死に損ないの海賊たち(ONE PIECE✖FAIRY TAIL) 作:アニッキーブラッザー
「ほーう、自力で牢屋を破った奴らがいるとはな」
「「「?」」」
「ふっ、全員見たことねえツラだな。お前らはどこのギルドのもんだ?」
エースたち三人が牢屋から出たら通路には、武装したガラの悪い連中が道をふさいでいた。
彼らの足元には制服着た者たちが横たわっている。おそらくこの監獄の看守か何かだろう。
どうやらずいぶん面倒くさい状況である感じがしてきた。
「おい、聞いてんだろ? どこのギルドだ」
ニヤニヤとまるで見下しているかのようにエースたちを値踏みする先頭の男。彼がこの連中のボスなのだろう。
しかしその問いかけにどう答えていいのか分からず、エースたち三人は首をかしげて見合った。
「ギルド? 何だそりゃ?」
「キシシシシ、というより俺たちの顔を知らねえとは随分と田舎の監獄に居るみたいだな」
「あちしはそれほど顔売れていないけどう」
前を塞ぐ連中にビビるどころか普通に会話し合う三人。
「ふっ、いい度胸だな。俺たちは『幻獣の牙』。そして俺はマスターのランス。獣剣のランスだ」
三人を鼻で笑うランスという男。その後ろの部下たちは、舐められていると思ったのか、少々顔つきが怖くなった。
だが、エースたちの態度は変わらない。
「知らねーな。でも、そいつらが俺たちに何の用だ」
「お前らに用はねえ。俺たちの用は、ここに収容されている同じ同盟ギルドの幹部連を奪還することだ」
「ほーう。仲間を救出する為かい? いい心がけじゃねえか」
「ふん、ヘラヘラしやがって。どうだ、俺の子分になるならお前らも出してやるぞ?」
「冗談を。俺たちは自力で出るさ。それに、俺が従う人間はこの世でただ一人だけだ」
あばよ。そう言ってエースたちはランスの横を通り過ぎようとした。
「まあ、待てよ」
だが、通り過ぎようとしたエースの頬に、ランスが携えた剣が当てられた。
「おいおい、こえーな。なんのつもりだよ」
「バラム同盟でもなく俺たちに従う気もねー奴らなら、放置して置くわけにもいかねえな。捕まって色々ゲロされるのも困る」
「安心しな。捕まるヘマはもうしねーし、何も言う気はねーよ」
「まあ、・・・そう言うなよ!」
その瞬間、ランスが振りかぶった剣がエースを斬ろうとした。だがエースは軽々と後方へ飛んで、アッサリとかわす。
「従わねえ目撃者は全員殺せという依頼だ。悪いがテメエらは死んでもらう」
ランスが嫌らしい笑みを浮かべながら、己の剣の刃に舌を這わせる。
殺意むき出しのその様子に対し、エースもモリヤもおかしそうに笑った。
「ほーう、俺たちを殺すか。言ってくれるじゃねえか」
「キシシシシ、七武海に白ひげの隊長。これを相手にチンケな殺意で挑むとは、あきれてものも言えねえな」
獣剣ランス。闇ギルドでは少々名を売った魔導剣士。
暗殺や抗争を主な生業として、常に修羅場をくぐり抜けた猛者と言える。その自信がランスの態度から現れていた。
だが、ランスは知らなかった。
相手の力が分からなかったではすまされない。
今、目の前にいるのは、世界に轟く偉大なる航路にて名を上げた海の戦士たち。
闇の世界でコソコソと生きてきた者に、大海にてこの世の全てに挑んできた男たちに敵う道理はなかった。
「いくぜ、獣剣リアルモーメント!」
「うおっ!?」
「百獣の牙!」
間合いの外からランスが剣を降り抜いた。
そしてその剣から獅子の顔がいくつも飛び出し、どう猛な牙を光らせてエースに襲いかかった。
「出た! ランスマスターの幻獣剣!」
「かかかか、ビビってんじゃねえぞ。そばかす野郎!」
避けようとしなかったエースの腕を獅子の牙が掠り、血が流れた。
「な、なによう、あの能力は!?」
「ゾオン? 違うな、パラミシアか何かが!? つうか、火拳が血を流した!?」
見たこともない力。これまで幾多の戦と海を越え、世界を見てきたエースたちも驚かせる力をランスが見せた。
「おい、火拳、なにやってんだ! 幻だろうが現実だろうがテメエはロギアだろうが!」
「うるせえな。俺も驚いてんだよ。受け流そうと思ったら、できなかったんだよ!」
攻撃を受けたことが意外。そんな表情のエースたちに、ランスは高らかに笑う。
「この魔法剣はあの名工・ムジカが作った、幻を作り出す剣だ。そして俺は、幻を一瞬だけ現実にする魔法を使える」
「魔法? 幻? 何言ってんだよこいつは」
「幻を現実に・・・それが俺の力だ! ゆえに俺は・・・無敵!」
「へっ、何言ってやがる。どーせなんかの実の能力だろうが、まあ、ちっと驚いたけどどうってことねえ」
