IS学園の異端児   作:生存者

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第85話

 

 

「今日お世話になる旅館の女将さんだ。あまり騒ぎ過ぎて迷惑をかけないように。それと、先程山田先生が言っていたように他校の生徒もいるからな問題ごとを起こさないように」

 

最後の部分を強調しながら視線を向けると用は済んだのかそれぞれクラスごとに分かれて部屋に進んで行く。

 

「へぇーホテルかと思ってたのに旅館なのは意外だな」

 

「今の寮だってホテルみたいなもんだからな」

 

一般的なビジネスホテルよりも設備が整っている寮に毎日いる人間では物足りないと言うこともあるだろう。女子が好きな事は全く分からないが大人数で騒ぐだけでも楽しいかもしれない。

男子も泊まりとなれば枕投げで限界まで遊ぶ事もしばしばあったため旅館の方が人気なのだろう。だが、まだ夜になったばかり。予定では約1時間に宴会場で夕食になるがまだかなりの時間が余っていた。

部屋に入ると荷物を隅に置いて中を見渡してのんびりするとやる事もなくなり座り込んで

 

 

「あ、風呂どうする?後で行くか?」

 

「・・・俺は課題が」

 

届いた荷物を開くといくつかに分けた紙の束を取り出した。面倒そうに始めるがほとんどが上条にとっては難問、問題を解くより時間の方が速く進んで行く。途中、テレビを見ていた秋十や一夏も進行の遅さについつい手伝いに入っていた。

 

「こんな問題も分からないのか」

「ほぼビリのやつに期待なんてするな!」

 

「いいから口よりも手を動かせ。ほら、次」

 

2人とも血筋なのか物覚えもよく成績は上位に食い込み、教科書と授業を受ければ大体分かっていた。その後も思ったより面倒見のいい兄弟のお陰で、夕食の時間近くまで休む事なく課題が続いた。

 

「はぁー疲れた。宴会が終わったらすぐに風呂だな」

 

「頭の悪い奴に教えるこっちの方が疲れる。よく今まで残ってたもんだ」

 

「毎日補習と復習でどうにかしたよ。偶に範囲外の課題も出されて・・」

 

「まさかそれも分からなかったのか?」

 

「・・・分かんねーよ。頭が授業の速度に追いつけてないのにその区別なんて出来るか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっという間に時間は過ぎ、制服から着替え宴会場に到着するとすでに半分以上の1年が楽しそうに話しながら時間まで待っていた。しかし、1つ問題があった。臨海学校の時もそうだが座る場所に指定がなく自由にしていいという事だ。1人は神経が図太いのかさっと座わり、もう1人は端の方空いている席に座っていた。

 

「一夏、速く座らないと場所無くなるぞ」

 

「1つ聞いていいか。秋十の場所は分かるとして、よくど真ん中に座るな」

 

「別に大して変わったことでもないだろ。自由に座っていい事になってるし」

 

数分迷った末に上条の隣に腰を下ろして時間になるのを待っていた。その間、両隣で京都散策の話で盛り上がっているせいか隣に誰が座ろうと気付かずにいた。すでに長机の上には今夜の夕食である煮物や刺身など、綺麗に盛り付けられた器の乗ったお盆を見て今か今かと楽しみに見ている女子もちらほらと見かけた。

 

「散策なんて最後のやつでほぼ忘れたよ。印象は強いししばらく動き辛くて、おまけに観光に来てた人に喝まで受けて」

 

「あれだけ盛大に落ちたからな。それとみんなに病院に行けって言われてるのになんで断るんだ?」

 

「本当にダメなら自分で行くから心配するな。昔から怪我ばっかりしてるからこのくらいならすぐに直るし、大して傷が残ってる訳でもない」

怪我をしても平然といる上条に一瞬恐怖のようなものを感じた。例え命を落としかねないような怪我を負ったとしても

 

「ま、これでも前は半強制的に病院に連れていかれたな。その時はまあ何度も酷い目にあったしあんまり行きたくない。本当に治療中は特に何も起こらなくて助かった」

 

「安静にしてる間に暴漢にでも襲われたのか?」

 

普通の生活にはそんな事を想像する人がいないが世界一不幸と言われたいる上条ならこのくらいあるだろうと思ったまま言った。もしかしたらこれに以上の可能性もあるが当たっているが冗談で済む範囲で収まって欲しい本心も混ざっている。

 

「惜しい。けど、それは後にするか。先に飯を食ってからだ」

 

1番気になっていた話を中断され続きを聞きたい所だが、全員が揃って同じ方向を見た為諦めた。先程まで話していたせいか気にならなかったが千冬姉が仁王立ちで静まるの待っていた。軍隊のような教育がされている一組以外も視線1つで静まった。

 

「・・・なんつーか、カリスマ性があるだけでこんなに人黙らせるのってすげーな」

 

