IS学園の異端児   作:生存者

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第65話

 

 

 

 

「くそ、出血が多いか、あと・・・10分の我慢・・・でもきついな」

 

上空数千mを衝撃波を撒き散らしながら高速移動を続ける機体。その後ろを追いかけるように自衛隊の戦闘機が2機追尾している。追跡されて1分近く経っても警告をしてくるあたり日本人の優しさを感じた。

 

 

「その仕事振りは賞賛したくなるけど、せめて話で分かってくれ」

 

更に加速して現在速度はマッハ7。一気に距離を突き放し、海に抜ける手前で一気に高度を少しずう落として飛び続ける。ここまで来ると性能差が現れ追跡も行わなくなった。だがまだ追いかけてくる。

 

 

「意識が、くっ!あと少しだ」

 

薄れ始めた意識をなんとか持ち堪え、目標の学園まで突っ切る。

 

「・・・怒られるのを覚悟でアリーナにでも落ちるか」

 

 

 

 

 

 

 

「だめだ、勝てない。元とは言え世界ランク2位に学生が敵うわけないか」

 

「それは禁句よ。あの人も気にしてるから」

 

2年で専用機を持っている2人は地面に倒れていた。実技の担当がいつもならナターシャ先生だが、まだ体調が優れないとの事でまだ残っていたアリーシャが先生となって訓練を始めていた。軽い手合わせと言いながら国家代表と代表候補の2人相手に善戦できるあたり経験の差を感じていた。

 

 

「はい、じゃあ各班に分かれて。もちろん、均等にお願いね」

 

2年ともなると内容は射撃や武器の扱いだけでなく。連携訓練も入るため、より実践的なものに変わってくる。

 

「いや〜たっちゃんと同じで助かるよ」

 

「黛ちゃんがそのぶん動かないと評価も落とされるからね」

 

「うぅ、分かってる」

 

実技も成績に大きく関わるので強い人と組んでも必ずしも良いと言う訳ではない。その様子を見て苦笑いを浮かべていると、反応するはずのないセンサーから鳴る。

 

「え、未確認の機体が・・・」

 

と気づく前にアリーナのバリアを破って黒い何かが降り立った。あまりの速さに確認する時間もなかった。

 

 

「一体何が・・・いや、これはあたらしいニュースか!」

 

「黛ちゃん、さがって!」

 

スクープに食い付く癖が出た黛を手で止めると楯無は戦闘モードに入る。バリアの強度は伊達ではない、たとえミサイルだろうと軽く防ぐものを破って入ってくる物はまともではない。クラス対抗戦で乱入してきた無人のISは上級生の候補生でも手を焼くほどの性能を持っていたのだ、今回もそうだとするなら警戒なんてものでは無い。まだ生徒が残った状態ではなおさらだ。

しかし、いつまで経っても動きがないまま次第に煙が晴れていく。

 

 

「え、あれは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜・・・なんだ、着いたのか。海に落ちなくて良かった」

 

「良くないわよ」

 

起きて早々チョップで現実に戻される。

お願いですから怪我人に暴力はやめて

 

「あなたのお陰で授業は中止、大騒ぎよ」

 

「すいません」

 

もちろん、大騒ぎと言っても原因が分かった途端に収まっていた。血まみれの搭乗者を下ろすのには手間取っていたが。

 

「頭の出血は収まってるわ。一体どんな怪我をすれば傷口がここまで開くのかって先生も驚いてた」

 

「保健室の先生ですよね?」

 

「ええ、それ以外いると思うの?」

 

ISには搭乗者の治療技術も備わり、大概の怪我や傷なら乗っていれば直るはずなのだ。

 

「まあ・・色々あったんですよ」

 

「そう、元気そうだし。面会も可能するわね」

 

「俺に面会する人なんているんですか?」

 

と離してる間にガラガラと扉が開く。気のせいかだいぶ騒がしいような。案の定クラスメイトの人がぞろぞろと駆け込んできた。保健室なんだから少しは静かにしないと。

 

 

『怪我は大丈夫!?』

 

うん、大丈夫。でも、耳が痛いのが少し辛いかな。

 

 

「ああ、大丈夫だよ。大した怪我でもないから」

 

「でも、最初に見つけた時は血塗れだって・・」

 

もちろん、ただの血塗れではなく。頭から大量に血を流していたのだが。頭に巻かれた汚れのない包帯を見せる。

 

「この通り収まってる。ありがとな、わざわざ心配してくれて」

 

つい、いつもの癖で笑顔を浮かべ、そして声をかけてきたクラスメイトの頭を撫でていた。多少どころではない頭が悪い部分を除いて、頼れる人と一部からは見られているため、同級生からでもお兄さん見たく言われる事もある。

 

 

「はいはい、まだ起きたばかりなんだから静かに。君達は他にもやる事があるんだから、早く戻らないと」

 

