IS学園の異端児   作:生存者

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第89話

 

「今日は何も起きないな」

 

「上条さんがいるからって毎回問題が起きても困りますよ。1日でも不幸だー。なんて言わずに済む日が来る事を願ってるのに」

 

「2日も問題を起こしてるし、帰りの新幹線で運行停止でも起こるかもな。でも今日中に帰れるか分からなくなるのは・・・」

 

 

最終日の昼過ぎ、後は新幹線で学園近くの最寄り駅まで騒いで帰るのみ。乗車予定の30分前までは駅構内を自由行動でふらついても構わなとはなっていた。が、3人とも初日から続く不運に堪らず警戒してしまう。

 

「はあ、起きるものはしょうがない。1番困るのは原因が分からない、経緯が分からない。じゃあそこにいた疫病神が悪いなんて責任を押し付けられる時だ」

 

「冤罪だろ。ただ現場に居ただけで」

 

「よく考えろ。毎回事故現場に同じやつがいたら疑うだろ。あとは目撃者が余計な言葉を2つ3つ言えば容疑者が出来上がり。最後に警察官の手抜きが入れば終わりだ」

 

全く決まらないお土産にいくつも手にとって品定めしていく。いかんせん種類も豊富、施設自体大きく上へ下へと移動する度に迷いが出ていた。

 

「一夏は自分で探したりしないのか?別に集団で動く必要もないだろ」

 

「いや、俺もお土産を渡す相手が上条と同じだからな。一緒にいた方が決めるのに困らない思って」

 

似たような友人がいる事は既に知っていたせいか特に深く考えない。一方、一夏と秋十には千冬からの重大な任務を託され、同じ集団で行動している。

 

「少なくとも今日この時間までは何も起きてはいない。なら、これから何も起きない可能性は低いだろう。口頭で注意すればあいつは反省する。だが、不運まで大人しくはない。お前達で何とか未然に防いでくれ」

 

と言われたものの。起きる要因と言えば万引きに間違えられる程度しか目の前の光景からは思い浮かばない。こんな、周りを気にするような日々を送り続けているうちに変な病気にでもなりそうだ。

そんな毎日を過ごしている本人は心配していることなど気にもせず次々と買い物を終わらせていた。

 

 

「一通り回って決まりはしましたよっと。・・・荷物として邪魔にならない量には収まった」

 

変態とロリコンの2人に仲の良かった元のクラスメイト3人。それに先輩の分と両親に送る分と今日やるべき仕事は終わり一息ついた。

不用意に歩き回って迷惑を掛けないように事前に見る店とルートを下調べである程度決めている。一夏と秋十のお土産を探す為に少し寄り道をしていたが、帰るまでの残り時間が暇になっていた。

 

「さてやる事が終わった。で、この後はどうする」

 

「昼飯は食べた。一通り店も見回って特に見たいものは・・・あ、レシピ本。最近見る事もないしレパートリーを増やすのに丁度いいな」

 

「その他は記念写真をひたすら撮るだけだ」

 

初日から撮り貯めた写真に一通り目を通して見たが知らないうちに相当な量に膨らんでいた。

 

「ただ撮ってるで気付けば容量が・・・・秋十、仕事少し増えそうだ」

 

「は?こんな時に何が」

 

上条の視線の先を辿った秋十は軽く頷き何をするのか理解した。見ていたのは何か笑みを浮かべながら歩いている3人の男。その先にいた買い物中の同級生が2人。遠目で見ても何かやりそうな組み合わせだ。

 

「ああ、なるほど・・・少し暇潰しに行くか」

 

無駄な時間を過ごすくらいなら楽しむ。昔よくやっていた一夏への嫌がらせを他人に向けるだけだ。

 

 

 

 

ツンツン頭に目をつけられる少し前の2階の踊り場。黒髪で中肉中背、目立ち過ぎない程度の服装。だが、目つきだけは飢えた獣のようにギラつている。

 

