IS学園の異端児   作:生存者

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第59話

 

「念のため貴様にも言っておく。私は聖人だ」

 

「そうだろうな。あんたの蹴り中々痛かったし雰囲気で分かったよ」

 

 

「あ、2つ頼みがあるけど聞いてくれるか?」

 

「2つか、ここで逃げるような腰抜けでないのは今の動きで分かった。いいだろう」

 

「まずは、あんたの名前。教えてくれるか?」

 

「そんな事か、ウィリアムとだけ言っておこう」

 

「どうも、じゃあ2つ目。ここでやるなら周りの人を巻き込まないでやりたいからどかしていいか?」

 

「確かに、その意見には賛成だ。構わん、ここで待とう。戦場での無駄な犠牲は出したくないのでな」

 

 

 

「秋十、魔術師前で魔術は使うな。死にたいのか」

 

「何を言ってる僕は千冬姉を守る為に」

「守るじゃなくて試してみるの間違いだろ。中途半端な魔術でプロに通用すると思うな」

 

 

「中途半端だと、お前を苦戦させたこの僕が!」

 

「ああ、中途半端だ。あと、付け足すならお前に苦戦した事はない、お前の勘違いだ」

 

「織斑先生、他の人を避難させてください」

 

「それより1つ聞かせてくれ、お前な何者だ」

 

「俺は何処にでもいる普通の高校生ですよ。ただ、少し変わったくらいです」

それを聞いて織斑先生は黙り込む。

 

「なら条件がある。それは・・・」

 

まだ動けている人にも手伝ってもらい倒れていた一年全員をアリーナの外まで運び終えると中央に立っている男の前まで歩いて行く。

 

 

 

「少し遅いな、お別れの言葉でも話していたのか」

 

「そんなところだ。聖人相手に手を抜いて勝てるほど余裕はないからな」

 

「その話し方、まるで聖人に会ったことがあるような言い方だな」

 

「少なくともあんたが初めてではないからか」

 

「そうか、では始めるとする。私は新生亡国企業、幹部のウィリアム・オルウェルだ」

 

「ッ・・・IS学園1年の上条当麻だ」

お互いが名乗り終え、2人の姿が消え拳をぶつけ合っていた。その余波で散乱していた岩などが砕け、飛んでいく。

 

「報告どうり貴様は普通の人間には見えんな」

 

「あんたみたいな奴にそう言われるなんてな」

 

「事実を述べただけだ、真正面から受け止められる人間は私の知る限りお前が2人目だ」

 

「そりゃどうも!」

ぶつかり合う度に爆音と衝撃波が撒き散らされる。お互いが半分程度しか実力を出していない為、決め手がなく長期戦の肉弾戦になった。ウィリアムも武術ではないが戦闘で培ってきた技で守り攻める。上条も強敵との戦闘で培った技術で流して攻撃を続けていく。

 

「さすがだ、ここまで対等な戦いは久しぶりになる。だが、任務できている、そろそろ本気を出していくぞ」

 

「聖人の魔術か」

ポツリと呟く上条の前に一歩で20mもの距離を詰めてウィリアムが近づいてくる。速さと体重のなった拳をガードするも後退る。そして、何かの前兆か湿り気が増していた。

 

「来い」

覚悟を決め備える。小細工が一切通用しないような相手に生半可な気持ちは命取りになる。

 

「では行くぞ、上条当麻」

とっさに頭を下げる、完全に下がりきった頭を透明な鞭が音もなく通り過ぎ、ビュン!遅れて音が響き渡る。更に右肩を強引に後ろに反らせる。骨がメキメキと軋むが右肩を切断しようする鞭をスレスレで避ける。

地面に影が映る。真上に水でできた巨大なハンマーが振り下ろされ右手を振り上げる。しかし、自分の肩の位置まだ上がる前に引き止めて真横に飛んで避ける。

ザザザ・・・地面を何かが削る音の方向を見て立ち上がる。アリーナの横全ての覆い体を切断しまいと距離を詰める水の鞭。それを右手で一部を打ち消してやり過ごしていく。

 

「その右手は一体なんだ?」

 

「教えると思うか?」

 

「ふん、ならば力ずくで吐かせるまでだ」

さらに苛烈を極める、銃弾のように速度と硬度をもった水の塊と鞭が変幻自在に上条の逃げ場を消し、命を奪いに行く。それでも、いつまで経っても上条には決定的な怪我は何もない。そのことに気づいたウィリアムは一度攻撃をやめて自らの武器をまた取り出す。

