「ふぁああ〜。もう朝か、前よりも疲れるのは気のせいか?ラウラは急にお兄さんとか言い出すし、寮から出れば視線がずっと気になってまともに休めないし」
あの事件があった次の日、いままでの暴挙をラウラが謝罪した。器の大きい人が多かったのかあっさりとクラス認められ和やかになったが急に上条と一夏の事を兄さんと言い始め面倒な事になり、更に追い打ちをかけるようにして転入生として入ってきたシャルロット(旧姓シャルル)が女の子だとバレ、ついでに一緒に大浴場に入ったこともついでに突き止められ学園中を逃げ回る事にもなった。
「はぁ思い出したく無い。あ、そう言えば弓道部の部長さんが弓道場使ってみるか」
まだ5時だが、久しぶりに手馴しの為するのにはちょうどいいと思い、掛けていた毛布を剥いだ。その時、ふにゅんと、とてつもなくいや音が聞こえ恐る恐る見てみると下着は着けず、Yシャツだけを着ている楯無がいた。
「おはよう、上条君♪」
「うおっ!」
思わず大きく後ろに下がったせいで机の角に頭をぶつけ、床で頭を抱えて痛みに耐えていた。
「な・・んで・・・ここに」
「まぁいいじゃない。まだ朝も早いんだし、もう少し寝ましょう」
「寝せんし、勝手に人のベットに入らないで下さい!」
軽い着替えだけを持ち出し逃げるように部屋を出て行く。
「もうちょっといじりたかったけど、逃げるのが速いわね〜。じっくり楽しみたいのに」
楯無さんの嫌がらせから逃げた上条は学園の一角に設けられている弓道場で射ち始めていた。元から正装で弓を握った事もなく、構え方も全て実戦でいつでも出来る射ち方でしかやったことないので服装はそのままでやり始めていた。
「なんか静か過ぎて、落ち着かないな」
パンッ!と射った矢は真っ直ぐに飛び、的の中心をとらえた。
「この距離なら特に問題はないか。やっぱり、部活で使用してるのは弦がゴムみたい緩いな、少しやり辛い」
そこからさらに2、3と連続で的の中心にあて、最終的に8回射っていた。全部の矢を回収しに行っていると部活に来た人がいるのか足音が聞こえてきた。上条は前から自分で使用している的に刺さった矢を抜き、また同じ位置に戻した。的の大きさは部活などで使用されている半径14cmものの約半分、半径3cmのものを使っている。しかも、引く力が強いせいか、深く刺さり抜くのに手間がかかっている。
「さて、次は硬い方でやるか。的も変えないとな」
矢を回収し、戻ると弓道部の部長である遠藤さんが来ていた。
「おはよう、上条君。朝から頑張ってるわね」
「遠藤先輩こそ、こんな早くから良くやりますね」
「今年が最後がだからね。後悔はしたくないのよ」
「そうなんですか、頑張って下さい。さてと、やっぱり的小さいな」
「あの?上条君。いくらISで長距離で射てても生身じゃ無理でしょ」
隣からそんな声が聞こえて来たが、聞き流して構え始めた。普通の弓ではしないようなギリギリとした音が鳴る。手の指が少しでも離れ、力が緩んだ瞬間には矢は的に当たった。あまりの速さに衝撃波が起こり爆音も生じた。
「こんなもんか、さて次」
その後、8回連続で命中させ終わらせると再び矢を回収しに向い、今度は的ごとはずした。
「よし、今日はこれでいいか。すみません、ありがとうございました」
「あ、ううんまた来てね」
練習を終え日課のジョギングを1時間程して部屋に戻った。まだ寝ているのか、寝息が聞こえていたのでゆっくり入れるうちにシャワー浴びた。
「ふーやっぱここに設備は充実してるな。けど、普通の生活が長かったからなんとも言えないし。あ、水着買ってこないと」
ここ最近、何故か物がなくなったりする事に多くなり水着もその1つであり。初めは3つほどあったのだが何度もなくなったり、出てきたのを繰り返し気がつけば2つは引き裂かれてゴミ箱に捨てられていたのだ。
「臨海学校か、余分に買っておかないとな。外出許可はもう取ってあるし行くか」
「・・私も行くー」
「いいですよ。う〜ん、なるべく早めに買いに行くか・・・・気のせいだよな」