「また失敗?いい加減にしろ!もう次の販売に間に合わなくなる。え、何?余計な心配をする前にさっさと捕まえろ」

 

 

チッ使えない奴ばっかりでイライラする。なんで俺の下には女1人引っ掛けられないような馬鹿しか居ないんだ。今日は最高の素材が手の届く範囲にいるのに。

乱暴にポケットから電話を取り出し

 

『おい、2人でいい。すぐに今から言う場所に来い。いつも通り偽装して着いたら連絡しろ、すぐに持っていく』

 

手短に用件だけを伝えると先に行動していた仲間と合流した。

 

「周りのやつとは離れてるか。近くに同じ学校のやつは?」

 

「他の集団に比べてかなり。ただ、織斑千冬は巡回でもするように歩き回っている」

 

浮かれているのは生徒だけか。聞いた話じゃ剣を持てば達人級だったな。ルートの変更も計画の変更も必要になるし、目をつけられたら逃げるしかない。

 

「移動までの時間は分かるか」

 

「正確には・・・ただあの3人がかなり急いで買い物をしてる対して、他の連中はゆっくりしてるところを見ると」

 

あの、つまり織斑兄弟と疫病神は一緒に移動している。男で仲良く買い物してる訳もない。2人は護衛役か、ならこっちもゆっくりすることは出来ない。

 

「少なくとも1時間以上はあるか。少し急ぐ、あの不幸は何が起こるか分からない」

 

移動中の暇つぶしも終わり、視界に標的捉えた。狙いは2人、店員のいる位置、監視カメラ場所も把握している。俺の仕事はいわゆる裏ビデオを作る側の人間。もちろんこんな街中で堂々と人を連れて行けばすぐに足もつく。だから徹底的に手を尽くした。客として、裏方のスタッフとしてあるいは店員にもなって情報を集めて性別など関係なしに仲間も作り、警備員や他のスタッフにも協力者を作り上げた。あと話しかけいつも通りに運ぶ。その作業に入る所だった。

 

「どうした?足を止めて」

 

無意識のうちに足が止まっていた。それもあと数メートルも進めば着く距離で。ただ、近づくほど寒気に襲われ本能が近づく拒否していた。

 

「いや、何でもねえよ」

 

身振り手振りで指示を出し実行に入る。この時間帯、一部の場所は人通りは少なくなる。その1つが今から向かっている場所だ。階段を上がってすぐ確認してもこの通路を後ろからは誰も来ていない。うじうじと悩んでいれば目の前の絶好の獲物も取り逃す。多少のリスクが生じた所でリターンを考えればお釣りも出てくる。

 

使用するのは麻酔薬を塗り込んだ針。市販にはない、ヤブ医者が制作し何度も成功させている。まず1人目、後ろを通り過ぎる際に刺し、もう一度別の仲間に行かせてしばらく様子見。効き目が出始めた頃合いで回収。あとは手引きした警備員が開けた従業員専用の通路を使用する。

次の作業順序を確認している数十秒の間に足元がおぼつかなくなり棚に手を掛けてようやく立っているような状態になっていた。

 

 

「よし、効き始めた。先に見て来い」

 

人通りが少なくなるとはいえ何事も慎重に、リスクは可能な限り落とす。再度確認終え問題なしと合図を受けるとすぐさま回収。店員はこちら側なので元から気にした様子はない。カメラにも映りにくい場所に棚をズラしているので特に目立つ事もなく店を発つ。

通常と同じ無駄もなく一切邪魔も入らない。しかし、ついさっき感じた寒気が気になってしょうがない。この仕事をしてから過剰に心配症になりありもしない寒気を感じているのか。

 

 

しかし、その寒気も扉まで数メートルの所で目にする事になった。出てくる人間が限られている従業員専用通路から回収している女と同じ柄色の制服を着た2人が出てくる。

 