「・・・まあ、千冬姉はほとんど女子の憧れでもあるからな」

 

ふと、視線感じた2人は話をやめると千冬に睨まれて気待ちを戻す。軽い点呼が終わると全員が手を合わせ食事前の挨拶をすると再び騒がしく楽しそうな雰囲気に包まれた。

しかし、楽しく話しているばかりでほとんど料理の方に手の付いていない人が多く、その部屋から解放されるまでかなりの時間を要した。原因は修学旅行だけでなく、寮の食堂では次に入ってくる人の為に基本的に長居は出来ない。その反動か、行事の時は比較的我慢強い3人でも参るほどの長さだが、内1人は不幸にも食事で当たり早々に宴会場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人個室の中で戦い抜いた男の顔は入る前よりも一層酷く、いつもの元気な面影かなかった。

 

「どうだ、腹の調子は。何でヒットした?」

 

「知るかよ・・・一通り出してなんとか収まった。最近、食堂でも当たりがないから怖かったよ。食中毒で死ぬかもしれないとか一時期心配してたぐらいだし」

 

横たわったのは畳ではなく部屋を空けていた間に布団が敷かれすぐにでも寝られる状態に整っていた。

 

「風呂はもう行ったのか?」

 

「お前を待ってたからまだだ。もう行けるのか?」

 

「頼む、少し待ってくれ。まだ気持ち悪い」

 

ふらふらと立ち上がり自分の荷物を漁る。明らかに夕飯前よりも動きが鈍く。時より口元を押さえて耐えていたせいか用意するにも長く時間がかかり、予定よりもかなり遅れての入浴になった。

寮生活で大浴場を使用する事が数少ない3人、理由はそれぞれあるが気の済むまで堪能すると決めて湯の中に浸かった。

 

 

「あああぁぁ、いい湯加減。やっぱ温泉はいいな」

 

「おっさんみたいな声出すな」

 

「そう言う秋十もだらけ過ぎじゃないか?」

 

うあ〜と唸り声を上げ肩までしっかり浸かり全身から力が抜けて行くのを感じる。普段の知らないうちに溜まっていた疲れかストレスの様なものが抜けて出る。勉強に偶に起こる問題、補習で出される大量課題。それから悪戯好きの先輩方の相手まで、原因を思い返すときりがない。そんなことも一時的に忘れていた。

 

「あ、これ1つで満足してる場合じゃない。他の風呂も試すか」

 

露天風呂でも1つだけではない。高温湯、微温湯、寝場、立ち湯、水風呂。サウナの湿度と温度を調整しているため2つ完備。効能まで細かく書かれ学生や大人にも人気がある。 だが、柵越しに聞こえる女湯に対して男湯は静かなものだ。

 

「賑やかだな。何かすようなワードとか無いのか?」

 

「上条さん的には恋話が1番面白そうだな。こういう時の定番だろ」

 

「あのなー誰も付き合ってないなにその話で盛り上がるか?」

 

「いやいや、それでも好きな女の子とか1人くらいいるだろ・・・織斑先生以外でな」

 

「「え?」」

 

「え」

 

どうやら2人とも考えている事は同じだった。

 

「嘘だろ。他にもいるよな?」

 

「なんか、ぱっと頭に浮かんで来るのが千冬姉しか」

 

隣の秋十に目を移すと軽く頷いていた。この分だと他の人は友達くらいで止まっているのが想像出来てしまう。

 

「俺らばっかりに聞かないでお前も話せよ」

 

「ん〜そう言われても。俺も織斑先生みたいな人がタイプなんだよ。年上の寮の管理人さんみたいな人が・・・ま、あくまで好みの話だ」

 

余計な一言で何度も刺される経験のあった当人はそこで止めた。

すると、もういいと思ったのか秋十は湯船から出ていた。

 

「・・・俺は出る」

 

「なんだもう出るのか?」

 

「話がつまらないからな。2人でくだらない事で楽しんでろ」

 

「そっか」

 

一夏にはまだ途中まで話していた物を聞くまで戻る事はないが、秋十は特に面白味がなければすぐに飽きてしまう。

 

「・・・なら、上条さんのつまらない不幸話も聞きたくないか。秋十なら食いつくと思ったのにな」

 

「はぁ、つまらなかったら出るぞ」

 

精々引き止めるくらいには興味があったのかもう一度肩まで浸かる。ただ、秋十に話すにしても数えるもの面倒な程ネタが有り余ってどれを選ぶべきなのか悩み、どうせならさっきの続きにするかと結論が出た。

 

「そうだな、もう数年前も事で。久しぶりに家族全員揃ってファミレスに行った時に食中毒で倒れた事があるんだ」

 

「ファミレスか、行った記憶もないな。それにしたって多少材料が悪くても調理次第ではどうにかなる問題だろ」

 

