死に損ないの海賊たち(ONE PIECE✖FAIRY TAIL) 作:アニッキーブラッザー
間髪入れない。
押して押して押しまくる。炎と魔道の力が一つとなって、アクノロギアに放たれる。
その最中、ジェラールは隣で共に戦うエースを見る。
(誰よりも自由に・・・生きる・・・)
ジェラールの中で何かひっかかったその言葉。
(そうか・・・エース・・・俺はきっと・・・本当はお前のように生きたかったんだ)
すると次の瞬間、今まで遊んでいるだけだったはずのアクノロギアが、途端に怒り狂ったように雄叫びを上げる。
そしてそのまま両翼を大きく羽ばたかせ、真っ直ぐ天へと向かって飛び立った。
「な、なんだ、おいジェラール、あいつは逃げたのか!?」
「ち、違う・・・あれは・・・」
上空へ飛び上がったアクノロギアは停止し、口を大きく上げて真下に向ける。
「まずい、咆哮(ブレス)だ! 遊びをやめて、島ごと俺たちを殺すつもりだ!」
「んだとォ!?」
本気だ。そして逃げる時間もないし、モリアとボンクレーに関しては動けそうにもない。
自分たちでなんとかするしかない。
「エース!」
「ジェラール!」
そして言うまでもなく二人は・・・
「エース。俺に考えがある。力を貸してくれ!」
「おっ、いいねえ! ようやく言ってくれたか。一緒に戦おうってよ」
「ふっ」
二人は逃げない。互いに頷きあった。
「方法は・・・合体魔法(ユニゾンレイド)だ!」
「なんだそりゃ?」
「別々の魔法を一つにして威力を高める魔法」
「魔法・・・」
「ただし、本当に息が合った者同士でなければ発動は難しく、生涯を費やしても習得には至らないこともある。だが、俺とお前の技を単体にぶつけてもアクノロギアには通じない! ならば今はこの力に賭けるしかない!」
「いや、ちょっと待て! 俺の火は別に魔法とかそういうもんじゃ・・・」
「かまわん! この際、重要なのは魔力ではない! 俺を、そして互いを信じられるかどうかだ!」
急に声を荒らげ出したジェラール。
先程までとは別人のように滾った瞳に、エースは思わず苦笑した。
「で、できるわよう! なんだか知らないけど、あんたたちなら出来るわよう! 奇跡は諦めない奴の頭上にしか降りてこない! 降ろしてやんなさいよう!」
ボンクレーが仰向けになりながら声を出す。
「がんばれーーー! エースちゃん! ジェラちゃん! がんばれえええ!!」
血を吐き出しながら、喉が潰れるぐらい大声で声援を送るボンクレー。
ここまで言われたら応えるしかない。
「「任せろ!!」」
意地でもその奇跡を起こしてやる。
「俺がお前の技に合わせる。最強の力を放て」
「ああ、そのつもりだ!」
エースの手のひら、いや、全身から炎が燃え上がる。
その全身から発した炎から、エースの頭上に巨大な火球を作り出す。
「大炎戒・炎帝!!!!」
正に太陽!
「見事だ・・・お前の炎・・・いや、太陽なら俺の天体魔法と相性十分だ」
エースとジェラールが手を取り合う。
「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
降り注ぐアクノロギアの極大咆哮に、二人は繋いだ手を天に向かって構える。
エースの悪魔の実の力とジェラールの魔力が重なり合っていく。
「いくぞ! これが俺とエースの合体魔法! 正に天体を超えた・・・」
――宇宙魔法・太陽面爆発(フレア)!!
