まったく記憶にございません   作:アニッキーブラッザー

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第5話 何故かあいつが愛されてる

「なんじゃ新一か? 哀君ならとっくに学校へ行ったぞ?」

「えっ? あっ、そ~なの? まあ別にいいや。用があるのは博士だし」

 

10年経っても変わらない博士の姿にホッとして、コナンは当たり前のように博士の家に入ろうとする。

自分の身に起こった、世にも奇妙な出来事の全てを告げるために、そして今後の対策を共に立てるためにと家へ入ろうとする。

 

「なっ、別にいいってお前のう・・・・そんな言い方はないじゃろ?」

 

しかし、やはり突然尋ねてきたものだから、博士も少し驚いている。

さらに、どういうわけかコナンの発言にムスッとしているようにも見えた。

 

「あん? いや、後でちゃんと言うけど、まずは博士から話したほうがいいって思ってな」

「ワシに? なんじゃ、いきなり・・・・・」

「ああ・・・実は・・・今から言うことを真剣に聞いてほしーんだよ」

「?」

「世界の不思議が起こした、神の奇跡みてーな話をな」

 

何やら真剣な表情をするコナンに、博士は只ならぬ何かを感じ取った。

コナンの瞳、雰囲気、そして学校へ行かずに朝早くからここまで来たコナンの行動。

これまでの経験と博士なりの推理で、博士は一つの答えに行き着いた。

 

「ハッ!? 新一・・・お前・・・」

「ん?」

 

その答えは・・・・

 

「まさか、哀君をくれと言いに来たのではないじゃろうな!?」

「・・・・はあ~~?」

 

見当違いもいいところだった。

 

「だ、ダメじゃ!? 哀君が仮に良いと言っても、まだ高校生ではダメじゃ!」

「お、おい・・・博士?」

「まずはちゃんと卒業してから・・・「博士ってば!」 ・・・・なんじゃ?」

 

何やら訳の分からない勘違いを捲くし立てる博士に顔をひきつらせながら、コナンは慌てて博士を止めた。

何やら興奮状態の博士を必死に宥めながら、コナンは言いたいことを言おうとする。

しかし・・・

 

「ったく、いきなり笑えねえ冗談なんか言ってんじゃねえよ。あ~んな目つきの悪い欠伸女なんかいらねえよ」

「!?」

「まあ、話ってのはちょっと信じられねえことかも知れねえが・・・・・「新一・・・」・・・・ん?」

 

それがまずかったらしい・・・・・

 

「哀君と喧嘩でもしたのか?」

「は~? 別にしてねーよ」

「じゃあ何で哀君をそんな風に言うのじゃ!?」

「・・・・へっ?」

 

何故か様子のおかしい博士に、コナンは首を傾げてこの出来事について推理してみる。

 

(な、なんだ? 博士ちょっとマジで怒ってねえか? 以前は怒ってなかったよな~? この十年でなんか変わったのか? まさか、アイツが博士の愛人にでもなったのか~? いや・・・ひょっとして娘になった・・・あっ、これはありえるかもしれねえな・・・・)

 

そして、真剣に考えているコナンに対して、博士は十年前なら何の冗談かと思えるようなことを、真剣な表情で言ってきたのである。

 

「大体何でお前がここに居るんじゃ!? 学校はどうしたんじゃ? 哀君は君を迎えに行ったはずじゃぞ?」

「だ~か~ら~、何で俺が灰原と一緒に学校行くんだよ。別に後で会えるからいいだろ? つーか、今はあいつのことはどーでもいいから、ちょっと博士に聞いて欲しいことがあるんだよ!」

「なっ!? どーでもいいじゃとォ!?」

「えっ、・・・・ええええ~~?」

 

まったく会話がかみ合わなかった。

一体この時代の博士はどれだけ灰原を溺愛しているのかと、疑わずにはいられなかった。

しかも何故か十年前なら許された発言が、今は許されなくなっているようである。

 

「新一・・・お前・・・哀君をどう思っとるんじゃ?」

 

しかもまだ博士のお説教は続いていた。

 

「あ~~? う~~~ん・・・・俺はあいつの薬の被験者? あいつのモルモットか? あっ、いや・・・でも昨日はあいつ、俺のことを相棒って言ってたよな?」

「そうではない! 一人の女性としてどう思っとるのかと聞いとるのじゃ!? お前は哀君のことをちゃんと想っておるのか!? 好きなのか!?」

「ええ~~~?」

 

