死に損ないの海賊たち(ONE PIECE✖FAIRY TAIL)   作:アニッキーブラッザー

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第9話 海賊の家族

西の海。

海賊船をある意味乗っ取ったエース一行。

月明かりの照らす夜の海を漂っていた。

しかしこんなロマンチックな夜だというのに、随分とガラガラ声が聞こえてくる。

それは・・・

 

「しょせ~ん、この世は男と女 ~、しか~しあちしは男で女ッ、 だ~か~ら最強ッ! だ~か~ら最強ッ! オーカーマー道(ウェイ)~ !」

 

怪我だらけのオカマがテラスで踊っていたのだった。

 

「おい、うるせえぞ、クソカマ! 傷に響くんだよ。てめえの影を取るぞ?」

「なーによう。あちしがどこで踊って回って恋しようと、勝手じゃな~い?」

 

どうもボンクレー相手だとペースが狂う。

いつもなら影でも奪って従えさせるのだが、モリアも怪我を負っているだけにため息だけついて座った。

 

 

「ジェラちゃんは?」

 

「あー? あの闘神とかほざいてた雑魚たちと一緒に、船内でぶっ倒れて寝てやがる。昨日から魔力を大量に使いすぎたとかなんとかよー。ありゃー、しばらく起きねえよ」

 

「ふん、魔力ね~い」

 

 

そこで二人に沈黙が流れた。いつも邪悪な笑みを浮かべているモリアが珍しく大人しい。

 

「おい、カマ・・・ここ・・・どこの海だと思う?」

「ログポースなしで航海できるあたり、グランドラインじゃないようね」

「キシシシ・・・ああ・・・」

 

そう、モリアもボンクレーも一つの疑念を抱えていた。

一体ここはどこの海なのか。

そして自分たちはどうなっているのか。

 

死にそうに・・・というより死んだと思ったところまでは覚えている。

 

しかし気づけば自分たちはジェラールと同じ監獄に倒れていて、妙な能力者や、魔法とかいうものを使う者、挙句の果てには強すぎるドラゴンなんかと戦う羽目になった。

 

海の上ならどこでも構わない。

それがモリアの持論であったが、どうやら今の自分たちの状況は少し複雑なものかもしれないと、珍しくモリアも考え込んでいた。

 

「ところで・・・話は変わるけど、エースちゃんどうしたのう? 船の甲板で縮こまっちゃって・・・」

「あ~?」

 

ボンクレーが見ると、船首に腰を下ろして遠くの海を眺めているエース。

その背中は心無しか悲しみを帯びているように見えた。

 

「キーッシシシ、オヤジオヤジほざいている火拳のバカに教えてやったのさ。白ひげはもう、黒ひげにぶっ殺されたってよ」

「あ~そうなのう・・・・」

 

白ひげ。その主義は仲間を家族と呼び、仲間の死どころか手を出すものも許さぬ海賊。

その圧倒的な力で海を制し、しかし率いた部下たちからはオヤジと尊敬され、白ひげは部下たちを息子と呼ぶ。

エースも白ひげ海賊団。白ひげを心から尊敬し、オヤジと誇らしく呼んでいた。

その父親の死を今になって知ったのだ。

ショックは・・・

 

「・・・・・・・・・はっ?」

 

ちなみにボンクレーも知らなかった。

 

「な、あんんにいいいいいいいいい、し、ししし、白ひげが死んだア!?」

 

ボンクレーは先程までの歌よりも大声で叫んだのだった。

 

「オヤジ・・・」

 

ボンクレーの叫び。しかしそれはエースの耳には入っていなかった。

遠くの海を眺めながら、エースは何度も何度も悔しさと悲しさと己の愚かさと無力さを嘆いた。

 

「ちくしょう! 俺の所為だ! 俺が・・・俺がティーチを始末してりゃ・・・俺がヘマさえしなけりゃ・・・ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!!」

 

自分が・・・

あの時ああだったら・・・

考えれば考えるほど色々と思い浮かぶ。

だが、色々思い浮かんでも、結局たどり着くのは一つの答え。

 

――俺の所為だ・・・

 

それが今のエースを埋め尽くしていた。

いっそこのこと、誰かに罵倒して欲しい。

仲間たちに、「お前の所為でオヤジは死んだ!」と言われればどれほど楽か。

しかしエースは分かっている。

きっと仲間たちは泣きながら自分を抱きしめてくれる。

白ひげ本人は「グラグラグラ」と笑いながら、小せえこととあの世で思っているだろう。

誰も自分を恨むことも責めることもしない。だからこそエースは辛かった。

 

「オヤジ・・・俺はどうすりゃいい・・・俺はどうすればオヤジに報いることができる」

 

ジェラールに昨日言ったばかりの言葉が今日になって自分に返ってきた。

しかしエースの場合は、誰も償いなんて求めていない。

だからこそどうすればいいのかの、明確な指針が見えてこないのだ。

自分はどうすればこの命を、死んだオヤジに報いることができるのか、エースに答えが見つからなかった。

 

「俺が・・・ティーチを倒せばいいのか?」

 

