「天気はいいのに朝から気分が悪い」
昔の名残がのこったマドカからの
「背中が痛い、頭も痛い。昨日の疲れが全然取れない」
「半分は自分せいだよな」
「そうですよ。マドカがうちに来てから、寝坊しかけた時はあれで起こしてもらってたからな。寝起き悪いやつでも一回で眠気が飛ぶぞ」
お陰で寝坊した事はない。と自慢気に言っているがその言い方からすると遅刻は免れなかったとしか聞こえない。
「今日はほとんど移動ばっかりで休めるから助かる」
「そうか?移動時間はそんなに長くないはず・・・・あ、でも2時間以上は休める」
スケジュールの再確認していると思い他移動時間が多い。今日一日でも4つ近くの寺院を周り最後は初日ほど長くない自由行動の時間もある。ただ、一夏が気になっているのが、いつの間にか隣に寝ている上条がいる事だ。すでに目的地に到着するはずの時刻より数分遅れている。
「・・・今日も何か起こりそうだよな。交通事故にでも会うのか?」
初日から上条が清水の舞台から落下しサウナで武者修行。臨海学校では海でサメに襲われているような事もあり何が起こるか分からない。というより何か起こさないと気が済まないようにも見えた。
「上条も寝てるなら今は何も起こらないって事か?前も行く途中は寝てたし気のせいか」
「ほら、男子共しゃきっとしろ。移動時間が少し伸びたからってたるんでいる暇はない」
結局予定時間より30分以上遅れて到着、これが残りの場所でも出るようなら今日の楽しみがまた減るんだろうな。徒歩の移動で短縮出来る時間はほんの僅かだろうしそこまで焦って歩かなくても考える。
「さて、長い移動の最中に騒いで眠くなっている者も多い居るだろうが我が校の為に時間を作って話をして下さる。山田先生も同席するがくれぐれも失礼の無いように」
わざわざ言わなくても相手に迷惑を掛けるつもりはない。セクハラ紛いな発言とか痴漢が無ければ。もっとも住職がそんな欲に取り憑かれている時点で世も末だろう。
「席は奥から詰めて入れ、他のクラスも同様だ。ただし、早く静かにな」
やはり織斑先生からの指導となれば生徒達の動きは素早くなる。男子3人もは同じ列に全員まとめられ、遅れないようペースを合わせて着席。あとは寝ないように適当に課題の処理方法を考えて時間を過ごすだけだ。
しかし、ここの住職もかなりの手慣れていた。うちがここに来ると言う事は他の中学生、高校生も来るだろう。その中には真面目に聞く人も途中で飽きてうとうと寝始めるような学生も。
「・・・とまあ、このような経緯でここに建てられたました。ただ、長い間何も無いというのはなかなかありません。それはこのお寺も同様、災害が何度も襲い崩れる被害も。ではそちらの眼帯をつけた綺麗な白髪のお嬢さん、何が起こったのか分かるかな?」
こんな聞き方を何度も繰り返す。公演の時間は決まっているが質問が来る頻度が不規則な為いつ来るのか分からず皆が構えて話を聞いている。誰が見て温厚な人柄で質問されて嫌がるような素振りを見せる人はいない。
40分程度の有難い話も終わり席を立つ頃には全員が疲れたような雰囲気を出していた。質問されたのは10人以上になり、上条は何かの前触れなのかさされる事もなく時間になり、バスに戻った時にはほとんどクラスメイトが口々に疲労の声を出す。
「思ったよりも疲れましたわ」
「僕はそこまで疲れてないかな。いきなり、質問されたのは驚いたよ」
「ふむ、なかなか有意義な時間だった」
「ふあぁ、眠くなってきたのだ〜」
「あんた移動中も寝たのにまだ眠いの?」
その中でも数人程疲れているような素振りも見せず、マイペースなままだ。しかし年頃の女子高生がこんな程度でへこたれる事はない。バスに戻り座席に座ればまた朝と同じ騒がしい空間が出来上がる。その中でも欲に素直な猛者は状況など関係なしに爆睡している。次の目的地に着けば初めの活気に満ちているし、寝ていた人間も数分前には起きてすぐに出れるように準備も終わっている。
そんな中1人スケジュール表と向き合い困惑の表情で見続ける千冬は溜め息を吐く。悩みの原因は当初予定していた移動時間のロスがもう少しどころかとっくに許容範囲を超えて想定外の時間オーバーをしたいた。他の車列も同じ事になるが例年を超える異常な程の予定時間のズレに問題児を多く抱える一組の戦乙女も険しい顔になる。
「・・・」
「織斑先生、どうしましょう」
「無理もないだろう。ここまで遅れが出ている以上は時間に間に合わない。山田先生、次の目的地を飛ばして最後の場所に向かうように連絡を。こちらは予定のキャンセルが出来るか交渉する・・・したいがひとまず確認は取ろう」
こんな事にもあるかもしれんと2、3案を作って正解だった。まあ仮にも上条からこの日程で大丈夫なのかと聞かれたのだ。わざわざ仕事を増やしてやったかいもあった。それにしてもこうもあっさり現実になるとは。
