「
早朝から新幹線で京都までの移動の為乗車した一行。流石はIS学園なのか駅のホームまでの移動中すれ違う人のほとんどが驚いた表情だった。乗車してからは特にやる事がもなく徹夜で作業していた事もありほとんど寝ていた。
「では、ここから班ごとに自由行動になります」
「夕方までには集合地点に来ること。分かったな、では解散!」
は〜い。と元気な返事をすると決められた班に分かれ京都の街を散策していく。そして残った男子3人は仲良く一緒に周る訳もなく、撮影係として駆り出され、楽しんでいるクラスメイトに写真撮って!と次々と呼び出される。
「一夏君、こっちも撮って!」
「秋十君こっちもお願い!」
解散してからしばらく立ちようやく自由時間にありつけたが、そうのんびり歩いている暇はない。他の人より早く移動を繰り返していた。
「信号のある交差点はだめ、無い場所は余計に危ないと。これじゃまともに進めるかも怪しくなってきた」
交通事故をすでに2回ほど避けて無傷で次の目的地まで到着。学生には人気があるようで主に学問の神様が祭られているような場所だ。周りを見渡すとほとんどが学生服を着ている。御参りからお守りを買うかおみくじを引いて帰る人がほとんどの中
「げ、また大凶か。自慢が運のなさだなて笑えないか」
御参りの列には並ばず酷くいつも通りのおみくじの結果に苦笑いを浮かべてる。内容も悪い物ばかりで落ち込むことはなくても溜め息を吐きたい気持ちだ。
「人の口車に乗るな、願いは叶わず、命より大切なものを失う・・・笑えない内容だな。つーか最後の文、何度も起こってるぞ。これ以上の不運なんてごめんだ」
一通り読み終えると財布の仕舞った。よく正月のテレビなどでは神社に結びつけておく事で運気が多少上がるなど、迷信のような話を聞くがその類の話に限っては全く興味がなかった。
世の中には運の良い人間が居るだろうが上条の知っている限りそんな人間は神の子の一端を宿している聖人だけだ。
100あるくじの中から1つしかない当たりを簡単に当てられる聖人とは違い、100の中にあるたった1つの外れを簡単に引くような不幸の持ち主であるお陰で自分や周りの人間にまで牙を向く。しかし、はた迷惑な不幸体質のお陰で普段の生活では救えない人にも手を差し伸べられる機会が出来ていた。
「あ、乙姫にもお守り買って行くか」
念の為右手では触れずにいくつか選びながら会計を済ませた。
「おい、見ろよあれIS学園のやつだろ。しかも、疫病神じゃねえか」
「なんだ男かよ、つまらない。他のところ行って探そう」
私服で来ていればこんな人混みでも馴染めるだろう。しかし、制服で来ているせいで周りからはかなり注目されてしまった。良くも悪くも織斑兄弟と同じくらいに知られているせいで嫉妬などの感情を剥き出しにする人も少なくなかった。
「はい、毎度。気をつけて行きな」
お参りにキーホルダーとつい余分に買ってしまう。これだけで厄除けもして頭が良くなるなら苦労しないなとつい考えてしまった。一応用事は済んだので境内を軽く周り写真撮影を楽しんでいたのだが、騒がしくなり始め興味本位で近づいた。
「喧嘩で名を挙げているような君がここに何の様ですか」
「来年の受験で全員が志望校に合格出来るように祈願しに来た。お前こそ、大そうな頭を持ってる割にわざわざ神頼みか」
「我が校で受験を控えている。同志が無事に合格出来るように私も来た。これで十分かな?」
ぎすぎすした空気が漂い見物人が多く集まってくる。まあ、お互いに大人数の同級生を連れていれば自然と注目されていた。かたや顔の切り傷が目立つ青年と整った顔立ちで世に言う美少年。この様子を興味本意で見に来た上条は離れたい衝動に駆られ後悔した。
「!・・・なんであいつらここにいるだ」
割って入ってこれ以上騒がしくなるのを止めるか、このままにしてこの歪み合いを続けさせるか。2人の事をよく知っているせいで余計に考え込む。
そんな悩んでいる姿を傍で見ていた生徒の1人が発見するとすぐに先頭まで慌てて耳打ちする。
「・・・そうか、さっさと用事を済ませて行くぞ」
「どうした?何か言いたい事がありそうだが」
「色々と言いたいがお前と話すために来たわけじゃない西片」
「こっちこそ、新堂君のような凡人に興味はない。せいぜいその頭で合格出来る事を願ってるよ」
何事も無かったように離れて行く2人を見届けるとホッとした。
「・・・はあ、俺が原因とは言えまた面倒な事が起こった。あと2日か何が起こるんだよ・・・ん?」
以前何度も感じた感覚を覚え振り返った。背後に不吉な笑みを浮かべた男が視界に入ったのとほぼ同時に乾いた音が数度響き渡る。
「では、皆さん時間になったらモノレールまで集合して下さいね」
『はーい!』
集合場所である清水寺まで到着しこの日最後の散策を楽しんでいた。すでに何時間も歩き回っているはすだが、衰えるどころかより生き生きとした表情だ。
