「おかしい・・・どうなってるんだよ・・・・・」
小さくなっても頭脳は大人なコナンはまずは自分の身に起きている変化と周りの変化について、時間を遡って考えていた。
「そう・・・落ち着け・・・俺はまず・・・そう・・・風邪をひいたんだ・・・・」
そう、朝起きたら俺は珍しく風邪をひいて、蘭がとても心配そうに顔をのぞいてきたんだ。
まったく、俺はいつになっても蘭を心配させる・・・・じゃなくって、そう・・・今日は学校を休んで寝ることにしたんだ。そしたら、園子が蘭を迎えにきて、蘭は少し心配そうにしながらも学校へ行った。
「よし・・・段々思い出してきたぞ・・・そして、たしか蘭と園子の雑談が聞こえてきたんだよな」
部屋に戻る途中で、玄関越しに話している蘭と園子の会話・・・
『ねえ、新一君から最近連絡あった?』
そうだ! その言葉を聞いて俺は急いで布団へ目指すのをやめて聞き耳を立てた!
すると蘭は小さく否定したら、園子がため息をつきながら・・・・
『あんな薄情な奴やめて、他の男に鞍替えしたら?』
なんて余計な事を! くっそ~、園子の奴~・・・・って、これはあんまりこの状況に関係ないな・・・そうだ・・・重要なのはその後で・・・・
『たとえば~~、新井出先生とか♪』
・・・・関係ない・・・・これは関係ない・・・ただの園子の余計なお節介だ・・・そう落ち着け~・・・・
ゆっくりと余計なものを除外して、核心を思い出していく。
そう、自分は風邪をひいて学校を休んで寝ていた。すると、昼ごろ・・・
「そうだ・・・灰原から電話があって、・・・そうだ、解毒剤の試作品を試さないかって電話がきたんだ」
自分の体を小さくしたアポトキシン4869。
灰原が日々研究をしてくれているおかげで、完成品とまではいかないが、時間制限ありで元の姿に戻れる試作品が手に入るようになった。
その時、蘭のこともあって急いで俺は元の姿に戻って蘭に会おうと思って、即座に頷いて探偵事務所を飛び出して、博士の家まで行ったんだ。
そして・・・元に戻った時のために自分の帝丹高校の制服も用意して・・・・・灰原から薬を貰ってすぐに飲んで・・・・そう・・・
「目覚めたら元の工藤新一に戻っていた・・・・そう・・・・ここまではいいんだよな・・・・」
そう、小さくなっても頭脳は大人なコナンの姿から、今の自分は体も元に戻った工藤新一の姿である。
元の姿に戻ったら、何故か家の中には灰原が居なかった・・・・・でもまあ、これも別にどうでもいいことである。
灰原が居ないことに構わず、急いで家の外に飛び出して、学校へ向かおうとしたら、博士の家の隣にある自分の家の庭の木が異様に高い気がしたが、まあそれも気のせいだろう。
学校へ向かう途中の街の風景が、何故か変わっているようにも見えるが、まあそれもコナンでいる時とは、見方が違うのだろう考えれば構わないだろう。
学校に着いて、何故か自分の下駄箱が無くなっていた。しかしかなりの不登校が続いたのだから、学校側が自分の下駄箱を片づけたのだと思えば仕方ないことだろう。
途中で通り過ぎた自分の知っている教師が、以前会った時よりやけに老けていた気がしたが、それも構わないだろう。
自分のクラスに勢いよく登場したら、何故か蘭や園子どころか、知っているクラスメートもいなかった・・・・まあ、・・・・なんやかんやが起こったと思えば多分・・・大丈夫・・・だろう・・・・。
結局、蘭が見つからず校内をうろついていると、「探偵クラブ」という部室を発見した。自分が知らない間に出来た新しい団体だと思えば、不思議ではないだろう。
そして新一が何となく部室を開けてみると、中には・・・・
「おいコナン! さっきから、何突っ立ってブツブツ言ってんだ?」
「コナン君調子悪いの~?」
「それに、なんでメガネ掛けていないんですか?」
元太と歩美と光彦が居た・・・・高校生の姿で・・・・・・
まあ、これも皆が成長期だと考えれば・・・・・・・・
!? !? !?