どこからか聞こえた声に疑問を感じたが面倒になる事には変わりなさそうだとすぐに判断し、着替えて部屋を出て行った。
「お堅いね〜もう少しオープンになってもいいのに」
モノレールに乗り近場に新しく出来たショッピングモールに来ていた。駅降りた時、一夏を見かけたがシャルロットと歩いていたので声はかけず回った。
「ついたはいいけど、女性ものの服とかしか売ってないな。これだと、もう少し時間がかかるかもなってあ、やっと見つかった」
20分程探し回りようやく見つけ入った。中はほとんどが女性ものばかりで男性用のものは店の端に設けられた場所に小さく販売されていた。別にシンプルなものでも十分だと思い同じものを3つカゴに入れるとレジに並んだ。すぐに自分の番になり、カゴに出すと後ろに並んでいた女性客が急に上条のカゴに自分のカゴに入っていた水着を全て投入したきた。上条は振り返り見ると目が合った。
「何?文句でもあるの」
思わずため息を吐きそうになるがなんとか止め、上条は自分の水着だけを取り出し、
「すいません、これだけ買います」
この一言に店員も動揺したが、何の悪びれもなく上条は言ったのに気付いたのかすぐに支払いをしてくれた。
「さて、用事も済んだし帰るか」
店を出ると後ろから怒鳴り声のような声が聞こえて来たが気にせず歩いた。
「スルーして助かった。なんであんな人しかいないんだよ」
「それにしては随分手慣れてたわね」
目の前には相部屋の更識楯無がニコニコと笑ながら立っていた。まさかあの時に聞こえたのは本当だったのかと今更気がついた。
「なんでここに居るんですか楯無さん」
「君といると楽しい事が起こりそうだからついて来ちゃった」
「ついて来ちゃったじゃないですよ。はぁ、もう俺は帰りますよ」
「つれないわね。一緒にご飯くらい食べましょうよ」
「すぐに帰ってゆっくりしたいんですよ俺は」
「ここでも休める場所はあるわよ?」
「ありそうですけど俺には休めないんですよ。特に人が多い場所は」
「まあ、いいじゃない。それとも私じゃ駄目?」
「誰も駄目なんて言ってないですよ。それに十分楯無さんは可愛いですよ」
「〜〜嬉しいけど、出来れば綺麗って言って欲しいわ」
「おうおう、こんなところで見せつけるなー」
「こんなところでいちゃいちゃしてると生徒全員から妬まれるぞ」
「なんで、先輩達も居るんですか。まさか楯無さんわざとやってるんですか?」
「そんな訳ないよー。だって上条君をいじるのが楽しみだから」
「俺はすっごく嫌ですけどね」
「まあ、人も集まったし行きますか」
すると、両腕をケイシーとフォルテに捕まれ、そのまま近くの店まで引きずられて行った。しかも男女比が1:3となっているので顔には出さないが結構気まずい。
「どれにしようかな。上条君はどれにする?」
「自分の食べたいものを選べばいいじゃないですか。それとケイシーさん胸が当たってます」
「ふふっ当ててるんだよ」
さりげない発言に上条は顔が少し赤くなりメニューで隠したがその時にはもう見られていた。
「お前も恥ずかしがるんだな」
「当たり前ですよ。俺をなんだと思ってるんですか?」
「さそうだな、どっかの噂だとそっち系の人間なんて聞いたな。あとは鍛錬マニア」
「私も同じだな、同じ人間か疑う」
「ほぼ生身で試合に勝つ時点でもう人間じゃないわね。しかもトレーニングメニュー、一回見させてもらったけど、普通の人なら死ぬ量をやって涼しい顔してたし、もしかして超人?」
「俺はホモじゃないし、人外でもないですけど。で何にするか決めたんですか?」
「上条で」
「・・冗談はいりません」
「まったくつれないな。ん〜パスタが多いな、なら、カルボナーラで」
「じゃあ私はナポリタン」
「俺はペペロンチーノにします」
「私は蟹のクリームパスタにしようかな」
4人ともメニューが決まり、上条がまとめて注文をしていた。昼頃でもあり混んでいるのか、時間がかかるも15分程で注文したメニューが届いた。
