まったく記憶にございません   作:アニッキーブラッザー

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第7話 関係発覚

江戸川コナンが失恋した! 相手は小学生の時から好きだった人!

この号外は一瞬で校内全体に知れ渡った。

 

「どーゆうこと哀ちゃん!?」

 

このビッグニュースに、歩美は血相を抱えて灰原の机をバンと叩いた。

肩を震わせ、中々迫力ある形相である。

しかしそれに対して灰原は、椅子に座ったままクールに雑誌を捲り、無表情に返した。

 

「さあ? そんなの私が聞きたいぐらいだわ」

「でも、今学校中で噂になってるよ! それに・・・・振られた理由が・・・他に好きな人ができたからって・・・」

「ほんと、どうゆうことかしらね」

 

灰原はあくまで冷静に関心なさそうな態度である。

しかしそれはあくまで表向きである。

人には分からない程度に、雑誌を捲る手が震えている。

 

(浮気の容疑の次は、失恋? 何なのよ一体! 大体、振るような事したかしら? 別に喧嘩もしてないし。それとも彼が何か勘違いしているのかしら? 大体私が彼以外の人を好きになるはずないじゃない・・・・)

 

そう、人には見せないが、灰原は内心かなり動揺しているのである。

 

(大体何なのよ。昨日から様子がおかしいし、朝も勝手に居ないし、サボるし、博士たちからも変なメールが来るし、挙句の果てに私が彼をフッた?)

 

まったく現状が理解できずに、さすがの灰原も答えが出ない。

歩美も相当怒った顔をして問いただしてくるが、一番真相を知りたいのは灰原本人だった。

すると、ざわついている教室のドアが開き、その噂の張本人が顔を出したのだった。

 

 

「うい~す (あ~良かった。自分のクラスが分かって)」

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

「な、何だよ?」

 

先ほどまでざわついていた教室が一瞬で静かになり、皆自分に注目している。

 

(・・・・何で皆見てるんだ? ・・・あっ・・・・自分の席分からねえ・・・・)

 

わけも分からず首を傾げ、何だかまた不安になって来ると、離れた場所から灰原がこの沈黙を破った。

 

「早く自分の席に座ったら?」

「お、おう・・・そ、・・・そ・・・だな・・・・」

 

だが、自分の席が分からない以上座りようがない。コナンが「やばい」と思って顔をひきつらす。すると何故か歩美がコナンを悲しそうに見つめていた。

 

「コナン君・・・・哀ちゃんの隣に座りたくないってことは・・・やっぱり・・・」

「い、いや・・・そんなことないぞ! ちょっとボーっとしてただけで・・・(サンキュー、歩美。助かった・・・しっかし俺って高校でも灰原の隣の席なんだな)」

 

歩美のボソッとした呟きを聞き逃さず、コナンは「ラッキー」とばかりに慌てて灰原の隣に空いている席に座った。どうやら自分の高校のクラスの席は、小学生のときと同じ灰原の隣である。

これはまた奇妙な偶然だなと苦笑しながらコナンは灰原に手を振った。

 

「よーっ、灰原。おはよ」

「ええ」

 

しかし灰原は顔を向けず、雑誌に目を落としたまま無関心だった。

だが、そんなものはいつもと同じだと思い、コナンも灰原の無関心に対して興味を示さず、そのまま机の上につっぷした。

それが、歩美とクラスメートをより一層ハラハラさせた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

~~一分

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

~~二分

 

(重い・・・何だよこの空気?)

 

時間の流れがものすごく遅く感じた。

自分と灰原だけでなく、クラス中も未だに黙ったままである。

一体何なんだと問いただしたいが、今の時点であまりボロを出したくないためコナンも出来るだけ黙っていた。

だが、その沈黙もようやくやぶられる。

 

「・・・・何も話してくれないのね」

 

降参したのは灰原だった。

軽くため息をつき、雑誌を机の上に伏せて、ゆっくりとこちらを見ながら話しかけてきた。

だが、コナンは・・・

 

「あん? 別に今は話すことなんて何もねーだろ。話題もねーし・・・・」

「・・・・・・・・そう・・・」

(こいつに真相を話すのに、やっぱ教室じゃーな・・・昼休み・・・もしくは放課後に博士の家で・・・・・って、なんで歩美の奴泣きそうなんだ!?)

 

あまりの教室の空気の重さに、本当は真相を灰原に話しておきたかったのだが、タイミングを逸した。

だが、その返答の仕方が問題だったようで、傍にいる歩美が泣きそうである。

コナンが慌てて起き上がって、尋ねようとすると、灰原は続けてコナンに向き合った。

 

「あなた・・・・学校中で噂よ? フラれたってどういうことよ?」

「えっ? あっ・・・いや・・・・それはだな~・・・」

 

灰原に問われてコナンは突然あたふたしだした。クラスの視線が一斉にコナンに集まる。

だが、流石にコナンもこの人数の前で蘭のことを話すのは躊躇われ、どうすればいいのか迷っている。

するとそんな迷いを払拭させるかのように、灰原は小さくため息をついて、表情を変えないまま、コナンにとってはまったくの予想外のことを告げてきた。

 

 

「あなた・・・・何を勘違いしたのかは知らないけど、私、あなたをフッた覚えも別れた記憶もないんだけど?」

 

「いや~その事・・・・・・・は・・・・・・・・・・・・へっ?」

 

 

ん?