 

「手馴れているな、今までにも魔術師と戦闘をしてきたのか」

 

「そうだ、向こうから寄ってくるせいで嫌でも戦う羽目になったよ」

過去を思い返すと怪物みたいなやつを何人も相手にした記憶が浮かんでくる。だがそんな懐かしさを感じて和む時間ではない。

 

「ならば貴様の本気も見せてもらう。その度胸が形だけのものではない事を証明するためにな」

前傾姿勢から足を出した途端姿が見えなくなる。

 

 

「だが、まずは私が本気を見せる必要があるかもしれん」

真後ろからの声に驚きながらも振り下ろされな剣をを体の位置をずらして避ける。上条もカウンターにその場から回し蹴りを瞬時に合わせる。

当たるまでコンマ1秒もない時間で場所をずらされ感触が弱くなる。すぐに離れようとするが地面に深々と刺さった剣で足元をすくわれる。

 

 

「っ!しまった」

今度は確実に仕留めるためか首元を狙った蹴りになる。慌ててくる方を腕でガードして最小限に抑えるが、当たった音だけで周りに響き渡り地面をゴロゴロと転がって行く。

 

「まだ終わらん」

軽く上げていた剣を振り下ろす。すると、

 

「!」

偶然か分からないが起き上がろうした途端に寒けを感じて素早く一歩踏み出た。その直後に真後ろにクレーターが出来上がり中心には小さな鉄の破片が刺さっていた。もう一度振った時には首筋を鉄の破片が擦りそうなる。よく見ると一歩も動かずにただ剣を振り回しているだけ。恐ろしい速さと威力の攻撃が無数に飛んでくる。

 

「距離は関係ない・・・射程距離の自在に操る・・んなわけ無いな。元から魔術的に強い聖剣とかは破片になっても武器になる。それを飛ばしてるのか」

 

「ほう、貴様が知っているとはな。ある友人の術式だがもうバレたか」

だめだ、ただの人間で対抗するには無理がある、会話をほぼ無理。あいつは任務と言っていた、それを考えると俺を7割くらいの力までで始末してくるな。織斑の先生の条件は多分やる前に八つ裂きで終わりか

 

だめだと思ったらすぐに呼べ。なんて言われても相手は軽く音速を超えられるんですが。

 

「それで、まだ魔術を使わないのか。それとも隠したいのか?」

 

「違うな、元から魔術なんて使えない。生まれが特殊で俺は一切発動なんて出来ない」

 

「嘘はつくな。魔術が一切使えないなら先程の衛星からレーザーを撃ち落としたあれ魔術はなんだ。しかも天使の力《テレズマ》を使用したものだ。あんなものを使える人間はこちらの世界でもそうはいない。ましてや、普通の人間にな」

確かに普通の人間には使えないものを軽く使えてしまうことは否定しない。だが、人間離れした魔術は制御が効きづらい。それに使うと言い方は間違っている。

 

「話したくないか、だが詮索つもりもない、人の魔術に干渉するつもりはないからな」

 

「どうも、でいつまで遊んでるんだ。お前もすぐに俺なんか消せるのに」

 

「何、お前がかなりのお人好しで、人の為なら命をかけるような馬鹿な人間だと他の幹部の人間から聞いてな。本当などんな奴か見て考えていたのだ」

 

「?俺はそんなにお人好しじゃないけどな」

 

「自覚がないのか・・・・・・こいつなら、いやまだ監視は続いている今はまだ出来んな」

最後に呟いていた一言を正確には聞き取れなかったが、まだ事を一切話さないようなこの男が僅かに顔つきが変わったのは見えた。

 

 

「ではまた再開するか殺し合いを」

地面全てが薄く水で覆われ幾多もの魔法陣が上がる。ウィリアムの背後には槍、鞭、ハンマーが浮かび上がっている。上条も普通の人から強くなった程度で本物の聖人と対等以上に戦うことはできない。本気で挑まないければ目の前に現れるのは自分の死だけだ。

 

「ああ、来い!」

 

 

 

 

 

 

「うわぁ、あなたとの試合でも高速の戦闘を何度もやり合った事はあるけど・・・こんなのは初めて見るわ」

 

「いや〜束さんもあれにはついて行けそうにないね」

 

「お前がそう言うか。イーリス、お前は無事・・・いや、無理に起きるな」

アリーナの外から2人の戦いを観戦する4人。立ち入ることも許されない別格の存在同士に驚いている。

 