「おう、一夏。お疲れ」
「お前大丈夫か?なんかすっごく疲れてるように見えるけど」
「ちょっと顔つきの悪い人と何度かお話をした程度だ。そんな心配するような事でもない」
無理して言ってる表情ではないがいつもの補修の終わりと同じような疲れた顔になっていた。些細な問題も何度も続けて片付けていれば疲れるだろう。
「お、いい景色だ。流石、清水の舞台」
「ここから落ちても生存率は約9割だからって落ちるなよ。次からは柵越しに見ることになる」
「言うな!・・・こんな時に限って不幸体質が恨めしいな。まあ十分堪能したし、あとはお前の家族写真を撮って終わりだな」
若干不機嫌さをあらわにした秋十を置いて、まだ近くにいたマドカに同じ事を考えていた一夏も加わった。ちょうど千冬の写真を撮ろうとしたタイミングになった為、撮影を代わり4人を並ばせていた。
「やっぱり目立つな。さっさと済ませるぞ、間違って後ろに落ちるなよ」
「お前が言うな」
「あともっと寄れ。笑顔がぎこちない」
「いいから撮れよ」
パシャッ。シャッターが切れると満足そうに笑みを浮かべた。多少文句が帰って来たがいい絵が撮れたと喜んでいた。そして一歩踏み込んだ瞬間、ビル4階相当の高さで寒気と浮遊感に襲われた。
今日最後の散策を終えた集合時間が近づくにつれてモノレールの駅に続々と女子達が集合し始め予定時間より前に出発した。
「全員揃ったな。貸切とは言え節度を持って過ごすように」
「部屋割り通りに荷物はすでに届いているので、時間までは部屋で待機してくださいね。他校の生徒も一緒になるかもしれないので移動中は静かにお願いします」
ならここでは多少騒いでもいいのか。移動時間は20分程度、女子達のように特に話す事もない男子には長い休憩を過ごすような感覚だ。
「やっと休める。ほとんど呼び出しで動き回ったせいでゆっくり出来なかった。途中でシャル達にも追い回されて参ったよ」
「一夏が余計な事でも言ったんだろ。いてて・・・」
座席に深く腰掛けた上条の背中に痛みが走る。未だに一夏達の写真を撮ったあとに足元が崩れ落ち背中から地面に叩きつけられた衝撃が残っていた。
「よく背中から落ちて軽傷で済んだよな。普通なら肋骨が折れてもおかしくないのに」
「そのお陰でゆったり休む事も出来ねえよ。背中をつけてる間ずっと痛みが走って休憩どころじゃない」
一切表情には出していないがさりげない動作で急に動きが鈍くなったりと無理にくつろいでいるボロが出て、秋十と一夏からは着くまで立っいた方が楽だろと冗談まで言われたが結局最後まで耐えること専念することに。
「大丈夫でしょうか。軽い怪我とは言ってますが病院に連れて行った方が」
「連れて行くなら、上条が行ったことのある場所だけにするんだな。不運なのか知らんが何処かのサイトに疫病神が来たせいで手術が失敗したとか、恨んでいる連中もいる。近場だからと言って選んだ病院で意図的に怪我を悪化させられたら笑えないぞ」
恨んでいる人は少なからずいるが、自分から不運災難に会いたい物好きなどそうそういない。過去には何人も近づいたがほとんどが大怪我か病気になり後悔している。
「しかし、万が一これ以上酷くなった場合は」
「強引に連れて行く。事前に何処の病院に行っていたか聞いておいたからな。しかし、1番近くても車両で5時間はかかる。ヘリでも借りればもう少しは短縮出来るが」
「そこまで離れるとISで移動した方がいいと思います。仮にも数少ない適正者ですし、処分も場合によっては軽くなるかもしれませんよ」
「その処分が軽くなる変わりに何を要求される。ISの自然治癒で時間をかけて直す方が安全だ」
ここ最近、千冬の中でIS委員会も政府も全くと言っていいほど信用しなくなった。ある事件で一夏を誘拐された時も情報が自分の耳に入るまで妙に時間が掛かった事から不信感を抱き始め、ある組織の計画の為に生徒を危険にさらしたのがきっかけで完全に信用しなくなった。
「・・・しかし、一体何の為に襲撃してきた。明らかに秋十と一夏をさらうのが目的ではない。上条は無断外出でいない、私も政府からの呼び出しを受けていなかった。何か探しにでも来たのか」
「あの織斑先生?」
「すまん、少し気になった事があったのでな。あいつには体調に少しでも変化があるようなら連絡するように言っておく」
問題視、疫病神と言わているが生徒の1人なので念の為用心しておくことに越したことはない。怪我をしようが個人的な問題が起ころうと誰にも言わずに1人で解決しようとする危ない部分もある。
「それに、聞きたいことが山ほどあるからな。勝ってにいなくなられても困る」
無理に聞くつもりはない、出来れば向こうから話してくれるのが良いが。もしも次何か起こっても言わないようなら多少強引にでも言わせると決めた。