IS学園の異端児   作:生存者

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第76話

 

問題が多々起こった文化祭から戻って数日経ち、早朝から外に出ていた。

 

「なあ、そろそろ倒れろよ」

 

「それは男として、簡単に負けるわけには行かないですよ」

 

楽しく会話する上条とフォルテ。1年ながら2年の寮にいる関係で仲の良い2人なら朝からこんな感じでいることもある。しかし、その手に鋼鉄の塊が無ければだ。ギチギチと擦れる音を立て鍔迫り合いが続いているが、片方は欠伸をかきながら受け止めている。

 

「くっ、なんで動かねえ」

 

「そりゃ、力で勝負で負けたくないんで」

 

一気に腕の力を抜き前に倒れ掛けた間に蹴り怯ませて続けて2、3と剣でシールドを削り試合を終わらせた。

 

「15連敗だ〜!」

 

「え、もうそんな記録に?」

 

「うるせえ。本人の前で言うな!」

 

 

 

 

 

 

「ふぁ、おはよう」

 

「おはよう、今日もフォルテちゃんが完敗で15連敗」

 

食堂近くにある掲示板には朝早くからリアルタイムで戦績が表示され、大半の人は驚きを表すが一部の人にとってはメンタルを削る要因でもあった。

 

「・・・そろそろ生徒会長変わって貰うかな」

 

「たっちゃんがそんな弱気になるなんて」

 

この人もその1人だ。IS学園で生徒では最強の会長でさえこの有様。

 

「黛ちゃんもやれば分かるのよ。勝てそうで勝てない、この複雑な感じに」

 

「でも、いつも元気になってるような」

 

「それは勉強で弄ってるからね。あとは、色々とやってもらうから」

 

「ほうほう、その色々とは」

 

何処にしまっているのか分からないメモ帳とペンを握り、興味津々に聞いている。

 

「一緒に映画みたり、テレビ見たりマッサージしてもらって、後はご飯も作ってくれるから」

 

「なるほど、つもりデキていると」

 

「いやいや、違うわよ。それと朝も起こしに来るかな」

 

「完全に主夫と」

 

ネタがどんどん出てくる人が多い今年は新聞部も大忙しだった。副部長の黛も必死に、より生徒が興味を持ちそうな話を引き出している。

 

 

 

 

「おはよー」

 

「あ、上条君だ。ねぇねぇ、この記事って本当なの?」

 

教室は何故か同じような雑誌を持っているクラスメイトに囲まれ。見せてもらう。無駄にデカデカと天才歌手に交際発覚と書いてある。他のページをめくっても同じ内容ばかりで、写真の角度を見る限り遠くから望遠レンズで撮っているようにも見える。

 

「なんだこれか。ただの友達だよ」

 

「て、手を繋いでるのに!?」

 

「え?手を繋ぐのって普通じゃないのか?」

 

普通じゃないよ。所々で呟くが本人はいたって真剣に答えているせいで言い聞かせても意味がなかった。しかし、ここは女子校。年頃の女の子がわらわらと群がり時間ギリギリまで質問ぜめの嵐にあった。

 

 

「HRを始める。席につけ」

 

時間も近づき、織斑先生が入って来るとあっという間に席に戻り静かに座っていた。しかし、これからが一番疲れ始めるのに体力を浪費していた。

 

「上条、この問題を解いてみろ」

 

「次の問だが、男子3人。1つずつ答えろ」

 

「・・・であるから。この変化により物質の構成が変わる。これに類似したものも他にあるが、そこの君分かるか?」

 

「戦闘において遠距離、近距離それぞれ重要な事なのは分かっていただいたと思います。では、1人ずつ遠距離からの対処について一言」

 

「全部撃ち落とします」

 

 

 

授業中は教師から集中攻撃を受け、少ない休みをクラス中の女子から質問をされてその対処で時間を取られる。これの繰り返しが続き昼には疲れ切っていた。

 

 

食堂でゆっくり食事が出来るか考えていた中、声を掛けてきたほののんさんと一緒にいた簪と席に座り何とか休めていた。

 