「はっ、大口たたきやがって。幻に飲まれて死ね!」
再び襲いかかる獅子の牙。ダメージを受けるなら食らったらまずいとエースは身構える。
(攻撃が受け流せねえ。こいつは、覇気か? だが妙だな、こいつ自身にそれほど覇気は見られねえが)
普段物理攻撃を受け流すロギア系の能力者にとって、攻撃をくらってしまうことは大変な事態である。
「つってもまあ・・・」
「あん?」
だが、それでパニックになるのは、自分の能力に自惚れた者だけだ。エースクラスともなれば話が違う。
「鏡火炎!」
エースの腕から放たれた炎の鏡。
その炎はランスの放った幻獣を一瞬で焼き尽くした。
「炎!? テメエ、炎を使う魔導士だったのか!?」
魔導士? また聞かれたその言葉にエースは首を横に振る。
「違うね、俺はメラメラの実を食った悪魔の実の能力者だ」
魔法とかそんなものではない。
「そして俺が魔導士? それも違うぜ。俺は・・・」
「ッ!」
「海賊だッ!!」
エースから放たれる火の拳。それはランスだけでなく、直線上にいたランスの部下たちもろとも吹き飛ばした。
これが火拳。
ポートガス・D・エースの力だった。
「ラ、ランスマスターが!? こ、こいつらぶっ殺してやる!!」
「あーあ、面倒くせえな。だが・・・キシシシシ、殺してみろい」
「やろう、この変人どもが!」
「誰が変人なのよう! あちしはオ・カ・マ!!」
残る連中は逃げるわけでもなく、怒りにまかせて襲いかかってくる。だが、所詮は有象無象。
「欠片蝙蝠(ブリックバット)」
「オカマ拳法・あの冬の空の回想録(メモワール)!!」
世界の海で名を馳せたモリアにもボンクレーにも敵うはずもない。
「な、なんだこいつら!?」
「妙な魔法を使うぞ!?」
「ってかこいつら・・・」
「超強ええええ!?」
札付き者の、格が違った。
「ほう、モリアは当然だが、ボンちゃんもやるじゃねえか」
「馬鹿な・・・なんだテメエら・・・」
次々とモリアとボンクレーに手も足も出ずにやられる仲間たちの様子を見ながら、エースの炎でやられたランスが震えながら言う。
そして・・・
「強い・・・いや、特にあのエースとモリアという大男はまだまだ底が知れない強さを持っている・・・何者なんだ?」
監獄の中からジェラールもこの三人の強さに目を奪われていたのだった。
そして脳裏に浮かぶのは、先程の笑いながら口にしたエースの『自由』という言葉だった。
(強い・・・この強さは・・・自由を勝ち取るために得た力なのか?)
そこそこ名のある魔導士たちを、まるでモノともせずに蹴散らしていくエースたち。
(これが大海原を、世界を自由に生きる・・・海賊・・・)
その強さと自由さが、ジェラールの心に焼き付いたのだった。
「くそおお、くそがあああ! この名前も売れてねえカスどもがァ!」
ボロボロのランスが憤慨しながら起き上がる。
「おいおい、それなりに俺の名前は売れてると思ったんだがな」
「キーッシシシシ、オレらがまだまだ無名? 麦わらより無知なんじゃねえか!」
「白ひげの隊長と七武海に向かって・・・あんた死んだわよう」
ジェラールといい、本当に自分たちの顔も名前も知らないのか。
グランドラインではその名前を出しただけで皆がビビッたもんだが、少しエースたちも新鮮な感じがした。
「うるせえ! ごちゃごちゃと! 俺たちはこんな所で終われねえ! 黒魔導士ゼレフを復活させ、大魔法世界へ行くためにはな!」
「ああ?」
「バラム同盟は言った! 大魔法世界・・・俺たち魔導士だけが生きられる世界だ! そのためにも多くの同志を集め・・・古の世界最悪の魔導士・ゼレフを復活させる必要があるってなァ!」
ランスは何かに取り付かれているかのように叫び声を上げる。
「ゼ・・・・・・・ゼレフ・・・だと!?」
ジェラールは、ランスの言葉を聞いて、胸を抑えて苦しみ出す。
体を震え上がらせ、目の焦点も定まっていない。
しかし、そんな中でもエースたちだけは頭に「?」を浮かべていた。
「古の魔導士復活させて新たな世界を作る? 何言ってんだ、お前ら」
「うるせええ! ヘラヘラしやがって! てめえに本物の力ってもんを見せてやるよ!」
狂乱したランスは雄叫びを上げながら切りかかってくる。だが、エースは逃げない。
その手に炎を滾らせて、ランスを迎え撃つ。
「お前に一つ教えてやるよ」
「アアン!?」
「今の時代や世界を作れるのは・・・今を生きている人間だけさ」
「ッ!?」
次の瞬間、ランスが何かをする前に、エースの炎がランスを打ち抜いた。
「十字火!!」
相手にならねえ。
ボロボロに積み上がった闇ギルドの男たちの山が通路に出来上がっていた。