IS学園の異端児   作:生存者

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第81話

 

 

 

 

 

 

「棄権だと?本気で言ったのか」

 

「あくまでメールのやり取りだけですが、冗談で言う事はないと思います」

 

姿を消した本人からの言葉に今回のイベントを仕切っている会長含め責任者は驚きを隠せずにいた。

 

「だとして、まだ試合が終わってから20分ほどしか経っていないこの時間でか」

 

決勝の、しかも1番の見ものである試合を放棄して何処かに行ったきり。棄権の詳細は一切告げず、連絡は全く取れない。

 

「仕方ない棄権とする。山田先生通達を」

 

「分かりました。でも、いいんですか?」

 

「自分で決めた事だ。今更撤回するはずもない」

いつも通りの有無を言わせない視線ですぐに連絡をさせる。そんな中、千冬の脳裏に数年前の忌々しい事件が浮かび上がり。今の状況がそれと似ている。

 

「これは当事者にしか分かないか」

 

規模は違うが決勝で棄権。度々問題を起こすがお遊びでこんな事をする生徒ではない。裏で手を引いている人間が居るとしか考えられなかった。しかし、あの亡国企業がない今。誰が狙うのか見当もつかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『決勝が中止?!』

 

山田先生の迅速な対応で掲げられた言葉はアリーナにいる全ての人間を動揺させた。自身も驚きを隠せないのか声にはっきりとは出ていない。

 

「騒がしいな、何があったんだ?」

 

「決勝が中止になっんだよ一夏!」

 

動揺は一般の生徒から選手として出た専用機を持った代表候補生まで広がている。しかし

 

「あ、中止になったんだ」

 

「少しは驚かないの?」

 

「はぁ、こればかりはしょうがないわよ。一夏も経験があるし」

 

第2回モンド・グロッソ、ISの世界大会で決勝戦を誘拐された事で千冬姉の優勝を逃しまった経験がある一夏は驚きはしなかった。全く驚かないとまでは行くなくてもさほど気にしていない。

 

「にしても、お兄ちゃんが決勝を放り出すのか」

 

「あいつが棄権するなんて・・・でも理由が」

 

思い返しても急に投げ出して逃げる。と言う事もなく、むしろ最後まできっちりやる。そんなイメージしか浮かばない。

それに、今までどんな生き方をしたのかを全て知ってる人もほとんどいないからか、予想が付かない。しかし、ここに1人だけ分かる人間がいた。

 

「あ、お兄ちゃん。電話掛けてみて」

 

「出るか?まあ、試してみるしかない」

 

ふと、思いついマドカは一夏に頼んでみる。偶然にも持ち歩いていたのでその場で電話を掛けてみる。だが、返ってくるのは留守電のメッセージだけだ。

 

「出ないか。もう一回」

 

これでダメなら最悪、束さんに頼むか待つの2つが残ってしまうが数秒もすると

 

『あ、一夏。どうした?』

 

いつも平和そうな声が聞こえてきた。

 

「どうしたじゃない。なんで決勝の棄権なんかしたんだ?」

 

『あ〜外せない用事が出来たからだ』

 

「用事なら前々から把握してるだろ」

 

男性適正者である一夏達は特殊な立ち位置にいる為、外せない用事と言われると何かしら重要な要件と考える事が多い。

 

『残念ながら急きょ決まってな。棄権しないと「てめえ、殺されてえのか!俺の邪魔をしやがって!!』

 

本人とはかけ離れた声に何事かと考えるも

 

「すまん、取り込み中みたいだな」

 

『いや、ちょっと待ってて「1番良いところで!」うるさい!』

 

電話越しでも分かる程鈍い音と壁にぶつかったような物音。それでもうめき声には程遠い殺意のこもった言葉が。

 

『色々あって今日は帰れそうにないから。「この野郎!!!」げ、まだ元気じゃねえか』

 

それから1分程度、ぐしゃりと殴りつけたような音が何度も何度も続いた。電話の向こう側で何が起こっているかは想像したくないが、一方的な暴力を受けているのは目に見えていた。

 

『罰則受ける覚悟は出来てるから。無断外出してるのだけ伝えてくれないか?』

 

「分かった。こっちで説明しておくから必ず戻れよ」

 

 

 

 

 

「またやり過ぎた」

 

床に座り込みがっくしと肩を落とす。着替えてきた私服はほこりと血で汚れ、部屋の中は悲惨な状態になっていた。元の原因は床に転がっている大男の行動のせいでもあるが、自分を抑えられ無かったのも要因だろう。

 

「当麻さん」

 

その様子を見ている詩菜は悲しい表情を浮かべる。助けに来たと現れたのは素直に嬉しいと思ったが、また迷惑を掛けてしまったことを後悔していた。

 

「ああ、母さんか。無事で良かった」

 

安心したと顔に現れたのもつかの間。周りで見ていた客を見て駆けつけた警備員に取り押さえられ、連れていかける。しかし、警備員がふと倒れている男の顔を見た途端に驚きの声を上げる。

 

「お、おい。こいつ脱走して指名手配されてる・・・」

 