「俺は休み時間すら休めないのか」

 

「しょうがないと思うよ。トップアイドルのスキャンダルだから」

 

「でも、かんちゃんも聞いてるよね」

 

確認すると顔をわざと背けて視線をあせてくれない。そんなに恥ずかしい事でないのに。

 

「あ、お姉ちゃんがこれを見せてって」

 

「またいたずらか。あの人、自分で仕事増やしてるだろ」

 

いつものいたずら企画かと思って目を通すと案外まともな内容に驚いてしまった。

 

「今の専用機持ちの人数は・・・」

 

「3年が1人、2年は2人で1年が・・・10人の計14人で順列を決める」

 

「へぇ面白そうだな。・・・その前にあるテストを終えないとやりそうにないか」

 

 

 

 

今年の専用機を持つ人が多い事を受け、順位を付けて実力を分けてはと言う意見が出た。生徒会としてもこれからの経験の向上をしたいと思い。総当たり戦かトーナメント形式で決定するつもりなので、各自準備を整えて下さい。ちなみに棄権と途中退場の場合は最下位になります。

 

「最後だけ物騒だな。まあ、まずそんな事はないから書いてあるんだろ」

 

勝負事なら勝ちにこだわりたいところだが、何処か価値観が変わってきている気がしてならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「これでHRを終わりにする。上条、お前は今日も補修だ。この教室でやる事になっているから最後の戸締りは頼んだぞ」

 

「はい、分かりました」

 

長く1日も終わり、いつも通りの補修を言い渡された。最初こそ珍しい目で見られていたが時間が経てば今ではみんな慣れてしまっていた。

 

「かみやんまた明日」

 

「おお、また明日」

 

とみんなと見送った後、担当の先生も来てマンツーマンで指導してもらうが授業中と違って時間制限も厳しくないお陰で結構ラフに話しかけてくる。

 

「君はまた理解出来ないのか」

 

「文句なら馬鹿を難関校に行かせる、政府の人間に言ってください」

 

「まあ、君の場合は特殊だからな。しかし、出来ない生徒を指導するのも面白い。基礎と応用問題まで押し込んで予習までやってもらうとしよう」

 

「やめてーこれ以上やったら夢に出る!」

 

「ふふ、現実と夢の中でばっちり勉強できるな」

 

アンバランスで勉強面は普通程度にしか出来ない人間はそういない為、いたずらの対象にもなっているが本人は気づかない。

 

「それそろ時間か。宿題としてこの板書の答えを明日の朝、職員室に見せに来るんだ」

 

そして、置き土産に解けないであろう課題を1つ残していく。もちろん、1人で解ける訳もなく度々空欄のまま出すこともよくある光景だった。

 

 

「どう考えても高校のレベルじゃない。って言える立場でも無いか。教科書と睨めっこして過ごす時間なんて、前は無いよな」

 

精々書いたノートを見返すか、教科ごとの問題集を見てなんとかしていた時と違って内容の進みと範囲が広く要点を絞って効率的にやっていかないとキリがなくなっていた。

 

「ただいま〜今日も熱心ね」

 

「面白半分でこの難題をやらされるんですか」

 

「まあまあ、君ほど頭の悪い子もいないから面白いのよ」

 

普通こんな所に馬鹿は来れないしな。聞いた話じゃ、1日10時間とか当たり前のようにやってるって聞いた時は耳を疑ったな。

 

 

「ダメだ、全く分からない」

 

どんなに考えてもこれ以上進みそうにない。ノートに一言、分からないと書き込んで閉じた。

 

「頭がパンクする。授業のペースについて行けない」

 

「このくらいで根をあげるようじゃ、卒業も怪しいわよ?」

 

「一般教科でもお手上げに近いってのに、専門教科が多過ぎる。ギリギリでもいいや」

 

頭に限って言えば自分の限界は言わなくても分かる。ギリギリでも何とか卒業が出来ればと最初から割り切っていた。

 

「おーい、暇だから来た」

 

「あのね、ここは暇つぶしの場所じゃないのよ」

 