「普通はな。それで原因を後で聞いたら消費期限切れの物が混ざっていた上に。担当したのが新人で、調理の仕方が不十分でさ。新人の人も違和感があって作り直そうとしたんだよ。そしたら上司が俺に出す物だと分かってからそのまま出しとけ、だと。その後は最初に言った通りだ」

 

偶然にも質の悪い材料を使い、偶然にも調理に経験の浅い人間が担当し、偶然にも上条の事をよく思ってない人間の悪意が混じり、体調を崩し倒れる結果に至った。この結末を一言で言い表すなら運が悪かった以外に言葉が出てくるだろうか。

 

「いや、だとしても普通の食中毒だろ。食後すぐに症状が出るはずがない」

 

仮にもずっと織斑家の料理担当だった一夏は有り得ないと言った。最低でも食後数時間経ってから症状が出る。それも腹痛、下痢、発熱程度で倒れる事はないはず。その辺りまで頭に入れているからこそ気になっていた。

 

「病院に運ばれたのが昼過ぎ、退院は夜になった。流石に治療してくれた人もおかしいと思って何を食べたのか聞いた後、胃の中まで徹底的に調べた。そこである薬品が検出された」

 

「明らかに食事、体内で生成される物じゃないと言われてるんだけど。未だに何か教えてもらえなくてな。まあ、元気になって良かったとは言われたよ。と、ここまで多少着色はしたけど一夏には言ったよな」

かなり着色された内容だが、嘘の作り話には聞こえない。つい1時間前の食事でも体調を崩した。それも誰一人としてそんな状態になっていない中で。

 

「薬品なんか混入されてよく死ななかったな。不幸中の幸か、それにしてもなんで食中毒で倒れたことになってるんだ?」

 

「・・・不幸な人間だからか。もし、その上司が殺意を持って混ぜたとしても世間は当たり前の事だと」

 

「まあ、合ってる。でも、簡単な話さ。俺が倒れた様子はただの腹痛によるものにしか周りから見えない。それに外食なんかすればほとんど確率で食中毒だ。隣の客と同じメニューを食べようと定番のものを食べようと、一度もそんな問題が起ったことのない店でも同じ事が起こった。誰もそれを店側の問題とは言わなかったよ」

 

もう何年も前だが。風の噂で上条当麻になら何をしてもいいという話が出回った。もちろん、それは噂に過ぎず実際は友達、近所付き合いで会った人、少し仲良くなった人が次々に病気、事故に遭い。その原因を上条に押し付けたのが原因だった。

 

「で、ここからがまだ言ってないな。俺が無理言ってその日に退院にしてすぐ、後ろから刺されてまた戻る事になった。自棄になったサラリーマンが無差別に人を刺していた中で偶然その中に俺が見えたらしい」

 

「だからついでに刺したって言うのか。面白いくらいに出来た話だ。どうせ、その男も無罪で通ったんだろ」

 

「いいや。他にも数人怪我させて、警察の事情聴取で俺に命令されてやったなんて証言して捕まらない訳ないだろ」

 

初対面で顔も名前も知らない、つい数分前まで病院に篭ってる奴にそんな事が出来る訳がない。地元の警察より働きが良くて電話の履歴、これまでどこに居たか。証人はいるかと細々と聴取を受けてようやく被害者扱いにはなった。しかし、他の被害者家族からお前が居たせいで怪我をしたんだ!と、しばらくしてから理不尽な怒りを向けられ電話が日に何度も鳴ることも懐かしい記憶だ。

 

 

「貴重な休日があっという間に終わり。ついでに入院が1日追加、完全に治るまで傷口が痛む日々だ。その間も不幸は元気に会いに来てくれたよ」

 

本来なら一週間で治る怪我も2週間近く経っていた。

 

「・・・そろそろ出る」

 

「どうだった?」

 

「ただの自慢話なんか聞いても暇つぶしにしかならねぇ。それに偶然起こった事に過ぎないものをそんな言って楽しいか?」

 

「楽しくはないな。ただ、懐かしい思い出としてはいいもんだ」

 

思い出以前に、それだけ悲惨な日々を送って良く性格が歪まなかったな。正直、秋十は初めて会った時の話し方に一切変な癖もない。こいつの噂や一夏に家事を押し付けて遊んでいる間に調べたがまともな生活してるような話は1つも出てこなかった。

 

「あ、秋十に1つ聞きたかった事がある」

 

「なんだ。冷えるから早くしろ」

 

「そうだな・・・いや、なんでもない」

 

「何ないなら呼ぶな。先に出る」

 

すぐに出た秋十を見送った一夏ものぼせて始め上条を残して先に上がった。上条はまだ余裕があるのかずっと肩まで浸かっていたが、最後に一体何を聞こうと止めたのか気になっていた。

 

「なあ、さっき何を聞こうとしたんだ」

 

「・・・多分秋十にとっても些細なことだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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