死に損ないの海賊たち(ONE PIECE✖FAIRY TAIL) 作:アニッキーブラッザー
「ななな・・・なんだよ・・・こいつら・・・」
「見たことねえ囚人? いや、奴らと戦っていたから・・・看守の新人? ・・・には見えねえ・・・」
いつの間にか駆けつけていた監獄の看守たちや、騒ぎを聞いて牢屋の中で目を丸くしている囚人たち。
誰もがこのグランドラインの猛者三人に、声を失っていた。
「まっ、こんなもんだろ」
「キシシシシ、悪党の格が違うんだよ豚共が」
「がっはっはっはっ、あちしの友情パワーは不滅よう!」
強い。圧倒的だ。格が違う。
誰もがそう思っていただろう。
ジェラールもその内の一人。ゼレフの名前で動揺したものの、今では持ち直して、エースたちの堂々とした姿に見入っていた。
歓声が上がるか、それとも怒号が上がるのか、皆が反応の仕方に戸惑っていた。
「おい・・・エース――ッ」
そしてようやく誰かが声を発っそうとしたのだが・・・
「ッ!?」
ジェラールはその瞬間、監獄の天井を突き抜けて遥か上空に、強大な気配を感じた。
「・・・なっ・・・」
ジェラール以外誰も気づいていない。
天井で遮ってここは空が見えない。
だが、ジェラールは感じ取った。
「なんだ・・・この感じは・・・」
そして全身が震え、恐怖が全身を駆け巡る。
「何かが・・・来る・・・この監獄より外・・・いや・・・上空から!?」
恐る恐る、エースの足元にいるランスを見る。
今は気を失っているが、先程までは狂乱し、ゼレフを復活させると息巻いていた。
その姿は何かに取り憑かれた、邪念のようにも思えた。
ならば、なんだ?
「え? ジェラール、どうした?」
「顔が青いわよう?」
記憶喪失のジェラールは、うまく説明できない。
しかし、『ゼレフ』『邪念』この二つのキーワードがどうしても離れず、嫌な予感が拭いきれない。
(俺は・・・知っている? この空から近づいてくる・・・何かを俺は・・・)
何かが来る!
そう思った次の瞬間、ジェラールは叫ぼうとした・・・
「全員、今すぐここから逃げ――」
「「「「「「「「「「ッ!!??」」」」」」」」」」
その瞬間、なんの前触れも無く巨大な振動が監獄内に響き、天井が、いや建物全体が一瞬で崩れ落ちたのだった。
「なっ!?」
「なんだこりゃあ!?」
「建物が崩れ・・・えええええええッ!?」
「き、聞いてねえぞ! どうなってんだ!?」
「い、いかん、崩壊する! 全員、今すぐ外へ――」
誰もが突然の揺れと建物全体の崩落に驚愕する中、エースは一人動き、全身に炎を包んで巨大な火柱を天井に向けて放ち、自分たちに降り注ぐ落石を全て砕いた。
「くっ・・・炎戒・火柱ァァァ!」
だが、動いたとはいえエース自身も少し驚いた。
「こいつは一体何が・・・お前ら無事かァ!」
その場にいた者たちの安否を確認しつつ、エースは上を見上げる。
「一体何が・・・・・・・えっ!?」
建物全体が潰れ、天井だけでなく四方の壁も無くなったことにより、いきなり外の光景が目に入った。ガレキをかき分け、他の者たちも次々と起き上がる。
「な、なんなのよういきなり・・・・・・・・・・・・・・・はっ?」
「キ・・・・キシシシシ・・・どういうことだ・・・これは・・・」
周りは崩落した監獄のガレキで埋めつくされているが、青い空、少し大きな山に、離れたところには停泊している数隻の船と、海が見える。
だがエースは、ここがどこの島なのか、それを今考えることはできなかった。
それはモリアもボンクレーも同じ。
彼らは同じ表情で驚き、言葉を失った。
それは闇ギルドや囚人や看守たちも同じ。
牢もなくなり、全員が外へといきなり出てしまったかと思えば、目の前には・・・・
「な・・・・なん・・・・・・」
「なんだよこりゃあああああああああああ!?」
全員の目の前には、ガレキの山を踏みつけて・・・
「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
巨大な黒い竜が咆哮していたのだった。
「黙示録に登場する黒き竜・・・アクノロギア・・・」
ガレキをかき分け、震えながらジェラールは呟いた。
誰もが唖然とする中でその言葉が囁かれた。
「「「「「「「「「「ドラゴンだアアアアアアアアアアアア!!??」」」」」」」」」」
それは、偉大なる航路を己の力で乗り越えてきたエースたちも初めて相対する存在であった。
「りゅ、竜だと・・・」
猛獣、恐竜、幻獣、海王類、怪物。
「なんなのよう!? あちしびっくらこき過ぎて二度見!! オカマ拳法 ・あの秋の夜の夢の二度見!!」
形容のしがたい化物に至るまで、様々なモノをエースたちは見てきた。
だが、そのどれとも異なる、人間とは全く異なる領域にいる種。
「キシシシシシシシ、竜だと! 竜だと! 初めて見たぞ! 太古に竜は存在したとは聞いたが、本物は初めて見た! 欲しい! 欲しいぞこいつの死体が!」
モリアも同じだ。強がりに見える笑みを浮かべてはいるが、その全身からは大量の汗が流れていた。
「あ・・・ああ・・・お、あちしら・・・どうなるのう」
ボンクレーは腰を抜かして動けない。
いや、誰一人この場から動けない。
この存在はまずい。
絶対に逃げなくてはダメだ。
細胞レベルでその危険信号が体中に駆け巡っているというのに、誰もが一歩も動けなかった。
そして・・・・
「キシシシシシシ! 誰も動かねえなら、この俺が先にこのトカゲをやらせてもらうぜ!」
「ま、待てモリア!? こいつ、何だか違え!」
「うるせえ、火拳! 黙って見てろ!」
臆しながらも動けたモリアは流石というところだろう。
彼は誰よりも早く動き、その掌に蝙蝠の影を集めて、巨大な黒竜の頭上に振り下ろした。
「キシシシシシシシ、角刀影!!」
巨大なトカゲの尻尾の刃が、黒竜に突き刺さり、一気に貫い・・・
「キシシシシシシ、デカ物はこうやってスマートに仕留め・・・・・・・・なっ!?」
貫いていない。
それどころか皮膚に傷一つ付けられず、竜が少し体を捩っただけでモリアの技が砕け散った。
「げげげげげげ、馬鹿な!? 俺の技が!?」
「嘘だろ! あのオーズに致命的なダメージを与えた技だぞ!?」
「ひいいいいいい、七武海の力が通用しないっていうのうッ!?」
まずい。
そう悲鳴をあげようとした瞬間、ついに竜・・・アクノロギアが動き出し、その巨大な腕を振りかぶり、大地に向かって振り下ろす。
「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
「「「「ッ!?」」」」
その衝撃は、大地というよりも、島そのものが激しく揺れる。
――逃げろッ!!