「無理だろ! どうなっているんだよ!」
どんな謎も論理を組み立てて自分は解き明かしてきた。
しかしこの謎だけはすぐに解き明かせるはずがない。
思考だってうまく働かない。
(なんだ!? 元太に光彦に・・・・歩美・・・・こいつらなんでここに・・・・しかもなんで高校生の格好をしているんだよ・・・)
自分が幼児化してコナンという存在になってから出会った友達。そして少年探偵団の仲間たちだ。
全員小学校一年生・・・・のはずであるが・・・・・
しかしなぜか彼らは幼い時の面影を残しつつも立派に成長した姿で、今まさに自分の目の前にいた。
(こ、これは・・・・夢か? そう、そうだ・・・・俺は夢を見ているんだ・・・)
思わず抓った頬は痛かった。
「ゆ、・・・・夢じゃない・・・・・」
夢ではないとすると・・・・
(ひょっとして・・・元太たちの兄弟かなんかか? で、でも・・・俺をコナンって・・・・)
混乱する頭の中を整理しようとしても、余計に混乱していく。
まずは冷静に深呼吸をして、自分の身に何が起こっているのかを整理していくのが重要だ。
「そう・・・落ち着け・・・俺はまず・・・そう・・・風邪をひいたんだ・・・・」
こうして、一番最初に戻るのであった。
そして最初のくだりからようやく、今に至るまでを思い出した。
しかし、どちらにせよ謎のままである。
だが、思い返したおかげで一つだけ引っかかることを思い出せた。
(まてよ・・・・こんなおかしなことが始まったのは・・・・・)
そう、おかしくなったのは・・・・
「薬だ!」
そう灰原に渡された薬を飲んでからだった。
「「「薬?」」」
コナンの突然の叫びに頭に「?」マークを浮かべて三人は首を傾げる。何かおかしいコナンの様子に、疑問を浮かべている。
だが、一つの引っ掛かりに気づいたコナンにはそんなことはどうだっていい。
いつものように顎に手を置いて、推理モードに入ろう・・・・・・とした・・・・
正にその時だった!
「あら、体調でも悪いのかしら?」
「・・・・へっ?」
「だったら私が調合してあげるわよ、江戸川君?」
一気に推理モードから引き戻された。
この、冷静で冷めた偉そうな口調で自分を「江戸川君」と呼ぶ女性。
姿形は成長していても、間違えるはずはない。
「は、灰原・・・・・・・」
このおかしな原因を知っているかもしれない人物がそこに居た。
しかも・・・・
「それより、いつまで入口に立ってるの? すっごい邪魔なんだけど?」
やけにムスーっとした不機嫌な表情だった。
その鋭い眼光で睨みつけられ、コナンは思わず声を発する前に自然と背中に汗を流して、無言で道を開けてしまった。
(こ、・・・・コエ~~・・・・な、なんだ? こいつに何があったんだ?)
顔をひきつらせて無言で道を譲るコナンに、プイっと顔を背けてから灰原はスタスタと空いている席に座り、手に持っている四角い箱を机の上に置いてから、そのまま雑誌を広げて黙った。
すると歩美は灰原が机に置いた四角い箱に身を乗り出した。
「あれ~? 哀ちゃん、今日はお弁当食べるんだ~」
灰原が机に置いた四角い箱は、どうやらお弁当のようである。
「あれ、珍しいですね。最近、灰原さんはお弁当を抜いてるのに」
「灰原も腹が減ったんだな。やっぱ、昼休みは弁当食わないとな! 俺なんて学校では早弁用と昼飯用の二つ持ってくるからな~」
「いや・・・それは元太君ぐらいですよ・・・・・」
「そうだよ~、・・・・でも・・・哀ちゃん・・・・このお弁当、哀ちゃんが食べるには少し大きくない?」
まったく目の前の会話にコナンはついていけなかった。
頼みの綱の灰原も普通にこの状況に溶け込んでいた。
「・・・・・・・これ、私のじゃないわ。それに私は今日もお昼はパス」
「えっ!? じゃあ・・・・これ誰の?」
一体何があったんだ? そう思わずにはいられない。
自分や目の前の彼らに一体何があったんだと何度も頭の中で・・・・・
「・・・・・・・・・・」
「ん? 哀ちゃん・・・・何でコナン君を見るの?・・・・・・」
「えっ? う、ううん。何でもないわ」
「ええ~~!? 哀ちゃんちょっと顔赤いよ!? ああーーッ! 哀ちゃんまさか!?」
「ちょっ、本当ですか灰原さん!?」
「またコナンかよ! コナンばっかズリーぞ!」
本当に何があったァ!?