「いやーすみません。わざわざ倒れた友達を運んでもらって」

 

「どうもすみませんでした。クラスメイトの介抱をさせてしまったようで」

 

専用出入り口は軽く捻れば開くような代物では無い。暗証番号式で相当な運を使っても簡単には開かない。それも従業員でも無い一般人がこの階、この道に狙って出るのは無理だ。

その間にも警戒する事なく歩み寄ってくる2人に距離詰められる。何もせず引き渡すせば特に問題はないが、少しでも何かすれば何かしらしてくるだろう。

 

「こんなちっこいのが喧嘩で負けなしの男か」

 

「人の人生を踏みにじって楽しむ奴よりはマシな通り名だろ。心配するな、あんた達が今まで何をして来たのか想像がつく。これが数回やった人間の手口じゃない事もな」

 

「少なくとも2人を渡して見逃すか?」

 

「二度と同じ事をやらないって約束をするならな」

 

「・・・それは、無理な話だ」

 

はぁ、何も知らない餓鬼は口が達者だよな。社会で女の恐ろしさの一端すら分かってない学生さんは随分と楽天家だ。

 

「こっちはただの小金稼ぎのせいで人生が何度も壊されてる。はいそうですか、なんて言葉で終わらせられるか。全員気が済むくらいにやり返してるならその約束も守っていいだろう」

 

この時代、冤罪を覆すのはかなり困難なものになった。物証もなくただ痴漢されたの一言で逮捕される。例え周りの客が冤罪だと擁護(ようご)しても何も変わらない。警察だろうと口出しすればありもしない事で今の職を失いかねない。皆、自分が生きるだけで精一杯。守るものが多く、歯向かう人間は皆無だろう。

 

「分かるか?相手の財布に少し金が入る代わりに仕事も友人関係もズタズタにされる。這い上がった所で運良く被害を受けなかった野次馬にネットで叩かれて逃げ場もなくなる」

 

「ああ、分かる。何も知らない他人に散々馬鹿にされた事ならよくあった。家に罵倒の電話、大量の張り紙、ゴミを投げ捨てられる事も」

 

確かにこれらは起こった事だ。ただしこれが全てではないのは知っている。

 

「そうだろ。それがどうして許せない。何も知らないくせに、ただそこら辺に転がってる信憑性のかけらもない情報ばかり信じて。勝手に人の評価をする。そんな人間の相手に疲れたんだ」

 

「それで見境なく襲うようにか。で、これだけやってまだやり返してないのか」

 

「とっくにやり返した。見境なく襲うような事はしないし、そんな猿みたいな奴に声はかけない。今回は中々手の届かないものが来たから手を出しだが。普段は邪魔な女に的を絞って・・」

 

「見境なく襲ったらもうそこらの猿と同レベルの人間だろ。正義の味方っぽくしても結局やってることは犯罪だな」

 

「てめえ、人質がいるを分かってるか?」

 

秋十の挑発に乗せられた1人は折りたたみナイフを取り出し始め、好戦的になる。さらった1人に突き付けるが一切焦る様子もなく淡々話しながら近づいていく。

 

「人質っていうのは相手に対してより効果のある人間を使わないと意味がないだろ。俺を止める程の人質でもない。自分で余計に罪を重ねていくアホが脅しか?」

 

「口だけは達者だな。織斑千冬の七光りが、兄弟で仲良く姉の足を引っ張る出来損ないが」

 

今の行動が演技でだったかのように口調が変わり煽り返す。最後の一言で火が付いたのか完全に仕留める目につきに変わる。剣道で鍛えた無駄の踏み込みから迷いなく走り出し、上条もそれに乗じて動き出した。

 

人質はただ盾として使い体を隠しているが男女で元から体格差がある以上全ては隠せない。おまけに顔面は剥き出しになっている以上狙う場所は最初から決まっていた。もう1人は肩に腕をかけたままで一切

 