いいや、きっとそれも違うだろう。

それはもはやケジメでもなんでもない。ただの復讐だ。

そんなケリの付け方で、あの世界一の器を持った偉大なる男の魂が報われるとは思わない。

 

「オヤジ・・・かつてはあんたもティーチのことすら息子と呼んだ・・・しかし裏切られ・・・殺された・・・そんなあんたの魂はどこへ行くんだ?」

 

大恩ある父の死にすら立ち会えなかった自分は、どうすればいいのか。

今のエースはその答えを悲しみと悔しさの中で探していたのだった。

見上げてみれば美しい夜空。

しかし見慣れた海の夜の空が今日は違って見える。

 

「へっ。いつもと変わらねえ空のはずなのに、今は違って見え・・・」

 

だが、その時だった。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

「・・・・ん?」

 

見上げてみれば美しい星かと思いきや・・・

 

「俺は男だーッ!」

「はあ?」

 

夜空をバックに降り注ぐ、何とも騒がしい流れ星。

 

「くたばれえ、薄汚い海賊めッ!」

 

いきなりその男は殴りかかってきた。

エースにかわすのは造作もなかった。

しかしエースが避けたその拳は、海賊船の船首を砕いた。

 

「おー、アブねえアブねえ。お前さん、何者だい?」

 

エースは対して驚きはしない。高額賞金首であるエースにはこのようなことは日常茶飯事だった。

寝ているときでも、飯時でも、常日頃自分がそういう立場であることは自覚していた。

一方で余裕綽々のエースに対し、向かい合う男はやけに気合いが漲っている。

 

 

「俺は、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士! 男の中の男、エルフマン!」

 

「・・・はあ?」

 

「海を荒らす無法の海賊たちめ! 我が男の拳を受けるがよい!」

 

 

なんかおもしれー奴。

それがエースのエルフマンに対する第一印象だった。

 

 

「うおおおお、全員かかっててこーーい! 男の成敗だ!」

 

そしてエルフマンの腕に注目する。どう見ても人間の腕ではない。

鋭く盛り上がった獣の腕。

ゾオン系の能力者か? 

 

「・・・ん?」

 

だが、気配はエルフマンだけではない。

エルフマンの後からさらに迫り来る影。

 

 

「ギヒッ、一人で抜け駆けしてんじゃねえ!」

 

「覚悟!」

 

 

バカ正直に正面から堂々と突っ込んでくる二人。

エースがその場でしゃがんでかわすと、己の拳を鉄のように固めた男の拳と、大型の黒豹人間の刃が通り抜けた。

 

 

「ギヒッ、かわすとはやるじゃねえか!」

 

「ほう、少しは骨があるということみてえだな」

 

 

エースを上から目線で笑みを浮かべる二人組。

随分と好戦的な瞳をした男と、武士の風格を漂わせる黒豹人間。

 

 

「おうおう、こりゃあ驚いたね。見た事ねえツラだが、全員能力者か」

 

「「「ん、能力者?」」」

 

 

「わざわざ俺の首を取りに来たのかい? そいつはご苦労なことだ。お前さんたち、賞金稼ぎか何かかい?」

 

 

能力者? 賞金稼ぎ? 三人はエースの口にしたその単語に首を傾げている様子。

するとその問いに対して、答えたのはいつの間にか甲板に乗船していた、女性だった。

 

「賞金稼ぎ? というより魔導士ギルドよ。海賊さん」

「もう、エルフ兄ちゃんもガジルも先走り過ぎだよ~」

 

ふわふわ髪のおっとりとした女。その隣には同じ髪の色でショートカットの女。

 

「おやおや、こいつはお揃いで。それにしても魔導士ギルド? また魔法使いさんたちかい。の辺りの海では、はやってんのかい?」

 

監獄での騒動やジェラールに続いてここでもか。

白ひげ海賊団の一員として世界を既にかなり知り尽くしているとエースは思っていた。

しかしここ最近だけで驚きの連続。

世界にはまだまだ知らないことがあるんだなと、エースは少し反省した。

 

「私はミラジェーン。この子がリサーナ。そっちの大きい子がエルフマン。少し目つきが怖いのがガジルで、黒豹の子が新人のリリー。私たちはフィオーレの妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士よ」

 

いきなり襲いかかって来たわりには今度は礼儀正しく自己紹介してきた。

それは余裕なのかどうかは分からないが、自己紹介されたなら自分も答えよう。

 

「おお、そりゃどうもご丁寧に。俺の名はエース。ポートガス・D・エースだ。以後よろしく」

 

向こうが自己紹介したのだからこっちも答えるのが礼儀だと思ったエース。

ピシッと気を付けして、絶妙な角度で会釈した。

しかし、それが普通なはずなのに、どうもミラを始め、現れた者たちは変な顔をしていた。

 