今の生徒には2人の2つのプランがある。このままスケジュール通り動いて最後の場所には時間が許す限り立ち寄るが。スケジュール上、寄る余裕がない場合はそのまま宿に。もう1つは本来行く場所を1つ飛ばして最終目的地まで行くもの。しかし、よく出来た生徒が多く。最初に出た案で構わないという答えが出た。
「すぐに行動出来たのは良かったがここまで時間が掛かったのは初めてだ。これは不幸が取り憑いたのかもしれんな」
「もしかして上条君が関係してるとか」
「事前に指摘してくるぐらいだ。あの様子だと中学も同じような事になったのを思い出して言いにきたのかもしれない。まあ、あいつの不幸がこんなものとは思ってはいないが」
「つまり、まだ何か起こると。でも考え過ぎじゃないですか。大体運なんて基本的に人それぞれ差がありますし。他人を巻き込む程の不運となると、それこそ周りの人の不運の背負わされているようなものです」
「だが、臨海学校でもひと騒動起こしてるからな。渋滞で進行が隠れる程度で済んでくれることを願う」
校内ならどの程度不幸に会うのか慣れてきた教師も。一歩外に出るだけでいつ何処で何が起こるのか予測不能だった。本人に聞けば大概何が起こるか知っているかもしれないが、余計に不安と起きるかどうかも分からない物事に頭を使う事になる。
元の日本の中心であった場所の記念館とあり女子が興味を持つものが数多く展示されていた。着物に十二単、扇子、髪飾り、漆塗りの器に貴族しか使わないであろう小道具の数々。他にも掛け軸、一般人見ればからはミミズのように書かれた書物まで。ほとんど脚を止めて見入っていた。
「綺麗、一回でいいから着てみたい」
「浴衣なら昨日着てないか?結構写真撮った気がするんだよな。それに十二単なんてかなり重いぞ。全部羽織ると結構な重量があるし、着るにも人手も時間も必要になる」
「私はそれでも着たいな。上条君は何か着てみたい服とかないの?」
「・・・特にないな。着物も何度かあるし、強いて言うならスーツくらいだな。服なんか暑さ寒さをしのげる程度の物で十分だ」
「本当に服装に興味がないんだね」
前の世界から貧乏癖抜けずに大概安物で済ませて、そこまで目立たない物なら何でもいい。と言う考えが残っている。お陰で幼馴染の先輩から買い物に連れ回される事もあった。
「服を買っても鳥の糞ですぐに汚れたりして毎回洗濯するが大変なんだよ。それで何度か買い直しても1週間も経たずに何故か自然と汚れが酷くなる、それでも何とか取って綺麗に保っても虫に食われ、結局諦めて何度捨てたことか」
「う、うん。大変だね・・・」
何事にもついてない。昔は不幸だーと一言で済ませるような事が頻繁に起こり、今はちまちまとした不幸と笑いが込み上げるようなとんでもない不幸が交互に来るようになった。それも行事がある日に限って多く。
「ここも十分見たしいいか。人がやけに多いしぶつからないように気をつけてないと」
軽く見渡すだけで目に入るのは人ばかり。他校の学生も何故か数多く歩いているがそれは特に気にしていない。1番大変なのは女子生徒に絶対に近づかないし、近ずかれないことだ。同級生ならまだしも、外の学生にまで不用意に触れる事になるのは本人も心からお断りしたい。
「結構来てるな、他にも3校くらいいそうな感じも。せいぜい問題は起こさないように回って時間を潰すしか」
人混みから少し離れ、その合間から展示品を眺めていた。それでも前からも後ろからも当たり屋紛いな人が来ることも少し警戒していた。しかし、警戒するべきなのはそこではなく自分自信のことかもしれない。
「あの上条当麻さんですか?」
声をかけてきたのは童顔、な上条より少し身長が低く若干おどおどしている男子学生だった。これだけの人が多い場所で一目で分かるような容姿ではないが目が合うと思わず手を伸ばし両肩をがっしりと掴み喜びの表情に変わっていた。
「お、復学出来たのか。元気そうだな!」
「あはは、何とか。勉強は全然追いつけなくて毎日大変ですけど。クラスの人とは上手く付き合いがあります」
「良かった。でも体の傷の方はどうしてる」
「そこは事故として誤魔化してます。本当の事なんて言える訳ありませんから」
「それでいいんだ。上条さんも親に言うのも時間がかかった事もある。でもいつか必ず話せ、親でなくても信頼出来る友人でも誰でもいい、自分の中で決心がついた時にな」
それだけ言うお互い邪魔にならないよう離れた。軽々しく人のいる中で話せる事でもなかったし、普通の生活が出来るようになっていただけでも上条が安心するには十分だった。
「あれからもう半年以上経ったのか。もとから外に出る機会も少ないからな。学校も毎日補修か、模擬戦しかやる事がない」
「贅沢な悩みね。上条」
「霧島、一人で周るのが飽きたのか?それに贅沢って、俺からすれば檻に閉じ込められてるもんだぞ」
