同じく二回戦、さっと終わった上条とは別に行われていた、織斑秋十と更識簪の試合。射撃のが主の簪と近接戦闘のみの秋十では勝敗は決まっていた。それ以前に遠近両方の戦闘にくわえ経験値もあり常に冷静であり負ける要素はなかった。しかし、
「おっと。遅い遅い」
「くっ!」
今までとは桁違いに化ける秋十に手間取った。
つい数週間前はここまで動けていなかった。それにそんな短期間の訓練をしてもここまでの動きはできない。それに
「移動速度が上条君と同じ、それにパワーもほぼ同じくらいなんて」
武器で受け止め切れない強さで何度も体勢を崩し、明らかにおかしいと考えていた。
「なんだ、前まで散々に見下して結局は口だけじゃないか?」
「見下してない。ただ、あなたが気に入らない」
何も苦労したことの無い奴が初めから同じ立場にいる事に
「強さで証明できない時点で弱者同然」
「なら、弱者の一夏君に負けたら君は何?」
「今は違う。僕は最強だ」
間合いは数十mは離れているが機体に何か衝撃が走る。対する秋十はブレードを振っただけだった。
「これは斬撃?!」
「これくらい出来ないで織斑の名を語れるか?」
威力も速度も一夏や千冬とは全く比べ物にならない。振り切ってからのタイムラグが一切なく
「もう負けだよ、なり損ない」
誰かに似た動きだった。少し視線を外した間に間合いを詰め、2、3とブレードで切りつけられ、最後には蹴られて地面に落とされて終わる。
「代表候補なんて誰もなれるのか?お前の代わりになってやるよ」
と周りには分からないように言い捨てて戻る秋十。その後ろには大きく織斑秋十の勝利と電光掲示板に表示され、無性に腹が立った。自分が強い時だけでかく、追い詰められると何かとケチをつける偉そうな性格が何より嫌いだ。だが、この程度で相手に当たるほど人間ではない。
「・・・まだ試合はある」
悔しさに涙が出てくる。しかし、ここで鳴いていても結果は変わらない。涙を拭き取り、次の試合の準備に入った。
準決勝になり残ったのは楯無、上条、ダリル、そして秋十だった。ここまで秋十が残った事に少なからず驚く人もいたが、驚かない人もいる。
その初戦が2年の生徒会長と1年の問題児だった。
「久しぶりね。こうやって向き合うのは」
「そうですか?部屋で何度も」
「試合での話よ」
と話している間にカウントダウンが始まった。もう少し間を開けないのか。まだ準備が終わって・・・
『試合開始!』
「・・・不幸だ」
叫ぶもその声を聞くわけもなく、自分のいる場所を2つの線が通り過ぎる。
「ビット?いつから使って」
「こっちも忘れたら困るわ」
ほぼ真後ろで水蒸気爆発で前に押し出され、真正面からはガンランスを撃ちながら突っ込んでくる。
真正面だけなら剣で捌くか盾でも出して塞ぐ。しかし、すでに両サイドに移動しているビットがある為、それは出来ない。
「やるしかないか」
まずは武器を選んで、取り出せる状態に。あとは間合いに入った時を待つ。まあ、爆風で今も動き続けているせいで止まる事なく移動中の為距離はあっという間に迫る。
「最初のアタックはもらうわ」
「なら防ぐまで」
やっぱり無理と考えて、無難に剣を取り出し受け流すが予想どうり両サイドから射撃に合い1つは避け1つは弾き返したが、妙な違和感が残った。
「うお!」
流した後に間を開けた途端に物凄く嫌な予感がしとっさにスライドして逃げると辺り一面が爆発。いつもの水の障壁がないからと思ったらこの為のようだった。
「さあ、まだこれからよ」
とっさにそのバク転みたいに宙返りをして通り過ぎるレーザ。いつの間にか移動したビットにやや驚きながら、距離を離してもむしろ詰められる。
「やば!」
