は驚くどころかキョトン顔だった。

それどころか・・・

 

 

「楽園の塔ねー、そんな事件があったなんて知らなかったぜ」

 

「キシシシシ、俺も聞かねえ。っていうか、雑魚を数年労働に使って、評議院とかいうのを混乱させて、エーテリオン? 妙な兵器を使用した・・・ずいぶんショボイじゃねえか。世界最悪と名乗る割には、常識の範疇内過ぎて興味も沸かねえ」

 

「ほんとーに、冗談じゃないわよーうってところね」

 

 

ジェラール自身が一生背負っていく許されぬ罪を、つまらなそうに聞いていたのだった。

 

「い、いや・・・何を・・・俺は何の罪もない人を・・・仲間を・・・大勢の者を手に掛けた・・・大切な人を何度も悲しませた・・・それを・・・」

 

ジェラールは逆に戸惑った。目の前の三人のこの反応は何かと。

だが、ジェラールは知らなかった。この三人もまた、ジェラールの想像を超える存在。

 

西の海、グランドライン、新世界。天下を取ることはなかったものの、多くの罪なき者や海賊を手に掛けて名をあげた、三大勢力・王下七武海の一角であるゲッコー・モリア。

 

バロックワークスという巨大秘密犯罪組織。モリヤと同じ七武海のクロコダイルが率いるその会社の幹部として、アラバスタという巨大な国の転覆に荷担したMr.2 ボンクレー。

 

そして、大海賊時代の頂点に君臨する『世界最強の男・白ひげ』率いる全世界最強の海賊団・白ひげ海賊団2番隊隊長・ポートガス・D・エースこと『火拳のエース』

 

ジェラールの目の前にいる男たちは、そんな常識や非常識も超越した、偉大なる世界の海でその名を轟かせた者たちだったのだ。

 

 

「君たちは・・・いや、君たちも・・・その・・・何かの犯罪者なのか?」

 

 

ジェラールは言葉を選びながら慎重にエースたちに尋ねる。

だが、三人はケロッと答えた。

 

 

「「「んっ、そうだけど?」」」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

軽い。あまりにも軽すぎる返答にジェラールは更に困った顔になる。

 

 

(な、なんだ彼らは・・・急に現れたと思ったら、俺のことも知らないうえにどうしてここにいるかも分からない・・・それどころか俺に恐れるどころか普通に接し・・・挙句の果てに彼らも犯罪者?)

 

 

一体何がどうなっているのやら。エースたちに続いて、ジェラールもまたこの現状を理解できなかったのだった。

 

「そ、その・・・そうか・・・ではそうだな・・・えっと・・・君たちはどんな罪を犯したんだ?」

 

対応に戸惑ったジェラールは、まるで自己紹介のような質問をする。こんな質問は普通の日常生活ではきっと出てこない事だろう。だが、三人は・・・

 

 

「「「んなもんイチイチ覚えてねえよ(ないわよう)」」」

 

「お、覚えてな・・・えっ?」

 

 

先ほどと同じような軽口でそう答えた。

 

 

「い、いや覚えてないって・・・君たちは先ほど犯罪者だって・・・」

 

「ああ。まあ、俺たちは海賊だからな。世界中から恨まれている大悪党だ。だが、好き放題海で暴れまわったから、どれが自分たちの罪だったかなんて覚えてねえよ」

 

「か、海賊!?」

 

「ちょっと、エースちゃん! あちしは海賊じゃないわよう!」

 

自分たちの罪を覚えていない? 一体何を言っているのだ?

ジェラール。彼はかつて多くの人を不幸にさせた。

彼自身はとある事情があってその罪の内容自体に対して記憶を失ってしまったのだが、それでも人から聞かされた自分自身の犯した罪は全て把握している。

だからこそ彼はここにいる。

許されぬ罪を犯した。

それだけのことをした。

死ぬ程度のことでは許されない大罪。

死刑になろうと、二度と外の世界に出られなくなろうとも、償いきれない罪をほんの僅かでも償えるのなら、全てを受け入れる覚悟でジェラールはここにいる。

だというのに・・・

 

「まあ、あれだ。多分世界の連中から見たら俺たちは・・・存在していること自体が罪なのかもな」

「ッ!?」

 

なぜ目の前のエースたちはこうもあっけらかんとしている?

 

(なんだ・・・こいつらは・・・)

 

話から、彼らは海賊なのだろう。ジェラールは事故で記憶喪失になり、様々なことを忘れてしまったが、海賊という言葉も意味も分かっている。

ならばエースたちが海賊というのなら、その犯してきた罪も容易に想像できる。

だが、なぜだろう・・・

 

(自分が海賊と・・・犯罪者であることを誇らしげに語り・・・自分の罪すらも真剣に捉えない連中がなぜ・・・)

 

目が腐っていない。

 

(なぜナツたちと・・・妖精の尻尾たちと・・・彼らと似た感じがする・・・)

 

まるで少年のようにイキイキとした瞳。

目の前にいる者は底が知れない。僅かなこのやりとりだけで、ジェラールは感じ取った。

 

(・・・・・・モリアという大男に関しては、本当に悪の瞳をしているが・・・)

 

まあ、そこだけはジェラールもちゃんと分かったのだった。

だが、そんなジェラールの反応も置いておき、エースはいきなりストレッチを始めて立ち上がった。

 

 

「さーて、まあ話もこれで終わりにして、俺たちも生きているなら生きているで、とっととここから出るとするか」

 

「そうよう! 海桜石の手錠がないなら簡単じゃないのよう!」

 

「キシシシシ、とりあえずそこまでは休戦しておくか」

 

 

まるで家から近所へ出かけるような軽い口調で三人はそう言った。

 

 

「ちょっ、ちょっと待て。・・・出る・・・だと?」

 