どこのバカ親かと、もはや呆れてしまった。

コナンは「やれやれ」とため息をつきながら、両肩を竦めながら冗談交じりで返してしまった。

 

「ったく、な~んで俺があんな可愛い気のねえ、ひねくれた女を好きになるんだよ? 大体博士だって知ってんだろ? その・・・・俺には・・・蘭がよ・・・」

「!?」

 

しかしどうやらそれが・・・・

 

「・・・だからさ・・・・「出てゆけ」・・・・・へっ?」

 

人の良すぎる博士の・・・・

 

「・・・出てゆけ・・・・」

「は、・・・・博士?」

「出てゆくのじゃ! 哀君としっかり仲直りするまで、この家の敷居を跨ぐことは許さん!!」

「えっ・・・・えええええっ!?」

 

逆鱗に触れてしまったようだ。

 

「博士ェーーッ! ちょっ、俺の話聞いてくれよ、博士ェ!」

 

ドンドンと扉を何度も叩くが、まったく開けてくれる様子がない。

どうやらかなりマジで怒っているらしい。

 

(おいおいおいおい、マジかよ。何で博士が灰原のことであんなに怒ってるんだ? ひょっとしてこの10年で二人は結構仲良くなってんのか?)

 

たしかに、灰原はこの家に居候であり、博士は社会的に保護者という関係だった。

しかし何だかんだで良いコンビでもあり、灰原も博士を信頼し、とても大切に思っていただろう。

博士も未婚だが、灰原をこの10年で娘のように大切に思っているのだとしたら、おかしくないのかもしれない。

ひょっとしたら、そうだからこそコナンの灰原の悪口を許せなかったのかもしれない。

 

「しっかし、・・・・・ちょっと大げさじゃね~か~? ったく、しゃーねえなー、・・・・仕方ねえ、あんま頼りたくねーけど、こーなったら・・・・・」

 

コナンは博士をあきらめて仕方なしポケットに入っている携帯電話で、ボタンを押していく。

10年前の番号だが、番号が変わっていなければ使えるはずである。

 

「あっ、父さんか? って・・・母さんか・・・俺だけど・・・・」

 

自分の正体を知っている実の両親。

本来なら、海外に住んでいる両親に頼りたくはないのだが、このような非科学的な出来事を博士以外の人に易々と話せるはずはない。

そこで仕方なしにと、コナンがしぶしぶ電話をすると、受話器の向こうから10年前と変わらぬ元気な母の声が聞こえてきた。

 

『あら、新ちゃーん! 珍しいわねー、そっちから電話をするなんて! 優作? 優作は今ちょっと居ないけど、どう? 元気~?』

 

どうやら母親は変わらず健在のようだ。

ようやく安心して、もう一度安堵のため息をついた。

その安堵が・・・・

 

 

「あっ、ああそうなの? ま、この際母さんでもいいか・・・ちょっとメンドーなことがあってな・・・少しいいか?」

 

『な~に~? 哀ちゃんと喧嘩でもしたの~?』

 

 

すぐに打ち消されるとも知らずに。

 

「・・・な~~んで母さんまで、あのひねくれ性悪女のこと『ブチッ』・・・・・へっ? と、母さん? お、おおい!? なんでいきなり切るんだよォ!?」

 

安堵を電話ごと切られてしまった。

コナンは慌てて「もしもーし!」と受話器に向って叫ぶが、返答がない。

どういうつもりなのかと、問いただそうと慌ててリダイヤルした。

すると・・・

 

 

『新ちゃん!! 冗談でも哀ちゃんの事をそこまで言うなんて酷すぎるわ! 何があったのか知らないけど、ちゃんと反省するまでしばらく掛けてこないで!!』

 

「ええッ!?」

 

 

そして「ツーツー」という無機質な音だけが流れ、コナンは何故か実の母親にまで見放されてしまった。

 

「はあアアアアアア!? なんだよこれ!? 何で母さんが灰原のことで怒ってんだ!? つーか、あの二人って仲良かったのか!?」

 

まさか、母親にまで見放されるとは思わず、コナンはこの予想外の10年後の展開に再び戸惑いを隠せなくなってしまった。

 

「ちっくしょ~、灰原の奴~、薬のことといい、どんだけ俺の人生を狂わせりゃ気が済むんだ~? クソッ・・・こうなったら・・・・・・・・」

 

PLL・・・

 

 