周りには異性しかいない女子校に強制入学。中学の時クラスの男子からは散々羨ましいなど言われていたが、そういった場所に良くない思い出のある本人からはいい迷惑だった。
「クラスの子達とさっきまではいたのよ。ちょうどあんたが知らない奴と話してるのが見えて来ただけ」
「話し方変わったな。前はお嬢様みたいな余裕があったのに」
「誰かが親の会社の社長を潰してくれたお陰でそんな余裕無くなったわ。まさか、親があんな事をやってたのは驚いたけど」
「上条さんは何となく分かったな。あの性格で会社にも色んな噂が流れてるんだ」
「噂なんて、ああ。あの腹黒女ね、一体何処から集めてるのよ」
「先輩いわく企業秘密だとさ」
ようはあんたをこちら側に入れたくないと遠回しに言ったつもりの言葉だろうが、そんな配慮も分かっていない鈍感な男。ちょっと考えれば分かるような嘘も引っかかる単純な性格。だからこそ決めた事は絶対に曲げず、風潮という曖昧な物にも振り回されない人間でもあった。だからこそ、些細な面倒ごとも全力を尽くしていた。
「ちょっと、いつまで口答えするの!警察に突き出されたいかしら」
「どうぞして下さい。こっちは何もしてないからな。あんたの方からぶつかってきたんだろ。一方的に罪を押し付けるのは図々しいぞ」
こんなやり取りをすでに5分程玲奈はそばで見ていた。きっかけは話していた直後に真横から上条にぶつかってきた女が痴漢を受けたと言ったのが始まりだ。
最初から見ていた玲奈は痴漢なんて嘘だと分かっていた。女には反抗してこないと思い込んで金を巻き上げているような下衆な人間で、何度もやって来たような慣れた様子があった。それにぶつかる際も明らかに歩く速度も速く狙ってやったようにしか見えない。
「そんな若いのに人生が台無しになってもいいの?」
「人生なら生まれてからとっくに台無しになってる」
「あんたさっさと話し切り上げないと置いて行かれるわよ。いい加減やめてちょうだい」
わざわざ見やすく腕を少し捻って腕時計を見せてると、上条が納得したように頷いた。ただし、じゃあ戻ろうとは行かない。目の前の突っかかって来た人の対処までやる必要あった。
「ん〜そろそろ行かないと織斑先生の説教か。一夏と秋十とも待ってるだろうし」
「・・・・は?何を言ってるの・・・」
織斑という一言を聞いた途端、強気な態度も無かったと思わせる表情に。信じられないではなく、ただただ思考停止でもしたように動かなくなった。
「あら?織斑先生の単語だけで驚き過ぎて止まったみたいね。他人が全員都合のいい駒だと思って油断していたの?おばさん」
最後の一言だけ余計に強調して言った言葉で我に帰ったのか若干苛立ち始め、それが分かった玲奈は笑みを浮かべ上条は何か察したのか目をそらした。
「・・・小娘が少しは口の利き方を覚えたらどうなの。私の地位ならあんたくらいすぐに」
「へぇ、出来るのかしら。おかしいわ、あらゆる国家、宗教、企業、団体だろうと干渉出来ない教育機関に居るはずなのに。あ、最初に出た言葉ですら分からないような人に教えるのも面倒ね」
「そんな都合のいい場所がある訳ないでしょう」
「はあ、これで納得してくれないか?」
いい加減集合時間に遅れそうな上条は一目で分かるようにする必要があると改めて感じ。制服からあるものを取り出し、今も口喧嘩の最中の女性に見せた。それは中高生なら大概は持っているだろう身分証明代わりにもなる生徒手帳だ。
これが視界に入ったのかよくも見ずに奪い取ると相当頭に血が上っているのか、大声で読み上げ始めた。
「あんた達の通ってるしょうもない学校の名前を教えてあげるわよ!どんな地味な学校なのか・・・」
と最初のページを開いてすぐに手が止まった。数秒ほど経っても一言も言わないのが気になり顔色を見ると目が泳ぎ歯はかたかたと震えていた。そして、少しずつ目の前の文字を呟きだした。
「・・・IS操縦者育成学校。1年・・上条当麻・・・」
「その通り。すみませんが時間がないので失礼します」
ほとんど力が入らなくなった手から生徒手帳を取り返すと2人は足早にその場を去ろうとした。IS学園の名前はただの学校名でなくブランドである。IS操縦者にとっては世界に1つしかない育成機関であり、いくつもの国から輩出される代表、代表候補も実力を測り日々訓練も行える。おまけにモンド・グロッソ初代優勝者でもある織斑千冬からの指導も受けられる聖地のような場所だ。
織斑千冬を尊敬する人間もIS学園への入学を試みて散っていった人間も数多く存在する中であの単語が大々的に出されしまえばどうなるかは想像がついた。か
急いで外の駐車場まで着いた2人の前にはすでに人だかりができ耳を塞ぎたくなるくらいに感極まった一般の方が誰とは言わないが一目見ようとバスを取り囲んでいた。
「・・・ふぅ。とりあえずバスに戻るか。もう時間だ」
「あんた、あの中をどうやって行くのよ。下手に行けば痴漢扱いで・・って人の話は最後まで聞きなさい!」