モンスターハンター 光の狩人 [完結]   作:抹茶だった

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十一話 踊る、クルペッコ

「アオイの特訓の成果を見せてもらいますよ」

 

 

 スカーレ……メリルは笑みを浮かべて言った。

 ここ数日間、ミドリと交互に特訓をした。互いの特訓の内容は「狩り場でのお楽しみです」と、メリルが言ったため、知らない。

 ミドリは「特訓の成果を発揮するには危険過ぎます」とメリルが言ったため、技術……狩技はつかえないらしい。

 

 

「クルペッコってどんなモンスターなの?」

 

「端的に言うとモンスターを呼び寄せます」

 

 

 ミドリの疑問にメリルはすぐに答えた。続けて

 

 

「後、羽についた火打石を使って小さな爆発を発生させて攻撃してきたりもします」

 

 

 モンスターを呼び寄せる。炎を発生させる攻撃。どちらが不安になるかと言えば、勿論、

 

 

「例えばどんなモンスターを呼び寄せるの?」

 

「ジャギィやドスジャギィ、リオレウスとか。回りにいるモンスターなら何でも呼び寄せますね」

 

 

 リオレウス級のモンスターを呼び寄せる、と。結構、いやだいぶ危険ではないのだうか。ミドリの表情が不安に染まっていった。それを見て自分の表情を確認するため顔を触ると、強張って完全に固まっていた。

 

 

「この辺りには危険なモンスターは現在確認されていませんし、もし来ても私がどうにかします」

 

 

 メリルならたぶんどうにか……あれ。リオレイアに半泣きで……

 一層不安が強まった。しかし、安心したのか顔が綻んでいるミドリに悟られてはいけない。上がっているのを落とすのは可哀想だ。表情を取り繕おうとしているとベースキャンプが見えてきた。

 

 

「念のため言っておきますが、ラピッドヘブンはとても隙が大きいのでタイミングを見計らって撃ってください」

 

「分かった」

 

 

 メリルはそう言い、ガーグァ繋いだ。

 支給品を見ると地図や応急薬、携帯食料。と、いつもと同じ量の道具に音爆弾が入っている。音爆弾なんていつ使うのだろうか

 

 

「音爆弾?」

 

 

 ミドリが覗きこんできた。物珍しそうに音爆弾をとり、傾けたりしながら見始めた。

 

 

「モンスターを呼ぶ際、鳴くんですが、その時に使うと驚いて呼ぶの失敗するんです」

 

「へぇ」

 

「後、こやし玉があるはずです。荷車に積んで下さいね」

 

 

 

 思わずうげぇ、と思ってしまう。こやし玉はモンスターに当てるとたちまち逃げ出させるほど、強烈な臭いを発生させる。衝撃を加えなければ臭いは発生しないようになっているが、調合するのが精神的に辛い。その上、モンスターに当てるとこちらも臭い。

 だから、この道具はおおよそのハンターが嫌っている。

 メリルは表情から察したのか、穏やかな表情で

 

 

「ないと死にますよ」

 

 

 と、脅迫してきた。間違いではない。むしろ正論。

 渋々こやし玉を荷車に乗せた。

 

 

 岩場を抜け竹林を進むとアイルーのすみかに着く。以前、ドスジャギィから逃げてきた場所。

 

 

「……ニャッ!」 

 

 

 見張りのアイルーだろうかが急に居眠りをやめ、身構えた。しかし、

 

 

「あれ? 久しぶりー」

 

 

 ミドリは気の抜けた声で言った。久しぶり?

 

 

「誰かと思えばミドリニャ?」

 

 

 見張りのアイルーは警戒を解いたのか武器を下ろし、近付いてきた。そしてこちらをまるで品定めでもするかのように見てきた。

 

 

「ミドリ、本当にこんなのに?」

 

 

 アイルーは心底不思議そうに言った。

 こんなのって何だよ。否定しないけど。

 

 

「そ、そんなことよりマタタビ欲しくない?」

 

 

 ミドリは早口気味に言った。マタタビで懐柔してたようだ。その言葉にアイルーは目を輝かせた。ミドリはポーチからマタタビを出しアイルーに渡した。

 

 

「一度ならず二度もまでも……! この恩、一生忘れないニャ!」

 

 

 そう言い、アイルーは見張りに戻った。

 

 

「あの、早く行きましょう?」

 

 

 メリルはそう言い、早足で歩き出した。だが、すぐに止まる。メリルに追い付き、先を見る。そこには木で出来た橋があった。全く加工されておらず、偶然の賜物としか表現できないような架かりかたをしていて、足元は根がからまってできているため、所々歪み、穴が空いている。風で揺れる上、下は霞んで見えない。落ちたらただではすまな……

 

 

「落ちても死なないから。アオイもメリルも早く行こうよ」

 

 

 ミドリは全く躊躇せず駆けていった。実際に飛び降りたであろう、ミドリの言葉は説得力があった。

 橋に足を踏み出すと木がしなり、軋む。だが渡る分には問題なさそうだ。

 メリルも顔をひきつらせながら渡り始めた。荷車は見た目程重くはないので大丈夫そうだ。

 

 

 渡りきると正面に社のようなものが見えた。朽ち果てていて今にも壊れそうだ。周りを見るとそこには黄色く変わった形をした嘴、緑色の体、鮮やかな尾羽。クルペッコがいた。

 クルペッコは器用に木の上で踊り、鳴いた。

 

 

「オッオッオッォッ」

 

 

 ドスジャギィの声で。たちまちジャギィが押し寄せてくる。五匹。

 クルペッコは鳴き終わると早々に何処かへ飛び立っていった。

 

 

「ギャッギャッ!」

 

 