半ばヤケになりながら、コナンは番号を押していく。

こういう真剣な状況では本当は掛けたくないのだが、誰にも相談できないよりはマシだと思い、一縷の望みを賭けてある男に連絡してみたのだが・・・

 

「あっ、服部か? ちょっと相談したいこと・・・・ああ? 何でお前まであの根暗なネガティブ女を・・・って、おおい!? 何でお前まで切るんだよ!?」

 

もはや全てに見放されてしまった。

 

「勘弁してくれよ・・・蘭の事で泣きてーくらいなのに、そんな時にこの扱いはマジでへこむぞ?」

 

泣きたくなる現状と、その元凶である灰原の名前を苦々しく口にしながら、コナンは再び携帯を操作する。

 

「なーんで、どいつもこいつも灰原灰原って! 大体何怒ってるんだ? 灰原ってこの10年で人気になったのか? それとも、俺が嫌われてんのか~? つうか、別に俺はあいつの彼氏ってわけでもねえのに・・・・・・・・・・ん?」

 

だが、見放された瞬間に、これまでの僅かな情報の中で少しありえない展開を考えてしまった。

 

「は・・・はは・・・ね、ねえよな・・・・い、いくら10年経っても・・・・そ、そうだよな。第一あいつがそんなキャラか? さんざん蘭のことで俺を皮肉ってたクセに」

 

そう、自分と蘭のことでいつも横から嫌味を言ってきた。

でも何だかんだで、自分と蘭のために体を張って協力してくれたこともあった。

そう、自分がコナンになってから、正体を隠すためだけではなく蘭とのことでも灰原は自分に色々と協力してくれた。

たまに冗談交じりの嫌味を言われたりもしたが、少なくともそんな女が自分と・・・・・などというのはまずないだろうと、直ぐに疑惑を捨て去った。

 

「そ、そーだよな・・・ある意味あいつが蘭の事で一番協力してくれたんだし・・・そんなはずねーよな」

 

少し苦笑しながら、コナンは再び携帯を操作し始めた。

だがその時、正に噂の張本人からのメールが届いたのだった。

 

「ん、メールだ! ・・・って、灰原から・・・」

 

少し戸惑ったが、コナンはメールを開封した。

そこに何が書かれているか少し怖かったが、開いてみたら特に何の変哲もない文章が広がっていて、少し拍子抜けだった。

 

「え~と、何々? ・・・・何やってるのよ? もう先に行っちゃったわよ? 授業にも来ないつもり? 昨日からあなた少し変よ。また何かあったのかは知らないけど、あまり皆に心配させないように・・・まあ、普通の文章だな」

 

少しホッとしたような残念なような気持ちになったが、そのメールにはまだ続きがあった。

 

「・・・・・ん、何? 文章の最後に・・・XXX~~? Xって確か・・・ダメって意味だって蘭が言ってなかったっけ? じゃあ、俺はダメダメダメってことか~? ・・・わけ分からねえ・・・・・まっ、この様子じゃ俺とあいつの関係は変わってなさそーだな」

 

少し分からない部分もあるが、どうやら自分の疑惑どおりの展開ではなさそうだった。

コナンは「そりゃそーか」と苦笑しながら、メールを閉じた。だが、そのことで簡単なことに気づいていなかったことに気づいた。

 

「そーだ・・・携帯電話だ!」

 

こんな簡単なことに気づかなかった自分に呆れてしまった。

この携帯を購入してどれくらいかは知らないが、少なくともこの携帯に入っている情報は全てこれまでの自分の情報が詰まっているのである。

メールのやり取り、連絡の履歴、さらにアドレス帳に載っている人物は全て自分の知り合いのはずである。

これを知るだけで相当状況が変わるというのに、今頃気づいた自分のミスに笑わずにはいられなかった。

 

「え~~っと・・・載ってるのは・・・ウゲッ、知らねえ奴の名前も結構あるぞ? ええ~~っと、黒羽快斗~? ・・・誰だコレ?」

 

コナンは適当にアドレス帳をめくり、とりあえず自分の知り合いである人物の名前だけでも確認していく。

中学、高校と進んでいるのだから、当然知らない人物も多く載っている。

だが、中には10年前から知っている人物も当然載っていた。

 

「でも何人か・・・・あっ、・・・新井出智明・・・・」

 

思わず手が止まって、顔をひきつらせてしまった。

携帯を持つ手が震え、ミシミシと音を立てている。

 

(はは~~ん、ふ、ふ~~ん・・・お、俺・・・・この人と仲良かったのか? 何か・・・結構キツイな・・・これ・・・コレを見る限り、俺は新井出先生と蘭のことを認めていたのか?)