「ああ」

 

「何を! 君たちは逮捕されてここにいるのではないのか? 罪を償うためにここにいるのではないのか? それよりここは魔法の使えないように対魔法の術式が・・・」

 

「キシシシシ、ならテメェは一生ここに居てくたばってな。心の折れた野郎には、これから先の新時代は生きていけねえからな。そしてそんな腰抜けの影は取るまでもねえ」

 

「な、何をそんな堂々と! 君たち・・・いや、お前たちは自分たちが悪だと自覚しながら、どうしてそんな平気でいられる!」

 

「あー、やーねー。顔はいいのにつまらない男よう」

 

 

ジェラールは焦ってエースたちを止めようとするが、エースたちは耳を塞いだ。

 

 

「まったくかてーなー。海賊は、海に出てなんぼじゃねえか」

 

「キシシシシシ、それは火拳に同意だな。監獄じゃなく・・・海の上ならどこだろうと構わねえ」

 

「いつまでもこんなジメジメした所はいられないわよう!」

 

 

たったそれだけを答えて彼らは堅牢な扉へ向かって攻撃する。

 

 

「火拳!」

 

「黒蜥蜴!」

 

「オカマ拳法! 白鳥アラベスク!」

 

 

何が起こったか分からなかった。

 

「な、なんだ!? 魔法が使えないこの牢で・・・こいつらは・・・何者だ!?」

 

それほど一瞬で、それほど容易く、ジェラールを逃がさぬよう強固になっていた牢屋を三人はぶち破った。

 

「ほーう、お前はイワンコフと同じ拳法の使い手か。影を取ったらいい手駒になりそうだ」

「やめろ、モリア。ボンちゃんは俺と弟の大恩じ・・・いや、友達だ! 友達に手を出すなら、俺は許さねえ」

「ちっ」

「ジェラちゃんは来ないのう? 今なら逃げらるわよう?」

 

呆然とするジェラールは言葉を失っていた。

 

「来ないなら、いいよ。じゃあな。ワリーが俺たちは行くぜ。犯罪者とはいえ、オヤジや弟・・・そして仲間たちが気がかりなんでな」

「ん? キシシシシ、そーいやーお前は赤犬にやられてあの戦いの結末を知らねえか? 麦わら・・・白ひげ・・・そして黒ひげのことをな!」

「黒ひげ!? ティーチのことか!? 俺がやられた後に、あの戦争では一体なにがあったってんだ!」

「ちょーっと、あちしにも教えなさいよう!」

 

もう三人はジェラールに振り返ることすらしない。

 

「なんだ、今の音はァ!?」

「ジェラール・フェルナンデスの牢からだぞ!」

「急いで確認に向かえ!」

 

それどころか興味もないのだろう。

 

「おー、おー、今の音で誰かが来たようだな。キシシシシ、モノのついでだ。脱出のついでに奴らの掃除をしといてやるよ」

「エースちゃん、あちしらも行くわよう! 手ごわいのが来たら困るしねい」

 

このままでは行ってしまう。

 

「ま・・・待て・・・待て、エース!」

 

ジェラールは知りたかった。

何故こいつらは自分たちが悪党で罪を犯していることを自覚しながらも、あんな輝く瞳をしていたのか。

するとエースは振り返り、ニッとジェラールに笑った。

 

 

「待たねえよ。周りがどんな目で俺を見ようと、俺はまた海へ出て、思いのまま生きる! 誰よりも自由にな!」

 

 

究極の自己中心的なその言葉。

だが、エースのその言葉には・・・

 

「自由・・・」

 

エースの瞳には、言いようのない深みと重さをジェラールは感じ取った。

 

(自由・・・か・・・)

 

エースが口にした『自由』という言葉。その言葉がなぜかジェラールの頭の中によぎり、どこか懐かしい響きをジェラールは感じた。

 

 

――俺たちは自由を手に入れるんだ。未来と、夢を

 

 

温かく力強い言葉・・・

いつかどこかで聞いたことがある言葉がジェラールの頭の中に駆け巡り、同時に・・・

 

 

――エルザ・・・この世界に自由などない

 

「ッ!?」

 

 

同時にどす黒く、考えただけでも吐き気がしそうなフレーズがジェラールの頭の中を駆け巡る。

 

(なんだ今・・・何かが俺の頭に!?)

 

ジェラールは思わず頭を抑える。頭が、息が、胸が苦しくなる。

 

(・・・自由・・・)

 

だが、そんなジェラールの変化に気づかずにエースたちは立ち去ろうとする足を止めない。

 

(どうして・・・気になる・・・その言葉が・・・だが・・・だが・・・・俺は・・・・)

 

ジェラールは聞きたかった。どういうわけかは分からないが、自由を口にして立ち去るエースに、今の思いをどうしても聞かずにはいられなかった。

 

「エース! この世界に・・・自由はあるのか!?」

 

人からすれば意味の分からない問いだ。だが、そんな質問に対してエースは足を止め、笑いながら答えた。

 

 

「あるのか無いのかじゃねえよ。やりてぇ様にやらねぇと海賊やってる意味がねぇだろ。俺は自分の人生に悔いは残さねえ」

 

「ッ!?」

 

「それが兄弟と・・・俺が俺自身に誓った想いだ!」

 

 

答えにはなっていないかもしれない。だが、エースの言葉は、揺れ動くジェラールの心を高鳴らせたのだった。

そしてその時・・・

 

――――ドオオオオオオオオオオオオッ!!

 

今度は別の場所で、巨大な衝撃音が監獄施設内に響いたのだった。

そして同時に・・・

 

 

「「「「「「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」」」」」」」

 

どこかの集団が、この監獄内に強襲する雄叫びが聞こえてきたのだった。

 

 

 

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