肉体同士がぶつかる音が2つ。その数秒後1人は崩れ落ち1人は微動だにしなかった。

 

「・・・こいつ、卑怯だぞ」

 

「卑怯だの言うなら二度とやるな」

 

秋十の全力右ストレートの拳を顔で受け止めた男も何をしたのか目ではっきり見たが信じられないと視線が逸れた。倒れる前にさらわれかけた女子を抱え、反対に立つ男の転ばせると今度は秋十の少し強めに足を振りかぶる。相当効いたのか声も出さずに転げ回る。

 

「やっぱりあそこを蹴り上げるのが1番楽だな。大概の相手なら一撃で倒せる」

 

男の急所と言える場所なら、例え軍人だろうと1発でも入ればひとたまりもない。2人が倒れる間にもう1人も引き剥がす。あと1人同じ背丈の男はその場から姿がなくなっていた。他にいる仲間を呼びに行ったのか、逃げたのか。

 

「!あいつ、まあいい。この2人運んで休むか。何か飲む?」

 

「要らねえよ。まだ飲みかけがある。で、これどうするんだ?面倒くさい事にならないといいけどな」

 

「それは言い出しっぺの俺がやる。邪魔にならない場所にでも運びますよ」

 

いきなり女子を抱えて戻って2人に驚いた表情の一夏を置いて秋十はのんびりとし始めた。

 

 

 

「さ〜て、戻って来たのはいいとして綺麗に片付けられたな。2人ともそこそこでかい体なのに一体誰が」

見回して見つけたのはいつのまにか開いてる専用扉。この手の誘いを良く受けた経験からさっき居なくなった奴から来いと呼ばれているのはすぐに分かった。扉を開けて入るとさっきまで居た1人の男が気づき動き出した。その後はわざわざ道案内のように、視界に入っては逃げを繰り返し。1つの部屋へと入っていく。会議室とは書いてはあるが中は何も無く多目的室と言ってもいいような部屋になっていた。

 

「よく来てくれた」

 

「よくも何も丁寧に案内されたら来ますよ。で、今度はあんたが相手なのか?」

 

「そうだ。更に言えばここで悪さしてる人間のリーダーでもある」

 

腰を落とし独特な動き腕を動かし始る。はなから戦うつもりで来たよな様子、対して上条はいつもの喧嘩のように構える。

 

「武術を極めてる人間がなんでこんな事をしてるんだ」

 

「最初に言っただろ。何度も女に人生壊されたからだ。もちろん、これもな」

 

「中国拳法か」

 

「良く知ってるな。実は道場に通ったのか?」

 

「いやいや、上条を受け入れてくれる道場なんてありませんよ。一度だけはあった機会も向こうの都合で辞めさせられた。俺の友達に似たような事をした奴がいたから何となくそう思った」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅い、もう少しで集合時間ギリギリだ。早く行くぞ」

 

「はいはい。いや〜悪いな荷物番させて」

 

「どうせ、見るものもとくにない」

 

特にお土産を渡すような相手もいない秋十の手には自分用のお菓子だけ。対して2人は片手では治らない量がぶら下がっていた。

 

「結局静かに終わらなかったな、最後まで」

 

「そんなの生まれた時から諦めた。死ぬまでこの不幸と仲良くするしかない」

 

「ああ、もうそろそろテストが近いな。しっかり勉強しないと」

 

「今わざと言ったよな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何一つない会議室。そのど真ん中で、力尽き大の字で倒れている男に仲間が近づく

 

「随分やられたな。強いのは口先だけか?」

 

「・・・ふざけるな、何が・・・はぁちょっと強いだ。まったく」

 

まだ息が安定しないのか会話もうまく続かない。立つ事も出来ずただただ横になっていた。

 

「で、まだ続けるか。この仕事」

 

「もうやめだ。次またあんなのに会うくらいなら静かに暮らしてる方がまだいい。またバイトからやり直しか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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