ドラゴンのブレスと交錯し合う、エースとジェラールの力。
「今だ!!!!」
その解き放たれた巨大な閃光は海を走り、閃光が止んだ時には、この世からメガユニットは消滅していたのだった。
「必死に我らも搜索したのですが、ジェラールと謎の三名、合計四名・・・結局一人も見つからず・・・搜索はまだ続けられていますが・・・」
ギルドでそう告げるラハールの言葉に誰もが言葉を失っていた。
ジェラールという人物に対して事情を知る者、そして知らないものも竜という存在に唖然とし、誰もが声を出せなかった。
「うそ・・・うそだよ・・・ジェラールが・・・ジェラールが・・・」
唯一聞こえるのは、幼いウェンディのすすり泣く声。
ラハールはあえてその言葉は言わなかったのだろうが、状況的にもう決まっているようなもの。
――ジェラールは死んだ。
グレイもルーシィも複雑そうに顔を落としながら、震えているエルザの背中を見ていた。
そしてそのエルザの今の顔は、とてもじゃないが見ることができないだろう。
エルザの気持ちを察すると、誰も何も言えなかった。
「嘘だ・・・」
ただ、そんな中で声を出したのは彼だった。
「ちゃんとテメェらは探したのかよ・・・」
「えっ・・・」
「ちゃんとォ、ジェラールを探したのかって聞いてんだよ!!」
ナツだった。
「ナツ、やめろ馬鹿!」
「うるせえ! お前ら、手ェぬいてたんじゃねえのか!? ジェラールを・・・ジェラールが犯罪者だからとかそういうことで、真剣に探さなかったんじゃねえのか!?」
「ナツさん!?」
「ふざけんなァ! テメェらジェラールに助けてもらっておいて、何してやがんだよ!!」
ナツの暴言に、ラハールは目をつむったまま何も言い返さない。どうやら彼は今日、何を言われてもいい覚悟でここに来たのかもしれない。
「なんとか言えよ! くそ、ハッピー! 行くぞ、メガユニットがあった海にだ!」
「ナ、ナツゥ~」
「あいつはきっと生きている! ドラゴンの方も気になるけど、まずはジェラールが先だ! エルザ、お前もだ!」
「ちょっ、ナツ!? 何言ってんのよ!? 今のエルザの気持ちを考えてあげて!」
「エルザ、行くぞ! ジェラールを助けに! ジェラールはお前の・・・俺たちの仲間だろ!」
「ナツ・・・」
「行くぞ、エルザ!」
ナツは相棒のハッピーを肩にのせ、エルザに向かって手を伸ばした。
だが、エルザは俯いたまま身動き一つしない。
グレイやルーシィがナツを落ち着かせようとするが、ナツは言う。
助けに行こうと。
だが次の瞬間、ようやくゆっくりと顔を上げたエルザから、予想もしない言葉が飛び出した。
「ナツよ・・・今はジェラールよりも、その竜についての情報を集めるのが先だと思わんか?」
「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」
エルザのその言葉に、ラハールを含めて全員が言葉を失った。
だがエルザは表情も変えず、いつものようにキリッとした表情で述べる。
「まさか竜がこの世にまだ存在しているとは思わなかった。ナツたちの話を聞いてもな。ましてや人間の施設を襲うなど論外だ。だがもしそうなのだとしたら、世界は大混乱に陥る可能性がある。その竜に関する情報が少しでも必要だ」
「エルザ・・・おま・・・何・・・言ってんだよ・・・」
「もしその竜がマグノリアに来て見ろ。大惨事になるぞ! もう二度とそのような悲劇を繰り返さぬようにするのが我ら魔導士の使命だ。今はジェラールの死を悲しんでいる場合ではない」
「だから死んでねえよ! お前がそれを言ってどうすんだよ!?」
「ちょ・・・ねえ、エルザ・・・どうしちゃったのよ・・・」
ナツだけでなく、ルーシィもウェンディも「ありえない」「エルザはどうしてしまったのか」という表情で目尻に涙が浮かんでいる。
だが、一方でグレイや他のギルドの仲間たち、そしてマスターのマカロフは無言のまま、ただ痛々しいものを見る目で、エルザを見ていた。
「おっ、そうだ。今日は私個人に依頼があったのだ・・・前々から頼まれていたことだ。さすがにいきなり断るわけにもいかんからな、マスター、申し訳ありませんが少々席を外します」
「・・・・ウム・・・」
「ラハール。竜の情報はあとで聞く。忙しい中で申し訳ないが、それで構わないか?」
「・・・ええ・・・では、後ほど」
「感謝する」
まるで何事もなかったかのようにエルザはカチャカチャと鎧を調節し、何も言わずに出ようとする。