誰が叫んだかは分からないが、その叫び声と共に降りおろされた衝撃で、その場にいた闇ギルドや看守の連中が何人も吹き飛ばされた。
「なっ・・・・」
これは現実か?
「ちょっ・・・・・えっ?」
幻なら覚めてくれ。
「う、うあ・・・あっ・・・」
腰を抜かして誰もが震える中、ようやくこの場にいた人間たちの悲鳴が島中に轟くのであった。
「「「「「「「「「「なんだこいつわあああああああああああああああああああ!!!???」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ぜ、全員ン逃げろおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」」」」」
そこから先はもう、敵も味方も何もない。
「ほ、本部に連絡しろ! 軍を・・・軍の本体を出動させろ!」
「早く船に乗り込めえ!」
「この島から脱出するんだァ! 殺される・・・少しでも遠くに逃げるんだァ!」
彼ら人間はとにかくこの場から少しでも遠く、少しでもアクノロギアより遠くへと逃げ出したのだった。
「キシシシシ、こいつは驚いた。新世界にもこんな奴は居なかった!」
「ああ。島そのものが揺れるだなんて・・・この竜・・・オヤジ並みのパワーを持っているっていうのかよ!?」
「感心してないで、あちしたちも逃げるわよう!」
確かにこれはゴチャゴチャ言ってる場合ではなさそうだ。
「グガアアア!!」
アクノロギアは逃げ惑う人間たちに一歩ずつ近づき、まるで遊んでいるかのように薙ぎ払っていく。
「キシシシシ、確かにこいつは段違いだ。逃げたほうがよさそうだなッ!」
「そうよう! ほら、エースちゃんも早くゥ!」
自分たちも逃げたほうが良さそうだ。
幸い、アクノロギアは逃げた看守や闇ギルドたちを相手に遊んでいる様子。
隙を見て自分たちだけでも逃げ出すことは出来そうだ。
だが・・・
「待てよ・・・このままじゃあそこで逃げている奴ら・・・全員死ぬぞ」
逃げずにエースがそう呟いた。
「キシシシ、馬鹿か? 好都合じゃねえか。オトリにはなったってことだろ?」
「そうよう! 別に助ける義理もないんだし、さっさとあちしらも行きましょう」
助ける義理はない。それもそうだ。
だって自分たちは悪党なんだ。そう考えるのは当たり前だった。
だから何でだろう・・・
「炎上網!!!!」
エースの体は勝手に動いていた。
「なっ!? エースちゃん、何を!?」
「火拳!?」
エースから放たれた炎の防壁。それはアクノロギアの周囲を取り囲み、逃げ惑う人間たちに手出しをできないようにした。
「待てよ、トカゲ野郎!」
ボンクレーとモリアがエースの行動に慌てる中、人間たちに手出しできなくなり、振り向いたアクノロギアがエースに顔を向ける。
「グガアアアアアア」
エースの全身から汗が吹き出そうだった。こんな緊張感は久しぶりだった。
それを楽しいと感じる余裕はなかったが、エースは全身から闘志を剥き出しにしてアクノロギアに言う。
「この場にいる人間は逃がしてもらう」
「グガァァァ」
「だが、安心しろ! 俺が逃げねえ!」
ぶちまけたエースの言葉に、モリアとボンクレーはひっくり返りたくなった。
「「このアホおおおおお!!」」
だというのに、エースの態度はまるで強がりでも虚栄でもない、断固たる意志のようなものが溢れ出ていた。
背中の、白ひげのマークがそれを表していた。
(ワリいなオヤジ・・・家族でも仲間でもなんでもねえこいつらだけど・・・・・・ここで俺がビビって逃げたら、あんたの名前に傷がつく! ここで逃げねえ俺の選択を・・・あんたはバカやろうと言いながら、笑ってくれるよな!)
アクノロギアの標的がエースへと移った。ドスドスと音を立てて近づいてくる。
「テメェら、全員逃げろォォ!!」
「グガアアアアアアアアアアアア!!」
「こいつは・・・一歩も外へは逃がさねえ!! 蛍火・火達磨ァァァ!!」
炎の火柱が上がる。轟々と燃え上がる炎がアクノロギアを包み、相対するエースの背中を見ながら、皆がその場から逃げ出した。