「そう言えばあと少しで一年は臨海学校だな。試験前の唯一の楽しみだからな、ちゃんと遊んで来いよ」
「楽しむって、先輩達は何をやったんですか?」
「1日目は海で遊んで次の日は、まあ専用機持ちで稼働試験とかだな。はぁ今年の一年は運がいいな、男子と海にいくなんてそうそう経験なんて出来ないからな」
「男性なんて何処にでもいますよ?」
「違うんだよなー、気配りが出来て優しいやつがなかなかいないんだよ」
「そうなんですか、見つかるといいですね」
あれだけの地獄を味わってもこの鈍感さだけは直らず、ダリルとフォルテはため息を吐き楯無は顔を引きつらせながら苦笑していた。それが分からない上条はただ首を傾げている。その時、食事を終えたのかOL風の女性がテーブルを通り過ぎながら伝票を置いていきた。
「すみません、伝票落としましたよ」
丁寧な口調で呼び止めたが声をかけられた女性本人はその作った表情からは出来ないようなくらいに顔が豹変し、はぁっ?と声を荒げていた。
「落としたんじゃなくて、置いたのよ。男が金を払うのなんて当たり前でしょう。それにそんなにたくさんの女を侍らせてるんだからこのくらいは払えるでしょ?」
「・・・自分で食ったものくらい自分で払え。てめえは社会人だろ、そんな事も分からねえのか」
「何か言った?」
「ああ、言ったよ。そんな下らねえ理由でなんで男が払う必要がある。男が金を払うのが当たり前だあ?そんなふざけた言い分を人に押し付けるな。聞いてるこっちが疲れる」
「ISにも乗ったことのないような男風情が舐めた口を聞かないでくれるかしら」
「あるぞ」
「は?」
上条は制服のポケットを探ると自分の生徒手帳を出した。制服を見て分からないのかと思ったが丁寧に自分の写真まで乗った証明書まで見せた。
「俺もISに乗った事はあるぞ。・・ISに乗ったことがある程度で自慢するな、人としての器が知れる」
「な!そんな偶然が」
「目の前の事実も受け止められないのか。ISをファッションと同列で考えてるようなら言っておく。あれは人を簡単に殺せるような兵器だ、「ISを動かせるのは女性だから女性が偉い」なんて馬鹿げた事が噂がどっかから出てるけどな。あんなのは見せかけの権力だ、そんなもので偉そうにするな、恥知らず」
その一言に頭に血が上った女はコップに手を伸ばし中に入った水を上条の顔にぶちまけた。あ!と周りにいた女性陣は声をだしたが、受けた本人は気にする様子もなく、また食べ始めた。
「もう気は済んだか?さっさと帰れ、飯がまずくなる」
最後に放った一言で完全にキレたのか今度は、殴りかかるという暴挙に出始め悲鳴をあげる人もいた。だが、上条の頬に当たるなり鈍い音とともに女性は殴った腕を抱えながらうめいていた。
「これだけやれば充分だろ。犯罪にはな、見た所暴行罪ってところか」
「いや、上条君。水ぶっかけた時点で暴行罪適用されるかね」
「え、そうなんですか?まあいいか」
「いやいや良くないよ。ちょっと警備員呼んでくるから」
「それには及びませんよ」
楯無は目線を上げると、ここの店の制服を着た初老の男性が警備員2人を連れて立っていた。お願いしますと声をかけると彼らは女性を両側から腕を押さえ拘束し。店から引きずり出していた。
「ちょ、何するのよ。触らないで!」
と文句を言うがさっきまでとは違い、腕を痛めたせいで抵抗する事も出来なくなっていた。
「今更文句を言うなら最初から言わなきゃ良かったのに、まあやっちゃったしもう無理か」
「すいません、お客様ご迷惑をお掛けして。あのお客様は来店するたびに男性客を財布代わりにしてしまい、そのせいか客足も減っていたんですよ」
「え、なんで通報しないんですか?!」
「その、お客様は皆、好きで払っていると言うのでどうしても警察に通報する事が出来ないでいたんですよ。でも貴方のおかげで助かりました」
「いえ、気にしないで下さい。ただ自己主張が激しい人間なだけですから」
「そうですか。では男性のお客様、奥へどうぞ。替えのYシャツとタオルを用意しますので、濡れた服をお着替え下さい」