「いいだろ、出入りは自由なんだし」

 

今年がイレギュラーなだけで女子寮の中は1人を除いて何処に行こうと自由になっている。その1人が入れない部屋も1つか2つ程度で、常識的に男が入るような場所ではない。

 

「で、何見てるんだ。この文字ばっかりの紙切れ」

 

「これは、アラスカ条約の内容ね。まだテスト内容に含まれる時期だったかしら?」

 

「それがまだ半分しか覚えられなくて。織斑先生から全部覚えておけ。って言われて未だにこのザマです」

 

「ざっくりでいいのよ。こんなの」

 

「そのざっくりの理解が」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、これで強くなってるのか?」

 

「ええ、なってるわよ。私も初めはあなたと同じ、変化に気付けなかった。けど、近いうちに分かるわ」

 

この女が初めて現れてから次の日。約束どうり夜の屋上に現れた女に要求したのは絶対的な力だった。今まで自分の上など千冬姉以外に知らない秋十にとっては邪魔な存在が。才能で圧倒的に優れた自分を、当然のようにあしらい上に立つ人間に、本来居るべき立ち位置を分からせる為の力が必要だった。

 

「まあ、無理に使用しない事は言っておくわ。素人が扱える程簡単なものじゃないから」

 

「対価は何だ?何もないなんて事は無いだろう」

 

一方的に願いを叶えるなんて事はまずあり得ない。ギブアンドテイク、それが普通だ。

 

「対価は私が決める。でも安心して。あなたの目的が果たされるまでは 、何も要求しないから」

 

並の男なら惚れるであろう笑みを浮かべて女は消えた。だが、残された秋十はギリッと奥歯を噛み締める。単純に悔しさを表していたからだ。

 

約束の日の夜。時間が指定されない為、就寝時間後に部屋を抜け出して屋上に現れた。

 

「おい、何処にいる。いるんだろ」

 

「荒い呼び出しね。まあ、時間も指定してないからいいわ」

 

薄暗い屋上、誰もいないはずのが前にあった少女が手すりに座っていた。制服ではない、明らかに部外者だが気にしない。秋十は驚きもせずにゆっくりと近づく。

 

「で、あなたは何が願いなのかしら?」

 

「願いはたった1つ」

 

言葉ではなく金属音が響く。そこにはブレードと西洋剣がぶつかり合い、つばぜり合いになる。

 

「そう、なら悩まなくて助かるわね」

 

秋十は本気には至らないがそれでも優位な体勢で押さえ込むが、相手の女は自分の身長と同じくらいの大きさの剣を扱い、涼しい顔で受ける

 

「噂どうり剣道は、良い腕ね」

 

「くっ」

 

自分の間合いで押し切れない事に悔むが、それ以上に返してくる腕力だ。最初の一撃ですらピクリとも動かなかったのだ。

 

「はい、お終い」

 

軽く振り払うと、手に持っていた剣は何処かに行き手ぶらになった。

 

「で、お願いは何かしら?」

 

「今ので分かってるだろ。俺が求めるのは力だ。立ち向かう人間をねじ伏せる絶対の力だ」

 

大雑把で具体性のない願いだが、本気だった。その為に今までしなかった努力をしている。それでも、届かない。男性で専用機と言う特権を持っている選ばれた人間。しかし、入ってみればこのざまだ。

 

「ふーん。まあ、強い男もいいじゃない。いいわ」

 

服の中から小さなナイフを取り出す。一瞬構えるが

 

「これは契約。一滴だけ血を貰うわ」

 

怪しいと思ったが血の一滴で勝てるならいいと腕を出す。

 

「素直ね」

 

軽く傷を入れて一滴だけ血を小瓶に入れ、姿を消した。

 

 

「なんで、俺が負ける。なんで、俺だけが受け入れられないだ」

 

と無意識のうちに掴んでいた手すりがぐにゃりと変形していた。今まで形が変形することなどなかったものが一瞬で

 

「はは、ははは。これだ、これだよ。僕が欲しかったのは。まだみなぎってくる、まだ底がわからないがこれくらい使いこなしてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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