「うぅ、爆発程度で動けなくなるなんて無様だな」

 

「文句を言う元気があって休んでいろ」

 

「織斑先生!何ですかこの騒ぎは」

ISを解除してボロボロの状態で歩み寄ってきた楯無、しかしそれより気になっていたのは

 

「更識、お前の胸の間に入っている紙はなんだ?」

 

「え、紙?」

少し慌てるが服と肌の間に挟まっていたメモ用紙くらいの紙を取る。

 

「玲奈がタワーで捕まっているから崩れる前に助けてほしい・・と書いてあります」

 

「なら、お前が助けに行け。それはあいつがそのつもりで書いたものだろう」

 

「え、でも上条君は」

 

「私達では手に負えん、少なくとも今は入れば邪魔になるだけだ。それとも、お前にはあれに勝つ算段があるのか?」

指を指す方向を見て目を見開く、水が意思を持ったかのように変幻自在に形を変え後輩を襲い、もう1人の男もその隙間から何度も殺しにかかっている。それもあくまで断片的に見えるものでその速さに追いつけない。

 

「悔しいが、今の私達には見守るくらいしかできん。そのメモはあそこで戦ってる馬鹿がお前にやって欲しい事だろう。自分で出来ることをやれ、まだ倒れているダリルとサファイアもここまで避難させろ。ほら早く行け、仕事は山積みだ」

少々強引な方法だったが、今の自分ではあの中に入る事はできない。それを理解した楯無は背を向けて歩き出した。すでに綺麗だった通学路もぐちゃぐちゃになり綺麗な道は1つもなくなっていた。しかし、そこで違和感があった。下を見ると新しい足跡がいくつも残りアリーナの方に向かっていた。そして、耳を澄ませて遠くから響く轟音に紛れて足音と話し声が僅かに聞こえる。

 

「まずい!」

 

 

 

 

「束、周りに部外者の気配がするのは気のせいか」

 

「気のせいではないな。むっターちゃんが近づいてくるの気配」

 

「千冬、束さんって人の見分けがつかないじゃないの?」

 

「少しは見分けられるように成長してくれたみたいだ。変なあだ名をつけて呼ぶことに関しては気にするな・・・で、お前達はいつまで隠れてる、さっさと出て来い」

背を向けた状態で後ろに現れた女を問いただす。

 

「へぇ、やっぱり気づくのね」

 

「そんな気配の消し方では見つけてくれと言ってるようなものだ。それでこの何もない場所に何の用だ」

 

「何もないって言うのは冗談かしら、でも用があるとすればあなた達と交渉しにきたって所ね」

 

「交渉?何を言ってるのかなこのお馬鹿さんは」

 

「束、言いたいのは分かるが少し静かにしてくれ」

黙るのを見てから謎の女の後ろから何人もの武装した男が現れる。その中には手足を拘束されたダリルとサファイア、玲奈もいた。

 

「人質の交換か、何と変えっこをするつもりだ?」

 

「あなた達3人よ。織斑千冬、アリーシャ・ジョセスターフ、そして篠ノ之束さん」

ちょうどその時アリーナの一部がすべて吹き飛んだ。あの戦いに決着でもついたのかと誰もが思っていた。しかし、千冬は冷静を保ち続ける。

 

「世界を裏で操っていた組織も人員不足になったのか。皮肉なものだな」

 

「しかも、元中学生に負けるなんて恥ずかしいよね」

束さんの発した言葉に担任を含めて全員が反応する。それだけ、印象に残っているのか悔しさが残っているのだろう。

 

「残念だが、お断りだ。刑務所の人間でもさらって雇え」

 

「生徒を見殺しにするの?教師として失格ね」

銃口を玲奈に向けて引き金に手を当てる。だが、3人はすぐに飛びかかる準備を整えていた。5mくらいの間合いなら1秒もかからずに縮められるからだ。

 

「なぜ貴様がここにいる。本部で待機のはず、何のつもりだ」

しかし、それは第三者によって止められる。アリーナで戦っていたはずの男が

 

 

「あら、ウィリアム。あの餓鬼は殺したの?」

 

「先に答えろ。返答次第ではここで土に還すことになる」

殺気を撒き散らすウィリアムに対し汗ひとつかかずに涼しい顔で話す。

 

「何って、優秀な人材の確保よ?貴方みたいな人はそういる訳でないし、組織にとっても価値のある人を連れて行くのは良いことじゃない」

 