ビットのレーザーは全て追い掛けてくる。更にガンランスで逃げ場を無くし選択肢を減らしていく。それでも、1つとして上条を捉らえる物はない。
表面上は楽しむような表情になっているが、内側は焦りと痛みで占められている。ビット操作にしても試合から今になるまでずっと行使して、
「これでも捉えられないと、なるもうあれ以外に無いわね。1つくらい当たってもいいのに」
標的となっている本人は顔は必死になっても1つ1つを確実に処理していく。あと少しで当たる。と言う状態が1分程続いている。
「おっと、危ね」
当の本人も結構忙しなく動いている為、中々攻められずに困っていた。周りには追加で増えているビットが4機と不意打ちの爆発で何度も危機にあっている。そんな中動きが一瞬だけ単調になるのが見えた途端、頭部を狙った狙撃をわざと大きく避ける。
「貰った」
少し口の端が釣り上がる。近づけば反撃を受ける。それは了承済みなので、ライフルに構えなおし撃ち抜く。見事に命中して、ついやったと内心喜んでしまった。
「ふぅ」
聞き慣れた声にとっさに障壁を最大で張る。しかし、軽々と突き破ったパンチに揺さぶられ振り返る隙も与えず、タックルで突っ込んで自由に動ける時間も与えない。
「でも、この距離で避けられる?」
自滅同然の範囲爆発を起こそうと手を構え、ナノマシンを分散させる。対して上条は2本の短剣取り出し、左手に持った剣を後ろに下がりながら右側に飛ばす。
「これで1回目ね」
指を鳴らした瞬間、上条も巻き込んで爆発が起こる。その一撃で2割以上の
「あれはさっき投げたはずじゃ」
視界の端に回転しながら爆心地に飛んでいく剣を見てハっとする。あの相手に1番やっていけないのは誰からも見えない状況にすることだ。
「よく考えたら、1番危ないじゃん?!」
「遅いです。これで」
姿は見えないが黒煙の中から2本の短剣が明らかに当たらない方向へと投げられる。だが、これはまだ戻ってくると理解している。先程と同じことになるだろうと、自分を囲うようにナノマシンの障壁を展開し新たに仕入れたシールドを構え、更にガンランスも構える。
「切れないように」
先程投げた短剣の間に日本刀を振るう動作でワイヤーを絡ませ手前に引き背後から2本を引き戻すが、水の障壁に止められてしまう。
「まだ準備が足りないかしら?」
「もう十分だ。こっから先は・・」
ガチっ金属同士が重なった音に続け真後ろで爆発が起こった。爆発がだが、障壁で守られている身でそんな程度では壊れることはないはすだった。しかし、突然浮遊感に襲われ、重力に引かれ真っ逆さまに地面に落ちる。
「え、ちょっとなんで?!」
いつの間にかスラスターが破壊。空中に留まることも出来ず、移動にもかなり負担が増えてしまった。それよりも1番気がかりだったのは強固に固めた守りを破った爆発だ。
そんな矢先。何を考えたのか、宙に止まっていた上条もスラスターを切り真っ直ぐに地面に落ちてくる。まるで隕石のようだったが、衝撃はそこまで出なかったのか多少周りにヒビが入る程度で収まっていた。
「俺の得意分野でやってやる」
一歩踏み込む事に地面がえぐれる。距離にして約20m以上もの間を走って詰める上条に対して楯無は一切動揺もせず、ビットとガンランスの一切射撃で応戦する。空中と違い360度の状態なら避けるのは比較的簡単にいくが、180度の平面だけでしか動けない中で距離を詰めるのは至難の技だ。それも攻めたところで盾と障壁の二段構えで守りを固めている。この戦い方は初めての楯無だが、武器もなしに接近できるような相手ではない。
「横からと更に追い込むように前と後ろから」
当たる寸前でしゃがみ、横にステップをして前から来たかわしながら追ってくるレーザーをフェイントを入れながら、両手足に装甲を展開して敵のである楯無だけを見ながら少しずつ距離を縮める。