さっそうと入ってきたアリーシャさんの一声で静かにみんなが出て行った。そして、上条は物凄く気になった事があった。

 

「あのアリーシャさん、その格好は?」

 

スーツや私服なら教師としては特に問題無いだろう。1年の始めの方ではジャージ姿の織斑先生も見た事があるので案外緩いのかもしれない。しかし、何故ナース服。

 

 

 

「これか?偶々替えの服がなくて貸してもらったんだ。似合うか?」

 

「似合います!」

 

「分かったから落ち着く」

 

再び脳天にチョップが振り下ろされ、若干興奮しかけた気持ちが収まった。実はタイプにはまっていた事もあり、真剣な目をして即答していた。

 

 

「おお、ようやく目を覚ましか。ったく世話の焼けるやつだ」

 

「・・なにか、迷惑でも」

 

「多少な。楯無と2人かがりでお前をISから引きずり出すのに手間取ったくらいだ」

 

「じゃあここまで運んできたのも」

 

「いや、それはナース服の人だ。私でも血だらけのやつを連れて行くのには気が引けたからな」

 

再び目を合わせると鼻高く笑っている。あの、そんな気楽な事じゃ無いですよ?

 

「血まみれの状態なら私もなったし、そのくらいで気分は崩さないわよ」

 

「なら、その義眼は」

 

左目と違い右目は青色になっていた。

 

「昔の事故でね。今はナノマシンで調節してあるから生活には問題無いから」

 

世間では大きく報道された事ではない為、上条はいまいちピンとこなかったが、その場にいた楯無とフォルテは暗い表情になっていった。

 

「はい!暗い話は終わり。数日間は運動禁止、ダメなら先輩達に無理矢理でも止めるように言ってあるから。もし、見つけたら・・・」

 

「見つけたら・・」

 

妙に合間を開けるアリーシャに上条は息を飲んで待つ。

 

「いや、これは先に言ったらダメか。とりあえず部屋で安静にしてなさい」

 

「え、気になるから途中で止めないで!」

 

結局、何も教えてくれる事もなく部屋に戻って行く。

 

 

「と言うわけで君は運動禁止ね。常に監視も付けるから」

 

「常にですか」

 

つまり、1人でゆったりする暇もないのか。参ったな・・・あ、親に電話しておかないと、今度行った時に何をされるか分からないな・・・主に母さんから。

 

「すいません、電話取りに行ってもいいですか?」

 

「早速きたわね、ロッカーに置いてきたの?」

 

「専用機の拡張領域の中に入れっぱなしです」

 

ロッカーなら持ってこれるだろうが、さすがに他人の専用機では簡単には手は出せない。と言うわけで整備室まできたのはいいが安否を心配していた家族に電話を掛けたまでは良かった。父さんは問題なく済んだ。だが、母さんに限ってはそうそう終わらず、電話越しで恐怖を感じると言う初めての経験をする事になった。

 

 

「はぁ、ようやく終わった・・・まあ、心配してくれてると考えれば楽になるか」

 

 

 

 

 

「楯無さん、1つ気になった事があるんですが」

 

「ん、何?」

 

「ここにくる途中で体育祭をやるなんて聞いたんですが」

 

「ああ、その事ね。今回の一件で大会は中止、けどその代わりに何かイベントをやってくれないかって要望が来たのよ」

 

年頃の女子なんだしそう思っても同然か、にしても楯無さんの楽しみそうな物を選んでくるあたり、性格とか把握してるよな。

 

「個人的にもこの事を忘れたい人もいる。そう考えると、これしかないかなって」

 

「完全には無理でも少しでも和らげるように」

 

「ええ、でも一番は織斑先生とアリーシャ先生の勝負ね。第2回モンドグロッソの決着を着けられるように試合をしたいかな」

 

確か、一夏の一件で不戦敗で優勝したなんてニュースがやってたな。そんなに気になるのか、その勝負は。

 

「上条君は知らないと思うけど実力は織斑先生の次に強い。お姉さんでも勝てないかな」

 

つまり、世界2位か。あの性格からじゃ想像がつかないな、人は見かけによらないってことか。瓦礫の隙間から”殺さない程度に手加減してる聖人”と渡り合ってるのも見た事がある。

 

「楯無さんでも勝てないんですか」

 

「あのね、一代表と比べるのもおかしいくらいにあの人達は強いのよ」

 

強いと言われても、手を振り上げるだけの動作で人間を消し炭にできる相手によく合って居た上条には、どうしてもその強さが分からなかった。

 

 

 

 

 

 

「いや〜疲れるわ。教師の仕事も馬鹿に出来ないかな」

 

「こちらとしては教員の資格を持っていることに驚いた」

 

書類にはつい最近にとった事が記されていた為に、生徒からは教師になってくれないかと言われてたりする。

 

「まあ〜残った人生の過ごす1つの選択肢よ。ずっと選手として生きるのにも限界だってあるし」

 

「これを見る限り、選手時代から勉強でもしていたのか」

 