上条は断ろうとしたが、周りからの圧に押されたのか素直について行った。
「今更だけど、変わったやつだな。私も強要されてる男性は見た事はあるけど、反抗してるのは見た事がないからな」
「やっぱり何処の国でも、あるのね」
「こんな世の中だからな。でも上条の言ってる事は間違いじゃない。女だから無条件に偉い訳じゃないのは確かだ」
「中には乗った事もないのに威張ってる人も混じってるし、私達からするとそのくらいで威張るなって思うな」
「まあ、国を背負ってる訳だからね。疲れるし偶に嫌になる事もあるけど、それが誇りでもあるから余計にそう思うのよ」
「・・・ん〜あいつの過去がすごい気になる」
「・・確かに気になるけど、話題変わり過ぎだと思うよ?」
「仕方ないだろ?みんなが思ってる事なんだから。で、楯無はどのくらい知ってるんだ?」
「え、え!私?」
「生徒会長権限でまた、人の過去でもあらったんだろ?少しくらいは教えてくれよ」
「やっぱり、ばれちゃうか。・・一通り確かに調べたけど、酷いものだったわ。一夏君よりもね」
「一夏は天才の2人に挟まれたし辛いだろうな。でも上条は普通の学生だったんじゃなのか?兄弟がいそうな雰囲気も無かったし」
「確かに普通の学生だったわ、でも彼のもう1つのあだ名が問題なのよ。前に誰かが言ってたけど、良く言えば運に見放された子、悪く言えば疫病神」
「まさか、あいつがそうなのか?そんな噂は聞いた事があるけど、本当にいるとは思わなかったな」
「・・あ、そう言えば随分前にこっちに来てからニュースでやってた事があったな。けどそんなに不幸には見えないけどな」
「それは、ほとんど見てないからよ。上条君が来てから学校で良く物が壊れたり、機械が誤作動を起こしてるのよ。しかも上条が通った時、もしくは触れた時に。スプリンクラーがかってに作動したりする事もあったし」
「え、でも偶々なんだよな」
「ええ、上条が通った時だけ偶然。けど、入る前はもっと酷かったみたいけど全部は把握できてないのよ」
「・・よく、普通でいられたな。私じゃ病んでたかも」
「お前が病んでる姿なんて想像出来ないな」
「お待たせしましたー。ってなんで、そんなに暗くなってるんです?」
「お前も苦労してるんだな」
「急にどうしたんですか。俺は大して苦労してないですよ?」
「少しは相談に乗ってやるぞ」
「相談にする事は特にないですよ。別に困ってませんし」
「お姉さんが癒してあげるわよ?」
「・・・何に対してか分かりませんけど。楯無さんのやる事に、ろくな事がないのでやらないで欲しいですね」
「え、それは酷くない!?」
「なら、同じベットに入って来ないでください。俺を変態扱いしたいんですか?はぁ、一回くらいは別の人に変えて欲しいですよ。と言うか元に戻らないんですか?」
「ごめんね、まだ整理がついてないから。もうちょっと我慢して」
顔の前で手を合わせ、申し訳ないと言う気持ちを表そうとしているが、いつも仕事をさぼったりする事のある楯無さんがすぐに終わらせられると思ってないが、上条はとりあえず待つ事にいた。いつの間にか隣に座っていたケイシーさんはフォークで上条のペペロンチーノを取ると上条に口の前まで持っていた。
「ほら、冷めないうちに食べろよ」
「え、いや。ん、ん〜・・・・はぁ、分かりましたよ」
悩んでも結局のところこの状態からは逃げられないと理解し、素直に食べた。周りからの視線も重なったせいで余計に恥ずかしい気分だった。もうこの場から離れたい上条は残りを食べ終えようとするがなくなり、楯無やフォルテに取られ先ほど同じように食べさせられていた。それか食べ終わると今度は食べさせてと言われ、先にやられた上条は断れず3人に食べさせる事になった。周りにいる人達はその様子を微笑ましく見る人もおり、中には応援する人もいた。
「もう、この場から逃げたい」
と本音が漏れたが楯無達が満足するまで遊ばれてながら休日を過ごした。