「まだよ」
いつまでも同じ場所に立ち止まる事なく、残った予備のスラスターで地面すれすれを平行移動して常に一定の距離を取る。その間も、精確な射撃が続くがどれも掠ることもなかった。
「あんたが狙いやすいようにこっちも避けるのには苦労しないんだ」
「こんな時に、口調変わってない?」
「気のせいです。気のせい」
距離を縮められる機会を作るため両手を合わせ握り締めると一気に振り下ろし、それと同時に前傾姿勢にして一直線に飛び出す。
「え、きゃあ!」
切り変えして反対に動く前に自分の足元まで崩れ剝きだした地面に足に引っかかり意識が逸れてしまった。その間に砲弾のようにずっとんで目の前に来ていた。
「これで俺の勝ちです」
「いえ、私の勝利よ」
何の前触れもなく一瞬にして機体が止まる。いや、手はある程度動かせるが足元が全く動かない。まるで沼に沈み込んだように。
「これが私の
「・・・ふっ」
聞き間違えなのか笑ったような声が聞こえてきた。だが、それも視界に入ってくる鉄塊で遮られる。機体ごと大きく弾き飛ばされ、続いて視界にに入ったのは取り間違えただろうライフルを横に投げ捨てたところだった。
「完全に終わるまで勝ったか負けたのかは分からない」
投げ捨てたライフルが勝手に射撃を行い楯無を狙う。
「奥の手ならこっちにもあります。時間は20秒もある」
完全に動けなくしたはずの機体に身を包む上条に完全に意表を突かれた。
「これは警告だ、誰も触れていない物に気をつけろ」
何の変哲も無いライフルがまるでビットのように意志を持って動き始める。
「これは注意だ。小さな物ほど大きな成果を上げる」
楯無の動く前に自分の間合いに近づくと障壁に両手を当て強引にこじ開けるように溶断ブレードを展開。そして、楯無の周りは爆発に覆われた。
「あ、これでも行ける。無理でもやってみるもんだ。おっ」
爆煙が揺らいだと見えた時には楯無さんのガンランスが。それも全力で投げたのだろうか若干起動が上向きに。しかし、ライフルが何度も射撃にあったことによって起動もずれ勢いもなくなり地面に落とされた。
「残り15秒」
煙も晴れ、姿が見えるようになった両者はやる事が決まっていた。真正面からぶつかり合いでの殴り合い。
最初は拳同士のように見えたが、当たる寸前で楯無は手前に引いて上条の体勢を崩す。
「はぁ!」
完全に前のめりになった所で膝蹴り、そし手刀を本気で首に落とす。動作には全く無駄も躊躇もなくやったもの。
「防ぐのね」
それを膝蹴りを手のひらで、手刀を落とされる前に突き出した腕を引いてガード。それで終わる訳もなく、足と手を掴むと浮いている状態から無理矢理腰をひねって地面に叩きつける。
「が、っはぁはぁ・・・女の子にやる事じゃないわ」
「昔からのこの癖で治せないんだ」
胴体を掴み真上に投げ飛ばす。残りは5秒、帰ってくる頃にはアラームが鳴り響くはすだ。
「まだ時間は来てない・・・」
周りの湿度が急上昇し、真上を見ると勝利を確信した表情の楯無がこちらを見ていた。それに答えるように上条も笑顔でISのシールドを切り、意を決していた。
「クリア・パッション!」
その後、アリーナの上空以外全てに火が覆われ余りの火力に観客席を守るバリアに亀裂が入った。そして、ブザーが鳴り響き勝者の名が告げられる。
『タイムアップ。準決勝、30分の死闘を制したのは・・・』
スラスターを壊され上がることの出来ない楯無は綺麗に受け身をとって何とか着地に成功したが、信じられない光景を見た。立ち込める煙の影に映った後輩の姿を
『上条当麻君です!』
まるでその声に答えるように煙が瞬く間に晴れるとさっき見た位置よりもずれた所で、体中から出血しながら立つ姿があった。
「思ったより効いたな」