「エルザ! どこに行くんだよ!」
「なんだ、ナツ。仕事だ」
「お、おいエルザ! ジェラールだぞ! ジェラールが死んだかもしれねえんだぞ! 何でそんなに涼しい顔してんだよ!」
「・・・仕方なかった・・・どのみち奴は死刑か終身刑になる者だったのだから・・・」
「てめえ、いくらなんでも言っていいことと悪いことがあるぞ! ジェラールはお前の大切な奴だったんじゃねえのかよ! お前は何も思わないの――」
エルザの胸ぐらを掴みかからんとするナツ。
するとそのナツを、エルザと同じS級魔導士のミラジェーンが止めた。
「やめて、ナツ!」
「で、でも、ミラ!」
「いいからやめて!!」
「うっ・・・」
ミラ・・・
明るく穏やかな性格で、たまに天然なところがあるが、その存在はギルドの癒しのような存在で、誰からも人気者であった。
しかしそのミラが珍しく強ばった顔で声を荒らげてナツを止め、止めたと思ったらエルザの前に立ち、ニッコリと微笑んだのだった。
「ねえ、エルザ。今日は帰りが遅いのかしら?」
「・・・ああ・・・たぶんな・・・」
「そう、分かった。怪我しないように気を付けてね」
「・・・・・・ああ・・・」
それだけの会話を交わし、エルザはミラの横を通り過ぎる。
だが、ミラジェーンは通り過ぎて出かけようとするエルザにもう一言告げた。
「ねえ、エルザ・・・」
「・・・・?」
「誰も追いかけさせないし・・・誰も見ないから・・・今は思いっきり・・・ね」
まるで全てを見透かしたかのようなミラジェーン。
「・・・ッ~~~~~~ッ!」
エルザはそのまま走って外へと飛び出した。
誰かが追いかけようとしたが、ミラジェーンはそれを止める。
今のエルザを追いかけるな。
今は一人にしてやって欲しいと・・・
「はあ、はあ、はあ・・・・・・ジェラール・・・」
ギルドから走って飛び出したエルザは、ただわき目も振らずに走っていた。
「ジェラール・・・ジェラール・・・ジェラールッ!!」
良かった・・・
もしミラジェーンがナツを止めてくれなければ・・・
あと数秒あの場にいれば・・・
この顔を見られてしまっただろう。
「ジェラール・・・うっ・・・ジェラール・・・」
走りながらの風で横に水滴が流れる。
エルザの瞳から溢れているもの。
それは大量の涙。
そうだ。エルザがなんともないわけがないのだ。
(嘘だ・・・ウソだ・・・・うそだ・・・ジェラールが死んだなど・・・嘘に決まっている!)
だが、分かっている。
島一つを消滅させるほどの竜に挑んだのだ。それがどういうことなのかは全て分かっている。
評議院の搜索隊には何人も魔導士が混ざっていただろう。しかしその彼らですら手掛かり一つ見つけられなかったのだ。
ならばそれが示すことは一つしかない。
「はあ、はあ、はあ、はあ、・・・・・・・」
エルザは気づけば埠頭にたどり着いていた。そこから見える景色は大海原。
メガユニットがどの方角にあるのかは忘れたが、存在させしていればこの海のどこかにあったはず。
なぜなら海は全て繋がっているのだから。
だが、メガユニットはもう存在しない。
ジェラールは・・・
「ジェラール・・・ジェラァァァァァァァァァルゥゥゥゥッ!!!!」
周りに誰もいなくてよかった。ギルドの者がいなくてよかった。
エルザは大粒の涙を流して、海に向かって叫んでいた。
「どうして、どうして、どうしてだ! 待っていると・・・一生待っていると・・・まだ何も・・・伝えていないのに」
両膝から崩れ落ち、エルザは悔しさと悲しさで、地面を何度も殴った。
「バカだお前は・・・名も知らぬ看守や・・・犯罪者を守るために命を懸けるなど・・・」
だが、どれだけ叫んでもその声は誰にも届かない。
「生きて贖えと・・・言ったではないか!!」
ジェラールは紛れもない犯罪者。
その過去のやり直しのきかない大きなわだかまりが、エルザ自身もジェラールに対しては複雑で、とても素直に気持ちを吐露することはできなかった。
だがそれでも・・・
「それでも私には特別だった! たとえどれほどの罪を重ね、どれほど許されぬ者だったとしても、お前は私の・・・大切な・・・大切な人だったんだ!」
風がなびく。その時、エルザの視界には自身の長い緋色の髪が目に入る。
――エルザ・スカーレット。お前の色だ。これなら絶対に忘れない
もう二度と戻らぬ日々。