 

携帯の番号を交換しているということは、それほど険悪でもないのだろう。

しかし今の自分としては、何とも言いがたい複雑な気持ちになってしまった。

 

「あとは・・・ん、高木警部って・・・高木刑事か? でも二人居る・・・えっ、高木美和子? あっ、なんだよ~佐藤刑事と高木刑事って結婚したのか? しかもちゃっかり警部になってるし」

 

次々と中身を調べていくと、その中から得られる情報からだけでも、10年間の変化を読み取ることが出来た。

しかし・・・

 

「他には・・・白鳥管理官? あの人もう管理官になったのか? それに白鳥澄子? あれ・・・これってひょっとして、小林先生か? はは・・・・あの二人も幸せってか? 何だよ・・・・蘭といい、おっちゃんといい、こうして見ると失恋してるのって俺だけじゃねえかよ・・・・」

 

落ち込んでしまった・・・・

 

「ヤベ~・・・なんかマジへこむ・・・・もういいや・・・博士も怒ってるし、今日は大人しく学校いこ・・・・・」

 

10年の時の流れでめでたくゴールインしているカップルたちを見ると、昨日失恋したばかりのコナンとしてはダメージ以外の何者でもなかった。

孤独な自分がものすごく寂しく感じ、少し不貞腐れながらコナンはトボトボと高校へと向うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃・・・

 

「ちょっと・・・・何なのよ一体? 朝から博士に有紀子さんに服部君からもメール? しかも何で私と江戸川君が喧嘩していることになってるのよ」

 

でも確かにコナンの様子はおかしかった。

たしかに今日はその事について問いただそうと思ったのだが、本人は既に家を出て、学校にも来ていない。

そして朝早くからこんなメールが来れば、たしかに不安になる。

 

(江戸川君の様子が変わったのは昨日から・・・・蘭さんも絡んでいるのかしら? でも今更どうしてそんなことに? 冷静に考えてみれば、たしかにおかしいわね)

 

携帯と睨めっこしながら、灰原も顎に手を置いて考える。

すると朝っぱらからそんな神妙な顔つきで唸っている灰原を見て、後ろから歩美が抱き付いてきた。

 

「あ~いちゃん! どーしたのよ、朝からそんな顔しちゃって~」

「あ、歩美ちゃん!? べ、別になんでもないわ」

「ふふ~~ん、何年哀ちゃんと一緒に居ると思ってるの? どーせコナン君でしょ?」

 

プクーッと頬を膨らませた歩美の表情に灰原は思わず噴出してしまった。

 

「まったく、あなたには敵わないわね」

 

この子は昔から幼いながらも、素直で純粋で、そして人の心も見透かす。10年経っても目の前の少女には何故か勝てないなと苦笑し、灰原もあきらめた。

 

「その・・・ねえ・・・・・・、男の人が挙動不審になるのってどういう時か分かる?」

「えっ? 何? 哀ちゃんコナン君と喧嘩したの?」

「違うわよ、してないのに彼の様子がおかしいから疑問に思ってるの」

 

あきらめて親友に相談し、そして歩美も真剣に悩んで考えている。恋愛話で互いに悩むその光景はどっからどうみても普通の高校生にしか見えなかった。

 

「う~ん・・・そ~だね~、あっ、ひょっとして哀ちゃんの誕生日とか! コナン君、哀ちゃんに隠れてコッソリ準備してるとか!」

「えっ、誕生日? たしかに・・・・近いけど・・・・でも、彼に関してそんな気が利くことはありえないわ」

 

歩美の可愛らしくて素敵な予想に、灰原は思わず笑ってしまい、そんな事はありえないと否定する。

しかし・・・

 

(誕生日・・・でも意外と気が利くし、優しいし、フェミニストで記憶力もいいし・・・・ひょっとしたら・・・・)

 

心の底では・・・

 

(バカね、あるわけないじゃない、そんなロマンチックなこと・・・私には似合わないわ・・・)

 

僅かに・・・

 

(ないわ・・・・ないない・・・)

 

否定しきれず・・・

 

(でも・・・ひょっとしたら・・・・あれ? でもそうしたら蘭さんが関わっている理由が説明できないわ・・・プレゼントの・・・・相談?)