「ね、ねえ・・・あなた・・・海賊よね」

「ああ? 海賊だけど・・・って、お前ら俺を知らねえのか?」

「いや、海賊だから俺はお前に攻撃しかけはしたが、お前自身の顔も名前も知らんぞ」

「な、なにッ!? 俺を知らねえ!?」

「だって、なんか普通に自己紹介してるんだもん・・・礼儀正しいし」

「はあ? そりゃー、自己紹介されたらするだろうが。んなもんガキだって知ってるぜ? 俺は結構そうなるために練習したけどな」

「ギヒッ・・・随分とヘラヘラしてやがるな・・・これが本当にソコソコ有名な海賊なのか? 依頼の基準はどうなってんだ?」

「あ~、有名なのはソコソコか。俺もまだまだだな。反省してるよ」

「むむ~・・・おい、本当にこいつを倒していいんだよな?」

 

まさか新世界でも知らない者はいないと思っていた自分の名前を知らない。

ますますエースは恥ずかしくなった。

 

まあ、さすがに白ひげの名前を出せばこいつらは知っているだろうけど、親の名前を出して自分を紹介するなんてみっともないことはない。

 

まあいい。自分の名は自分の力で轟かせる。

 

 

「まあ、俺の名前は別にして、あんたら俺を海賊だと思って首を取りに来たんだろ? ミラジェーンだっけ? あんたが一番話が通じそうだ」

 

「え・・・ええ」

 

「俺は今、けっこう色々考えごとしていてよ~。今あんたらの相手をしている状況じゃないんだ。だからよ、見逃してくれ」

 

「・・・え? え? え!? み、見逃すって・・・え!?」

 

突然のエースの申し出に、ミラジェーンは右往左往して混乱した。

 

「どどど、どうしよう。み、見逃してって・・・ねえ?」

「ミラ姉ッ、落ち着いてってば!」

「そうだ、大体だな、見逃すなど男としてありえねえ! 名前も顔も知らなくとも、テメエは海賊なんだろ! ならば悪党は見過ごせねえ!」

「ギヒッ。つうか俺はとりあえず暴れられるっていうからついてきたんだ! 今更やんねーとかありえねえだろッ!」

「うーむ、これは俺の初仕事なんだが・・・妙なことになってきたな」

 

エースの態度に戸惑う妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一向。

エースはさらに余裕を見せてヘラヘラと笑った。

 

 

「かてーなー、楽しくいこうぜ」

 

「「「できるかッ!?」」」

 

 

主に男性陣からのツッコミ。「やっぱ無理か」とエースはまた笑った。

このままでは埒があかない。

一番好戦的なガジルが甲板を踏みつけて、エースに怒鳴る。

 

 

「おい、テメエ! あ~、テメエが海賊の船長か?」

 

「いーや、俺の階級は部隊長だ」

 

「よーし、それじゃあ、お前んとこの一番ツエー奴を連れてこい! そいつが船長だろ!」

 

 

船長・・・その言葉を聞いたとき、エースの肩が僅かに動いた。

 

 

「俺はとにかくツエー奴と戦いに来たんだよ! 下っ端の雑魚じゃ話にならねえ!」

 

「おい待てガジル! これは元々、俺のクエストだ! 船長は俺が倒してこそ男だ!」

 

「うるせえ、早い者勝ちだ!」

 

 

どうやら目の前の連中は本当にエースのことを知らないのだろう。

まさか船長を連れてこいなど、一体あの偉大なる航路で何人が口に出来たか。

エースの船長。それはあの世界最強の男、白ひげだ。

だが、白ひげは死んだ。モリアの話ではマリンフォードで死んだ。

だからここに連れてくることは出来ないし、そもそもこの船には白ひげ海賊団は乗っていない。

だが、それでも、例えこの場にいなくても許せない言葉という者はある。

 

 

「船長を・・・オヤジを連れてくる・・・そいつは出来ねえ相談だな。だが、どんな状況や事情であろうと俺の仲間・・・いや、俺の家族をぶった倒すと口にしたのは事実だ」

 

「ああん?」

 

「お前らがどこの奴らか知らねえし、お前らも俺たちの事情はよく知らねえと見えるが・・・これに関しては口に出すだけでも許せねえ」

 

 

空気が明らかに変わった。発せられるのはエースから。

 

 

「俺の家族に手を出してみやがれ! テメエら全員、海の果てまでぶっとばしてやるからよ!」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

 

先ほどまでのヘラヘラした表情が一変し、何とも力強い瞳に風格か。

 

「この気迫・・・おい、ガジル・・・海賊退治はそれほどでもねえと聞いたが・・・話が違うじゃねえか」

「・・・ギヒッ・・・俺も今そう思ったところだ」

 

新人のリリーがそう呟くのは無理もない。

ベテランのミラですら驚いているぐらいだ。

ガジルもエルフマンも先ほどのような好戦的な態度が変わり、エースがただ者でもないと感じたのか、急に真剣な表情で構えた。

 

「家族・・・海賊も自分たちの仲間を家族と言うのね」

 

ミラが複雑そうにエースに尋ねる。

 

 

「ああ。だからこそ家族は大事なんだ。それが俺たち無法者に課せられた唯一のルールさ。だから俺も家族は・・・」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

「売らねえ!」

 

 

その言葉と共に、メラメラと滾る炎を纏ったエースが、動いた。

 

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