 

コナンの時が一瞬止まった。

 

「・・・・・・・・・」

 

だが止まった時の中で、灰原は自由に動いた。

 

 

「それに、他の人を好きになることどころか、あなたに捨てられない限り私から別れる予定すらまったくないわ。あなた・・・一体私の何を勘違いしてフラれたと思ったの?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

!? !? !?

 

(おいおいおいおいおいおいおい、ウソだろ!? えっ? まさか・・・マジ? えっ? ・・・・・じょ、冗談じゃねえよな?)

 

あまりにも信じられない展開に声も出ない。いや、顔には出ているのだが、頭の中が混乱しすぎてうまく働かない。

 

(えっ? まさか・・・お、俺・・・灰原と・・・・えっ? ・・・でもなんで?)

 

この時、コナンは朝の出来事を思い出した。

 

それは灰原の話題になった時の博士や母親の対応の仕方。

 

――お前は哀君のことをちゃんと想っておるのか!?

 

そして昨日の昼に灰原が口にしていたこと。

 

――お弁当渡せなかったじゃない

 

灰原から薬以外の物を貰うなどなかった。あの時は突然の10年後の世界という出来事の方ばかりを考えていたため、その時の灰原の言葉を深く考えなかった。

そして、夕方だ。蘭を探している途中に灰原と会ったとき、彼女の自分に対する態度。

そして今の灰原の発言。

 

(おいおい、まさか博士や母さんが怒っていたのも・・・・まさか・・・)

 

もし、今自分が考えていることが真実なのだとしたら、自分はとんでもない勘違いをしていたことになる。

 

 

「・・・・・・・なあ、・・・・灰原・・・・・」

 

「何よ?」

 

「・・・・俺たち・・・・・恋人同士か?」

 

 

普通そんなことを聞くなど本来ならありえないことである。だが、コナンはそんなメチャクチャな質問をせずには居られなかった。

 

(・・・俺の知っている灰原ならきっとこう言う。・・・はあ? バカね、自意識過剰は大概にしたら? 毎日飽きもせずに血なまぐさい事件ばかり追いかけている推理フェチさんなんかに女に好かれる要素があったかしら? ・・・・こう言うに違いない・・・・でも・・・もし付き合ってるとしたら・・・・)

 

するとどうだ? 

無表情で決めていた灰原のポーカーフェイスが崩れ、少し顔を下に向けて頬を赤らめながら、一言一言ちゃんと口に出す。

そう、真実を・・・

 

 

「バカね・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・恋人とか・・・私たちとっくにそんな幼稚な関係じゃないでしょ?」

 

「・・・・え?」

 

「運命共同体・・・・一心同体のパートナー・・・・違ったかしら?」

 

「・・・・・・・・・・・・・それって・・・相棒・・・・」

 

「ええ、人生のパートナーでしょ? 因みにパートナーは翻訳すると、配偶者とも読めるけど。まあ、私はどちらの意味でも構わないわ・・・・・なーんてね・・・」

 

「・・・・・あっ・・・・・がっ・・・・・・・」

 

「・・・私たちって・・・そんなに脆い絆じゃないでしょ? 何があったかは知らないけど、あんまり私を見損なわないでよね」

 

 

その瞬間、歩美が泣きはらした顔で灰原に抱きつき、そして教室中に歓声と、キャーキャー騒ぐ女子の声が響き渡った。

 

 

「「「「「「ウワァァーーーーーー!!!!」」」」」」

 

「キャー! やっぱ灰原さんと江戸川君って付き合ってたんだーッ!!」

 

「まっ、バレバレだったけどねー!」

 

「灰原さんカッコいい!!」

 

「哀ちゃーん! 歩美は信じてたからね!!」

 

 

だがこの男は、口を半開きながら心の中で大声で叫んでいた。

言葉にならない悲鳴を・・・・

 

(ちょっ、ウソだろォォォォーーーーーッ!!?? お、俺が・・・俺が灰原と付き合ってる!? ええええええええええええッ!?)

 

知らぬ間に失恋していたコナンには、知らない間に恋人ができていた。

 

 

「な、何よその顔? あなたにとっては違うとでも言うの? ほら、恥ずかしいのを我慢して人前で言ったんだから、あなたもさっさと何か言いなさいよ」

 

「・・・・・あっ・・・いや・・・その・・・・」

 

「・・・・・・・なによ・・・・・・・バカ・・・・」

 

「○×A□Bーーーーーッ!?」

 

 

顔を赤らめて拗ねた表情で覗いてくる女は、自分の知っている灰原哀ではなかった。

ただただ、ムンクのような顔になりながら、コナンは心の中で悲鳴をあげるしかなかった。

 

 

(・・・・俺はどう返答すりゃいいんだよ!? つうか、コイツ灰原じゃねえんじゃねえか!? あの可愛くねえ女が10年経ってこんなに砕けるわけねえだろ!? つうか、夢なら覚めてよ・・・本当に・・・・)

 

 

しかし覚めなかった。

 

 

 

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