「千冬、あなたみたいに推薦だけで入れる人はそうそういないのよ」

 

「だが、一般の教科は教えることは出来ない。精々ISの実技と座学の2つだ」

 

実際ここに入れたのもドイツでの指導の成果が公に出た事もある。だが、大学にいって教員の免許や担当教科の許可証まで持っているわけではないのだ。

 

「ねぇ、千冬」

 

「なんだ、急に」

 

「ISは宇宙開発を目的として束博士が開発したのに、何故兵器に変わった思う?私達もそれをスポーツで使う道具として扱っている訳だけど」

 

「さあ、私にも分からん。ただ、宇宙開発以外の事でも使えると考えた人間がいたとしか言えまい」

 

娯楽としてスポーツに入るいい面もあるが、それが悪用されて殺人、誘拐と負の面にも使われている事も知っている千冬は握っていた手に自然と力が入っていく。

 

 

「でも、一部には生活の為に使えないか考えている人もいるのよ。危険地帯での作業でも扱えないか、なんて。まあ、今の人には無理な話になるけど」

 

「プライドの高い割に、役に立たない者ばかりだ。この学園もそんな連中に支配されているがな」

 

いくらどの団体や政府からも干渉されないとは言え、実質的に経営しているのはIS委員会の人間だ。それも出てきている資金は日本の税金からなのでそれなりに地位のある者ならば裏で自由に干渉も出来る。

 

 

「それでこれからお前ばどうする。私との決着をつけたとして国に帰ったとして必要に聴取と取り調べ、常時監視だ」

 

ISの無断使用は犯罪に当たる。たとえ、それが善意による行動にしてもだ。

 

「それは覚悟の上よ。それに今やってる仕事も指導くらいで、失うものは家に置いてきた猫くらいのものよ」

 

「この学園も指導員が少し不足してる、やってみるのも1つの選択だ」

 

「それって教師になれって言ってる?」

 

「さあな、まだ教員枠に余裕はある。試してみるのもいいのではないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛たた、逃げないから離してください!」

 

「不良生徒を更生するもの私の役目よ。大人しくしてちょうだい」

 

何故か右腕を後ろに回され動けない体勢で廊下の窓に押し付けられる。妙に力が入ってせいか腕がだいぶ内側に来ている為に激痛が走り続けているが。

 

「なら関節技で決めるのをやめて下さい!」

 

「逃げない?」

 

「こんな間に合うくらいならじっとしてます!」

 

そうね〜と考え始めるのはいいが、技を決めたままなのでずっと痛みが残る。

 

「お、なんだもう逃げ出したのか」

 

一方的にやられている姿をニヤニヤと笑いながら見ていたフォルテ。

 

「逃げてません、軽く運動していたくらいですよ・・・っいててて!肩が!!」

 

「で、何をやってたんだ?」

 

「屋上で懸垂」

 

「それは・・・アウトだ」

 

フォルテも怪我の具合は見ているので、大人しくしているだろうと思っていた矢先の出来事に若干呆れていた。

未だに上条は激痛で声を漏らしているところだが、楯無が首の裏に軽く手刀を当てるとピタリと声が出なくなりぐったりとしていた。

 

 

「フォルテちゃん運ぶの手伝ってちょうだい」

 

「了解、間違っても寝る間に襲ったりするなよ」

 

「しないわよ!それするのはフォルテちゃんでしょ」

 

「私はあれだ、やるとしたら起きてる時だな」

 

しれっととんでもない発言が出てくるがそのうち自分もやり兼ねないと思っていた。しかし、いつまでも廊下に置いてるわけにもいかないので運んでいく。しかし、まだ成長期の中の人間。身長も一回り大きいので引きずるような形で運ぶ事しか出来なかった。

 

「なあ、楯無」

 

「どうしたの?」

 

「こいつって何者なんだろうな」

 

軽く考えて思った事を話し出す。

 

「やたら運動が出来る割に頭が悪い。気遣いが出来るし家事も万全で優しい。くらいかな、あとはよく不幸って言ってる」

 

「私も同じような感じだな」

 

大概の奴はそんな感じに思ってるだろうな。と口ずさむがそれだけならわざわざ話すことでもないのではと感じた。しかし、そこである違和感を感じた。

 

「そうだ、なんか違和感が残るんだよ。運動が出来過ぎる以外は普通すぎてな、何か隠し事でもしてるんじゃないか?」

 

 

『ああ、ラウラ言うとうり俺は魔術が使える』

 

夏休みに上条の実家でバーベキューが終わった後、ラウラとの話を盗み聞きしていた楯無はその言葉を思い出していた。数日前も瓦礫だらけになったこの島を一瞬で直し、秋十に対抗しようとした自分達を触れずに移動させた。

 

「あっても自分から話すのを待つしかないわ。多分、強引にやっても話さないと思う」

 

「口が固そうだけど、案外ポロっと漏らしそうだぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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