「戦場での略奪はしないのが俺の決まりだ。第一、貴様がここにきたところで邪魔になるだけだ。さっさと帰れ」

 

「へぇ、あなたそんな態度を取っても良いの?」

 

「報告される前に消せば良いだけの話だ。私と戦ったところで勝ち目はない」

 

「でも、私が帰らなかったら人質は始末しといてって、言ってあるから無意味よ」

 

「・・・小賢しい真似を」

表情には出さないが悔しさが芽生える、組織というものの厄介な縛りにうんざりする。しかしこれはただ演技だ、本命は私では無い。

 

 

 

少し前・・・

お互いに攻撃と防御を繰り返し5分以上が経ち、少なからず疲れて傷が出始めてきた。

「そう言えばあんたって何で、亡国企業に入ったんだ?」

 

「・・・貴様に答えるつもりはない」

 

「まあまあ、どうせ俺は死ぬかもしれない人間なんだから良いだろ?」

目の前に死があるような状況でも笑顔を作る余裕がある。あまりに緊張感がないと決めつけるのは失礼だが・・いや、それだけ死地を生き延びているからその余裕があるのか。

 

「自らの意思で入った訳ではない。身内を人質代わりに取られてこのとうり働かされている。これだけ力を持て余して家族の1人すら守れないような無様な男だ」

 

「やっぱりか」

 

「気づいていたのか?」

その返答を聞くと上条はニヤリと笑顔を浮かべる。

「何となく自分から汚れ仕事をするとは思えないからだ。何かしら目的があるんじゃないかと」

 

「貴様には関係のない話だ、今は任務を遂行することが私の優先事項だ」

 

「・・・ならさ、俺にも手伝わせてくれないか?」

 

「何?」

 

「俺にもあんたの家族を助けさせてくれよ」

 

「口だけなら何とでも言える」

 

「ああ、けど俺は本気でそう思ってる」

 

「ならば、これを凌いだら考えてやろう。その言葉が貴様の本心かどうかを・・・聖母の慈悲は厳罪を和らげる」

無いはずの月がウィリアムの背後に現れる、莫大に魔力が手元の剣に収束して行くのが分かる。

 

「時に、神の理へと直訴するこの力、慈悲よ天と地を引き裂け!」

その場で振り下ろした大剣から一瞬で前方に力が解放される。上条は真正面からそれに拳を合わせて対抗する。ちょうどぶつかった所で力が上条の左右に分断されて後ろに流れて行くが二次的に発生した爆風には耐えきれずにすっ飛んで何度も地面に体を打ちつけながら瓦礫の山にぶつかった。

地面を転がった間に僅かに後ろを見ることが出来た上条の目には、ウィリアムの魔術によって出来た2つ余波で海面が叩き割られていた。

 

 

「確かにお前は防ぎきった。お前は信用するに値する、だがどうやって見つける、私でも見つけられないものを」

瓦礫の中で動く上条の姿を捉えたウィリアムは驚きと賞賛が心の中で渦巻いている。今までのこれをしのげたものはいない、ただの一撃で肉体が爆散して肉の破片すら残らないのだ。

 

「簡単だ、知っている人間に聞けばいい。あんた、俺よりも耳がいいだろ?嫌な予感がずっとしてたな、他にもあんたらのお仲間がここに来てるんじゃないかって」

 

「・・・確かに来ている。その直感の良さで今までの攻撃も避けられていたのか。あとで来い、相手によっても対処方は変わる」

 

 

 

 

 

「ひれ伏せろ、侵入者共」

いきなり、荷重がかかり体が地面に叩きつけられる。侵入してきた全員が重みでうめきを声を上げる中、1人の男が近づいてくる。

 

「てめえ、なんで生きてる」

 

「死んで無いからだ。ただし、怪我はしてる」

あの戦闘でも致命傷は無いが頭から僅かに血が滲み出て、制服も所々が切れている。

 

「散々に遊んでくれたお礼だ、今度はこっちが遊ばせてもらう」

 

 

 

 

 

「織斑先生、侵入者が!」

 

「侵入者ならそこに這いつくばってる」

 

「え、この人達が?」

信じられないと顔にでる楯無を落ち着かせる千冬。それを見て束はさりげなく写真を撮り、アリーシャは教師としての姿を見て終始笑顔を見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




海面を叩き割る辺り魔術としての格の違いが現れてますね。
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