 無意味に呼ばれたことに怒っているのだろうかジャギィ達はこちらに突進してくる。

 慌てて通常弾を装填し、構える。その直後、メリルが突進した。

 すれ違いざまに抜刀しながら一匹目を斬る。体を深々と斬られ、焼かれ、前に倒れこみ動かなくなった。

 メリルは突進の勢いを緩めず、返した剣でもう一匹を斬った。一匹目同様、深く広く斬りそのまま絶命させる。

 二匹の急な死に驚いたのかジャギィ達の突進の勢いが弱まる。

 標準合わせが容易になり、頭に狙いをつけ撃つ。ジャギィの頭を浅く抉る。続けて更に撃つ。二発目は足に刺さり、ジャギィが転んだ。ジャギィに駆け寄り、至近距離で三発目。頭に深々とささり、絶命させた。

 ミドリとメリルの方を見ると既に討伐し終わったところだった。

 

 

「メリル強すぎない……?」

 

 

 ミドリは返り血を拭いながら言った。メリルはジャギィ二匹を一太刀で切り伏せ、その後更に一匹を討伐したようだ。

 

 

「武器が強いだけです。急いでクルペッコを追いましょう」

 

 

 特に誇りもせず荷車の元に戻り引き始めた。ジャギィから素材を剥ぎ取りたいが、その間にクルペッコを完全に見失う可能性があるので出来なかった。

 

 クルペッコを追いかけはじめて十数分位だろうか。

すすきと池のあるエリアについた。そこでクルペッコを見つけた。池とにらめっこしている。魚を狙っているのだろうか。

 二人と顔を合わせハンターライフルを構える。ミドリは足音を立てないようにし、クルペッコの後ろに回り込む。メリルは剣の柄に手を当て、いつでも抜刀出来るようにしている。

 

 クルペッコが魚を獲るためか水面に顔を突っ込んだ。

 その瞬間、ミドリがクルペッコにペイントボールをぶつけ、駆け出した。クルペッコがミドリの方に振り向くと同時、抜刀された双剣がクルペッコの嘴を捉える。

 

 

「クルルッ!?」

 

 

 突然の攻撃にクルペッコが怯む。その隙を突き、嘴を狙い、撃つ。一発外れたが三発命中。全て弾かれたが手応えはあった。

 嘴を壊すと他のモンスターを鳴いて呼び出すのに時間がかかるようになるらしい。メリルが教えてくれた。

 

 

「せいッ」

 

 

 ミドリがクルペッコの懐に潜り込み足を斬る。クルペッコがミドリに完全に気をとられている内に、通常弾を装填する。

 

 

「クルッ」

 

 

 クルペッコは翼をはためかせ飛んだ。風圧でミドリが尻餅をつく。だがクルペッコは距離をとるだけでミドリを襲うことはなかった。

 着地した直後、クルペッコは急に踊り始めた。モンスターを呼ぶ前動作。慌てて嘴を狙って撃つが焦りからかクルペッコが激しく動いているからか全く当たらない。

 クルペッコが息を吸う。ミドリが走って接近するが恐らく間に合わない。クルペッコが顔を前に突きだした瞬間、

 

 

「クルルッアッ!?」

 

 

 甲高い音が鳴り響いた。音爆弾。メリルが投げてくれたようだ。

 

 

 

「サポートはするので安心し……て、わっ」

 

 

 クルペッコがパニックを起こしたのか滅茶苦茶な走り方でメリルの方に突っ込む。メリルは難なく避けた。が、荷車にクルペッコが突っ込み、荷車が横倒しになる。

 荷車は壊れてなさそうだが、上にあった道具が池にばらまかれる。

 

 

「このッ」

 

 

 パニックから立ち直ったクルペッコの足をメリルが斬る。剣は確実に足を捉え、炎を噴く。そのままメリルはクルペッコから距離をとり言った。

 

 

「今回も援護はしますが、基本的に二人で狩猟して下さい」

 

「わかった」

 

 

 返事をし、クルペッコに狙いをつける。クルペッコは翼をはためかせ、また低空飛行する。そして口から何かをこちらに向かって吐き出した。

 二歩程横に移動し避ける。発火材だそうだ。浴びると火が燃え移り易くなる。

 クルペッコを撃つ。とくに狙いはつけない。嘴は激しく動いているため恐らく当たらないだろう。

 クルペッコは弾丸をものともせず近づいてくる。

 不意に

 

 

「アオ、ちょっとごめんねっ」

 

「何、ミド……」

 

 

 肩を踏まれた。ミドリは高く跳び上がり、クルペッコの頭に剣を振り抜いた。

 

 

「クルッ!?」

 

 

 完全に不意を突かれたからだろうか。クルペッコは空中でじたばたし、落ちた。

 ミドリは着地するなり横に大きく移動し、

 

 

「アオ、チャンスだよ!」

 

「わかってるっ」

 

 

 急いで体制を低くし、弾丸を装填する。

――ラピッドヘブン。引き金を引く。

 圧倒的な連射速度で弾丸が放たれ、クルペッコに突き刺さっていく。翼に、嘴に、足に、体に。反動を無理矢理ねじ伏せているため狙いは安定しないが、この距離なら問題ない。

 射撃が終わると銃身が赤熱し蒸気をあげる。

 クルペッコがゆっくりと起き上がる。そして、口から白い息を吐き始めた。

――怒り状態。クルペッコはこちらを脅威と認めたようだ。

 だが、クルペッコはこちらを襲わずに、急に横に走り

だし、踊り始めた。

 

 

「ッ! 間に合いません、警戒を!」

 

 

 メリルの声。メリルとクルペッコの距離は余りにも離れ過ぎていた。

 クルペッコは息を吸い、鳴いた

 

 

「ギャオオオオオッ!」

 

 

 本能的に恐怖を感じる猛々しい咆哮が鳴り響いた。




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