 

顔を赤らめてドキドキしながら、期待している自分も居た。

一人で歩美を忘れて、僅かに口元に笑みを浮かべては、真っ赤になって首を振る。

灰原らしくない奇怪な仕草に、クラス中の注目が集まっていた。

 

「朝からどーしたんだよ、灰原~!」

「何か悩み事でもあるんですか?」

 

そんな小学生からの友達の奇怪な仕草に、恋愛話だろうと構わず元太と光彦がひょっこり首を突っ込んだ。

歩美は二人に軽く挨拶し、そして二人の存在で我を取り戻した灰原が慌てて取り繕った。

 

「あ、あらオハヨウ。朝からみっともないところを見せちゃったわね」

「今ねー、コナン君がキョドーフシンで怪しいって話をしてたの」

「コナン君が?」

 

歩美のストレートな言葉に灰原は少し慌ててしまうが、光彦も元太も真剣に考え出した。

 

「確かに昨日あいつ変だったな」

「ええ・・・たしかに・・・・」

「そうなの、それで思い出したんだけど、ひょっとしたら蘭さんが絡んでるかもしれないの」

「えっ、蘭おねーさんが?」

 

一回りも年の離れている人たちに、真剣に恋愛相談をするとは思わず、灰原もこの十年の時の流れに苦笑してしまった。

 

(まさかこんな日が来るなんてね)

 

だが、そんなしみじみとした思いを打ち消す言葉が・・・

 

「ふっふっふ、分かりましたよ! 挙動不審な男性・・・そして美しい女性・・・そこから導き出せる答えはつまり・・・・・浮気です!!」

 

光彦から飛び出した。

 

「み、光彦君のバカーッ! コナン君は浮気なんてしないもん!」

「でもよー、アイツ蘭ねーちゃんのこと好きだったからな~、それに蘭ねーちゃんも新井出先生と付き合う前は新一ってコナンに似てる兄ちゃんが好きだったんだろ?」

「で、でも~~、コナン君はモテるけど、今までそんなこと無かったもん! 哀ちゃんとのことを公表してないからだけど、九十九さんとか後輩のすっごい可愛い子達がアタックしてても無関心だったし、コナン君に限ってそんなことないよ~!」

「いや~、しかしですよー、こと蘭お姉さんのことになると、コナン君は小学生のときから・・・・・」

 

―――バキィ!!

 

 

光彦の言葉を遮るように、何かが破壊される音が聞こえた。

 

「は、はい・・・ばら・・・・さん?」

 

それは灰原がシャープペンを真っ二つに折った音だった。

そして灰原はクスクスと笑い出した。

口元が笑っているのに、瞳が前髪で隠れているためか非常に怖く感じ、探偵団も教室の生徒たちも恐怖のあまり寒気がした。

 

「へ~~、そうなの・・・ふ~ん・・・・浮気・・・・なるほどね」

「あ・・・アイチャン?」

「でも昨日の慌てっぷりや、博士たちからのこんなメールを見る限り、一番可能性が高そうね~。あらあら初恋って怖いわね~、それに他人のあらを探すのが得意な名探偵がボロを出すなんて、らしくないわね」

 

教室の温度が僅かに下がった。

 

「メールの返答もないし、今頃その愛しの人とどこかへ行っているのかしら? 私の・・・・あんなメールを笑いながら・・・」

 

灰原は不意に今朝コナンに送ったメールの文の最後につけたマークのことを思い出し、恥ずかしいやら、怒りやらで、震えていた。

だがしかし、直ぐに切なそうな顔で、全てを見透かしたかのように小さく笑う。

 

(ふふなーんてね。バカね・・・そんなこと無いって一番分かっているのは私なのにね。まったく、これじゃあ普通の高校生と変わらないわね)

 

本当はそんなことは無いと心の中ではコナンを信頼していた。

灰原の冗談を真に受けて、歩美たちは顔を引きつらせ、それに満足して灰原はクスッと笑った。

 

(どーせまた、何か厄介な事に巻き込まれてるんでしょうね。でも・・・ふふ・・・この調子で彼をからかってみるのも面白いかもね)

 

コナンは知らなかった。

この10年間でどれほど灰原が江戸川コナンを信頼しているのかということを。

しかしそんな想いも知らず、勘違いしたままコナンはもう直ぐこの場にやって来るのであった。

 

 

 

灰原にマイナスのイメージを抱いたまま。

 

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