「いやだ・・・ジェラール・・・私を・・・置いていくな・・・ようやくお前が悪い夢から目覚めたのに・・・なのに・・・なぜだ・・・なぜだ・・・なぜだァァァァ!!」
大海原に夕日が沈んでもまだ、エルザの涙も悲しみも、微塵も晴れることはなかったのだった。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああジェラーーーール」
一方その頃・・・・・・・・・・・・・・
メガユニット近海、評議院の捜索隊の搜索範囲から僅かに外れた海域にて・・・
「とりあえず、海に浮かんだ島の木片集めて、簡易的だがイカダが出来て良かった・・・しかしそんなに強いくせに、なぜお前たちは三人ともカナヅチなんだ? だいたい、お前たちは海賊だろう? 海賊がカナヅチでやっていけるのか?」
「いやあ、マジで死ぬかと思ったぜ。ありがとな、ジェラール」
「エースちゃん! そんな軽口叩いているけど、マジで冗談ではすまない展開だったのよう・・・って・・・ぐほっ・・・き、傷が・・・」
「ボンちゃん! しっかりしろ、陸についたらすぐ医者に見せてやっからよ!」
「まったく。ドラゴンのブレスで生き延びたくせに、海で溺れて死にそうになるなんてお前たちは・・・だが、無事でよかった」
「キシシシシ、っておお・・・・俺も死にそうだ・・・血を流しすぎた・・・さっさと陸まで行って俺を助けろ」
「ああ。といっても俺も魔力はカラだから、風まかせしかないんだがな。船でも通ればいいのだが・・・」
「しっかし、まさかジェラール一人で俺たちを抱えて逃げ出せるとはな・・・流星(ミーティア)だっけか?」
「ああ。高速移動を可能にする魔法だ。もっとも四人を抱えて、ましてやドラゴン相手では簡単に追いつかれるスピードだろうが、俺とエースの技が良い目くらましになった」
・・・・四人は生きていた。
エルザが大粒の涙を流していた頃、彼らはボロボロの姿でイカダに乗って海をさ迷っていたのだった。
ジェラールの高速移動を可能にする天体魔法・流星(ミーティア)。
もちろん高速といっても竜の飛行速度に敵うはずもない。だが、ジェラールとエースの合体技とアクノロギアのブレスの衝突で作り出した閃光が、アクノロギアから注意を逸らせた。
ジェラールは島の消滅の直前に閃光の中で三人を抱えてメガユニットから脱出したのだった。
海の上に脱出して、三人の悪魔の実の能力者は溺れて死にそうになったが、再びジェラールが助けて難を逃れた。
とにかく助かった。本当にそれだけだった。
アクノロギアもどうなったかは分からない。
だが今は、あの危機を乗り越えて全員無事だったことを、この巡り会った奇妙なメンバーで笑いあっていた。
もう少し捜索隊の到着が早ければ、エースたちのイカダは捜索隊の搜索で発見されていたのだろうが、微妙なタイミングとすれ違いでそれが叶わなかった。
というわけで、何ともないというわけではないが、四人は生きていた。
ジェラールも普通に生きている。
しかし島の消滅という事実を前にした評議院たちはジェラールたちが死亡した的なニュアンスを早々に妖精の尻尾(フェアリーテイル)に伝えてしまい、エルザが大泣きするという羽目になったのだった。
そうやってエルザが自分のために泣いていることも知らないジェラールは・・・・
エルザが埠頭で大泣きしている頃にジェラールは・・・・
「おい、ジェラール、恥ずかしいがんなよ!」
「もう、ジェラちゃん! もっと大きな声よう!」
「いや、しかし・・・これは少し恥ずかしいぞ」
「傷に響くぞ、うるせえええっで、いででででで」
「それより、モリアもボンもケガは・・・」
「んなもん知らないわよう!」
「・・・・・・・・」
「つーわけでだ、ジェラール、俺たちのマネしてもっとデケー声で。海賊は新たな仲間と出会ったら歌うんだ! ほれ、ヨホホホホー!」
「う、分かった・・・えっと・・・ヨ・・・ホ、・・・ホホ・・・ホ~」
「照れがあるわよう! もっと大きく、ヨホホホホー!」
イカダで漂流しているだけで暇だからという理由で・・・
「「「ビンクスの酒を届けに行くよ、海風気まかせ波まかせ~!」」」
彼らは海をゆく。どこへ? それは決まっていない。とにかくどこかへだ。
「「「俺たちゃ行くぞッ海の限りーッ!」」」
海の向こうへだ。
イカダに帆をかけ出会った男たち四人は、陽気な歌を歌いながら航海する。
そう、エルザが泣いている頃、ジェラールはヨホホってた。