居てもたっても居られなかった。
「灰原、ちょっと来い!」
「えっ?」
戸惑う灰原や驚く元太たちを気にせず、俺は少し強引に灰原の腕を掴み外へと飛び出した。
「ちょっ、・・・?」
突然の俺の行動に灰原も声を漏らすが、今の俺にはそれを気にしている余裕はない。今は少しでも人気のない場所へ行って、少しでも早く真実を知りたかった。
やがて人気のない校舎裏まで移動し、少し乱暴かもしれないが、コナンは灰原を木に押し付けて、その両肩を思いっきり掴んで問い詰めた。
「一体どういうことだよ! 何が・・・・一体何がどうなっているんだよ!」
少し乱暴にコナンは問い詰めるが、灰原は逆に身を乗り出した。
「いきなり何? それに、それはこっちのセリフよ」
「ああ~~?」
「朝、・・・・迎えに行ったのに勝手に出掛けて。おまけに午前の授業も居ないから、お弁当渡せなかったじゃない!」
「え・・・・・ええ~~?」
しかも訳の分からないことを言い出した。
「まあ、今さらあなたとのことを隠す気もないけど、ひやかされるのは嫌だから目立たないようにしてたのに、また小嶋君たちに言われるわよ?」
「い、いや・・・・ちょっと待て・・・・」
「・・・あなた、ちょっと様子がおかしいわよ? 何か隠し事? それとも悪い夢でも見たの?」
夢かどうかは先ほど確かめた。つまりこれは一応夢ではないのだろう。
(どーなってるんだよ? 何でいや・・・・今は・・・・・これまでのことを聞き出すほうが先だ!)
灰原が何故かキャラじゃないことを言っているが、これも現実なのかもしれない。
ならば尚更自分は聞き出さねばならない。
一体自分たちに何が起こっているのかを、当たり障り無く・・・・
「な、なあ灰原・・・・ちょっと・・・分からないことがあってさ・・・今に至るまでの・・・ちょっと教えてくれね?」
「はあ? 分からないこと? 今に至るまで? あなた何言ってるの?」
「あっ、・・・いや・・・その・・・」
自分でも何を言ってるのか分からず、灰原も首を傾げている。
「今に至るまでって、この10年のこと? まあ・・・・別にいいけどいつから話すの? あなたにとってはツライこともあったからね。組織とは決着がつかないまま、中学、高校と進んでいき・・・・・」
「・・・・・へっ? あっ、いや・・・ちょっ・・・ちょっと待てよ・・・・」
「あなたも解毒剤の試作品で何度か元の姿に戻ったけど・・・いつしか耐性ができてしまい、もう元の体に戻ることも無く、江戸川コナンとして生きることになった・・・・」
「ッ!?」
今の自分はどんな顔をしているのだろうか?
相当なショックでは済まされないほどの衝撃の事実に、心臓が止まってしまいそうだった。
「・・・? なんか相当ショック受けてるみたいだけど、大丈夫? 変な薬でも飲んで今度は記憶喪失にでもなったの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「午後の授業が始まるわ。早く戻らない?」
「・・・・ワ、・・・・ワリ・・・・ちょ、ちょっと先に戻っていてくれ・・・・・」
コナンの態度に首を傾げながら、灰原は「そう?」とだけ言って少しコナンの様子を気にしながら先に帰った。
しかし残されたコナンはしばらくその場で佇み、結局教室に行くことも無く、学校から逃げ出したのだった。