「急げ、通報しろ!」

 

怯えながらも的確に動いた結果、通路を挟ぐ程に出来た人だかりもなくなり騒ぎは少なく収まるが。簡単に帰れるわけもなく事務所まで保護者同伴でお話に行く事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どう?生徒で最強になった気分は』

 

「ふざけるな、不戦勝だろ!」

 

怒りのあまり声を上げならが電話を取る。しかし、興味がなさそうに返す相手により頭に血がのぼる。この試合で倒すはずの標的が棄権をした事で1位になったがそれだけで満足出来なかった。

 

『あのね、誰も勝負で勝たせるとは言ってない。あなたが勘違いしてるだけ、秀才なんて言われても所詮ただの学生ね』

 

「じゃあ、あいつが棄権したのは」

 

『さあ、勝負するのが嫌になって逃げたんじゃないの?』

 

わざとらしい態度に犯人が誰なのか瞬時に把握した。しかし、どこの誰かもわからない。一度しか会ったことのない人間に八つ当たりした所で軽くあしらわれて終わるだろう。

 

『それに過ぎた事を一々言われてもねー。あとはあなたから代償を貰うだけ』

 

「ふざけた事を言ってんな」

 

『怖い怖い。あ、一応一位になった褒美も送ってあげたらからそれで楽しんでちょうだい』

 

一方的に切られたことに苛立ちそばにあったロッカーを殴りつける。

 

「・・・どいつもこいつ馬鹿にしやがって」

 

敗北という文字を知らず才能に恵まれた秋十は不安定な状態だった。目標とする姉とその友人でもあるISの生みの親である人の繋がりを持ち。思い通りに動くその妹も手に入れ、そればかりか世界で3人の選ばれた人間にもなる。そんな地位を中学生で手に入れストレスどころか悩む事すらない生活が続く。しかし、その数ヶ月後に全てが崩れた。

 

「・・・褒美か、受け取ってやろう」

 

使えるものは何でも使う。それが頭に残っていた秋十は置かれているであろう場所に歩き出す。正確な位置すら言ってないが今いる場所からして最も近い場所にあるのは間違いない。

 

「やっぱりここか」

 

自分の使用しているロッカーを開けると数分前までなかった紙袋が置かれ。中身を確認するとUSBメモリーだけが入れてあった。映像か何らかのデータがあるのか分からないが、ただただ遊ばれているような感覚に苛立ちが溜まっていた。

 

 

 

 

 

決勝の中止により早く終わり解散した生徒達はそれぞれ部屋に戻るか部活に行くなど休日を過ごし始めた。その中で一夏は

 

 

「なあ、マドカ。上条の家で生活してたよな」

 

「そうだよ、2年前の年の瀬くらいから居候させてもらってた」

 

誰かのお陰で仕事もなくなり隠れ家として使っていた場所にもいられなくなった時に、元上司だったスコールからの勧られたのがきっかけだ。

 

 

「本当なら4月には来るつもりだったのに、荷物の整理と用事で遅れてタイミングを逃しちゃった」

 

「用事?学校でも行ってたのか?」

 

「バイト先に挨拶に行ってたの。勉強は教科書とか借りて分かったけど兄さんの頭の悪さは驚いた」

 

「兄さん?それにバイトも行ってのか?」

 

気になる言葉が次々に流れて一夏は追いつけなくなっていた。

 

「本名だと言いづらいからそれで呼んでる」

 

「まあ、苗字の方が呼びやすいけど。家の中なら仕方ないか」

 

マドカも一時期下の名前で呼んでいた時もあったが、誰かの妹の影響を受けて呼び方が変わっていた。

 

 

「一夏、今日は何もしないんだ」

 

「鈴の方こそアリーナに行ったんじゃないのか?」

 

「それが、今日の試合に出た人はこれから1週間使用禁止!なんて、言われて帰ってきたのよ」

 

短い期間に代表候補生複数人の使用が集中し、一般生徒の使用申請が9割近く通らない状況になった為、異例の対応が下されていた。

 

「アリーナも共同で使用するし仕方ないだろ。ただでさえ予約だって取れないし使える時間も少ない、このくらい我慢するのが普通だ」

 

「分かってるわよそんなの。で、あんたの話の続き聞かしてよ」

 

「なんでそんなに聞きたがるの・・・話すの大変なのに」

 

「いや、あの人外がどんな生活してたのかみんな気になってるわよ。あんた以外にいるのは玲奈だけであいつは話そうともしないのよ」

 

何度も教えてとクラスの友達から言い寄られていたが全て断っていたと偶々聞いていたのだ。本人は単に話したくないだけではなく気に入らないなど複雑な気持ちがあった。

 

「1番近くにいたあんたなら色々と知ってるでしょ」

 

「いいですよ。そここで言った方があとで何度も聞かれるより楽になるし」

 

「で、とんなやつだったのよ。今みたいにすごいやつなの?」

 

その質問に首を振るマドカ。そして、ありのままの言葉を出した。

 

「普通。何処にでもいる学生だった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿が遅れました。仕事が立て込んでネタが浮かぶのに時間が掛かりました。
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